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殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

まさかさま・嫁姑篇

2016年12月20日 08時19分25秒 | みりこん童話のやかた
森のお屋敷に嫁がれて、心のご病気ということになられ

いつまで経っても温かく見守って欲しがるまさか様。

ご要望通り、温かく見守り続けた村民ですが

十年を超えますと「いい加減にしろ!」と言い始め

次の当主様になられる予定のご長男を心配する声も

大きくなりました。

「女房一人に手を焼くようで、当主様が務まるのだろうか?」


村人たちの疑問は、当主様ご夫妻にもおよびました。

「舅、姑として、まさか様にご指導なさる様子もなく

黙認しておられるのはなぜか?」

中でもお姑様であるマチコ様に対する疑問の声は大きいようです。


高貴なお生まれの当主様に解決を求めても

無理なのは誰でもわかっています。

村人たちの期待は、マチコ様に集まりました。

民間出身なので、浮世のことが多少はわかっておられるだろうし

才媛ともうかがっているからです。


お美しいだけでなく、賢くて思いやり深いマチコ様‥

マスコミの喧伝する内容が真実であれば

きっと鮮やかに解決されるに違いありません。

その手腕を見たいのもありましたが

人は、間違った者が権力者に諭されて反省し

心を入れ替えるドラマを見るのも大好きです。

十年、二十年‥村人たちはその時を待つのでした。


けれども心待ちにしていた瞬間は、いっこうに訪れません。

あてが外れた村人たちは

マチコ様を女神と信じて過大評価していたことに気づきました。

そして、まさか様を黙認し続けるマチコ様を

疑惑の目で眺めるようになったのです。


「黙認以外に無いでしょう」

村に住む、自称・嫁姑研究家のみりこんさんは言います。

この人は、ちょっと義理親と暮らしているからといって

すっかり研究家気取りの厚かましいおばさんです。


そう言うと、このおばさんは怒るのです。

「何を言う!

うちの姑は、マチコ様と同年代であるぞよ!

マチコ様と姑を並べるのは恐れ多いが

姑と暮らしてみたら、多少のことは理解できるのじゃ!

控え、控え〜い!」

まったく、かわいげのないおばさんです。


そのみりこんおばさんは言います。

「あの年代の一般女性は、きついとか、怖いと言われるのを忌み嫌います。

たとえば自他共に認める鬼のような女性であっても

“きつい”とだけは絶対に言われたくありません。

“怖い”なんて言われたら、大ショックです。


戦前生まれで戦中育ちの子供は、いわば非常時の申し子。

戦争に行く予定の男の子と違い、銃後に残る予定の女の子は

大人にとって扱いやすい人間になる必要がありますから

おとなしく従順な女性を尊ぶ教育が行われました。

そのため、突出した激しい性格を恥とする意識が強く

個性という言葉が普及してから生まれた人とは、感覚が違うのです。


戦前生まれの戦中育ちというと

いかにも根性があってたくましそうですが

根性があってたくましいのは、戦時中に大人だった親の代です。

戦後に成人した、あの年代の女性は意外と合理主義。

柔軟な合理精神で、交通や情報、電化製品などの

目まぐるしい発展に順応してきました。


合理的にできていますから

頑張っても成果の得られそうにない事柄とは戦いません。

ガミガミ言って、きつい姑という不本意な称号を得ても

恨まれるだけで、嫁は変わらないことを知っています。

自分がそうだったからです。


しかもまさか様のお輿入れに最も熱心だったのは、マチコ様。

まさか様を逃すと、お屋敷に釣り合う高貴なお家柄から

お嫁さんが来てしまう予定だったからです。


嫁姑の体験が無い人には想像もつかないでしょうが

どこの姑も、嫁の方が上というのは、そのまま屈辱です。

顔、頭、性格などもそうですが

特に家柄に関する屈辱は大きいものです。

努力や手術や言い訳ではどうにもならないからです。

民間出身のためにご苦労されたマチコ様にとっては

今までの半生が全否定される気分といっていいでしょう。


そこで、ご長男の恋をそっと後押しするという形で

まさか様を推されましたが

これが大ハズレとくれば、重大な責任問題ですよ。

嫁を叩き直そうと奮闘しても無理

ミスを認めて謝罪したって何の解決にもならないとくれば

無かったこととしてスルーしかありません。

これこそが合理的手段です。


ことに高齢ともなりますと、自分の行いや他人の言動で

心を波立せるのはしんどいものです。

マチコ様も立派な後期高齢者。

お気をもまれたり、お心を痛められると寿命が縮みますから

黙認しかないのです」


みりこんおばさんはそう言って、この写真を取り出しました。



1994年2月21日(平成6年)
お舅さんの還暦祝



翌日の1994年2月22日


「結婚翌年にやらかした、偽装妊娠の一発芸です。

世間には、こういうオイタをするお嫁さんもいるのです。

注意や指導の段階を超越しているのがおわかりでしょう。

こんな嫁が来たら、ホラーですよ。

周囲は愕然とした後、怖くなって何も言えなくなります。

触らぬ神に祟りなし。

くわばら、くわばら」


どっとはらい。


この物語はフィクションであり

実在する団体や人物とは一切関係ありません。

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6 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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嫁と姑 (ねこ)
2016-12-21 20:18:29
いつも苦しい時に、沁みるお言葉ありがとうございます。
夫は、変わらず入院中で、あまりよくありません。

ここにきて、お姑さんは病状を知ったうえで、
私と私の実家に(20年ぶり)電話をかけてきて、
「男の子は見舞いに行ったって何も言わないし、今はあなたが家族なんだから、あなたが一番頑張らなきゃね。お母さんにも手伝ってもらったら。」
つまり、自分はノータッチ。

そして実家は実家で、
「前から息子(私の兄)より娘(私)がかわいいと思っていた。(夫が亡くなったら)実家に帰ってきなさい。娘がいる方が役に立つし、安心。離婚より死別の方が体裁がいいしね。」

日々弱っていく人を前に、そんなことしか言えないのか。

なんとか、病がこれ以上つらくなりませんように、
病院の夜が怖くないように、ゆっくり眠れますように、
なんとか、口から食べられるものはないのか、
祈るような気持ちで、仕事中も泣けてくるというのに。
必死で考えているのに。

年を取るってこんなもんでしょうか。

他人である職場の仲間が、私を心配して、休日にもかかわらず、心細いだろうからと
カロリーメイトを差し入れしてくれたり、話を聞くために飲みや食事に誘ってくれたり、やさしさが本当にありがたい。

結婚生活はいずれ死別ということで卒業になってしまいますが、一回壊れた夫婦関係を立て直す努力は、
無駄じゃなかったと思いたい。

身内のしようもなさに絶望する最近です。
返信する
年を取るって‥ (みりこん〜ねこさんへ)
2016-12-22 14:34:33
こういうもんです。

ご主人の看病、頑張っていらっしゃいますね。
えらいね。
ねこさんが夫婦仲の修復に努力されたからこそ
今の一生懸命で人間らしい気持ちが
あるんだと思いますよ。

年寄りは頑固と若い人は言いますけど
なかなかどうして、若い人より合理的です。
ただしその合理性は、自分を中心に世の中を回すための
手段として発揮されることが多いため
老人との接触が少ない若い人は
それを卑怯やワガママと感じ、そう呼びます。

ことに身内の病気、ひいては死に関して
若い人より回数をこなしているという差は
大きいものです。
目の前にある死の、その先を考えられるのは
回数をこなして経験しているからです。
はたからは、ひどくドライに見えたり
とても冷たく感じたりします。
自分が必死だと特に、激しい温度差を感じると思いますが
年を取ると本当にしんどいのよ。

ご実家の親御さんにとって娘婿は他人。
この反応は自然だと思います。
一緒に嘆き悲しまれても、ねこさんが困ります。
お姑さんは、さすが猛者だわね。
現実を認めたくないのと、生来の横着と無感動の混合型ね。
うちのヨシコは、こっちに近いかな。
はい、私、自分ではアツシを充分世話した気でいるけど
それについてヨシコから一切礼を言われたことはありません。
見て見ぬふりで、認めてませんね。

頑張っているねこさんに
優しい言葉の一つもかけてもらいたいところですが
やがて実感されると思いますけど
冷静な親族がいるって、わりと助かるものなのよ。
親の立場を振りかざし、手を出し口を出しの
スタンドプレーをされても、今度は別の苦しみが訪れます。
そっちもかなりの消耗よ。
ちょうどいい感じって、絶対無いんだから。

周りが付いて来ないことは気にせず
ねこさんの道をまっすぐ歩んでください。
外野はほっときなさい。
応援しています。
返信する
ありがとうございます。 (ねこ)
2016-12-22 19:51:54
丁寧なお返事ありがとうございます。

その年にならないとわからないものがあるのでしょうね。

私はまだ経験が足りないのでしょう。
今が、その修行中といったところでしょうか。

接客業の兄に上記のことを伝えると、
「自分のお客さんはお年寄りが多いけど、、びっくりするようなわがままなことをいう人が多いんよ。
年を取ると視野が狭くなって、自分のことしか考えられなくなるんやろう。」とのことでした。

結婚生活の終焉をどんなかたちで迎えるのか、
結婚生活に何の意味があったのか、
今後はどうするのか、つい考えてしまう。
いろいろ考えて、
でも、目の前のことから一つ一つ乗り越えていこうと
思っています。

ぼちぼち頑張ります。
返信する
びっくりするほどのわがまま(笑) (みりこん〜ねこさんへ)
2016-12-22 23:42:21
老人は皆、そうです。
「ええっ?どの口が言ってる?あんた、何様?」
姑仕えしてる私は、毎日こればっかりですよ。
自分のことしか考えられないわがままだから
長生きできるんです。
うちなんか、夫や子供たちとしょっちゅう言ってます。
「ひと癖もふた癖も無いと、80は超えられん」
そしていずれ、私たちも長生きすればああなります。
今こうして、こんなこと思ってたのも忘れてると思う。

結婚して夫婦になった意味、大いにあるじゃないですか。
お子さん、生活、平穏無事ではなかった結婚生活で得た
数々の知恵と力、愛。
素晴らしいものですよ。
自信を持ってください。
返信する
結婚生活 (ねこ)
2016-12-26 21:19:42
平穏無事な結婚生活を望んで、結婚したんですが(笑)
人生山あり、谷あり・・・
皆さん、そうなんでしょうかね。

私は特別な宗教はないのですが、
よく輪廻転生とか、いうじゃないですか。
本当にあるのだとしたら、
夫には、今度は平均寿命くらいまで、痛かったり、苦しかったりすることなく、好きな仕事を思う存分できるように、女性もいい人を選んで、そういう人生を送ってもらいたいです。

私は、もう、人間はいいかな・・・
自信なんて・・・ないです。

でも!とりあえず、今の目の前にある人生を精一杯生きるしかないですね。
ありがとうございます。
返信する
平穏無事 (みりこん〜ねこさんへ)
2016-12-26 23:25:27
確か私もそれを望んでいましたが‥
平穏無事にいかないのが人生なんでしょうね。

輪廻転生、あると思いますよ。
外国に行って、気候風土や言葉に馴染み
すんなり暮らせる人って、過去世のどこかで
その国の人だったりするんじゃないかしら。

前回、努力しながらも不遇に終わった人は
次はわりと恵まれたりするもんです。
人って、誰かと比較して自分を不幸だと思ったりするけど
相手も自分も前回、前々回、その前から魂は繋がってて
その結果、今があるんだと認識したら
決して不公平ではないです。

>今度は平均寿命くらいまで、痛かったり
>苦しかったりすることなく、好きな仕事を思う存分できるように
>女性もいい人を選んで、そういう人生を送ってもらいたいです。
私も特別な宗教はありませんが
この気持ちこそ、美しい菩薩の心です。
毎日つらいと思いますが、残された1日1日を大切に過ごして
ご主人にいい思い出を作ってあげてください。
返信する

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