電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩。時々は実際に散歩を楽しみます。

平岩弓枝『小判商人~御宿かわせみ(33)』を読む

2012年11月27日 06時02分26秒 | -平岩弓技
文春文庫で、平岩弓枝著『御宿かわせみ』シリーズ第33巻、『小判商人』を読みました。麻太郎と源太郎のコンビが冒険をする話が中心で、新たな展開が始まったようです。

第1話:「稲荷橋の飴屋」。お吉の姉が少女を連れてきます。田舎丸出しですが、明るく善良な子らしく、千春とすぐに仲良くなります。そうです、子供には遊び相手が必要です。で、稲荷橋の飴屋の婆さんが、悪戯をした子供らを、怪我をするほど折檻したと聞き、東吾は源さんに婆さんの素性を調べさせます。

第2話:「青江屋の若旦那」。境遇の大きく異なる育ち方をした兄弟が、互いに歩んできた道を歩むのが良い、と納得させることを狙った話なのでしょう。良い話ではあるけれど、あまり印象に残りにくい展開のように思います。

第3話:「明石玉のかんざし」。こちらも境遇がらみです。珊瑚と明石玉とはまた因縁めいた組み合わせです。もっとも、こういう因縁を考えつくところが、作者の特徴ではあるのですが(^o^)/
私も珊瑚のネクタイピンを亡き義母より頂戴しておりますが、もったいなくて使わずにしまいこんでおりました。これからネクタイをする機会は減っていくでしょうから、今のうちに使っておこうか、などと思ってしまいました(^o^)/

第4話:「手妻師千糸太夫」。手妻というのは、今で言えば手品あるいは奇術というところでしょうか。例によって、神林麻太郎と畝源太郎の二人が、盛り場で見世物小屋に入り、高座で出刃包丁を振り回した男を取り押さえます。お礼にと芸を見せてくれた手妻師の千糸太夫というのが、実は若い男を恋人に持つ老女で、というあたりが作者の真骨頂でしょう(^o^)/

第5話:「文三の恋人」。大風の後に庭の手入れを頼んだ植木屋の弟子は、相当に見込まれたのでしょう、三十歳まで妻帯禁止だといいます。そりゃ無茶な!ニチボー貝塚の選手の「恋愛禁止」より無茶ではないですか(^o^)/

第6話:「小判商人」。麻太郎と源太郎のコンビがよく行く高山仙蔵という人は、幕府の勘定奉行に仕え、外国通貨の知識にかけては当代一という実力者なのだとか。今で言えば、どこかの省庁の実力派官僚といったところでしょうか。そば屋の長助の母親が隠居所にしている部屋の垣根の向こうに質屋があり、そこから出た物の中から御禁制のメキシコ・ドルラルの偽造貨幣が見つかります。
金と銀の交換比率が国際相場とかけ離れていることから、日本の金が流出している苦しい時期に、偽造貨幣まで出回っては大変なことになります。捜索の網の内側で、犯人一味にとらえられた高山仙蔵と麻太郎、源太郎の師弟。東吾の登場は、作者の思い描く「強く賢く優しい」男性の理想像なのでしょうか。

第7話:「初卯まいりの日」。招き猫の絵馬ですか。我が家のアホ猫の写真なら、いつでも絵馬用に提供いたしますが、モデルとしてはちょいと不向きでしょうねぇ(^o^)/



シリーズ第33作、調べてみたら、幕末編としてはあと一作を残すばかりとなってしまいました。

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平岩弓枝『御宿かわせみ31・江戸の精霊流し』を読む

2012年10月23日 06時03分31秒 | -平岩弓技
二年ぶりの平岩弓枝、しかも、六年ぶりの『御宿かわせみ』シリーズです。文春文庫で、第31巻『江戸の精霊流し』を読みました。例によって、あまり真面目でない感想です(^o^;)>poripori

第1話:「夜鷹そばや五郎八」。夜鷹の元締と公儀直参の武士との接点に、東吾は頭を悩ませますが、兄・通之進はさすがです。「東吾は夜鷹の元締が内々で金貸業をしているのを知らないのか」。なるほど、そこに接点があったわけですか。
第2話:「野老沢の肝っ玉おっ母あ」。さすがにお石の母親というところですが、異母姉おてるとお石とをここまで対照的に描く作者の感覚は、素質というか「生まれ決定論」で、ずいぶんな決め付けを感じてしまいます。このあたりが、当方が作者への違和感を感じてしまうところです。
第3話:「昼顔の咲く家」。「唐なすび」あるいは「赤茄子」というのは、もしかしたらトマトのことでしょうか。高山仙蔵氏は、小説の上ではヘボン夫人よりも前に(*1)トマトも栽培していたわけで、疑われないで良かった良かった(^o^)/
第4話:表題作「江戸の精霊流し」。大水で、親も家も、墓まで流された娘は、よく働き「かわせみ」の人々にも気に入られますが、情夫との腐れ縁を切ることができません。印象的な佳編です。
第5話:「亥の子まつり」。「狐の手ぶくろ」という植物は、もしかしたらジギタリス(*2)のことでしょうか。先妻の子と自分の息子と、兄弟の不仲の話でなくて幸いでした。
第6話:「北前船から来た男」。摩利支天だの恵比須講だの、著者はこういう信心事にやけに詳しいようで、当方はチンプンカンプンです。麻太郎、源太郎、花世の三人が探索をする姿は、なかなか絵になるのかも。
第7話:「猫絵師勝太郎」。長寿庵の長助の家猫が六匹の仔猫を産んで、あっちこっちにもらわれていきます。お江戸では、猫の七福神の浮世絵が流行っていました。そんなところへ、るいにつきまとうストーカー事件が発生、猫を写生する絵師も登場します。狩野派の枠に収まりきれず、猫の絵で自分らしさを出そうとします。うーむ、できることなら、我が家のアホ猫も浮世絵に描いてほしいものです(^o^)/

第8話:「梨の花の咲く頃」。なるほど、梨の花の咲く頃とはそういう象徴だったのですか。それにしても、本書一冊でいったい何人死んだのだろうと、いささか不穏当な感想を持ちました。

(*1):橘みのり『トマトが野菜になった日』を読む~「電網郊外散歩道」2012年5月
(*2):ジギタリス~Wikipediaによる説明

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平岩弓枝『はやぶさ新八御用帳』第10巻「幽霊屋敷の女」を読む

2010年09月26日 06時04分13秒 | -平岩弓技
講談社文庫で、平岩弓枝著『はやぶさ新八御用帳』シリーズ第10巻「幽霊屋敷の女」を読みました。これで、「御用帳」シリーズ既刊の文庫は全部読み終えたことになるのでしょうか。著者の持ち味である安定感、言い換えるとマンネリズムを感じさせない手腕が、いかにも老練です。

第1話:「江戸の盆踊り」。当方の若い頃、故郷に帰って盆踊りに参加すると、なぜか切ない気分になったりしたものでした。南町奉行・根岸肥前守も、きっと佐渡奉行時代の、昔を思い出したかったのでしょう。
第2話:「郁江の危機」。危ういところでした。郁江さんがそんな気分になったのは、新八氏にも責任があるのでは。隙間風とはそういうことではないのかい。でも、小さな仏像が夫婦の隙間をうめてくれたようで、なによりでした。
第3話:「大口屋の三姉妹」。うーん、呆れ果てたる三姉妹。この姉妹と比べたら、うちの娘たちのほうがはるかに真っ当、健康的です(^o^)/ ・・・って、比べるもんじゃないけれど(^o^;)>poripori
第4話:表題作「幽霊屋敷の女」。幽霊など出ようもない屋敷に幽霊話が出たのですから、きっと裏には何かある、というお鯉さんの推理が当たっていましたね。
第5話:「江戸の狼」。狼と犬の混血種で、頭がよく勇敢とくれば、なにやら「白い牙」を思い出しますが、こちらは江戸の物語です。
第6話:「小町踊り」。お鯉さんがいないと、お奉行様もご機嫌うるわしくないようです。根岸肥前守が愛されているのは、お鯉さんの容姿容貌ではなさそうで、何事にもそつがない家政の才と、控えめながらきらりと光る聡明さなのかな、と思います。

幽霊と言えば、小学生の頃、幽霊が怖かった時期がありました。田舎の農家で、昔は便所が外にありましたので、夜は実に怖かったものです。で、真剣に考えました。幽霊が直接に手を下して人を死なせた例はないようだ。たいていは、恐怖のあまり「自滅」している。すると、幽霊の本当の怖さは、自分の恐怖心の中にあるのではないか。そう自分に言い聞かせて用を足しました。毎日のことですから、そのうち慣れっこになり、以後、幽霊が怖いとは思わなくなってしまいました。良かったのか悪かったのか(^o^)/
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平岩弓枝『はやぶさ新八御用帳』第9巻「王子稲荷の女」を読む

2010年09月24日 06時01分57秒 | -平岩弓技
講談社文庫で、平岩弓枝著『はやぶさ新八御用帳』シリーズ第9巻、「王子稲荷の女」を読みました。四年前に一度読んでいたのですが、地球に帰還した「はやぶさ」のニュースに、「そういえば『はやぶさ新八』シリーズが途中だったな」と思い出した、というのはナイショです(^o^)/
読んでいるうちに、当時の印象を漠然と思い出しました。

第1話:表題作「王子稲荷の女」です。お稲荷さんと狐火という背景が怪しさを増幅していますが、真相はちょいと芝居がかっております。
第2話:「寒紅梅」。落合清四郎の姉君の烈女ぶりがきわだちますが、なにも殺さなくっても、とやっぱり思いましたですよ(^o^;)。四年前にこのシリーズから離れたきっかけが、たしかこのお話でした(*)。
第3話:「里神楽の殺人」。里神楽の役者が殺された事件の解決ですが、お奉行・根岸肥前守のほうが役者が数段上でした。
第4話:「柳と蛙」。小野道風が出てくるほど風流なお話ではありません。
第5話:「夕顔観音堂」。川舟で尼さんが何度も往復していれば、もっと巷の噂になりそうなものですけれど。
第6話:「あやかし舟」。街宣車みたいな「あやかし舟」ネタは、佐伯泰英『居眠り磐音江戸双紙』シリーズでも使っていました。
第7話:「虫売りの男」。同じ境遇で育てられた兄弟がこんなに違うとは、ちょいと信じられない話です。

(*):平岩弓枝さんの剛腕~「電網郊外散歩道」2009年8月
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平岩弓枝『はやぶさ新八御用帳』第8巻「春怨 根津権現」を読む

2010年09月21日 06時02分33秒 | -平岩弓技
ずいぶん久しぶりに、平岩弓枝著『はやぶさ新八御用帳』第8巻「春怨 根津権現」を読みました。今から四年前、このシリーズを読んでいた頃からみると、我が家の家族の状況は大きく様変わりしておりますが、はやぶさ新八氏はまったく変わっておりません(^o^)/
せっかくのお話ですので、ネタバレしない程度にぼかしてコメントすることといたしましょう。

第1話:「聖天宮の殺人」。婿養子の持参金を期待するなど、まったくしょうもない旗本家です。
第2話:「梅屋敷の女」。心優しい兄は、武家社会で生きるのは難しいようで、結局は出家ですか。
第3話は表題作「春怨 根津権現」。鰻と梅干しの食べ合わせと毒殺未遂では、話がだいぶ違います。「事情は事情、罪は罪」とのことですが、裁くのはまた別でしょうに。本書での出家は二人目。
第4話:「世間の噂」。新米同心の調べにお奉行殿は納得せず、別途、裏付け捜査を命じます。真相はまるで違っていました。新米同心さん、クサらないといいけれど(^o^)/
第5話:「牛天神の女」。お鯉さんに頼まれた筆と料紙を買い忘れた新八氏のうっかりに、当方も思わず心当たりがありまする(^o^)/
第6話:「秋風の門」。神谷鹿之助とともに狼藉者から助けた老人は、とっさのことで嘘の名前は思いつかなかったのでしょう。牛久藩の内紛は、結局は双子の弟の出家で決着。出家三人目です。
第7話:「老武士」。紫組などと称する未熟な若侍の一団は、江戸の愚連隊といったところでしょうか。武器を手にした阿呆は、いつの世も困った存在です。



しかし、一冊の文庫本の中で出家率43%というのは、ちょいと高すぎるのではないでしょうかね~どうなんでしょ(^o^)/
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平岩弓枝さんの剛腕

2009年08月10日 05時40分38秒 | -平岩弓技
『御宿かわせみ』シリーズの作者、平岩弓枝さんの作品を、前回の単身赴任の頃に読み始め、たまたま同じペースで読んでいたブログ仲間の方と感想を交換しあいながら、30巻も続く物語を読んでいました。ほかにも、田沼意次を優れた政治家として描いた作品など、異色の時代小説も面白く読みました。ところが、ある時期に、パタッと読まなくなってしまいましたが、その原因は、今になって考えるとたいへん示唆に富むものです。
たしか、『はやぶさ新八御用帳』のシリーズだったと思うのですが、登場人物の誰かの姉が気性の強い大女という想定でした。ところが、あまり活躍しないうちに、無惨にも惨殺されてしまうのでした。ちょいと美人で可愛い女性はずっと活躍するけれど、そうでない人はあっさり殺してしまうというのは、あんまり可哀想ではないか、と少々ムッとしたというか、義憤にかられたというか(^o^)/
最近、『新御宿かわせみ』シリーズを購入し、はじめのほうをぱらぱらとめくってみたところ、驚き呆れてしまいました。幕府の崩壊と明治維新のどさくさで、主人公だった東吾は行方不明、七重と小太郎と源右衛門が賊によって惨殺され、畝源三郎は探索中に暗殺されている、という想定です。
なんということでしょう。長く続くシリーズの結末に困った作者は、主要な登場人物を一気に殺してしまいました!うーむ。さすがは戦争を経験し、生死を越えた激動の経験をした世代です。女性作家だから優しく繊細とばかりは言えません。作品の想定も、実はやっぱり剛腕でした(^o^)/
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平岩弓枝『道長の冒険~平安妖異伝』を読む

2006年10月11日 20時00分03秒 | -平岩弓技
東京駅ブックガーデンで購入し、ホテルで読んだ本です。

冬と暗黒の国・根の国に捕えられた少年楽士・真比呂を救うため、トラネコの化身である寅麿とともに、藤原道長が旅をします。この物語の下敷きは、日本霊異記か聊斎志異か。いやいや、実はモーツァルトの歌劇「魔笛」ですね。
藤原道長が王子タミーノ、不思議な力を持つ笛「小水龍」が魔笛に相当し、トラネコ寅麿がパパゲーノ、白猫の紅眼児がパパゲーナ、真比呂の姉の無明王がパミーナ、復讐を誓う夜の女神は、もちろん夜の女王という具合です。
ただし、道長は既婚者で二人の妻を持っており、最後の最後に道長を慕う心を持った無明王と紅眼児の犠牲によって邪神は滅びます。

『平安妖異伝』という題名の前作があるようですが、まだ見つけておりませんので、真比呂クンってだれだ?と少々はてなの部分もあります。『御宿かわせみ』シリーズの著者の作品とは思えないご都合主義の展開はまるでおとぎ話のようですが、実は中公文庫の『南総里見八犬伝』や学研M文庫の『椿説弓張月』のような自由な縮訳古典ものを持っている平岩弓枝さんの世界の一つなのでしょう。

写真は黄泉の国の入り口じゃなくて、甥の結婚式の会場となったホテル。最近の若い人は、ずいぶん贅沢なのですね。正直、うらやましさ半分、もったいなさ半分。
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平岩弓枝『はやぶさ新八御用帳』(第7巻)「寒椿の寺」を読む

2006年08月19日 21時53分58秒 | -平岩弓技
ここしばらく、寝る前に平岩弓枝さんの『はやぶさ新八御用帳』(第7巻)「寒椿の寺」を読んでいました。秋から冬にかけてのお話で、季節感はややずれていますが、順番ですから仕方がありません。せめて、写真だけでも涼し~いものを・・・

第1話「吉原大門の殺人」、越前大野藩土井甲斐守の家臣の若侍が、妓楼「玉屋」の小ゆきに執心で、無理心中を図ります。
第2話「出刃打ち花蝶」、江戸を離れると危難にあうというジンクスを持つ新八郎、今度は上州で火難に遭遇します。土蔵の二階で下から火が来たら、普通はアウトですね。
第3話、表題作「寒椿の寺」。向島の別宅で独り余生を送る、根岸肥前守の叔母上を訪ねた新八郎は、弘福寺の境内の寒椿の前で、京極家の若殿と供侍を見かけます。蔵前の札差板倉屋の離れで、旗本の本庄新兵衛が殺されていました。出戻りの女をめぐる相克の背景に、鞭打たれた寒椿がぽとりと落ちるイメージが浮かび、秀逸です。
第4話「桜草売りの女」、取り替えられた子供が異なる境遇で育ちます。再び出刃の話ですが、善良な落合清四郎が良い味を出しています。
第5話「青山百人町の傘」、大奥で羽振りの良い妹を持った奥方に頭の上がらぬ組頭は、秋山長三郎をほめますが、本人は行方不明の前妻・露路を探しており、住居は異様なほど荒れています。露路が内職で作った傘には、蛇の目の隠し印がついていました。これも、いくら上役とはいえ弱気に過ぎるんじゃないでしょうか、秋山さん。
第6話「奥右筆の用人」、上野寛永寺の大灯篭に寄りかかった形で初老の武士が死んでいるのが見つかります。キノコを食べた家がどこか、知られたくなかった気持ちはわかりますけれど。
第7話「墨河亭の客」、正月早々に向島の隠居所を訪ねた新八郎、墨河亭という高級料亭の噂を聞きます。オランダ渡りのネズミ取りの毒が使われたらしいのですが、かわいい娘を守ろうとしたにしては、武士のやり方ではありませんね。

なんだかなさけない男の話が多くて、いま一つピンと来ないのですが、とにかく第7巻まで来ました。「寒椿の寺」が一番印象に残ります。
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「はやぶさ新八」氏はなぜあんなにモテモテなのか

2006年08月18日 21時55分08秒 | -平岩弓技
平岩弓技さんの『はやぶさ新八』シリーズでは、主人公はやぶさ新八氏は、お鯉さんはじめ、新妻の郁江さん、小かんなど、実に多くの女性に心を寄せられます。なぜにあれほどモテモテなのでしょうか。

先日、その理由に思い当たるものがありました。平岩弓枝さんは、実は様々な女性を描きたいのだ。それには、都合よくモテモテの男性が必要です。ストーリー展開上、同一人物の方がなにかと楽でしょう。たぶん、それでああなっている、のではないかと思いますが、違うかな?
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平岩弓枝『はやぶさ新八御用帳』(第6巻)「春月の雛」を読む

2006年08月05日 11時08分40秒 | -平岩弓技
平岩弓枝さんの『はやぶさ新八御用帳』シリーズ、第6巻と第10巻を見つけ、まずは6巻を読みました。郊外型書店ではこの手の文庫の回転が早いようで、シリーズがそろっていることが少ないように思います。

第1話「江ノ島弁財天まいり」、湯島界隈の弁天講で江ノ島に出かけた小かんの一行の一人およしが殺されます。水戸家の奥奉公の宮城野というお女中が目撃します。宮城野さん、後日また登場するキャラクタのような気がしますね。
第2話「狐火」、麹町の旗本浅尾家の邸内で狐火が燃えるという噂に、大久保源太と新八郎が動き出します。どうやら大勢の人に見てもらいたいらしい。狐つき騒動の筋書きは、奥方の知恵だったようです。
第3話「冬の蛙」、旗本森山家の未亡人の毒殺騒ぎは、例によって男子相続にまつわるごたごたです。これはもう最初の予想どおりでした。
第4話「鶏声ヶ窪の仇討」、八丁堀で不明死体が発見され、もらい下げていった者は土井家の名を詐称したという。素人の夫の仇討ちを果たした女盗賊はプロですね。この人も、たぶん後日また登場するのではないかな。
第5話、表題作「春月の雛」。人形に魅入られるというと、美しい怪奇話を想像しますが、ちょっと興ざめな結末。なんでこれが表題作?と解せません。
第6話「淀橋の水車」、根暗の万太郎、いけすかない万次郎、どちらもお鯉さんのご縁としてはよろしくない。では新八郎なら良いのかといえば・・・作者の困った設定ですね。
第7話「中川舟番所」。いや、これはヒットです。三千石の若様・落合清四郎が水が怖くてご奉公がかなわぬと悲観するのもユーモラスだが、水の恐怖を除こうと手に血マメをこしらえる新八郎も良い性格です。どうやら火事が取り持つご縁になりそうな。
第8話「落合清四郎の縁談」。案の定、火事が取り持つご縁でした。奥方のほうが背が高いケースはよくある話なのですが、平岩弓枝さんはずいぶんつりあいにこだわるようですね。当方の知る限りでも、女子バレーボールをやってた某○○さんとか、女子バスケットボールの控え選手だった某○○さんとか、etc, etc。要は性格、相性ですよ。

写真は、江戸の風物だとよろしいのでしょうが、出羽国西村山郡河北町の八幡神社の鐘楼(?)です。ちょっと江戸情緒ふうかも(^_^;)/
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平岩弓技『魚の棲む城』を読む

2006年07月17日 11時48分40秒 | -平岩弓技
出張の空き時間に読んだ本。田沼意次は「いい人」だった、という想定の物語は少ないと思っていましたが、意外にあるのかもしれません。池波正太郎の『剣客商売』もそうでしたし、新潮文庫版の平岩弓技著『魚の棲む城』は、ずばりデキる男・田沼意次を描いています。

田沼龍助(意次)と札差・板倉屋龍介、廻船問屋・湊屋のお北は互いに本郷御弓町の幼なじみでした。龍助と龍介は身分をこえた親友どうし。田沼龍助は生来言語障碍のある第九代将軍家重の信頼厚い御側御用取次役ですが、家のため商家に売られたも同然のお北のことが忘れられず、幽閉された茶室に忍び入る綱渡り生活を続けています。
米将軍と呼ばれた吉宗が逝去し後見が解かれて実質的にも家重の代になると、田沼意次の存在はますます大きくなり、やがて大名に出世しますが、御三家・御三卿は嫉みと軽侮を隠しません。お北は上方で中風で倒れた夫の介護に明け暮れる生活を強いられますが、実は意次の子である新太郎の成長だけが楽しみです。
やがて病弱な家重が亡くなり第十代将軍・家治の代になると、田沼意次は老中となり幕府の経済政策を変えていきます。米中心の経済から貨幣政策を重視した経済への転換です。豪腕の廻船問屋・魚屋十兵衛の陰助によりお北を側女とすることができ、相良に城を築き街を作り、ひそかに外国貿易を夢見ますが、将軍家斉の代となり政敵松平定信に追われ、夢はついえます。

「田沼の賄賂政治(*1)」と「松平定信の寛政の改革(*2)」とを対比する形で、中学の日本史では習いました。社会の自然な流れを改革という名で棹さそうとするのは、どだい無理があるということでしょうが、実情はどうだったのでしょう。小説は歴史学とは異なり、作家がどんなドラマを仕組むかがポイントでしょうが、興味のあるところではあります。

(*1):Wikipedia - 田沼意次
(*2):Wikipedia - 松平定信
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平岩弓枝『はやぶさ新八御用帳』(第5巻)「御守殿おたき」を読む

2006年07月09日 20時15分23秒 | -平岩弓技
出張先で読み終えました、第5巻。今度の宿泊先は、ネットワーク環境が一応整っており、家族へのメールさえも可能です。昔はノートパソコンとポケットモデムを持参し、ISDN電話機に挿入したテレホンカードの度数を気にしながら、パソコン通信でメールしたものでした。それを考えると、実にありがたいことです。

第1話「赤い廻り燈籠」、鬼勘の娘・小かんが第1発見者となった殺しの被害者は、旗本進藤織部正の御愛妾。芝居の小道具の赤い廻り燈籠が届いているはずなのに見当たらない。小かんのお手柄に、秋茄子のぬか漬で女どうしの競争意識。まぁ、そのあたりが平和でよろしいのでは。
第2話「御守殿おたき」、京菓子屋の永田屋が拾って育てた娘が大名の松平上総介様のご落胤だという。数百両を騙り取られた永田屋の主人よりも、奥女中滝の井と名乗る女の方が役者が上だった。だが、小かんは永田屋光兵衛は裏表のある人間だという。親は子に、子は孫に愛情を注ぐ。飢饉の年にも同じことだ。その愛の形が違うだけなのだろう。ところで、御守殿者って、何ですか?
第3話「雪日和」、松平周防守の若君が、生みの母不在の不満を粗暴の振る舞いに表し、事件を重ねているという。側室の藤世の方に育てられた若君は、石洲浜田五万四千石の世継ぎを狙う者に扇動されての乱暴らしい。お鯉の洞察力は驚くばかりで、根岸肥前守のもとでいっそう磨きがかかったようだ。最後のシーンは一幅の絵のようといえばよいのか、あるいは東映ちゃんばら映画の最後のシーンみたい。
第4話「多度津から来た娘」、女天一坊とは言いますが、他人になりすますなぞ、大それたことではあります。普通、しませんね、そんなこと。相当の度胸です。
第5話「男と女の雪違い」、行き違いを雪違いにかけたのでしょう。伝統的駄洒落保存会ですな。しかし新八郎が八面六臂の大活躍で右肩を負傷しながらの人助け。小かんとの仲を嫉妬するおっとり妻の郁江さん、お鯉さんは陰から見守る構図。社交と芸事と家事という三者三様の女性を描く、典型的な平岩弓枝の世界です。
第6話「三下り半の謎」、離縁状を三通も。普通、おかしいと考えますよね。犯人たちはおかしいと思わなかったのでしょうか。それと、子供の墓はそっと静かにしておいてやりたいと思うだろうに。
第7話「女密偵・お鯉」、お鯉さんは密偵役に縁があります。御三家の一つ、紀州家の奥で起こった金無垢の薬師如来の小像の紛失事件、探索は無事成功しますが、少々腑に落ちないところもあります。1寸5分といえばほぼ4.5cmです。頭部からの投影面積が1cm^2とすれば体積は4.5cm^3、金の密度は19.3g/cm^3ですから、金無垢の薬師如来小像は4.5×19.3=86.85(g)もあるのです。そんなものが蒲鉾の中に入っていたら、ずしりとした重さに、誰かが気づくと思うのですよ。
第8話「女嫌いの医者」、こちらも岡崎の本多家の内紛がらみです。お庭番は長崎帰りの名医の役もこなしてしまうのですね。それにしては、評判を取るほどの診断や治療の腕前はどこで身につけたのでしょうか。医学に関する知識や技術は、そうたやすく習得できるものではないはず。偽医者はやがて正体がばれますので、お加津の深情けに懲りたこともあるでしょうが、早々に立ち去って賢明でした。
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平岩弓技『はやぶさ新八御用帳』第4巻「鬼勘の娘」を読む

2006年07月07日 20時44分47秒 | -平岩弓技
講談社文庫で、平岩弓技著『はやぶさ新八御用帳』第4巻、「鬼勘の娘」を読みました。
第1話「箱根七湯」、根岸肥前守に奉公するようになって、お鯉さんはずいぶん落ち着いたようです。行方知れずの武士を探して箱根まで来た新八郎、あやうく遭難しかけます。女難です。
第2話「白い殺人鬼」、お高祖頭巾の女にからむ殺人事件が続き、探索の過程で佐渡金山の役人の不正に絡む因縁が明らかになります。親の仇討ちを果たした二人の行く先には病気と死とが待っているのです。
第3話「御老女様の恋文」、かどわかしにあった町女を、偶然に助けた新八郎のもとに、かつて腕利きの岡っ引だった老人、鬼勘こと鬼の勘兵衛が訪ねて来ます。御老女様の出したファンレターがゆすりの種に使われ、起こった事件でした。御老女様ねぇ。うふふ(^o^)/
第4話が表題作「鬼勘の娘」。いやはや、たいへんなキャラクターの登場です。鬼の勘兵衛の娘で、踊りの師匠の坂東小かんことお初のこと。「どうぞ、お上がり下さいって申し上げても、上がって下さらなかったんですよ。あたしにくどかれると思ったんじゃありませんか。」と言い放つくらいですから、もう相当の勝気さです。そうであれば、麻田藩のトラブルを見過ごせなかったのでしょう。
第5話「お化け女郎」、鬼勘と藤助とが初めて名乗りあい、新八郎の左右の利き腕として活躍することに。ところが、小かんことお初が行方不明になり、盗賊団の根城を急襲して救いだしますが、当人はまったく懲りた様子が見られません。
第6話「金唐革の財布」、金唐革とはこういうものらしいのですが、さしずめお宝鑑定団に出してみてからの方がよかったのかも。私には残念ながら骨董愛好の心理は理解できませんです。
第7話「新堀川慕情」、ようやく郁江さんの登場です。あいかわらずおおらかで、家紋が似ていたために兄貴が襲撃されても全然気がつかない様子。お初の活躍もあり、無事一件落着します。
第8話「さいかち坂上の恋人」、元気過ぎる隠居も老害をまきちらすことがありますが、老女の害もあるもよう。姑にいびり出された嫁は、夫である息子が迎えにいかなければはじまりませんね。ひどすぎる姑には、若夫婦うち揃って家を出るのが一番効き目があるようで。
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平岩弓技『はやぶさ新八御用帳』第3巻「又右衛門の女房」を読む

2006年07月01日 20時13分10秒 | -平岩弓技
『はやぶさ新八』シリーズ、この巻から短編集になるようです。作者が多忙で、構想が追い付かないのでしょうか。

「江戸の竜巻」、勘定吟味役の岡松家跡継ぎ息子が病死し、かつて女中に産ませた双子のうち出来の良い方を養子にと望むが、なんとも想像力のない当主ですね。鬼勘こと勘兵衛が初登場すると共に、お鯉が根岸肥前守の奥女中として奉公することになります。
「幽霊の仇討」、新妻の郁江さん、どうもお鯉さんのこととなると気になるらしい。羽州村山郡山形六万石の秋元藩から、仇討ちのためにやってきた二人だけれど、要するに江戸の奥方と国元の若殿の喧嘩です。幽霊の仇討ちなんて、粋な解決法ですねぇ。「なしてこんなことになった・・・なして」と嘆く山形弁は、正しくは「なしてこだなごどになった・・・なして」(なぜこんなことになった、なぜ)とすべきでしょう。
「狐斬り」、能楽師・森藤十郎の妻織江と、旗本・篠崎庄之助との間に不倫の噂が立ちます。だが、森藤十郎は年若い妻を病気療養を名目に実家に帰します。夜明けに狐の斬殺体が見付かり、さては妻の元に忍んで来たのは狐だったか、と無事解決したかに見えましたが・・・。
「河童と夕顔」、孫を持つ身になってみると、いくらなんでも赤子を足蹴にした殿様は自業自得という感じです。同情の余地はほとんどありません。
「狸の心中」、狐の次は狸です。藤井文五郎の妹・お栄の哀しさに思いをいたしたのは、新八郎の善良な妻・郁江さんだけでした。その一言で、事態は別の意味を持ったのです。
そして表題作「又右衛門の女房」、地震の対応で対照的なしっかり者のお鯉と気が利かなくて頼りない郁江さん。よその夫婦の誤解を解いたのはいいけれど、自分の女房を迎えに行くとは思いませんでした。ちょっとすねて見せたのでしょうか。いえ、本当はこれから先が女性はこわくなるのですよ。まだまだです、新八郎氏(^_^;)/
「江戸の水仙」、島帰りの男には二人の子供がおり、子供も父の帰りを待っていたのですが、母親は子供を手ばなしません。良い母親ではないのです。どうも、冤罪の匂いがします。そして「松平家の若殿」、探索にあたった大久保源太と松之助、松平家からのお礼で食べた鰻はさぞやうまかったでしょう。

御用帳というのですから、断片的な事件の覚え書きでもよいのでしょうが、第1~2巻としっかりした構成で読ませただけに、短編集仕立てはちょっと残念。それでも、平岩弓技さんの語り口は安定しており、充分に楽しめました。
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平岩弓技『はやぶさ新八御用帳』第2巻「江戸の海賊」を読む

2006年06月25日 20時28分17秒 | -平岩弓技
平岩弓技さんの『はやぶさ新八御用帳』シリーズ第2巻、「江戸の海賊」を読みました。第1巻に続き、一冊全部で謎解きをする推理仕立ての中編時代物です。

最初に登場する人物が、町奉行所の本所方同心の高丸龍平、話す内容が緋桜小町ことお小夜の噂話です。深川や本所の橋の袂に奇妙な張り紙があり、船幽霊と称する海賊の探索を始めるところから、物語の幕が開きます。「この頃お江戸に流行るもの/地震、大水、船幽霊/退治したくば飛鳥にござれ/花の下なる平将門」という内容です。
隼新八郎は、高丸龍平とともに飛鳥山に出向き、突然降り出した激しい雨に、茶屋で一休みしていました。突然の落雷でお小夜たちに抱きつかれているときに、一人の武家女の背中に白刃が突き立てられて殺害されます。

せっかくの推理仕立てですので、粗筋は省略しますが、発端となった奇妙な張り紙、結局あれは誰が何の目的で張ったものなのでしょうね。そんなことをして、犯人側にどんなメリットがあったのでしょうか。謀計は秘するが良策、なのではないかと思いますが、必然性がよくわかりません。
それでも、新八郎と新妻の郁江さんが心を通わせるところは、ちょっといい場面です。第1巻のお鯉さんはどうするんだい、と突っ込みたくはなりますが。
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