殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

手抜き料理・老人時代

2022年09月08日 10時31分03秒 | 手抜き料理
我々夫婦は、老後の話をよくする方だと思う。

「婆さんと犬がいなくなったら、旅行に行こう」

夫の今のブームは、これ。

「たまの遠くより、近い所へたびたび行ってゆっくりしたい」

少し前の記事、『首問題』でお話しした、夫の友人夫婦に影響されたのだと思う。

その夫婦はとても仲良しで、毎週のようにあちこちへ出かけている。

ご主人の方と毎日のように会っている夫は、話を聞くうちに感化された様子だ。


そうだね…旅行、いいね…

私はいつもそう答えつつ、ただの夢物語と聞き流す。

双方の両親はすでに他界、子供たちも独立して夫婦だけになったあの人たちと我々では

環境が違いすぎるからだ。

犬はともかく、婆さんの方は不死身。

姑仕えが終わる頃、我々の寿命も尽きそうな気がする。

いや、我々の方が先かもしれない。

旅行より、あの世へ旅立つ日の方が早いかもよ。


それに私は、夫と旅行をしたくない。

友だちと行くならいいけど、この男は手がかかる。

偏食が激しいので現地の名物料理は食べられず、行ってから帰るまで

どこでも食べられる麺類やファストフードの店を探し歩く羽目になる。

荷物を持たせればどこかで置き忘れ、いつの間にか手ぶら。

よその子供の泣き声に振り返ったら、夫とぶつかって転んでいる。

でなければ夜中に熱を出すか、腹を下して大騒ぎ。

それらに加え、地獄の底から聞こえてくるような大音響のイビキが

もれなくセットで付いてくる。


結婚して42年、夫と泊まりがけで旅行したのは新婚旅行と下の妹の結婚式

あとは県外で仕事に必要な免許の講習と試験があった時

それから、どこかの風呂へ出かけ、帰るのがかったるくなって

つい泊まったことが1〜2回あるぐらいだが、私は十分に辟易した。

合間で夫は歴代の愛人とあちこち行っていたけど

あいつら、よう我慢しとったわ…と感心する。



それはともかく、人生100年時代と言われるようになった現在

20年ほどの子供時代よりずっと長く

40年ほどある大人時代に匹敵する長さになった、“老後”。

老後は、リタイアしてからあの世へ行くまでのオマケ期間ではなく

一まとまりのれっきとした時代となった。

もはや老後ではなく、老人時代と呼ぶ方がふさわしいだろう。


還暦を過ぎて、我々夫婦もこの老人時代に突入した。

まだ新人ではあるものの、心してかからなければならないという意識はある。

これから訪れると決まっているのは、夫の退職と年金生活。

そして夫婦の永遠の別れ。

さらに現時点では不確定ながら、病気と介護もスタンバイ中と思われる。

簡単に言えば、生活のレベルダウンと孤独は必須

そこに痛みと情けなさを伴う可能性大ということだ。


これらと上手く付き合うには、どうすればいいか。

いくらものぐさな私でも、さすがに考える。

しかしどれも、訪れてみなければわからない。

周りを見回して、およそわかった気になっていたが

年金の受給手続きひとつでさえ、現実に訪れてみなければ何もわからなかったのだ。

総年収を12で割った金額が28万円以上になると厚生年金がもらえないことや

65才になると、その28万枠が41万枠に拡大されるなんてことも

全然知らなかったのだから、他のことだってわかるわけがない。

「それでも明るく生きられるか」

今のところは大ざっぱに、それをテーマとして生活しようと思うばかりである。


このような心境になって以来、私が日々こしらえる料理は傾向が変わった。

以前は家族全員を喜ばせたくて、あれこれ腐心したものだが

死なない姑や、いつまでも独身のボンクラ息子どものために

汗水たらして作る気が無くなり、照準が夫に向いたのだ。


だって夫は家族の中でただ一人、私のためにお金を稼いでくれる。

息子たちも幾ばくかの食費を入れるが、全額貢いでくれるのは夫だけだ。

私がその誠意に応えたいと思うのは、人として当然のことではないか。

要は、カネよ。


そんなわけで、私は夫の好物や夫の健康だけを考えるようになった。

夫の好物は息子たちの好物と共通していることが多く

夫の健康を考えることは、家族の健康を考えるのと同じなので

以前と比較しても大差は無いのだが、照準を一人に絞ると他の人の反応なんかどうでもよくなり

なんだか肩の力が抜けて、とても楽になった。


で、最近、朝食によく作るのが

『卵サンド』


卵は夫の好物だが、義母も息子たちも卵サンドが好き。

朝なので美しく作る余裕は無いが、味は同じだろうから勘弁してもらう。


作り方は簡単で、申し訳ないぐらい。

①茹で卵を作る

※写真の物で8個使用。

前日に水から茹で、しっかり沸騰したら火を止めて

そのまま翌朝まで放置すれば茹で卵ができている。

以前、記事にしたが、茹で卵を作る時は卵のお尻(丸っこい方)を

カレースプーンでコンコンと軽く叩き、割れ目を入れてから茹でるとカラ剥きしやすい。


②卵を粗みじん切りにする

※100均で売っている茹で卵スライサーで、卵を横向きにスライスしたら

形を崩さないよう向きを変え、縦にして再びスライス。

これで卵はバラバラになる。


③卵ペーストを作る

※バラバラになった卵をボールに入れ

マヨネーズをたっぷり、塩こしょうと薄口醤油それぞれ少々

あればパセリのみじん切りを加えて混ぜる。

パセリは原型のまま冷凍しておき、使う際に手で揉みながら入れると早い。


④サンドイッチ用のパンに卵ペーストを乗せ

その上にもう1枚、パンを置いて挟み、食べやすい大きさに切ったら出来上がり

※パンが足りなければ、または忙しければ、2枚のパンで挟まなくても

卵ペーストを1枚に乗せたままオープンサンドにするのもいい。

卵ペーストが余れば、次の食事でレタスなんか添えたサラダでどうぞ。


美味しく作る秘訣はただ一つ。

サンドイッチ用のパンを使うこと。

サンドイッチ用のパンは、読んで字のごとくサンドイッチに適している。

パンが薄くて柔らかいだけでなく、自己主張をせず脇役に徹するケナゲさを持っているため

どんな具を挟んでも合う。


また、普通の食パンと違って水分の吸収が緩やかなので

パンにあらかじめバターを塗っておく手間が省ける。

家でサンドイッチを作るのが面倒なのは、このバター塗りがかったるいから。

弁当など、長時間に渡って放置するなら塗った方がいいけど

短時間で食べてしまう場合、バター塗りは必要ない。



『牛赤身のステーキ・みりこん風』


近年の夫は脂っこい物を嫌い、ステーキを食べなくなった。

私もこの変化を歓迎している。

ステーキを1枚ずつ5人に焼くのは消耗するし、高くつく。

来るべき年金生活のためには、節約を心がけなければ。


そこで軽い、国産牛の赤身を使う。

赤身はグラム400円前後。

そこいらのスーパーで売られているステーキ用のロース肉と比較すれば半額以下だ。

ただし安い赤身肉は、味が淡白で硬いと相場は決まっている。

これを柔らかく焼くのが、腕の見せ所である。


①室温に戻した肉を包丁の背で気休めにたたき

塩こしょうを振ってニンニクのスライスを乗せる

※肉を早めに冷蔵庫から出し、室温に戻しておくのが最大のコツ


②肉を買う時にオマケでもらう牛脂を熱したフライパンに入れ

さっきのニンニクを肉から回収して軽く炒める

※牛脂で香り付けをすると、何やら美味しいような錯覚を起こすものだ。

錯覚が必要無い人は何の油を使ってもいいし、油を使わなくてもいい。


③焼けたニンニクをフライパンから回収して別皿に移し、いよいよ肉を焼く

※肉の厚さにもよるが、表と裏、それぞれ1分から1分半程度。

※うちは5人なので5枚、あるいは4枚の肉を2回に分けて焼くが

少人数であれば一度に焼いて大丈夫。


④表面の色が変わって控え目な焦げ目がついたら

フライパンから出してまな板に並べ、10分前後放置

※放置している間に熱が肉に回って、柔らかい仕上がりになる。

※生々しいのが嫌な人は、肉をアルミホイルに包んで放置するといい。

またはレンジを肉用の弱にして10秒ほど温めても、多少硬くなるが赤い色は薄くなる。


⑤斜めに薄くスライスしたら出来上がり



焼いてすぐは、この姿。

全部が同じ仕上がりになるとは限らないので、各自に好みの焼き上がりの物を選んでもらう。

斜めスライスは、少量の肉を多く見せる小技だ。

これで5人分、約500グラム、2,000円。

普通のステーキ1枚分の値段である。


※写真では忘れたが、先に焼いたニンニクを肉の上に置く。

※ソースは市販のステーキソースやトンカツソース、焼肉のタレ、ポン酢など何でもいいけど

これは手作りの、名付けて『昭和ソース』

肉を焼いた後のフライパンにウスターソースをドバドバ。

そこに砂糖を大さじ1杯程度入れ、一煮立ちさせたもの。

料理店をやっていた九州の伯母の直伝だが、昭和っぽいレトロな味が男や子供には人気だ。


『付け合わせ…人参の明太子炒め』

写真の人参炒めは手軽で美味しく、野菜食べてる感もあり

お弁当など活躍の場が多いので、ご紹介したい。

①人参を細切りにし、好みの量の明太子は薄皮から出してほぐしておく

②油をひいたフライパンで人参を軽く炒める

③明太子を入れてサッと混ぜ、火を止めたら出来上がり

あなどれない深みのある美味しさは、人参ラペや人参シリシリなんて目じゃないぜ。
コメント (8)
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