読売新聞の『人生案内』は、身の上相談のコーナーである。
盆でも正月でも、よほどのことが無い限り毎日掲載され
弁護士、精神科医、作家、評論家など
悩みの解決にふさわしい立場の著名人が選ばれて、回答している。
幸せの形は似通っているが、不幸の形はさまざま…と言うけど
その不幸を自ら創る人々の何と多いことか。
このブログのコメント欄でも、時々話題になる。
去る5月20日の内容は、私を非常に喜ばせた。
相談者は、60代後半の未亡人である。
《最近、妻のいる男性と深い関係になってしまった。
相手はとても優しい人で、彼に誘われて関係を持ち、初めて女の喜びを知った。
彼の奥様は知らないと思う。
死んだ夫は酒を飲むと暴力を振るう人だったが
子供達はとても素直に育った。
遺族年金と自分の基礎年金とで、月に十数万もらっており
経済的には何一つ不自由してない。
男性の家庭を壊そうとは少しも思ってないが、今の幸せを失いたくない。
この先交際を続けてもいいものか、アドバイスをお願いします》
不倫従事者の言動パターンに完全にはまっている。
あまりにも教科書どおりのところが、かえって興味深い。
①責任転嫁
“深い関係になってしまった”
悪いと知ってはいるけど不可抗力だったと、最初にさりげなく強調。
“誘われて”
年齢が高くなるほど、この4文字は重要になる。
決して自分が原因ではなく、向こうが悪いと言いたい。
さらに、自分は男に関心を持たれ、誘ってもらえる品質だと知らせる
ダブルの効果を狙う。
②美化
“女の喜びを知った”
モテた経験の無い女が好むセリフのひとつ。
心身をつつき回してもらって、嬉しいばっかりなんです…とは言いたくない。
気取って口にしたい、夢の言葉である。
③錯覚
“彼は優しい人”
不倫相手ってのは、優しく見えると相場は決まっている。
せっかく無料の女を見つけたのだ…最初のうちは、優しくしないはずがない。
妻を平気で地獄に突き落とす男が、本当に優しいわけがないのだ。
④正当化
“死んだ夫は酒を飲むと暴力を振るう人だった”
“子供達はとても素直に育った”
無関係の死んだ亭主を引っ張り出して同情を引き、今の行為を
「無理もない」という位置に寄り切りたい。
こんなにひどい亭主でも、ちゃんと子供を育てて頑張ったんです…
だから、少々はいいでしょ?と主張したい。
⑤装飾
“経済的には、何一つ不自由してない”
お金や生活が目当てではなく、愛情なのだと言いたい。
貧しくも淋しくもない、満たされた状態で開始したと言っておかないと
自分がミジメである。
が、たかだか月に十数万で、何一つ不自由してないと言い切れるのが
他人に違和感を与えることには気づいてない。
わざわざ“何一つ”とまで強がらなくていいものを
ついそう言って、軽薄な行動に重みをつけたくなる。
⑥傲慢
“男性の家庭を壊そうとは少しも思ってない”
おパンツを脱いだ時点で、すでに壊しているのを絶対に認めない。
そしてまた、男にとって自分は
家庭崩壊と引き換える価値のある存在と思い込んでいる。
…いちいち言葉尻をとらえて、いちゃもんをつけるつもりは無いし
こんな感情のひとつひとつは
多かれ少なかれ、誰でも持っているものでもある。
それをセットであらわにしてしまうのが、不倫従事者の特徴といえよう。
「ごもっともです、どうぞこのままお続けください」
と言ってもらえるのをワクワクして待つ、あさましい期待が
相談文の中にゴロゴロしている。
悩むフリをしているが、本当はしゃべりたくて仕方がない。
悩んでいる、相談があると言わないと、誰も聞いてくれないからだ。
うっかり周囲にしゃべると「いい年をして」と非難されそうなので
新聞で不特定多数の人間の目に触れさせたい。
自分のケースだけは特別に許され
共感してもらえるのではないかと思ってしまうのだ。
この記事を「これ、私なの」と、彼氏に見せたら
いくら親切に女の喜びを教えてくれる優しい男と言えど
尻をからげて、飛んで逃げるだろう。
今回の回答者は、世慣れた女性評論家。
適任である。
《岐路では、できるだけ傷つく人の少ない道を選ぶ方がよいと私は思う。
しかし前半生から、女の喜びを手放したくない気持ちもよくわかる。
あなたの極楽は、相手の妻の地獄。
その上に乗って進むとしたら、人に相談しないで
トラブルを一身に引き受けて耐える覚悟を固めるべきでしょう。
人生が長くなって、高齢期の愛と性はこれから顕在化する予感を持った》
回答を読んでも、相談者には理解できないだろう。
不倫者特有のプラス思考で、都合のいい箇所だけ頭に入る。
社交辞令で前半生をねぎらわれたのと
「わかる」と言ってもらえたのだけを共感と受け止め、喜ぶであろう。
相手の妻を踏み台に、快楽を得る厚かましさをたしなめる所や
そんなこと、人に相談すんなと言われている所は素通り。
最後の一行で“高齢期の愛と性”と
軽く片付けられていることにも、生涯気づきはしない。
本人だけが知らない。
これが不倫者なのである。
憐れでうら哀しい。
彼女には、安らかな晩年を過ごしていただきたいものだが
もう無理かもしれない。
盆でも正月でも、よほどのことが無い限り毎日掲載され
弁護士、精神科医、作家、評論家など
悩みの解決にふさわしい立場の著名人が選ばれて、回答している。
幸せの形は似通っているが、不幸の形はさまざま…と言うけど
その不幸を自ら創る人々の何と多いことか。
このブログのコメント欄でも、時々話題になる。
去る5月20日の内容は、私を非常に喜ばせた。
相談者は、60代後半の未亡人である。
《最近、妻のいる男性と深い関係になってしまった。
相手はとても優しい人で、彼に誘われて関係を持ち、初めて女の喜びを知った。
彼の奥様は知らないと思う。
死んだ夫は酒を飲むと暴力を振るう人だったが
子供達はとても素直に育った。
遺族年金と自分の基礎年金とで、月に十数万もらっており
経済的には何一つ不自由してない。
男性の家庭を壊そうとは少しも思ってないが、今の幸せを失いたくない。
この先交際を続けてもいいものか、アドバイスをお願いします》
不倫従事者の言動パターンに完全にはまっている。
あまりにも教科書どおりのところが、かえって興味深い。
①責任転嫁
“深い関係になってしまった”
悪いと知ってはいるけど不可抗力だったと、最初にさりげなく強調。
“誘われて”
年齢が高くなるほど、この4文字は重要になる。
決して自分が原因ではなく、向こうが悪いと言いたい。
さらに、自分は男に関心を持たれ、誘ってもらえる品質だと知らせる
ダブルの効果を狙う。
②美化
“女の喜びを知った”
モテた経験の無い女が好むセリフのひとつ。
心身をつつき回してもらって、嬉しいばっかりなんです…とは言いたくない。
気取って口にしたい、夢の言葉である。
③錯覚
“彼は優しい人”
不倫相手ってのは、優しく見えると相場は決まっている。
せっかく無料の女を見つけたのだ…最初のうちは、優しくしないはずがない。
妻を平気で地獄に突き落とす男が、本当に優しいわけがないのだ。
④正当化
“死んだ夫は酒を飲むと暴力を振るう人だった”
“子供達はとても素直に育った”
無関係の死んだ亭主を引っ張り出して同情を引き、今の行為を
「無理もない」という位置に寄り切りたい。
こんなにひどい亭主でも、ちゃんと子供を育てて頑張ったんです…
だから、少々はいいでしょ?と主張したい。
⑤装飾
“経済的には、何一つ不自由してない”
お金や生活が目当てではなく、愛情なのだと言いたい。
貧しくも淋しくもない、満たされた状態で開始したと言っておかないと
自分がミジメである。
が、たかだか月に十数万で、何一つ不自由してないと言い切れるのが
他人に違和感を与えることには気づいてない。
わざわざ“何一つ”とまで強がらなくていいものを
ついそう言って、軽薄な行動に重みをつけたくなる。
⑥傲慢
“男性の家庭を壊そうとは少しも思ってない”
おパンツを脱いだ時点で、すでに壊しているのを絶対に認めない。
そしてまた、男にとって自分は
家庭崩壊と引き換える価値のある存在と思い込んでいる。
…いちいち言葉尻をとらえて、いちゃもんをつけるつもりは無いし
こんな感情のひとつひとつは
多かれ少なかれ、誰でも持っているものでもある。
それをセットであらわにしてしまうのが、不倫従事者の特徴といえよう。
「ごもっともです、どうぞこのままお続けください」
と言ってもらえるのをワクワクして待つ、あさましい期待が
相談文の中にゴロゴロしている。
悩むフリをしているが、本当はしゃべりたくて仕方がない。
悩んでいる、相談があると言わないと、誰も聞いてくれないからだ。
うっかり周囲にしゃべると「いい年をして」と非難されそうなので
新聞で不特定多数の人間の目に触れさせたい。
自分のケースだけは特別に許され
共感してもらえるのではないかと思ってしまうのだ。
この記事を「これ、私なの」と、彼氏に見せたら
いくら親切に女の喜びを教えてくれる優しい男と言えど
尻をからげて、飛んで逃げるだろう。
今回の回答者は、世慣れた女性評論家。
適任である。
《岐路では、できるだけ傷つく人の少ない道を選ぶ方がよいと私は思う。
しかし前半生から、女の喜びを手放したくない気持ちもよくわかる。
あなたの極楽は、相手の妻の地獄。
その上に乗って進むとしたら、人に相談しないで
トラブルを一身に引き受けて耐える覚悟を固めるべきでしょう。
人生が長くなって、高齢期の愛と性はこれから顕在化する予感を持った》
回答を読んでも、相談者には理解できないだろう。
不倫者特有のプラス思考で、都合のいい箇所だけ頭に入る。
社交辞令で前半生をねぎらわれたのと
「わかる」と言ってもらえたのだけを共感と受け止め、喜ぶであろう。
相手の妻を踏み台に、快楽を得る厚かましさをたしなめる所や
そんなこと、人に相談すんなと言われている所は素通り。
最後の一行で“高齢期の愛と性”と
軽く片付けられていることにも、生涯気づきはしない。
本人だけが知らない。
これが不倫者なのである。
憐れでうら哀しい。
彼女には、安らかな晩年を過ごしていただきたいものだが
もう無理かもしれない。