電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

モーツァルト「弦楽五重奏曲第4番ト短調」を聴く

2013年06月30日 06時38分59秒 | -室内楽
通勤の音楽に、再びモーツァルトの弦楽五重奏曲を聴いておりました。今回は、第4番ト短調、K.516です。自宅でゆっくりと耳を傾けると、あらためて「なんてすてきな音楽なのだろう」と感嘆します。

この曲は、第3番ハ長調と並行して作曲され、完成したのは約一ヶ月後の1787年5月16日だそうです。モーツァルトは31歳。歌劇「フィガロの結婚」を初演しプラハでの大ヒットを経て、父親レオポルトの死と歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の作曲の時期です。交響曲の第40番と41番の関係と同様に、第3番ハ長調とは対照的な「モーツァルトのト短調」の曲。

第1楽章:アレグロ、ト短調、4分の4拍子。第1主題の不安と憂いと焦燥感などの表情が、実に印象的な始まりです。暗い夜に、シャーロック・ホームズとワトスンが馬車に揺られて急行するようなドラマの一場面に、BGMとしてピッタンコの曲想かも。
第2楽章:メヌエット、アレグレット、ト短調、4分の3拍子。メヌエットと緩徐楽章の配列順序に「おや?」と思いますが、曲想からみて、やっぱり第1楽章とこの第2楽章を続けたほうが良いのかもしれません。ト短調・急~ト短調・緩~変ホ長調~ト短調です。
第3楽章:アダージョ・マ・ノン・トロッポ、変ホ長調、4分の4拍子。五人とも弱音器をつけているのでしょうか、優しい緩徐楽章です。途中のひそやかな転調も、実に効果的。好きですねえ、こういう音楽。
第4楽章:アダージョ~アレグロ。ト短調、4分の3拍子の長い序奏のあと、ト長調、8分の6拍子のロンドへ。曲中、テンポを変え、音域を変え、中心となる主題がずっと鳴っているように感じます。

大胆な転調、細やかで鋭いリズム。主題は心にするりと入ってくるような印象的なもので、悲哀を感じさせます。多感な若い時代ならば、思わず背後に何か深刻なドラマを想像してしまいますが、悲哀の深刻さだけを誇張すると、モーツァルトの音楽が別なものに変わってしまいます。明と暗、喜びと悲哀が入り混じった色調で、バランスを取って奏でられるのがモーツァルトの音楽だろうと思いますが、この曲はバランスが悲哀の方に大きく振れた曲なのでしょう。

演奏は、スメタナ四重奏団にヨセフ・スークがヴィオラ奏者として加わっています。全曲の録音の中では、第3番とともに一番最初に録音されており、1976年の6月に、プラハのスプラフォン・スタジオで収録されたPCM/デジタル録音です。DENON のデジタル録音の中でも、比較的早い方に属し、スプラフォン社との共同制作になっています。制作担当はエドゥアルト・ヘルツォーク、録音担当はスタニスラフ・シーコラとクレジットされており、この頃はまだヨーロッパ録音もよちよち歩きの時期だったのかもしれません。LP:OZ-7065、CD:COCO-70430 です。

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高田郁『夏天の虹~みをつくし料理帖(7)』を読む

2013年06月29日 06時06分54秒 | 読書
これまで、境遇に負けず、忍ぶ恋をあたためながら成長してきた澪に、はじめて降りかかる失意と悔恨、悲しみの涙の第7巻。高田郁著『夏天の虹~みをつくし料理帖(7)』です。



第1話:「冬の雲雀~滋味重湯」。武家奉公から小松原さまこと小野寺数馬に嫁ぐ道を選ばぬことに決めた澪は、小松原さまに直接に断らなければと思い詰めます。出会いの場でもあったお稲荷さんの前で、思いを打ち明けますが、小松原さまはすべてを自分の胸におさめて、自分の胸におさめて、自分が一切の責任を引き受けることにします。うーむ、武士の面子もあるだろうし、それしかないのかなあ。

第2話:「忘れ貝~牡蠣の宝船」。言ってみれば婚約解消のあとの始末の気の重さ、でしょうか。ふと振り返って見れば、料理番付に載るような新しい献立を考えていない。ずいぶん悩みますが、お客さんの喜ぶ姿を見るのが嬉しく、考え出したのが牡蠣の宝船というものです。具体的には、薄手の昆布で宝船を作り、この上に牡蠣の剥き身をのせて酒を振りかけて七輪であぶります。うーむ、このメニューなら私でも食べたいぞ。小松原さまの急な結婚に、澪の胸はいたみますが。

第3話:「一陽来復~鯛の福探し」。こんどは、澪さんの嗅覚が麻痺してしまいます。おそらく精神的なものか、という設定のようです。味覚障害が亜鉛との関連で起こるのは知っていますが、さんざん牡蠣を食べたばかりで亜鉛不足は考えにくい。それで嗅覚障害としたのでしょうか。吉原の料理人・又次が手伝ってくれることになり、「つる家」はのれんを下さずにすみました。
ところで、鯛の福探しというのは、若い時に鶴岡在住の頃に、妻と一度だけやったことがあります。庄内の冬の名物、甘鯛。高かったけれど、実に美味でした。鯛には九種の宝の骨があって云々というのは、魚屋さんで聞いた台詞だったか、妻が教えてくれたのだったか、私には懐かしい記憶です。

第4話:「夏天の虹~哀し柚べし」。二か月という期限で助っ人に来てくれていた又次でしたが、ふきに料理の手ほどきをしてくれていました。ところが、又次が帰ったその夜に吉原で大火があり、吉原が炎上してしまいます。あさひ太夫(野江)を救い出したものの、又次は大火傷を負い、死んでしまいます。「つる家」に戻り、又次が作って軒下に下げてくれていた柚べしを食べたとき、澪は嗅覚が戻っていることに気づきます。映画ならば、炎上する吉原の迫力と、故人を偲ぶ情感ある見事な場面の連続となったことでしょう。

既刊で残るはあと一冊、最新刊『残月』のみとなりました。

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サクランボの種の取り方~ヨーグルト用サクランボ・ソースを作る

2013年06月28日 06時04分48秒 | 料理住居衣服
サクランボを材料にしてお菓子やジャム等を作るとき、問題になるのが種の取り方です。サクランボは、実の大きさのわりに種がデカい。したがって、十分な量の果肉を集めるには、種取りの手間がけっこうたいへんです。誰かが良い工夫を考えているのではないかと思い、Google君にきいてみました。すると、おおよそ次のような方法があるのだそうな。

(1) プニュッと手でつぶして種を押し出す
(2) 割り箸でグイッと押し出す
(3) 爪楊枝二本を輪ゴムでくくり、種をくりぬく
(4) 市販の種取り器でガチャっと種をくりぬく

なるほど、用途によってそれぞれに長短があるようですが、少なくとも市販の種取り器というのはすぐに間に合いそうにありません。

完熟で黒っぽくなった早生種の紅さやかを、押しつぶし法と割り箸法で種を取りました。割り箸法のほうが、衣服が「流血の大惨事」になる危険が少ないと思います。



果肉を、電子レンジ用の耐熱容器に取ります。



半量程度の砂糖を加え、



電子レンジで2~3分間加熱しました。



アクを取り、電子レンジでさらに1分間加熱します。



ふきこぼれないように、さらに1分間ずつ加熱し、ヨーグルト用のサクランボ・ソースとしました。



蛍光灯下での撮影ですので、色の再現が悪くなっていますが、実際はきれいな赤紫色です。佐藤錦や高砂などの品種ではこの色はでませんで、完熟紅さやかやジャボレー種ならではの色です。味の方も、砂糖を加えて酸味と甘味のバランスが取れるようで、このような形で食べるのが美味しいようです。逆に、佐藤錦や紅秀峰などは、砂糖が入ると甘過ぎるように感じられ、生食が一番美味しいです。

もっと加熱濃縮すれば、サクランボ「紅さやか」のジャムができるわけですが、幸いにジャムはまだたくさん残っていますので、このへんで止めておきましょう。

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高田郁『心星ひとつ~みをつくし料理帖(6)』を読む

2013年06月27日 06時05分10秒 | 読書
このシリーズを読み始めて、ついに六巻まで来ました。角川ハルキ文庫の高田郁著『心星ひとつ~みをつくし料理帖』です。表現が類型的だとか何とか、文句を言いながらも、けっこうおもしろく読んでいます。

第1話:「青葉闇~じっくり生麩」。「つる家」の常連である坂村堂は、実は一流料亭「一柳」の店主・柳吾の息子だったのだそうな。麩は山形県東根市の名物であり、生麩も美味しく食べておりますが、本書では江戸っ子の評判がずいぶん悪く、製法もなにやら大層な秘密のようです。かの店主もずいぶん事大主義的な方のようで、息子と対立してしまうのも頷けます。
第2話:「天つ瑞風~賄い三方よし」。登龍楼も吉原の翁屋も、澪の料理のウデを利用しようと策謀をめぐらします。欲をかけば引っかかるのに、澪は引っかかりませんでした。かわりに野江と言葉を交わすことができました。
第3話:「時ならぬ花~お手軽割籠」。あまりにボヤが多いので、奉行所から命じられる前に、町年寄から時間制限付きで火気使用の自粛の通達が出てしまいます。飲食店にとっては死活問題ですが、どうにもなりません。そこで、知恵をしぼって考え出したのが、持ち帰りの弁当を売る商売。今ならば、さしずめお持ち帰りホカ弁といったところでしょうか。そんな時に、澪に弟子入り志願した武家の妻女は早帆といい、小松原さまに良く似た人でした。そして、早帆に連れられて行った屋敷は、御膳奉行・小野寺数馬のもので、母・里津から嫁入りの話を聞かされますが、澪は怖くなり、逃げ帰ってしまいます。
第4話:「心星ひとつ~あたり苧環(おだまき)」。せっかくの「三方よしの日」に、小野寺家の用人が現れて、澪を武家奉公にと言います。躾、作法、教養の他に武術も教えるとの言い分ですが、「つる家」の面々にはピンと来ません。小松原さまと呼んでいた人が実は小野寺さまで、ほうきの実の老女は母、早帆さまは妹だということが判明し、澪も皆も様々に思い悩みます。小松原さまが現れて、直接に澪にプロポーズ。

「俺の女房殿にならぬか」
「ともに生きるならば、下がり眉がよい」
「答えよ、下がり眉。俺の女房殿になるか」

かなり上から目線で強引ではありますね~。
ただし、澪が「はい」と返事をした後にも、

「どこぞの旗本の養女になってしまえば難しいが、それまでなら、お前次第で道を変えることは出来る」
「良いか、決して無理はするな」

などという台詞を残して立ち去ります。ハハーン、この話は壊れるんだな、と想像してしまいました。ああ、やっぱり!



表現がときに類型的という弱点はあっても、ストーリー展開はなかなか読ませてくれます。娘料理人が、次はどんな料理を考えるのかという期待と、想い人や女主人、幼馴染みの運命など様々な人間模様が気になって、思わず一気に読んでしまう時代小説です。

※数ヶ所、誤変換がありましたので、訂正しました。(2017/04/30)
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新しいサブノートパソコンThinkPadが届く

2013年06月26日 06時03分17秒 | コンピュータ
サクランボの収穫作業に追われた先の週末でしたが、実は新しいサブノートパソコンが届いておりました。Lenovo ThinkPad Edge E130 です。サブノートですので、到着したダンボール箱はぐっと小さく、外箱の中に内箱が入っておりました。



内容物は、本体と充電池、電源アダプター、簡単な説明用のリーフレットです。



IBM 時代から続く「ThinkPad」のロゴが懐かしい。なにせ、ThinkPad 220 以来ですので。現代の ThinkPad は、電源を入れると i の小さな点が赤く光るのですね。



キーボードの外観では、なんといってもトラックポイントが特徴的です。これ、ThinkPad220 にはありませんでした。



一応リーフレットに目を通し、電源を入れます。





某社に余計な情報を送らないように、カスタム・インストールをしました。設定が終わって、起動した時は、こんな感じです。





ログイン画面は、こんな感じ。パスワードを入れると、例のスタート画面(*1)です。





ワードプロセッサや表計算など、いわゆるオフィス・ソフトは導入されていませんので、とりあえず、いくつかフリーのツールを導入する予定。

(1) ブラウザ: Firefox, メーラー: Thunderbird
(2) オフィスソフト: LibreOffice
(3) テキストエディタ: SakuraEditor
(4) 言語: gawk 等
(5) 文書組版: TeX/LaTeX
(6) 各種ツール: nkf, sortf 等
(7) その他

Windows8 に慣れるのも目的の一つですが、コンピュータに求めるスタイルは全然変わっておりません(^o^;)>poripori

(*1):Windows8のユーザーインターフェース~「電網郊外散歩道」2013年6月

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山本八重と「魔笛」の夜の女王~大河ドラマ「八重の桜」を観る

2013年06月25日 06時03分50秒 | 映画TVドラマ
このところ、NHKの大河ドラマ「八重の桜」(*1)がおもしろいものですから、妻と二人で毎週欠かさず観ております。とくにこの度は、奥羽征討軍の進撃が急速なため、少年達からなる白虎二番隊まで出動命令が出ただけでなく、城下の藩士の家族も城に集まるように触れが回ります。で、これに応じた八重さんの姿がすごい!弟の三郎が戦死した際に着用していたものなのでしょうか、黒の長ランのような上着の下に、皮の手袋か何かを付け、びしっと襟を立てて、どこから見てもケネス・ブラナー監督の映画「魔笛」(*2)での、あのブラックレザーの夜の女王が登場するシーンと重なります(^o^)/
「仁~JIN」に出演した咲さん、じゃない、綾瀬はるかさんのイメージが、180度転換いたしました(^o^)/

さて、来週は白虎隊の悲劇や鶴ヶ城攻防戦の始まりなどが描かれるのでしょうか。目が離せません。

(*1):NHK大河ドラマ「八重の桜」公式サイト
(*2):映画「魔笛」を見る(1)(2)~「電網郊外散歩道」2007年9月


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サクランボ収穫作業が続く

2013年06月24日 06時00分32秒 | 週末農業・定年農業
連日の良いお天気で、露地栽培のサクランボの収穫作業も順調に進んでいます。例年、六月のはじめに梅雨の走りの雨が降り、中旬が梅雨の中休みの好天で、この時に一気に収穫作業を行い、下旬からの長雨時に備えて、雨避けテントを設営していました。今年は、春の寒さと二年続きのカラカラ天気で、収穫時期が数日間後ろにずれこんでいるようです。我が家では、20日に佐藤錦の収穫作業を開始、土曜日は雇人の皆さんの休みを取って、短期集中の体制を組んでいます。農協へは連日軽トラックで運搬していますが、出荷状況はまだ本格化していないようで、運んでくる人の数はまだあまり多くないようです。



出荷する佐藤錦とは別に、早生種の「紅さやか」や「ジャボレー」などの完熟果を使って、電子レンジでジャムやフルーツソースにできないか試してみたいとの要望があり、某所にごっそり提供することにしました。どんな結果になるか、ちょいと楽しみです。某所とは別に、私もひそかに試してみたいと思っています(^o^)/

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高田郁『小夜しぐれ~みをつくし料理帖(5)』を読む

2013年06月23日 06時05分54秒 | 読書
角川ハルキ文庫の人気シリーズ、高田郁著『小夜しぐれ~みをつくし料理帖』を読みました。シリーズ第五巻、だいぶ年上の小松原さまをひそかに慕いながら、幕府御典医の御曹司で誠実な町医者の源斉に思われるという想定は、著者が想定していると思われる女性読者には、思わずウットリものかもしれません。還暦を過ぎた中高年男性読者には、孫娘の幸福を願いつつハラハラするような心境になってしまいますが(^o^)/



第1話:「迷い蟹~浅蜊の御神酒蒸し」。「つる家」の主人・種市がひどい風邪をひき、ようやく治りかけたら、店に昔の悪妻が無心にやってきます。なぜ今頃?と思いますが、娘を失うに至った経緯が明らかになり、それは怒るのも当然となります。でも、それだけでは収まりませんで、何よりも小さな子供の姿が、復讐の念をやわらげたことが何よりでした。
第2話:「夢宵桜~菜の花尽くし」。伊勢屋久兵衛方で、源斉先生が倒れたとのこと。医者の不養生と言うよりも、要するに過労です。短い療養期間中、澪が料理を頼まれます。働きすぎて精根が尽きたときには、大根や昆布、コンニャクやレンコンなど「こん」が付くものが良いそうで、玉子のお粥を合わせて出しました。うーむ、栄養学的にはどうなのでしょうか。まさか、温めた牛乳というわけにもいかないでしょうし(^o^)/
伊勢屋さんとしても、娘の美緒のご縁を冷静に見定める良い機会になったようです。
そんな中にあって、澪は吉原の翁屋から、上客のために花見の料理を依頼されます。献立に悩みますが、やっぱり小松原さまの暗示をもとに、考えたのが菜の花料理でした。当時は油一升金一升の時代。まことに贅沢な献立、というわけです。
第3話:「小夜しぐれ~寿ぎ膳」。伊勢屋さんは、源斉先生の想い人は娘ではなく澪らしいと決断をした模様で、中番頭の爽助を婿に取れと言い出したらしく、美緒は「つる家」にプチ家出を図ります。しかし、狭い店にはかくまう余地もなく、坂村堂が引き受けることに。色々ありますが、源斉先生の意中の人は澪であることに気づき、美緒さんは爽助さんとの結婚を承諾します。これに対しての、

想う人とは違うけれど、ご縁で結ばれた相手と手を携えて生きていく

という芳の言葉は、なかなか味があります。
第4話:「嘉祥~ひとくち宝珠」。こんどは視点をガラリと変えて、小松原さまこと幕府の御膳奉行・小野寺数馬の悩みが描かれます。辛党なのに、公方様のために新しい菓子を考案しなければならなくなって、苦い日々を送ります。
猛女烈女の母・里津と妹・早帆、妹の亭主が旧友の駒沢弥三郎で、数馬が三十代まで独身を貫いた理由が、「猛獣使いは飽いた」からなのだそうな。なるほど、それでずっと年下で「ひそかに想いを寄せる」タイプの澪さんがかわいいのでしょう。好きな菓子は何かと問われて、「煎り豆です」と答えた澪の一言から、可愛い宝珠のような菓子が生まれます。
この章は、おそらく今後の波乱の展開を準備するものなのでしょう。

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モンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」を聴く

2013年06月22日 06時04分38秒 | -オペラ・声楽
クラシック音楽のCDは、もともとあまり売れるものではないでしょうが、このところとみに売れ行きが悪いのだとか。行きつけのCDショップの棚は見るも無残な状態です。
そんな中で、某トミオカで、EMIの999円シリーズが目にとまりました。すでにパブリック・ドメインになっていそうな音源も少なからず含まれていて、なるほどシリーズ全体としては利益が出る設定になっているのだなと感心しつつ、いくつか魅力的なタイトルを見つけました。アンドルー・パロット指揮タヴァナー・コンソート及び同合唱団等による、モンテヴェルディの「聖母マリアの夕べのミサ曲」全曲と、「倫理的・宗教的な森」抜粋の二枚組です。

「聖母マリアの夕べの祈り」は、高校生の頃の妙な記憶があります。1970年前後の頃だと思いますが、朝の「バロック音楽の楽しみ」ではじめてこの曲を聴き、出だしのグレゴリオ聖歌と次の「レスポンソリウム」に心をつかまれて学校に行きました。たまたま音楽部の先生が、今年の合唱コンクールは何の曲で出ようかな、と雑談していたのに対し、私が「バロック音楽なんてどうですか」などと知ったかぶりをしたのです。どういうわけか、その年は、従来の「水のいのち/心の四季」路線からガラリと転換し、モンテヴェルディだか何かを歌ったらしいです。そうしたら、その年のゲスト審査員に、皆川達夫さんが加わっていて、かえって専門的にチェックされてしまったのだとか。偶然とはいえ、こわいものです(^o^)/

さて、このCDでは、全曲は二枚の盤に分けて収録されていますので、通勤の音楽には取り替えなければならず、むしろ自宅でPCに取り込み、二枚目の冒頭に収録されている長大な「マニフィカト」も含めて連続して聴くことができるようにした方が良さそうです。
この曲にはいろいろなアプローチがあるようですが、パロット盤はグレゴリオ聖歌~合唱とオーケストラによる詩篇~人声のない器楽曲のソナタやコンチェルト等を順次配列して構成されています。いわば、ミサに近い形で、ストイックで敬虔な祈りの音楽と、作曲者の表現意欲が強く現れた曲とを組み合わせています。たぶん、長男がローマ教皇都庁付属神学校の奨学生として入学を許可されることを願ってヴァチカンに送付したが、反発を受けて拒絶されたというエピソードも、個人の表現意欲がドラマティックな形で前面に出すぎていて反発を受けたのだろうと想像してしまいます。

CDの型番は、TOCE-16282~3 で、2枚組1,980円となっています。1983年8月15~19日、ロンドンにて収録されたデジタル録音。
演奏者は、エマ・カークビー(Sop.)、ナイジェル・ロジャース(Ten.)、ロジャース・カヴィ=クランプ(Ten.)、デイヴィッド・トーマス(Bas.)、タヴァナー・コンソート、タヴァナー合唱団、タヴァナー・プレイヤーズ、指揮:アンドルー・パロット。

■アンドルー・パロット盤
I=74'53" II=30'44" total=105'37"

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プレッピーにコンバータで古典ブルーブラックのボトルインクを使ってみる

2013年06月21日 06時05分11秒 | 手帳文具書斎
ある雨の日、山形市内の某くまがい文具店に立ち寄り、プラチナ社のボトルインクを入手しました。もちろん、古典ブルーブラックです。帰宅してから、さっそく同社の超廉価万年筆プレッピーにコンバータを取り付け、インクを吸い上げました。

このプレッピーは、黒インク用のものだったのですが、尻軸のネジ部分に縦のヒビが入り、絆創膏をぐるぐる巻きにして補強した上に、水洗いしてブルーブラックのインク・カートリッジを使い出したという、文字通り実験用のペンです。今回、カートリッジのインクを全部使い切ったのを契機に、コンバータとボトルインクを試してみようと計画したものです。



コンバータをセットしたところ。うーむ、200円の万年筆に500円のコンバータか。私が REGAL の靴を履いているようなものかも(^o^)/



ボトルからインクを吸い上げます。きちんと満タンに入ります。



キャップをすると、コンバータの金色が光ります。



さっそく試し書きです。用紙は、無印良品の「滑らかな書き味のノートパッド」。



文字色はこんな感じです。書き味は意外に良好です。乾きがやや遅めなので、昔は吸い取り紙で余分のインクを吸い取って使っていたものでした。



それにしても、ひび割れ拡大防止のためにぐるぐる巻きにした絆創膏が、なんともかっこわるい。せめて、お洒落なマスキングテープにできなかったかと思いますが、なにぶんにもマスキングテープなるものを一個も持っていないもので(^o^;)>poripori

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高田郁『今朝の春~みをつくし料理帖(4)』を読む

2013年06月20日 06時04分39秒 | 読書
このところ熱心に読んでいるのが、高田郁著『今朝の春~みをつくし料理帖』です。角川書店ハルキ文庫の、どうやらずいぶん人気のあるらしいシリーズ中の第4巻。

第1話:「花嫁御寮~ははきぎ飯」。「三方よしの日」に、ふらりと小松原さまが現れますが、長居はせずに帰ってしまいます。ふと見ると忘れ物が。一方、伊勢屋の美貌の天然娘の美緒が澪に料理を習うことになったそうで、なんともはやな展開ですが、どこか憎めない。小松原さまの忘れ物は、医者の源斎のみたてでは、浮腫にきくほうき草の実なのだとか。食べられるようにするまでが大変です。小松原さまの驚くべき正体が、その母親の老女によって明かされます。また、美緒の大奥奉公の話もなくなります。

第2話:「友待つ雪~里の白雪」。「つる家」の常客の坂村堂と清右衛門が組んで、吉原の翁屋の「あさひ太夫」の正体を探る戯作を書く算段を始め、澪は気が気でありません。案の定、悪徳女衒の卯吉を又次が見たものだから、大騒ぎになります。あさひ太夫こと幼馴染の野江を守りたい一心で、澪は清右衛門と賭けをします。清右衛門は滝沢馬琴がモデルなのでしょうか、澪が天満一兆庵を再建し、四千両の金を稼ぎ出して、野江を見受けしてやれ、と言い出します。途方もないことですが、不可能ではないところが、すごい発想です。

第3話:「寒紅~ひょっとこ温寿司」。伊佐三とおりょうの夫婦の話です。願掛けを他人に話すとご利益がなくなる、なんて話は初めて聞きました。なにせ、この年齢まで願掛けなどしたことがないものですから(^o^;)>poripori

第4話:表題作「今朝の春~寒鰆の昆布締め」。聖観堂の料理番付で、登龍楼と「つる家」の決着をつけようと、鰆料理で競い合うことになります。献立と試作に悩む中で、お城の御膳奉行が横流しの罪で詰め腹を切らされたとか、公方様の召し上がる御前に短い髪の毛が入っていただけで首を刎ねられたとかいう会話に気を取られ、澪は指をざっくりと……痛そう。鰆の昆布締めで競い合いには敗れたけれど、小松原さまに優しい言葉をかけられて、煎り豆にほのぼのとした気持ちになります。

なかなかおもしろいシリーズで、大いに楽しんでおりますが、シリーズ四作目ともなりますと、少しずつ鼻につくところも出てきます。一言でいうと、表現が類型的、ワンパターンなのが気になります。例えば澪がつくる料理を初めて食べた種市の反応が、毎回ワンパターン(^o^)。テレビドラマなら「お約束」で良いのかもしれませんが、文章となるといささか鼻白む面も出てきてしまいます。まあ、純文学ではないのだから、あまり目くじら立てるな、という話なのですが。

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今年のサクランボの収穫は

2013年06月19日 06時02分19秒 | 週末農業・定年農業
ずっと寒い日が続いたと思ったら、こんどは記録破りのカラカラ天気が続き、サクランボも大きくなれずにいました。剪定が不足の我が家の果樹園の場合、とくに早生種の「紅さやか」が深刻で、農協から「S、M、Lの規格のうちM以上に相当するものしか出荷を受け付けない」というお達しが今年も早々と届き、これは人手を借りて収穫しても、人件費の分だけ赤字を出すだけと見切りをつけました。残念ですが、仕方がありません。

主力の「佐藤錦」の方は、不十分ながらなんとか剪定も行いましたので、それなりに収穫ができそうです。雨の合間を見計らって、20日から収穫を開始することにしました。親戚・知人に送る分は、甘味も増して価格もこなれてくる、来週の前半~中盤あたりになりそうですが、週末には知人がサクランボ狩りに来訪の予定もあります。しばらく忙しい日々が続きそうです。



写真は、収穫作業を前に、少しでも足場を良くしようと、日曜日に草刈りをしたあとの様子です。自宅裏の果樹園とは違い、こちらの園地は少し離れているので、なかなか思うように手が回りません。今頃はサクランボが大好きなムクドリなど野鳥の楽園になっていそうです(^o^;)>poripori

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高田郁『想い雲~みをつくし料理帖(3)』を読む

2013年06月18日 06時04分53秒 | 読書
第一作『八朔の雪』がおもしろかったので、引き続きシリーズで読んでいる高田郁著『みをつくし料理帖』の第三作『想い雲』です。著者のお名前は「いく」さんだとばかり思っていましたが、巻末の著者名のルビを拡大鏡で見たら「かおる」さんだそうで、これはもう少しで友人知人の前で恥をかくところでした(^o^)/

第1話:豊年星~「う」づくし。大阪天満一兆庵の元女将だった芳が澪のために手放したかんざしを、「つる家」の主人・種市が探し出してくれましたが、常客の坂村堂お抱えの料理人・富三が、行方不明の息子の消息を探し出してやると偽って、芳からかんざしを巻き上げてしまいます。どうもこの男が、江戸店の倒産と佐兵衛の失踪の元凶なのでは?。鮎飯とはうまそうですし、「う」づくしの献立というのも良さそうです。

第2話:「想い雲~ふっくら鱧の葛叩き」。わが妻は大のヘビ嫌いで、ドジョウもウナギもダメです。ましてや、こんなに獰猛な鱧(ハモ)などは、ごめんこうむりたいところでしょう。吉原の翁屋にて、難しい鱧料理の腕を見せて楼主・伝右衛門の信頼をかちえた澪は、俄の騒ぎに紛れて、今は「あさひ太夫」と名乗る幼馴染の野江との心のつながりを、貝殻に託します。

第3話:「花一輪からふわり菊花雪」。「つる家」のライバル登龍楼をクビになった悪徳板長の末松が、意図的に「つる家」に似せて、女料理人を看板に、真似っこ店を出します。女料理人のお色気で、一時は「つる家」も閑古鳥が鳴きますが、結局は味を知る客から「つる家」に戻り、真似した店は食中毒を出してつぶれてしまいます。ところが、風評被害は本物の「つる家」にも及び、誤解したお客がさっぱり入らない日々が続きます。信頼を失うのは一瞬、回復には時間がかかるということか。きっかけになったのは、「三方よしの日」には酒を出す、という企画と、翁屋から手伝いに来てくれた「野江命」の料理人の又次でした。

第4話:「初雁~こんがり焼き柿」。「つる家」で下足番をしている少女ふきには弟がいますが、借金のかたに奉公している登龍楼から飛び出して、姉の所へ訪ねてきます。姉は小さな弟を追い返してしまいますが、弟は奉公先に戻らず行方不明に。皆で探し回るものの手がかりがなく、ただ一人の肉親を思い、ふきは憔悴してしまいます。ようやく安否が知れた時の「つる家」のそれぞれの考え方が興味深い。もう一つ、第3章の最後、小松原さまのセリフが、今回もいいですねえ。

【追記】
2020(令和2)年1月に再読しました。こに さんのご指摘どおり、小松原様のセリフは第3話でした。訂正して感謝いたします。
ついでに、「駒繋ぎ」という植物はどんなものか、検索してみました。なんと、果樹園の草刈りで手抜きをすると、荒れ地から伸びてきてすぐにはびこってしまう、厄介なあれでした(^o^)/
物語上は名セリフですが、果樹園管理上は決して歓迎はできない植物ですね〜(^o^)/

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「Bun2」No.48を読む

2013年06月17日 06時04分35秒 | 手帳文具書斎
ステーショナリー・フリーマガジン「Bun2」は、だいぶ前からほぼ欠かさず愛読しておりますが、今号は「素晴らしき手書きの世界」を特集しております。特集の内容は次のとおり。

(1) 万年筆を使おう
(2) 最新筆記具情報
(3) 達人が教える手書きの極意
(4) 異色のノートに注目
(5) ペン栽とは何か

というものです。この中では、銀座伊東屋のペンケアルームの紹介が興味深かった。田舎ではとても無理ですが、大都市部ではこういった需要もビジネスチャンスにつながるのでしょう。
あとは、「達人が教える手書きの極意」で、ボールペンで美文字を書くコツが紹介されていました。具体的には、

(1) 線がきれいに出るボールペンを選ぶ。キャップ式の顔料ゲルインク・ボールペンがおすすめ。
(2) ソフトタイプの下敷きを使うこと。なければコピー用紙数枚を下に敷いても良い。
(3) 字を大きく書くこと。B5判の便箋ならば、9~10行程度のゆったり書けるものを使うこと。

だそうです。

また、「6月16日は父の日」「お父さんに文具を贈ろう」というのもありました。紹介されているのは、スティック型ハサミやスタンド付ルーペ、リムーバー付ステープラーなどのアイデア系文具でしたが、はたしてお父さん世代はこうした「ちょっと便利そう」系を喜ぶかどうか?もっとシンプルで品質の良い、例えば「和手ぬぐい風デザインのロールペンケース」のようなものを喜ぶのではなかろうか。もっとも、これはサンスター文具のPR記事でしたので、同社製品以外を紹介するのは難しかろうと思いますが、特集として取り上げる方法もあるかと思います
もう一つ、最新ステーショナリーの紹介の中に、ツバメノートのリングノートが初登場という記事がありました。サイズはB5とA5、種類は横罫、無地と方眼、価格は税別でB5:680円、A5:580円だそうです。用紙はツバメ中性フールスキャップ紙。これは、万年筆愛好者にはたいへん興味深いものです。
総じて、今号は注目記事がたくさんありました。。

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いつもの文具店で赤色ボールペンとシステム手帳リフィル等を購入する

2013年06月16日 06時03分22秒 | 手帳文具書斎
通勤路の途中にある、いつもの文具店に立ち寄り、赤色ボールペンとしてパワータンクの太字(1.0mm)を1本と、交換用リフィルSNP-10、そしてライフのノーブルノートと同じ紙を使った、システム手帳用のリフィル(ノーブルリフィル)方眼タイプを購入して来ました。赤色太字ボールペンは、赤字決算を大量に記入するためではなくて、校正訂正添削用です。壁面に貼ったまま訂正することも少なくないので、加圧式の PowerTank にしました。これは大正解。



また、L!FE のノーブルリフィルは、厚みがあり紙の繊維の目が詰まっていて、いかにも高圧縮という印象です。実際に万年筆で書いてみても滲まず裏抜けせず、実に良好な書き味です。方眼罫は使い慣れていないものの、各種のメモに使ってみようと思える、良好な紙質です。こういうリフィルがさりげなく置いてあり、しかもお値段も500円のところを446円と嬉しい設定です。オシャレな文具店はたくさんあるけれど、やっぱり足が向くお店です。



ついでに、「Bun2」の最新号をもらってきましたが、これはまた別途記事にいたします。

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