殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

芸問題

2016年05月09日 20時09分37秒 | みりこんぐらし
二戦二敗。

思い返せば3年前の甥と、先日の姪

どちらの結婚式でも私は敗者に甘んじた。

めでたくも苦々しい。

うれしくも腹が立つ。

これが私にとっての敗北である。



結婚披露宴では、新郎の友人が芸をすることがある。

たいてい羽目を外した、芸とは呼びがたいもので

年配者には不評なことが多い。


3年前にあった、甥の披露宴でも行われた。

甥の友人が5人出てくるなり

上半身を脱ぎ捨てて踊りだす。

それぞれのお腹には一文字ずつ

絵の具で大きく字が書いてある。

5人並ぶと「○○不動産」。

新婦の父親が個人で経営している会社の名前だ。


私は情けなかった。

養子に行くわけでもなく

甥が継ぐわけでもないのに

女の親の会社を持ち上げてどうする。


それを眺めて大喜びの父親を囲み

「◯◯不動産、バンザ~イ!」と叫んで

卑屈に媚びる新郎の友人達。

拍手喝采の妹家族。

バカにされているのがわからないのか。

うちらの業界だったら

ひともんちゃく起きるところだ。


つまらぬ裸踊りで

間接的にワシらの家をおとしめた

奴らの罪は深い。

ナメられて喜ぶ、無知で自虐の家だと

関係者の面前で証明しおったのだ。


いずれ夫婦に波風が立った時

こういうことが少なからず影響する。

波風を体験し続けて30有余年

自称・波風研究家の私が言うんだから間違いない。

ああ、腹が立つ。


腹が立つといえば、会場の後ろには

ガラス張りの、なんちゃって調理室があった。

「皆様、後方のシェフにご注目ください」

アナウンスがあり、照明が落とされる。


そのシェフとやら、ガラスの向こうで肉を焼いている様子。

この人が、何か芸を見せてくれるらしい。

と、彼がフライパンにブランデーらしき液体を落とす。

バッと炎が立ちのぼる。

「おおっ!」

歓声が上がり、拍手が起きる。


照明は元に戻されたが、私はまだ待っていた。

何が始まるのかとワクワクしながら

一人、後ろのガラスを凝視。

前の方で誰かの歌が始まったが

そんなモンにかまっちゃいられない。

これからシェフが何かするというじゃないか。


見せたかったのはフライパンの火で

それはもう終わったと理解するまで

さらに数分を要した。

「おばちゃん、もう終わったんだよ」

近くの席に座っていた、顔見知りの甥の友人から

声をかけられて知った。


焼いている肉に酒をかけたら火が出るのは

当たり前のことではないのか。

ナメてるんじゃないのか。

それとも、付いて行けない私が悪いのか。

苦い敗北であった。



さて、先日の姪の披露宴でも

新郎の友人による芸は行われた。

ゾロゾロと出てきて

三代目だか四代目だかの歌を歌い、踊る。


バラバラで見苦しいが

甥の時のように、物知らずな秀才による

屈折した芸ではなく

こっちはヤンキーなので無邪気だ。

低レベルの戦いではあるが

罪の無さにおいて、ヤンキーを支持したい。

少なくとも裸よりマシである。


この披露宴では、着席した途端に敗北を知った。

母は、下の妹一家と大テーブルに。

妹は息子と嫁と、生まれて間もない孫

別れた旦那シュンの甥と姪

つまり仲良しのお気に入りをコレクションして

やはり大テーブルに。

我々一家4人だけ、ポツンと離れ小島の

小さいテーブルだ。


会場の都合ではない。

それは明らかな隔離だった。

妹の性格からして、始末に困る我々4人を

他の者から引き離したのは明白である。


妹にとって我々は、昔から危険な存在だった。

自分の子供や親戚の前で

妙なことをしゃべられたら困るのだ。


妙なこととは、我ら一家の公用語‥

お下品語に、お下劣語。

頭脳明晰で繊細なお子様達には

刺激が強すぎるという理由からである。


それから、妹夫婦の昔話も厳禁。

特に、妹の子供時代の成績と

別れた旦那シュンが出た大学名は

トップシークレットである。

お子様達を絶望させることなく

可能性を伸ばすためだそうだ。


禁句はその場で直接、または思い出した時に

電話で厳しく指導され

年々、増加の一途をたどった。

今や何がダメで何がOKなのか

妹も私もわからなくなっている。

そのため、かえって危険が増してきた。


今回は不動産王の令嬢(イヤミです)

つまり息子の嫁もいるので、妹は気が気じゃないはず。

そこで未然に接触を防ぐという

最良の安全策が採用された模様。


そんなに邪魔なら呼んでくれなきゃいいんだけど

シワい妹が、大口集金の機会を見逃すはずがない。

危険人物として隔離されたことより

テーブルがやたら小さくて

身動きできない不自由を強いられたため

終始、苦々しさにさいなまれた我々。

こうして二戦二敗の記録は樹立されたのである。
コメント (6)
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