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殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

この機に乗じて『思い出』・2

2017年04月02日 10時16分32秒 | みりこんばばの時事
隣のA夫婦には長男、次男、長女、次女と4人の子供がいて

末っ子の次女A子は、私と同級生だった。

幼稚園が違ったため、小さい頃は接触する機会がほとんど無かったが

同じ小学校に入学すると、子供会が一緒なので

時々言葉を交わすようになった。

が、親しくなることはなかった。

A子が不思議に包まれた少女だったからである。


A子の家の台所は店の2階にあり、うちの裏庭に面している。

妹と裏庭で遊んでいると、よく野菜クズや卵の殻が飛んできた。

びっくりして見上げたら

A子とお姉さんが私を見おろしてニヤニヤ笑っている。

彼女たちは幼い頃からパチンコ屋の店番や家の手伝いをしていて

何か飛んでくる時は、姉妹で夕飯の支度中なのだった。


そんないたずらをしておきながら、次の日には

「おはよう!」とフレンドリーに寄ってくるので

いつも狐につままれたような気持ちになる。

記憶喪失なのか、時間ごとに人格が変わるのか‥

この謎を解明できない限り、気は許せないと思い

うわべだけの付き合いを続けた。


中学生になると、ある日を境にA子と私の関係が変化する。

ずいぶん前に「おとな帳」という記事で書いたが

うちの祖父が北朝鮮からの密航者を発見して

警察に通報した事件があったからだ。


隣の一家は、同胞と呼ばれる人たちの逮捕シーンを目の前で見た。

決していい気持ちでなかったことは想像に容易いが

A夫婦は沈黙を守り、大人の対応に努めていた。


しかしA子は同級生の女子を扇動し、私をいじめるようになった。

なあに、扇動は簡単だ。

うちの祖父のせいで、祖国の同胞が逮捕されて悲しい‥

そう泣きわめけば、同情する者が必ず出てくる。

5〜6人に増えたその集団は、私を罰することに燃えた。


祖国だの同胞だの言われても、わけのわからない私は

ただ耐えるしかなかった。

そのついでに、台所の窓から投げられていた野菜クズや卵の殻は

明白な悪意だったと認識した。


戦いが始まって数ヵ月後、一つ年上の野球部員が

私に交際を申し込むという青天の霹靂が起こった。

休憩時間になると上級生の男女が次々と教室に押しかけて

私の意向をたずねる。

問題の野球部員はゴリラのような男で、迷惑だったが

日朝問題よりこっちの方が興味深かったのか

集団の結束は一瞬で崩れた。


取り残されたA子は、急に私の親友を装った。

「私が一番仲がいいから、説得してみる」

上級生の前でそう言うのを聞いて、耳を疑った。


ついぞ2〜3日前まで私の弁当に砂を入れたり、椅子に画鋲を置いたり

学校帰りに待ち伏せして取り囲んでいたのが

素早い変わり身にもほどがある。

当時の私は、隣の家との経緯を一切聞かされていなかったが

隣との付き合いに、家族が細心の注意を払っているのは

小さい頃から感じていた。

こういうことなんだ‥と、その時理解した。



やがてA子と私は、町内の同じ高校に進む。

当時の彼女は学校が終わると、親が隣町で始めた焼肉屋を手伝っていたが

年の離れたお客と親しくなって、結婚すると言いだした。


A子は体が大きくて目鼻立ちがはっきりしており

着る物も水商売風だったので、とても15才には見えない。

お酒を出す所で働かせていれば、こうなるのは時間の問題で

近所の人々は、心配とも陰口ともつかない噂をし合っていたものだ。

しかし親はそう思っていなかったらしく、驚いて大反対した。


反対されると燃えるのは世の常。

A子は進学の2ヶ月後、親に内緒で退学届を出して駆け落ちした。

学校では「愛を貫く!」と騒いでいたが

実際のところは、家の手伝いが嫌になったのだと思う。


彼女が荷物を詰めた紙袋を二つ持って、男の車に乗るところを

たまたま自分の部屋の窓から目撃する機会に恵まれた。

何の感慨もなかった。


翌年、A子のお母さんが急死した。

お悔やみに行ったら、A子が帰って来ていた。

ガリガリに痩せており、駆け落ち暮らしの苦労を物語っているようだった。

それからしばらくは会うことのないまま

私は結婚して実家を離れた。


20代の後半になると、たまにA子から電話がかかるようになった。

同窓会発足の準備で同窓会名簿が作成され

それがA子の手にも渡ったからである。

懐かしいからではない。

この頃、電車で1時間ほどの町に住んでいたA子は

同級生を回って訪問販売の品物を売りつけようとしたり

怪しげな仕事の話を持ちかけたりした。

相手にする者はいなかった。


最後は「ちょっとお醤油貸してくれない?」と言うのと同じ口調で

保険証を貸して欲しいと言ってきた。

「歯が痛いけど、旦那が無職で保険証が無いのよ」

狂っていると思った。

これを好機ととらえ、絶交を言い渡した。


《続く》

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Unknown (いかどんぶり)
2017-04-02 20:01:10
第2話 お疲れ様です。
この時期って チーコお母さんの話も重なるんだな〜って思いながら 読ませて頂きました。

気になっている みりこんさんの名前の由来にもすごく興味が湧いております。
返信する
チーコ! (みりこん〜いかどんぶりさんへ)
2017-04-03 06:17:25
んまあ!すでにチーコもご存知とは!
そうです。
重なります。
思いを馳せてくださって、なんだか温かい気持ちになりますわ。

みりこんの名前の由来?
変換したらすぐ出てきますけど、未離婚。

このブログは元々、夫の浮気を描くために始めました。
私が悩んでいたネットの無い時代
こういうタイプの本は無かったです。
浮気関連本は、あるにはあったけど
みんな離婚してスキルアップして幸せになる種類。

それは独身時代に得た資格や人脈、まずまずの慰謝料など
ある程度の基礎を持つ人たちのことで
何よりまず、受け入れてくれる実家と
子守りを引き受けてくれる親が不可欠。
何も無い私のような人間が、死なずに生きるには
どうすればいいのかという疑問を解消する本は
ありませんでした。
で、あったらいいなと思い、ブログを始めた次第です。

結局、辛抱するしかなかったんですが
しょっちゅう新人と取り替えられそうになりながら
男の子を2人抱えて離婚するのは何かと大変そうなので
コケにされつつ居座った、おのれを揶揄した名前です。

私はいかどんぶりさんのお名前、謙虚さがにじみ出て
かわいらしくて、いいなと思っています。
返信する
Unknown (モモ)
2017-04-03 13:27:17
どうして…とか、なんで?など、通用しない方々なんですね。

優位に立つために、まず貶める。利用できるとすれは、すりよる。
理性とか、良識ではなく、感情。根底は妬み。

良識が通用する相手には、良識を楯にせまる。

関わるな。これが基本なんですね。
返信する
根底は妬み (みりこん〜モモさんへ)
2017-04-03 21:52:07
そうだと思います。
ただし、妬みの範囲があまりにも広すぎて
原因が特定できないため、謎となる。

>関わるな。これが基本なんですね。
この理由がやがて明らかになります。
返信する
こんばんわ、みこりんさん ()
2017-04-03 23:18:54
色々と私の知らない世界を紐解いて頂き目から鱗です。
「立場変われば、人も変わる」…昔酷くいじめられた先輩も今、全て水に流し接する所存でございますが、女性は怖いと感じるこの頃であります(^_^;)
返信する
おはようございます! (みりこん〜骸さんへ)
2017-04-04 08:19:37
後輩をひどくいじめるような先輩の性根は
生涯直りませんから
現在はどうあれ、その性根にふさわしい人生を
歩むことになります。
親しくしてもロクなことはありません。

一方、水に流して接しようとなさる骸さんの心映えは
立派です。
いじめられるって、大きな厄落としになります。
厄はいじめた方が受け取ってくれることでしょう。

女性の怖さは、おろかに由来している‥
私も女ですが、つくづくそう思います。
返信する

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