殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

レジェンド・7

2016年03月13日 10時44分09秒 | みりこんぐらし

仕事に悩む若者に見受けられる共通点を話し

現実に実行可能な修正案を提示したものの

これっぽっちのことで悩みが解消されるなら

最初から悩んだりしないのも、また現実である。


だってあの子達は、誰が何を言っても

聞いてやしない。

話に出てくる悩める若者達と

特別な環境で特別に苦労している自分とは

全くの別物だと思っている。


目を輝かせて反応するのは

「じゃあ辞めたら?」の一言のみ。

結局、辞めたくてどうしようもないんだから

あれこれ言ったってしょうがないのだ。


彼らは苦しみの中で、自分なりに

たくさんのことをさんざん考えており

ありきたりなアドバイスや親の意見には

ちゃんと反論を用意してある。

「もう少し頑張ってみたら?」

「これ以上、何を頑張れとっ?」

「そのうち何か変わるかもしれないじゃない」

「そのうちって、いつっ?何かって、何っ?」

「みんな同じように悩みながらやってきたんだから」

「こんなにひどくなかったはずっ!」


しかし、この会話のテーマを

仕事でなく、亭主の浮気に置き換えても

なぜかやりとりが成立するのは

いささか興味深い部分ではある。


つまりそれは私の得意分野であり

この路線で考えると

彼らは仕事に悩んでいるわけではない。

仕事はとうに辞める気になっており

その面では決着がついている。

悩んでいるのは、その先だ。

彼らが本当に悩んでいる問題はただ一つ

退職後の親の態度である。


仕事を辞めたら、とりあえず家に居ることになる。

その際、待遇が悪いのは困る。

まず家で仕事の疲れをゆっくり癒し

それからじっくり次の仕事を探したい。

その間、親に小言を言われたり

どうするつもりかと毎日責められるのが

死ぬほど嫌なのだ。

会社にいる時は待遇にこだわり

それが原因で辞めたら、今度は家の待遇が心配になる‥

それが悩める若者の本当の悩みなのである。


親は、まさか自分の子供が

そんなことで悩んでいるとは夢にも思っていないし

悩める若者本人も、自分がそのことで

苦しんでいる自覚はない。

しかしその路線でコトを眺めると

納得がいくのはまぎれもない事実である。


最初に退職ありき。

その目的のため、悩める若者は

家での安全を確保すべく、懸命に根回しをしているのだ。


それにはまず、責任者をこしらえて

完璧な被害者になっておく必要がある。

大人から見れば浅知恵だが、本人は必死。

会社は、特別に悪くなければならない。

仕事は、特別にきつくなければならない。

周りの人は、特別に意地悪でなければならない。

日々会社の文句を訴えて、根回しを続ける。

今や、根回しのネタを探しに会社へ行ってるんだから

嫌なことは際限なく見つかり、ますます嫌になる。


親に言われて、私のような

わけわからんおばさんと会うのも根回しの一つに過ぎない。

わけわからんおばさんも、責任者の一人に計上するためだ。

「会えと言うから会ったのに

ますます傷ついた!どうしてくれる!」

待遇を良くするために

親の失策はぜひコレクションしておきたい。


そのために彼らは我慢して会ってくださるのだ。

でなければ、誰がわざわざよそのババアと

話なんかするものか。

ガキの打算なんざ、お見通しじゃ。


しかしこのガキの打算、裏を返せば

それだけ親が手強いということになる。

そもそも私の場合

親に頼まれて話を聞くことが多い。

こんな凡人にまで話を持ちかけるんだから

親はそれほどに心を痛めており

ワラにもすがりたい気持ちなのは一目瞭然だ。

だからワラとしては

年はイッてても親の保護が強い子供と

話をすることになるのは最初からわかっている。


ワラが見たところ

こういう子の親はたいてい真面目。

子供のお土産に

努力と書いた貯金箱を買いそうなタイプ。

そして、おしなべて口が立つ。

子供には太刀打ちできない。


自分が仕事を辞めるということは

彼らの親にとっては大災難のレベル。

どんなに嘆き悲しむことだろう。

そして毎日グズグズ言われるのは明らかだ。

それを説得してくつがえし

静かな環境を得るのは至難の技だと

悩める若者は誰よりも知っている。

難しいから悩むのだ。


彼らの心はすでに退職しており

会社へ行っているのは抜け殻‥

抜け殻が仕事をするんだから、ロクなことはない‥

仕事の悩みという表向きの事情を装いつつ

家に居場所を探している‥

この逆説が成立するのではないか。

私はそう感じている。

(続く)
コメント (4)
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