殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

人選ミス

2011年11月12日 12時44分53秒 | みりこん昭和話
高2の時、クラスに、なにかっちゅうと私に突っかかる女、ひでよがいた。

中学では番張っていたと吹聴するような、その程度の女である。

ええとこのお嬢という自己申告の触れ込みであった。

家が遠すぎて、同じ中学から来た者はいなかったので、言いたい放題だ。

いけ好かない女であった。


当時、英語の教科書に、私のお気に入りの話が載っていた。

初めてのファンレターをもらった、若く貧しい小説家が

手紙の主を食事に招待した。

文面から、若い娘だと思い込んでいたが

待ち合わせたレストランに現われたのは、太った中年のご婦人であった。

小説家は驚いたが、気を取り直してご婦人をエスコートする。


食欲旺盛なご婦人を横目に、彼は財布の中味を案じてヒヤヒヤしていた。

そこへ運悪く、グリーンアスパラガスのカゴを抱えたウェーターが…。

「本日は、良いアスパラガスがございます」

「私は小食なので、もうお腹がいっぱいですの。

 でもバター焼きにしたグリーンアスパラガスがあれば、別ですわ!」

そこで小説家は、しぶしぶ一人分だけオーダー。


やっと食事が終わったと思ったら、今度は桃のワゴンが近付いて来た。

「本当においしいお食事でした。

 あとは桃さえあれば、すばらしいですわ!」

そう言われて、小説家はしかたなく桃をオーダー。

ご婦人は結局、彼の小説をあまり読んでおらず

彼はその後の数日をパンと水だけで過ごしたという、かわいそうな話だ。

小説家のお人好しと、ご婦人の図々しさが、私のツボであった。


この時、クラスは騒然となった。

桃は知っている…けどグリーンアスパラガスとは、どんなもんぞや?

当時、我が町の食料品店に、グリーンアスパラガスは存在しなかった。

我々が認識するアスパラといえば、缶詰の白いやつか

田辺の胃腸薬だけである。


ここで、ひでよが得意げに言った。

「おいしいよね~、グリーンアスパラガス!」

おまえの住む山奥に、そんなハイカラなもんがあるものか…

私は意地悪く思った。


どんな味?どんな味?と男子達が無邪気に聞くものだから

ひでよは困って言った。

「う~ん、どんな味って~…香ばしい!」

香ばしいって?どんな感じ?と、またたずねられ、怒り出すひでよ。

「あ、おめえ、ほんまは食ったことねえんだろ」

「貧乏人にはわからないわよ!」

このやりとりの後、ひでよは多少おとなしくなった。


やがて2年の3学期も終わりに近づき、3年生の卒業式があった。

私は卒業を迎えた女子数名に呼び出された。

ツッパリと呼ばれる女の子達である。

あまりしゃべったことは無い。

リーダー格の女の子が、時々体操服を借りに来たので、貸してやったくらいだ。

ぺちゃんこに加工した学生カバン以外は

荷物を持たずに学校へ来るのが、イケテるとされた時代であった。


私の通った高校は、おとなしくてのどかだったので

男子にも女子にも、際だった不良というのはいなかった。

よってツッパリの基準は、あくまでファッション優先の校内比であり

世間一般で通用する水準ではないため、恐れるほどではなかった。


そこで紙袋を渡され

「3年になったら、これをはいて」

と言われた。

「学校の女子をちゃんとシメるのよ」

私の住む地方では、シメるというのは意地悪をすることではなく

支配するということである。


なんと、この人達は女子をシメていたつもりだったのか。

私達は、この人達にシメられていたのか。

初めて知った。

ああ、驚いた。


紙袋に、どんないいものが入っているのかと思ったら

古びた制服のスカートが出てきた。

長いやつである。

所々ほつれているし、はき古されて、テカテカ光っている。

「ええ~?」

私の顔は曇った。

反応がいまひとつの私を残し、彼女達は去って行った。


どうも、何代かに渡って受け継がれたものらしい。

どうも、これを渡された者は、おカシラみたいな人になるらしい。

どうも、適任者がいないので、体操服を借りていた私に回ってきたらしい。

スカートの主と私の体操服のサイズが、同じMのロングだったからにすぎない。

この人事、適当にもほどがある。


私は困った。

こんな汚いものをはいて、何か勘違いをして、いばれということか。

それはみっともなくて、恥ずかしいことではないのか。

しかも3年になるにあたり、町内の田平洋装店で

新しいセーラー服をあつらえている最中であった。

そっちのほうが、断然いい。


私はそのうちひらめいた。

「3年になったら、あの人達、もういないじゃん!」

あのグループに、地元の子はいなかった。

ボロスカートをはかなくても、誰もとがめる者はいないのだ。

この名案に、有頂天であった。


が、そこで再び問題発生。

スカートの処分方法だ。

どこへ捨てようか。

子供というのはかわいそうなもので、何かをどこかへ捨てたとしても

必ず大人に見つかって怒られることを、私は幾たびかの経験で知っていた。


すると都合の良いことに、ひでよがこのスカートを欲しがった。

「私がもらってあげてもいいけど?」

おお!ひでよ!なんていいヤツだ!

一瞬でひでよを見直した、ゲンキンな私であった。


そうよ!あの人達は、私じゃなくひでよに渡せば良かったのよ!

きっと感動的な贈呈式ができたはずよ!

正当な継承者を発掘したような気になり、ホイホイと進呈した身勝手な私であった。


3年生になり、ひでよは得意満面で、長いスカートをひきずっていた。

しかしある日、何の拍子か、ウエストのベルト芯とプリーツの部分が

大きくお別れしてしまい、バサリとひでよの足元に崩れ落ちた。

縫い目が朽ちていたようだ。

周りに女子しかいなかったのが、不幸中の幸いであった。


ジャージに着替え、仏頂面で授業を受けたひでよ。

「みりこんの陰謀だ」と私をにらんだひでよ。

ひでよは、本当にいいヤツだ。

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26 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
南野陽子 (シーバスと踊る男)
2011-11-12 19:27:40
南野陽子的なスケバン刑事なみりこん姉さんこんばんは^^

お~本来は姉さんが着るはずのコスチュームを
ひでよさんが着用したことに無理があったんですね^^

しかし姉さんがスカートずって闊歩してたら
さぞかし男子はびびってたでしょう(笑)

>「おいしいよね~、グリーンアスパラガス!」

グリーンアスパラはさっと湯がいて
ON THE マヨネーズが王道です

香ばしい??????(笑)
返信する
こんばんは! (みりこん~シーバスと踊る男さんへ)
2011-11-12 22:52:27
当時はロングスカート全盛期だったもんね~。
わたしゃ着るの嫌ですよ(笑)
ひでよは私より小柄だったので、迫力あるスカート丈に
なってましたね。
この事件?で、スカートは修復不能となり
成仏しました。

あれから何年後か忘れましたが、初めてグリーンアスパラを食べた時
「やっぱり香ばしいとは違う」と思いました。
グリーンアスパラは、オンザマヨですよね!
返信する
アスパラ (にしき)
2011-11-13 13:51:19
すみません。アスパラという胃腸薬は存知ませんでした。
ちなみ私の愛用品はガスター10です。
胃酸過多なので飲みすぎ食べすぎの太田胃散より良い効き目です。
どーでもいいか・・・

私も初アスパラが何歳の頃だったのか覚えてないです。
初めて料理にアスパラを使った時、あのトゲトゲした突起をどこまで取ったら良いのか分からず、取り過ぎて見事に細くなってしまい、割りに合わない食材だ、食わなくても死にはしないと、しばらく遠ざけておりました。

そだそだ、今回の食いしん坊婦人の件を読んで、こういう女性はきっと大阪人に多いだろうとお思い皆さん、それは違いますとこの場を借りて釈明させて頂きとうございます。
ケチな大阪人ではありますが、基本、大阪人の家庭は亭主関白が主流です。
ご馳走してくれると言われれば喜んでご相伴に預かる大阪人女子ですが、相手を立てる気持ちは忘れませんのでどうかご安心下さい。
以上。

・・・・・・えっと?何の話でしたっけ?
返信する
アスパラガス (おかよ)
2011-11-13 15:24:02
みりこんさんこんにちわ~

この話で、我がママの好きなものが
「ホワイトアスパラ」
だった~ってことを思い出したよ~

そうなのよ~
我がママはホワイトアスパラが好きなのよ
私はグリンアスパラしか食べたことがなくて
母にわざわざそれどんなもの~っていって
缶詰買ってきてもらったのを思い出したよ

でも、グリンアスパラを家の畑で作ってたもんで
缶詰アスパラの美味しさがいまいち
わからんかった・・・

缶詰くさくて美味しくないって言ったら母に
「じゃけ今まで食べさせたこと無かったんよ・・・」
って言われたよ。


でも、いつの時代もヤンキーっておるんじゃね~

きっと、そちらではヤンキーは下火かもしれないけど
こちらでは、、まだ細々生息しとるよ~
でも、ヤンキーも高齢化が問題のようよ
すっごいヤンキー車に乗ってる人や
すごい爆音の単車に乗ってる人が超おっさんじゃった・・・・

でも、なが~いスカートのみりこん嬢も見てみたかったかも~

すっごい似合ってたりして・・・・
返信する
スケバン刑事 (ねこ)
2011-11-13 19:04:55
南野陽子といい、風間三姉妹といい、セーラー服といえばスケバン刑事。

昔のアイドルはスケバンの格好をさせても奇跡的にかわいかった。
しかし、実際に着てた人は…
みりこんさんの戸惑う様子が目に浮かびます。

今の制服はAKBみたいに超ミニで、誰でもかわいく見えるようになっていて羨ましい。

アスパラは串あげ屋さんで、アスパラに薄い豚肉をまいて衣をつけて揚げたものが、とてもおいしかった!でもうちでは面倒で、ゆでてマヨで頂ことが多いです。

あー!また串あげ屋にいきたいな。
返信する
有り難うございます♪ (モモ)
2011-11-14 07:24:52
みりこん姉さん、お祝いの言葉、有り難うございます

みりこん姉さん、場をお借りします。m(_ _)m

もんもんさん、営業1課 課長さん、サキマさん、ネコさん
お祝いの言葉、有り難うございます

悩んでいる方々が多い中で、報告するかか迷っていましたが、せめて、みりこん姉さんにお礼の気持ちを伝えたくて、書かせて頂きました。〓

結果、多くの方々に、祝福の言葉を頂き、本当に有り難うございます

毎日が発見と、笑い♪、一日一生の日々ですが(既に目にクマ〓)我が子には、この時代を生き抜いて欲しいと思います
その為の手助けや、共に生き抜く勉強をみりこん姉さんのお部屋でさせて頂いている…皆さんと一緒に。

その出来事、出会いに深く感謝しています
返信する
ワハハ! (みりこん~にしきさんへ)
2011-11-14 10:20:50
>食いしん坊婦人(爆)
英語の本なので、外人だと思うけど(笑)

大阪の人…と区切ってはいけないのかもしれないけど
食べたいという希望をあんなにまわりくどい形で
寄り切るようなことはしないでしょうね。
このご婦人、いやらしいですもん。
…あ!ここで急に思い出した!
バター焼きの前に、もう一言言ったんだった。
本文に書き足しておきます。

私の初アスパラ、この時から10年は経っていたと思います。
あんまりおいしいものでもなかったと思いました。
返信する
おお! (みりこん~おかよさんへ)
2011-11-14 10:44:37
私もかよママと同じ…缶詰のホワイトアスパラが
子供の頃から大好物なのです~。
買う時は缶のお尻に「L」または「LL」と
刻印してあるものを買います。
太いほうが柔らかくて食べ応えがあって、おいしいのさ~♪
売り場であれこれ探して選(よ)るのは好きじゃないので
パッと見、MやSしか無い時はあきらめます。
MやSしか見えない時は、その店にL以上は入荷してない
または入荷する実力?が無いとみなして正解だからです。
アスパラのサイズは、その店の格を表わしているとも言えます。
なにしろこの道40年(笑)

家にアスパラ畑があると、新鮮なのが食べられますね。
ゆでても色が綺麗だし、みずみずしい。
買ったのとは全然違います。

>ヤンキー高齢化(爆)
心だけはいつまでも少年…いらっしゃいますね…プププ。
そっちは少年率が多いのね。
人に迷惑がかからないなら自由だけどさ、爆音は困ります。

長いスカートのわたくし?
ホホホ…ホホホ…と笑ってごまかす。
地元から進学した子は、みんな長めだったんですよ。
定期代がいらない分、地元の親は制服にお金をかけてくれる
風潮があってね。
あつらえるとつい欲が出て、みんな長めに作っちゃうの。
既製服のまつり縫いをおろした無理な長スカートなんか、いらんのよ。
返信する
風間三姉妹! (みりこん~ねこさんへ)
2011-11-14 11:04:39
あったね~!
その頃は私、もう大人だったわ~。
民間のスケバンは、どうやっても積み木崩し(笑)

そうよ~!
あの頃に超ミニが流行っていたら…私も足を出しまくってたかも。
若さの特権を駆使しないまま、オバチャンになちゃって
もったいないことしたわ。

串揚げのアスパラもおいしいですね!
町内にすごくおいしい串揚げ屋さんがあって
そこも豚肉を巻いて出す時があります。
ご招待したいわ♪
返信する
毎日… (みりこん~モモさんへ)
2011-11-14 11:15:29
楽しく、面白く、心配で、そして眠い…懐かしいわ~!

一日一生…まさにそうですね。
モモさんなら、きっと優しくていいお母さんになれますよ。
体に気をつけて、子育てを存分に楽しんでください♪
返信する

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