例年、この季節は、年度はじめの多忙のため、定期演奏会を聴き逃したり、遅れて最初の曲目に間に合わなかったりすることが多かったのですが、残念ながら今年もその例にもれず、山形交響楽団第228回定期演奏会の第1曲目、C.P.E.バッハのシンフォニア第3番ハ長調には間に合いませんでした。結局、第2曲目の、ハイドンの交響曲第82番ハ長調「熊」から聴くことになりました。指揮者は、今年度から首席客演指揮者に就任した鈴木秀美さんです。鈴木秀美さんは、2011年7月の第214回定期で、ボッケリーニのチェロ協奏曲、シューベルトの交響曲第1番、ハイドンの交響曲第100番「軍隊」を聴いたことがあります(*1)。このときは、たいへん良い演奏会でしたので、今回も楽しみにしておりました。
オーケストラの編成と配置は、Fl(1),Ob(2),Fg(2),Hrn(2),Tp(2),Timp,弦5部(8-8-6-5-3) の両翼配置で、コントラバスは正面奥です。ホルンとトランペットはもちろん古楽器を模したナチュラルタイプで、ティンパニも音が明るく抜けの良いバロック・ティンパニです。コンサートマスターは、犬伏亜里さん。
ハイドンの交響曲第82番ハ長調「熊」
第1楽章:ヴィヴァーチェ・アッサイ。元気、溌剌、颯爽としています。第2楽章:アレグレット。二つの主題と変奏曲からなる緩徐楽章。第3楽章:メヌエット~トリオ。やはり溌剌とした演奏。第4楽章:フィナーレ、ヴィヴァーチェ。なるほど、低弦のうなりが「熊」のうなり声に聞こえるということが、この曲の愛称の由来なのだそうで、納得です。それと、曲の最後に、指揮者の悪戯が仕組まれておりました(^o^)/
ここで15分の休憩の後、ベートーヴェンの交響曲第1番ハ長調Op.21です。
楽器編成は、フルート(1)とクラリネット(2)が加わります。Fl(2),Ob(2),Cl(2).Fg(2),Hrn(2),Tp(2),Timp.,弦5部、弦楽は8-8-6-5-3です。
第1楽章:独特の響きのあの出だしは、弦はピツィカートだったのですね!お気に入りのこの曲、CDでは何度も聴き、不思議な響きだと思っておりましたが、実演で秘密がようやく判明。素人音楽愛好家には、こういう発見がちょいと嬉しい(^o^)/
アダージョ・モルトからアレグロ・コン・ブリオに変わりますが、テンポはそれほど極端に速くはなりません。でも、メリハリをはっきり付けた表現、演奏になっています。
第2楽章:第2ヴァイオリンからチェロへ、そしてヴィオラや第1ヴァイオリン、コントラバスも加わるというように、楽器の音色が加わっていく始まりはとても面白い。アンダンテ・カンタービレ・コン・モト。アンダンテといっても、歩く速さは老人のゆったりしたものではなく、若者の活力を感じさせるものです。響きはやわらかさ、しなやかさを感じさせ、弱音の美しさに感嘆します。
第3楽章:メヌエット~トリオ。始まりからクレッシェンドで、オーケストラを爽快に鳴らします。ホルン、クラリネット、オーボエ、ファゴット等、管楽器の音色がブレンドされた響きが素晴らしい!ベートーヴェンの工夫であると同時に、オリジナル楽器を用いた演奏の成果でしょう。
第4楽章:フィナーレ、アダージョ~アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェ。前の楽章から休まず続けて演奏されます。速いテンポで、楽員の皆さんが楽しんで演奏しているのがよくわかります。アンサンブルはとても見事で、メリハリを付けた響きのバランスも、30歳のベートーヴェンの爽やかな活力、エネルギーをよく表していました。ブラボー!です。新しい首席客演指揮者就任の今後が、ますます楽しみになりました。
終演後のファン交流会にもおおぜいのファンが詰め掛け、楽しい指揮者の人気の高さを裏付けました。鈴木秀美さんの言葉でなるほどと思ったことは、ベートーヴェンは大編成やフォルテが注目されるけれど、実はフォルテの部分はあまり多くない。むしろ、ピアノの部分に注目すべき、というくだりでした。同感です。オルガニストではなくて、ピアニストとして出発したベートーヴェン。ごく弱い音から強いフォルテの音まで自在に表現できる楽器の特性を、最初に世に問う自信作の交響曲でも、存分に発揮しているようです。
(*1):
鈴木秀美指揮の第214回定期でボッケリーニ、シューベルト、ハイドンを聴く~「電網郊外散歩道」2011年7月