電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩。時々は実際に散歩を楽しみます。

香月美夜『本好きの下克上』第五部「女神の化身I」を読む

2020年04月10日 06時02分26秒 | -香月美夜
新型コロナウィルス感染者の拡大で世情は不安がつのる中ではありますが、それでも平凡な日常の価値は不変です。例えば好きな音楽を聴き、おもしろい物語にひたることなどでしょうか。おもしろく読んでいる香月美夜著『本好きの下克上』は、いよいよ第五部「女神の化身」の始まりです。先月の発売日に購入し、通読した後に少し寝かせて印象をあたため、再読したところ。

ローゼマインの庇護者であったフェルディナンドがアーレンスバッハに旅立ち、プロローグは重要な登場人物となるヒルデブラント王子のお披露目の場面から。続いてエーレンフェスト内の粛清の引き金が引かれ、アーレンスバッハの第一夫人に昇格したゲオルギーネに忠誠を誓う一派は一掃されますが、貴族院の学生たちの様子は多少の動揺はあってもローゼマインの影響力のほうが圧倒的に大きいようです。大領地ダンケルフェルガーもドレヴァンヒェルも、また王族のアナスタージウスとエグランティーヌ夫妻も、ローゼマインの破格さに注目しています。

WEB 本編ではあまり強調されてはいませんでしたが、単行本への書き下ろしで明らかにされてきているのが、政変にともなう図書館の悲劇でしょう。「短編集」でも一部描かれていましたが、オルタンシアのエピソードには司書たちが犠牲になった事実が描かれ、権力と図書館の独立性というテーマが背景となっているようで、このあたりはライトノベルらしからぬ大人の味わいです。

なお、ローゼマインが楽器フェシュピールを奏でる場面のモデルは、作者によればナターシャ・グジーさんのパンドゥーラなのだそうです。イメージとしてはこんな感じでしょうか。YouTube から、「鳥の歌」。

Song of the Birds ( El Cant dels Ocells ) by Nataliya Gudziy / 鳥の歌 ・ ナターシャ・グジー


第五部第2巻は、順調に行けば6月10日に刊行予定とのこと。その頃には、できればコロナ禍も少しは落ち着いていると良いのだけれど。

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香月美夜『本好きの下剋上』第IV部「貴族院の自称図書委員」第9巻を読む

2020年01月03日 06時00分17秒 | -香月美夜
2017年からは専用のカテゴリーまで設けて楽しんできた香月美夜著『本好きの下剋上』ですが、第IV部「貴族院の自称図書委員」がついに第9巻まで来ました。貧しい兵士の娘として転生した幼女マインが、「本を読みたい」との一心で紙を作り、神殿に突撃して青色巫女となり孤児院を改革し、インクを作り印刷を始め、魔力に目覚め、領主の養女ローゼマインとなって貴族院に学ぶようになって二年、つねによき理解者であり後ろ盾となってくれた神官長フェルディナンドが、敵対する他領地から婿に望まれ、しかも王命により断ることができない事態になるという経過ですが、本巻はフェルディナンドとの別離を描きます。



餞別の食事会はいかにも美味しそうですし、贈り物をしあう様子は微笑ましく思えますが、その背後で起こっていた陰謀はかなり悪質なものでした。灰色神官たちは救出し、奪われた聖典は取り返したものの、別離は悲しい。クライマックスとなる虹色の祝福の場面は、アニメでもおそらく劇的な場面となることでしょう。

貴族院の三年生となる次巻は3月10日発売予定とのこと。第V部「女神の化身」第1巻と題して、こんどは王族と王が相手になり、物語の終わり頃には神々のスケールでヒートアップするはず。書籍で追加される書下ろしも楽しみです。

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香月美夜『本好きの下克上・短編集I』を読む

2019年10月30日 06時03分33秒 | -香月美夜
香月美夜著『本好きの下克上』シリーズの最新刊「短編集I」を読みました。WEB上ではすでに完結している本編が、基本的に主人公マイン(ローゼマイン)の視点で語られるのに対して、周辺の人の視点で語られる閑話やサイドストーリー(SS)には新鮮な発見があって面白いものです。

例えば冒頭の「変になった妹」では、マインの姉トゥーリの視点で、病弱な妹が高熱から回復した後に、お湯で毎日体を拭こうとしたり木の棒でかんざしを作って髪を束ねたり、植物の実から油を採って髪を洗うことでツルツルにしたりと、不思議な行動を取り始める様子が描かれます。妹マインの視点からは、転生した周囲が汚く不潔な生活を忌避しているのですが、姉トゥーリの方から見ると妹の行動のほうがヘンなのです。そんなズレが新鮮な発見につながっていく、というわけです。



中にはWEB上にあるサイドストーリー集(*)に掲載されているものもあれば、単行本の中に特典として挟み込まれた書き下ろしの短編を再録したものもあります。後者は、TOブックスという出版社が、取次店を経由して書店に届くという商慣行の中で抵抗(?)するために、直販と「応援書店」での販売分にはこうした書き下ろし短編をリーフレットとして挿入することにしたものでしょう。その事情を理解はできますが、田舎の一読者としてみた場合、なんだか居住地によって疎外されている感を禁じえません。この短編集は、そうした書き下ろし短編SSをもちゃんと収録しており、出版業としてはそれが本筋であろうと思います。

ヴィルマ視点の「前の主と今の主」、ヒルシュール視点の「特別措置の申請」、フィリーネ視点の「わたしの騎士様」などは、本編のストーリーを補強する好編と感じます。「短編集I」ということは、「II」の計画もあるということでしょう。特典SSなどという読者を居住地で区別してしまうやり方でなく、中身の面白さを訴えて商売をしてほしいものです。と、物語中でローゼマインも言っております(^o^)/

(*):本好きの下克上 SS置き場

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香月美夜『本好きの下克上』第4部「貴族院の自称図書委員」第VIII巻を読む

2019年10月23日 06時03分38秒 | -香月美夜
TOブックスの単行本で香月美夜著『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員」第8巻を読みました。9月に購入直後に読んではいたのですが、最新刊のネタバレ自粛のために少々遅らせて、最新刊『短編集』の刊行を機に記事とした次第。

始まりは領主ジルヴェスターの末子で幼いメルヒオールがローゼマインを目標にする可愛らしい場面から。貴族院から帰還したローゼマインは、自分の影響力の広がりに対応していかなければなりません。プランタン商会と話しあい、印刷した物語の本を他領に広げる準備をしつつ、メルヒオールの洗礼式を行い、アーレンスバッハのお魚料理に奮闘し、祈念式のためにライゼガングへと出発します。エーレンフェスト領内は旧ヴェローニカ派とライゼガング派の二つに分かれて勢力争いをしている状況ですが、本を読んでいるだけで幸せなローゼマインにはライゼガングの思惑は迷惑でしかありません。

そんなとき領主会議でエーレンフェストに降りかかった難題は、神官長フェルディナンドに対してアーレンスバッハのアホ娘ディートリンデの婿に行けとの王命でした。最悪の相手との婚約ですが、フェルディナンドは亡き父との約束を重視し、エーレンフェストを守るために承諾してしまいます。ローゼマインは嘆き悲しみますが、話は単純ではありません。実はここから大きなドラマが展開されていくのです! とネタバレを防ぎましょう。実際は、WEB 版はすでに完結して公開されているので、あまりネタバレの心配はしなくても良いのかもしれないですけど(^o^)/



アーレンスバッハの奇妙奇天烈なお魚がすごい(^o^)/
三枚に下ろすために頭を切り落としてしまうと魔石になってしまうという想定も芸が細かいですけれど、これがジルヴェスターの姉ゲオルギーネの嫌がらせだと思われるところもえげつない。ローゼマインは「お魚!お魚!」とうふふんしていますが、やっぱりヴィルフリートとは良い「天然」カップルなんじゃないかと思ってしまいます。実際は、方向性がまるで違うのですが(^o^)/

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香月美夜『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員」第7巻を読む

2019年09月08日 06時03分47秒 | -香月美夜
TOブックスから刊行された単行本で、香月美夜著『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員」第VII巻を読みました。2019年7月に入手し、すぐに読了していましたが、そろそろ次巻が出る予定ですので、再読後に記事とした次第。



プロローグはWEB版本編(*)にはない、ローゼマインが倒れた後の「本好きのお茶会」を、ダンケルフェルガー側から見たサイドストーリーです。

自領エーレンフェストに帰還後、なぜ学生が魔獣ターニスベファレンを倒せたのかを究明する尋問会にむけた予想対策会が開かれますが、頼りになるのはやっぱりフェルディナンドです。でも、神殿に戻り、聖典を確認しようとしたら、なにやら不穏な文字と魔法陣が浮かび上がりました。

汝、王となるを望む者?

他の人には見えないのに、ローゼマインとフェルディナンドには見えるのです。なぜ?
いやいや、フェルディナンドの言うように、死にたくなければ必殺知らんぷりの術、見ざる・言わざる・聞かざるを決め込むのがよろしかろう。

城ではローゼマインの新しい武器「水鉄砲」も好評でしたが、貴族院に戻ってから開かれた尋問会は簡単には終わらず、ローゼマインは中央神殿の神官長イマヌエルがキモチワルイ。問題になっている祝詞の有無を調べるため、フェルディナンドも呼び出されることとなり、ローゼマインとエーレンフェストへの疑いも晴れるのですが、中央騎士団長ラオブルートはフェルディナンドに含むところがありそうです。

本巻のもう一つの見せ場は、ダンケルフェルガーの歴史書の現代語訳を出版する権利を賭けたディッター勝負です。フェルディナンドvsハイスフィッツェの因縁の対決は、「水鉄砲」を活かしたフェルディナンドの勝利に終わり、エーレンフェストの印刷物にはダンケルフェルガーの歴史書というタイトルが加わることに。もちろん、名を捧げ側近となったローデリヒによる創作物語も、この後で多大なる人気を博すのですが。

政変で家族を失った元王女エグランティーヌは、第二王子アナスタージウスと婚約、アナスタージウスは王位を望まず、第一王子ジギスヴァルトが王位継承者となり、ドレヴァンヒェルのアドルフィーネが嫁ぐことになりました。ローゼマインは、王族との関わりがすでにとっぷりと深まっています。待て!次巻!



マチガイなくライトノベルとして登場しているのですが、単にライトノベルとは見なせない面白さです。兵士の娘として生まれ変わってから、神殿へ、領主の養女へとしだいに広がる世界。今は主にエーレンフェストと貴族院が舞台です。本が好きというだけで突進するローゼマインが可愛いというか、実際に身近にいたら鬱陶しいというか、微妙なところもありつつ、けっこう作者の術中にはまっております。面白いです! 次巻は9月10日発売、予約済みです。

(*):WEB版本編はすでに完結。〜「本好きの下克上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜」

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香月美夜『本好きの下克上』第4部「貴族院の自称図書委員」第VI巻を読む

2019年05月31日 06時02分59秒 | -香月美夜
来月には新刊発売予定ですでに予約済みと、見事にハマっているライトノベル、香月美夜著『本好きの下克上』第4部「貴族院の自称図書委員」第VI巻を読みました。



主人公ローゼマインは二年生になり、一年生に妹のシャルロッテが加わりますので、エエカッコしたいと張り切ります。それだけではなく、周囲の学生への影響力も大きいものがあり、大領地ダンケルフェルガーの領主候補生ハンネローレと仲良くなり、エーレンフェストの寮監であり優秀だが少々変わっている教師ヒルシュールの理解を得て、着々と初日合格を果たしていきます。

もう一つ、エーレンフェスト内の派閥事情で孤立していたローデリヒが名捧げを希望、彼の物語作家的資質を評価して、ローゼマインは受け入れを表明しますが、そのためにに必要な魔石を取りに採集場所に向かうと、そこには危険な魔獣ターニスベファレンが出現する、というような経過です。

ヒルシュール先生の研究室に弟子として入っているライムントが、エーレンフェストと軋轢を生じているアーレンスバッハの三年生ということで、このあたりは先の伏線になっています。また、本来は学生が倒せるはずのないターニスベファレンをエーレンフェストの学生たちが討伐できたのはなぜか? 王族の内紛で粛清の余波が残るユルゲンシュミットで、叛逆と陰謀の可能性をただす必要がありますが、その尋問会が次巻のテーマの一つになることでしょう。

これで、既刊全巻を読んだことになります。来月10日頃には第VII巻が発売される予定。WEB 版ではすでに完結し、だいぶ前に読了しているにもかかわらず、あらためて紙の本で読みたいと考えるのは、やはり私も本質的に「本好き」だからなのでしょう(^o^)/

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香月美夜『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員」第5巻を読む

2019年04月02日 06時04分07秒 | -香月美夜
TOブックスの単行本で、香月美夜著『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員」第V巻を読みました。2019年1月新刊ですが、3月に第VI巻が出ていますので、最新刊の一つ前の巻です。

単行本オリジナルの「プロローグ」では、エーレンフェストの反体制派、旧ヴェロニカ派の貴族たちの動きと、アーレンスバッハから嫁入りする二組の婚姻が伝えられますが、ローゼマインたちの動きはなんとも呑気なもので、イタリアン・レストランで進化した料理を堪能し、領地の境界線上で二組の結婚を祝福すると、こんどは染色コンペを開催し、新たな流行を作り出すという具合。

一方で、領地内に製紙業と印刷業という新しい産業を広げる試みは、グレッシェルに広がりますが、そのためには貴族側の認識や態度を改める必要がありました。ブリュンヒルデの焦りは、ローゼマインの身近にいるだけに、深いものがあります。

そんなこんなで時は過ぎ、再び冬となります。社交界の始まりとともに貴族院へ出発、そこには洗礼式を終えたばかりの第三王子ヒルデブラントがいた、という経過です。アーレンスバッハからランプレヒトに嫁入りしたアウレーリアが、かたくなにヴェールをして素顔を隠している件、なるほど、そういう理由だったのですか。ジルヴェスターの姉で、今はアーレンスバッハの第一夫人に昇格したゲオルギーネは、とことん意地悪ですね。

そうそう、そして貴族院二年目の途中であのターニスベファレン襲撃事件が起こるわけですが、それが次巻ということになるのでしょう。ワクワク、楽しみ〜! すっかりはまっております(^o^)/

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香月美夜『本好きの下克上』第四部第VI巻が届く

2019年03月13日 06時02分44秒 | -香月美夜
過日、行きつけの書店から連絡があり、予約注文していた香月美夜著『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員」第VI巻が届いたとのこと。さっそく受け取りに行き、無事に入手することができました。

「発売日に確実に入手するには、何日前までに予約注文をすれば良いですか?」とたずねてみたら、「発注をかける締切日がその月により違うので、いちがいに何日とは言えないのです」とのこと。うーむ、それは困った。では、発行元から「予約受付開始」とのアナウンスが出たら、すぐに申しこめば良いということでしょうか。

などというようなアホなことを考えるほど、本シリーズは面白いということでしょう。本好き中高年は、見事にハマっております(^o^)/

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香月美夜『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員IV」を読む

2019年01月05日 06時02分25秒 | -香月美夜
TOブックス刊の単行本で、香月美夜著『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員IV」を読みました。

貴族院の一年生として冬を過ごした後に、故郷エーレンフェストに戻ったローゼマインとヴィルフリートは、領主ジルヴェスターが二人の婚約について王の承認を得て、春を寿ぐ宴で発表します。それは、旧ヴェローニカ派の貴族たちにとっても、対立するライゼガング系貴族たちにとっても青天の霹靂、衝撃的なものでした。混乱回避のため神殿に逃げ込んだローゼマインは、神官長フェルディナンドの指導のもと、意図せず主となってしまった図書館の魔術具、シュヴァルツとヴァイスの新しい衣装づくりのため、「消えるインク」を作ってしまいます。ふむふむ、なるほど、これが後の大事な伏線になっているわけですね。

これまで、どちらかといえば対象を絞った、ワンポイントの魔術しか登場していなかったのですが、この巻では、「春を呼ぶハルデンツェルの奇跡」と「エントヴィッケルンと広域ヴァッシェン」という派手な魔術現象が登場しますので、ファンタジー色が一気に高まります。神官長フェルディナンドは、どーしてそんなにたくさんの高度な魔術を知っているのか不思議なほどですが、実は……だったのですね。これは、WEB版で全編読了しているからわかる強みかも(^o^)/



個人的には、「ハルデンツェルの祈念式」で春がやってきてしまうあたりが面白い。長い冬が過ぎて春がやってくる喜びというのは、雪国在住の当方にとってはやけに共感してしまうところです。まして、これから厳冬期に向かうだけに、非常に羨ましい。19歳や20歳を過ぎて猫又レベルに達した我が家のアホ猫たちが、なんとかして「早々に春を呼ぶ大規模魔術」をやってくれないものでしょうか(^o^)/


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香月美夜『本好きの下克上〜貴族院外伝・1年生』を読む

2018年12月13日 06時02分28秒 | -香月美夜
香月美夜著『本好きの下克上』シリーズは、主人公の本好き残念少女マインが、その魔力の大きさを見込まれて領主の養女ローゼマインとなり、大活躍(?!)する話です。本編では、基本的にローゼマイン視点で語られることが多いのですが、この11月に発行されたばかりの別巻『貴族院外伝』は、全編が主人公以外の他者視点で描かれます。そのため、ローゼマイン視点ではあまりピンとこなかった出来事が、実は周囲にはどう受け止められていたのかがわかり、興味深いものがあります。

貴族院の一年生の期間に限定して、大領地ダンケルフェルガーとのディッターや、ローゼマインが途中で帰還してしまった間の残された者たちの奮闘・てんやわんや、あるいは他領の視点から見たエーレンフェストの産物など、描く視点が違うと「なるほど、こう見えるのか」というあたりが面白い。

それだけでなく、ひたすら強さを求める外見詐欺の残念美少女アンゲリカの神殿におけるエピソードなどは、読者の心に訴える面があるのではなかろうか。
アンゲリカは、代々の側仕えの家系に生まれたけれど、理解力が不足し、家族からは細やかな気遣いができない不出来な子としてみなされて育ったようです。側仕えではなく騎士となる道を選び、ひたすら強さを求める理由が「勉強がキライだから」というのですから、なんとなく共感する人も少なくないのでは(^o^)/
落第寸前のところをローゼマインに助けられたために、ローゼマインに心底傾倒し、護衛騎士の役割を果たすことを重視しています。そのアンゲリカが、神殿の平民である灰色巫女や灰色神官たちの中に居場所を見つけるところが、童話のように切なく微笑ましい。

さて、本編は第四部「貴族院の自称図書委員IV」へ続きます。シリーズはまだ全体の半ばくらいでしょうか。
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香月美夜『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員III」を読む

2018年12月03日 06時04分45秒 | -香月美夜
TOブックスの単行本で、香月美夜著『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員III」を読みました。本巻は、兵士の娘として転生した本好き残念少女が、有り余る身食いの魔力を見込まれて神殿の青色巫女から領主の養女に望まれ、貴族院の一年生でいろいろやらかして領地に戻ってきたところから。

プロローグでは、領主の長男のヴィルフリートと婚約することになり、貴族として洗礼を受けた際の母親エルヴィーラが開始したハルデンツェルでの印刷業を後押しするために、先に製紙業を始めていたイルクナーからも指導の応援を出してもらうように、ギーベ・イルクナーと交渉します。今後、製紙業と印刷業を領地エーレンフェストないに広げて行くには、平民時代にベンノと交わしたマインとルッツの契約魔術が障害になっていました。これを解消し、領主との間に新しい契約魔術を結ぶ形を取ることが求められ、その必要性は理解できますが、平民である下町の家族やルッツたちとの細いつながりが切れてしまう不安に、ローゼマインの心は揺らぎます。

そうこうするうちに貴族院に戻ることになりますが、他の領地や王族との交流は、やっぱり残念少女ローゼマインの本領発揮で、なんとも面白い。アーレンスバッハの我が儘な領主候補生ディートリンデや、クラッセンブルグのエグランティーヌと第二王子アナスタージウスの困った関係、ダンケルフェルガーのいつも間が悪い領主候補生ハンネローレなど、登場するキャラクターも多彩です。情に厚いローゼマインに仕える側近たちも、いっぷう変わった者もいるけれど、全体としてはひたむきで忠実なようです。



面白いです。中高年オジサンも思わずハマる面白さです。聞けば『このライトノベルがすごい!2018』で2年連続第1位なのだとか。それもなるほどとうなづける、納得の面白さです。

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香月美夜『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員II」を読む

2018年11月03日 05時16分16秒 | -香月美夜
TOブックスの単行本で、香月美夜著『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員II」を読みました。中高年世代でありながら、ライトノベルを夢中で読むなんて、と少々気恥ずかしく思いつつ、でも面白いものは面白い(^o^)/

前巻では、初めての貴族院で優秀な成績を示すものの、それ以上に周囲との違いというか、一種の異質さが際立ちます。その最たるものが、図書館の魔術具であるシュヴァルツとヴァイスの復活です。この巻では、司書のソランジュ先生とのお茶会や、音楽の先生とのお茶会で、大領地クラッセンブルグの領主候補生エグランティーヌと、彼女にご執心の第二王子アナスタージウスと交流を持つなど、今までのエーレンフェストではあり得ない事態が次々に起こります。

さらに、二体のうさぎ型魔術具は、主が代わる時には新しい衣装を作る必要があるのだそうで、その採寸の際に、大領地ダンケルフェルガーの領主候補生レスティラウトを中心とする集団に待ち伏せされます。シュヴァルツとヴァイスを奪われては大変と、エーレンフェストとダンケルフェルガーがディッター勝負で決着をつけることになります。ローゼマインの奇策で勝利したのは良いけれど、事情説明のついでにエグランティーヌとアナスタージウス王子との仲を取り持つことになってしまいます。

不用意に王族との関わりを持ち、相続争いに巻き込まれることを恐れる保護者たちによって、帰還命令が発せられてしまいます。エーレンフェストでの尋問会で明らかになったローゼマインの社交の問題点は、貴族として暮らした期間の短さを思えば当然すぎるほど当然のことでした。ローゼマインの仕切りなおしは、さらにパワーアップするだけのような気がしますが、待て!次巻!



面白いです。その他にも多彩なエピソードが盛り込まれていて、貴族院を主な舞台とするこの第四部が全体の中でいちばん面白いと感じるのは、もしかするとこの学園ドラマ風の想定のおかげもあったりして(^o^)/

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香月美夜『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員I」を読む

2018年10月23日 06時03分23秒 | -香月美夜
TOブックスの単行本で、香月美夜著『本好きの下克上』第四部「貴族院の自称図書委員I」を読みました。見知らぬ敵の襲撃を受け、毒を飲まされて二年間の眠りについたローゼマインは、ユレーヴェの中でついに目覚めます。幼い時代の二年間の成長の差は大きいものがあり、妹シャルロッテにも身長で抜かれたと知った時は、さぞやショックだったことでしょう。でも、神官長フェルディナンドに、貴族院入学を一年遅らせると妹シャルロッテと同学年になってしまうと指摘された上に、貴族院の図書館で自由時間を過ごして良いと言われたら、ローゼマインは詰め込み教育も何のその!なのです(^o^)/

冬の間に貴族院で学ぶためにエーレンフェストの寮に転移すると、子供だけの人間関係ではなく、親の派閥の影響下にもありますが、ローゼマインはどうもそれが面白くない。護衛騎士見習いとしてコルネリウスとアンゲリカにレオノーレとトラウゴットとユーディットが加わり、文官見習いとしてハルトムートとフィリーネ、側仕え見習いとしてブリュンヒルデとリーゼレータ、そして筆頭側仕えとしてリヒャルダがにらみをきかせるという顔ぶれですが、ローゼマインは派閥の違うローデリヒのお話創作能力を高く評価するのです。

そうして始まる貴族院生活。一風変わった寮監ヒルシュールはフェルディナンドの恩師なのだとか。ヴィルフリートが余計な一言をはさんだおかげでローゼマインが暴走をはじめます。一年生全員の座学科目一発合格宣言!(^o^)/
弱小領地であるエーレンフェストの注目度は、女子のつやつや髪や座学の一年生全員一発合格などで急上昇しますが、加えて風変わりな領主候補生ローゼマインの評判も、よくも悪くもますますアップするばかりです。

全科目を優秀な成績で一発合格してしまったローゼマイン、念願の図書館登録に行き、司書のソランジュ先生にしっかりと覚えられます。そりゃそうです、閲覧室を見た感激で英知の女神メスティオノーラに祈りを捧げたら祝福の光がドバっと溢れでて、それまで動力切れ、いや魔力切れで動きを止めていた二体のシュミル風魔術具、まあ、要するにロボットウサギのシュヴァルツとヴァイスが動き始めたのですから。

似たような事件は他の先生方との間にもあり、騎獣作成の実技ではレッサーパンダ風乗り込み型騎獣に驚いてアーレンスバッハの寮監フラウレルムが卒倒するし、シュタープの元になる「神の意思」を取りに行って行き倒れるし、シュタープの扱いもオルドナンツ、ロート、メッサー、スティロなど全てを初日一発合格という驚きの事態で、「あの」フェルディナンド以来の事件なのだそうです。入学早々この調子では、これからいったいどうなるのかと、エーレンフェストの保護者たちは早くも胃が痛い、頭が痛い(^o^)/



待て!次巻! いやいや、待ってなどおれません!(^o^)/

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香月美夜『本好きの下克上』第三部「領主の養女V」を読む

2018年09月06日 06時01分02秒 | -香月美夜
TOブックス刊の単行本で、香月美夜著『本好きの下克上』第3部「領主の養女V」を読みました。大学図書館司書の仕事に就くはずだった女子大学生が、地震のために自宅の本棚が倒れて本に埋まり死亡、転生した先が中世風の異世界で、兵士の娘から神殿の青色巫女を経て魔力の大きさを見込まれ領主の養女ローゼマインとなっていたところ、この巻では見知らぬ敵の襲撃を受けて二年間の眠りにつく話です。
帯に踊る文字「……誰か助けて!驚愕の新展開が待ちきれないクライマックス!」のとおり、中高年オジサンも思わずドキドキな急展開(^o^)/



始まりはイルクナーから届いた新しい紙について、ベンノらプランタン商会の面々と、領主の養女として製紙業をあと押しするローゼマインとの打合せから。少し後に神殿の灰色神官フリッツとベンノの会話で、ローゼマインが神殿長を退くときのことが語られますが、これが今後の伏線となります。

ハッセの町とローゼマインとの関わりは、平民と貴族との関係を考える良い機会となりました。出版業のためにはお話を集める「グリム計画」が大切で、ひそかに着々と進行中です。「今年こそ」と再挑戦したリュエルの実は無事に入手でき、ついでにブリギッテに恋するダームエルの求婚用もゲット(^o^)/

エーレンフェスト内の派閥争いは、アーレンスバッハに嫁いだゲオルギーネの一派とライゼガング系貴族の争いの上に、領主ジルヴェスターの権力があやういバランスで乗っているという形のようで、ローゼマイン式魔力圧縮法は領主一族にとってきわめて重要な武器の一つとなります。

イルクナーでの収穫祭の後に城に戻ったローゼマインは、初めての妹シャルロッテに胸キュンで、姉としていいところを見せようと奮闘します。ゲオルギーネ派の策動で窮地に陥ったヴィルフリートを実質的に救うことになったのも、もとはといえばシャルロッテにいいところをみせたいというのがかなり大きな動機でした(^o^)/

一難去って、神官長フェルディナンドの指導のもとに、体内に固まった魔力を溶かす薬ユレーヴェを作り、領主一族を中心にローゼマイン式魔力圧縮法を教え、シャルロッテの洗礼式を終えた直後に、未知の敵の襲撃を受けます。誘拐されたシャルロッテを救わんと前後を顧みず飛び出したローゼマインは、逆に敵に捕らえられ毒を飲まされてしまいます。



昔風の紙芝居や連続ドラマならば、「どうなる、ローゼマイン! 待て、次号!」みたいな終わり方で次回に興味をつなぐところでしょうが、ここではちゃんと眠りについた二年間のことが他者視点で語られています。姉の代わりを務めようと奮闘するが及ばないシャルロッテの挫折や、下町の家族や印刷技術集団グーテンベルグの努力、ダームエルとブリギッテの悲恋、イルクナーでフォルクとカーヤが結婚に至るまでの経緯、何事にも中心となって調整に奔走する神官長フェルディナンドの姿など、多面的に描かれますので、実に説得力あり(^o^)/



さて、次巻からはいよいよ貴族院での話です。WEBで全話を読んでいますが、個人的には貴族院での話がいちばん面白いと感じています。

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香月美夜『本好きの下剋上』第3部「領主の養女IV」を読む

2018年07月25日 06時02分42秒 | -香月美夜
TOブックス刊の単行本で、香月美夜著『本好きの下剋上』第3部「領主の養女IV」を読みました。本巻で印象的なのは、下級騎士ダームエルと中級騎士ブリギッテの恋、それに領主ジルヴェスターの姉で上位領地アーレンスバッハに嫁いだゲオルギーネの登場でしょう。



死にかけて体内で固まっている魔力を溶かすための薬「ユレーヴェ」を作るために、ローゼマインは素材収集に出向きますが、今回は「リーズファルケの卵」。素材収集はどうしてもワンパターンになりがちで、リュエルの実のときの失敗のような劇的な盛り上がりにはなりません。むしろ、エーレンフェストの南、植物紙を産業とすることにいち早く取り組む辺境イルクナーのおおらかさが印象に残ります。なるほど、ブリギッテはこういうところで育ったのか、と納得です。

下町では、姉トゥーリがギルベルタ商会でお針子修行というよりも立体的な花の髪飾りの技術を引っさげてスカウトされます。ベンノたちが売りだした本や知育玩具など、城での販売会は大成功のようです。

それにしても「天然クン」ヴィルフリートは、やっぱりもう少し空気を読んだほうが良いと思うなあ(^o^)/

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