殿は今夜もご乱心

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キャンプだホイ!

2022年09月25日 12時03分46秒 | みりこんぐらし
このシルバーウィーク、長男がキャンプに行くと言い出した。

付き合い始めて半年の彼女と二人だそう。


彼は一昨年あたりだったか、キャンプ飯に凝っていた。

独身の長い男はどこかでこういうものにハマる時期があるのか

メスティンとかいう飯ごうみたいな器などの調理器具を買い込み

庭で家族とは別に煮炊きをして、一人で食事をしていた。


youtubeで見たとかで、サンマの缶詰を使った炊き込みご飯なんかを振る舞ってくれたこともある。

本人はご満悦だったものの、youtubeにこういう簡単便利な物を載せる人と

私のような年配者は味覚が違うようで、美味しくはなかった。

が、先で独居老人になったり、家を失って路上生活者になったり、災害に遭遇した時

キャンプ飯は役に立つと思い、奨励したものだ。


飽きっぽい長男は、お約束でじきに飽き、道具一式は放置されていた。

しかしいよいよ今回、彼女の前で道具と腕前を披露する時が来たのだ。


テントに寝袋、椅子やら何やら、大荷物は用意された。

けれども白いご飯の炊き方を忘れたと言う。

キャンプ飯に凝っていた終盤は炊き込みご飯ばっかり作っていて

人にも配っていたが、基本の白いご飯はお留守になっていたのだ。

彼女様は、炊き込みご飯がお好きでないらしい。


そこで母が教える。

米の用意に水加減、始めチョロチョロ中パッパ、ジュージュー吹いたら火を止めて…

「何かが鳴いたらフタを取るんだっけ?カラス?」

長男は問う。

バカ…赤子じゃ。

フタ取ったらダメじゃ、フタ取らずに蒸らすんじゃ…。


これはアカンと思った私は、キャンプの心構えから教えることにした。

「ご飯さえちゃんと炊けたら、あとは何か焼きゃあええけん、どうにかなる」

「女子が幻滅するのは、段取りの悪さ」

「慣れんのにあれこれやろうと思わず、ご飯に一点集中」

来月42才になる息子にキャンプ道を説く、62才の母。


マザコンと呼びたければ呼べ。

20才しか離れてない我々母子は、兄弟や友だちに近い面を持ち合わせている。

共にファミコンのスーパーマリオに興じ、ミニ四駆の組み立てやカスタマイズをし

野山を駆け回り、釣りに付き合ってきた。


そして私は、婚期を逃した息子たちの幾多ある女性遍歴をつぶさに見てきた。

つまり姑になりそこなった回数が人様より多いので、その方面ではベテランを自負している。

だから息子たちと関わる女子に、何の期待も持ってない。


今どきの女子は計算高いらしく、男と付き合い始めたら早い時期に家へ来たがる。

家と家族の値踏みをして、付き合いを続けるかどうか判断するのだ。

息子が急に優しくなるから、付き合い始めたのはわかる。

彼女からせっつかれても、うちら親の協力が無ければお宅訪問は実現しないからだ。


そして訪問は、向こうの親の指示であることが多い。

自営と聞いて、心配になるらしいのだ。

そりゃまあねぇ、公務員や一流企業と違って不安定だから気持ちはわかりますよ。

そういうわけで親の介入が強いのも、今どき女子の特徴である。


一度や二度なら、うちらもいい所を見せようと張り切るだろうし

そういった偵察めいた行為に気づかないまま結婚になだれ込むんだろうけど

相手が変わるだけで何度もとなると、いい加減飽きてくる。

こちとら、小わっぱに値踏みをしてもらうつもりは無い。

何様じゃ…というのが本音である。

はっきり言ってウンザリ、飽き飽きじゃ。


夫も私も将来、嫁に世話をしてもらおうだの孫の顔が見たいとは1ミリも思わない。

世間の年寄りが言うように、息子たちがずっと一人でかわいそうとも思わない。

事故か心中以外、死ぬ時は皆、一人だ。

ただ、若い女の子にとって大切な一時期を、頼りないうちの子と浪費するより

もっと良い人を探すことに使う方が良いのではないかと思い、申し訳ない気はしている。


ともあれ、息子と彼女はカタツムリのような荷物を背負い

お二人でバイクにまたがって、島にあるキャンプ場に出かけなすった。

翌朝、帰って来たが、ご飯がうまく炊けたそうで、彼女様もご機嫌であった。


ところで息子には偉そうにキャンプの心得を説いた私だが、実はキャンプをしたことが無い。

キャンプには家族思いでこまめな旦那が不可欠だと思っているのもあるが

そもそもインドア派の私とキャンプは縁遠い。

学校でもキャンプに行くことはなく、高校の時に同級生の男女大勢で近くの島へ渡り

そこのキャンプ場でカレーを作って食べたことがあるだけだ。

もちろん日帰り。


同級生のA子…ほら、還暦旅行の時に仲良し4人組で同じ部屋に泊まりたいと希望した

万年乙女の女親分…が采配を振るい、おっかなびっくりカレーは作られたが

ご飯は思いっきり焦げた。


食事が作られている間、私と歌の上手なサヨちゃんは

キャンプ場から遠く離れた宿泊施設まで氷をもらいに行っていた。

暑い時期なので、水やジュースに氷があったら美味しかろうという

優しいサヨちゃんの発案。

宿泊施設には彼女の親戚が勤めていたので、事前に頼んであったのだ。


重たい氷を二人で抱え、ようようキャンプ場へ戻ってきたら

A子はかろうじて無事だったカレーを自分の手柄にし

ご飯が焦げたのを人のせいにして怒り狂っていた。


真っ黒で、噛んだらジャリジャリいうご飯で食べるカレーは本当に美味しくなかった。

そして食後、A子は散らかし放題の焦がし放題で散乱した調理器具や食器を指差し

私とサヨちゃんに言い渡した。

「あんたら、カレー作る時におらんかったんじゃけん、後片付けしてよね!

私らにだけ作らせて、あんたらは食べるだけなんてズルいわ!」


おめぇが今飲んどるジュースの氷を取りに行っとったんじゃ…

そう言おうとしたが、心美しきサヨちゃんは

「わかったわ」

と微笑んで後片付けを始めたので、私も黙って一緒にやった。

後の皆が楽しそうにバレーボールなんてやってるのを横目に

焦げついた飯ごうを洗うのは、まことに骨が折れた。


ようやく片付けが終わったら、もう帰る時間になっとるじゃないの。

初めてのキャンプめいたイベントは、ちっとも面白くなかった。

だけどA子の横暴よりサヨちゃんの潔さが強く印象に残り、良い思い出になった。


そんなわけで、カレーは誰が作ってもカレーになるが

ご飯を焦がしたら何もかも台無しになると、その時に知ったことを息子に話しただけ。

いい加減なものである。
コメント (5)
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