電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩。時々は実際に散歩を楽しみます。

佐伯泰英『旅立ノ朝~居眠り磐音江戸双紙(51)』を読む

2016年01月25日 06時01分44秒 | -佐伯泰英
豊後関前藩の三人の若者が互いに斬り合うはめに陥った『陽炎ノ辻』以来なんと50巻も読みつづけてきた佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙』シリーズの最終巻、51冊目の『旅立ノ朝』を読みました。



第1話:「見舞い」。坂崎磐音の一家は、豊後関前藩に到着、父・坂崎正睦を見舞います。藩主が隠居を許さないため、正睦は国家老の席を辞することができません。しかし、正睦の病気療養の間に勢力を蓄えてきた中老の伊鶴儀登左衛門が藩政の実権を握ろうとしている、というのが本巻の状況のようです。
第2話:「思い出めぐり」。病床の正睦は、孫の空也が示す直心影流の法定四本之形打太刀を見て生気をよみがえらせます。一方、中老の伊鶴儀登左衛門は、藩主の側室お玉の子の実継を擁して藩の実権の乗っ取りを策している模様。双子の刺客を空也が倒し、親子は奈緒の紅花の畑が広がる花咲の郷を目指します。
第3話:「関前の紅花畑」。奈緒母子に霧子が手伝いに加わり、ようやく順調に栽培できるようになった紅花畑を前に、磐音ら親子と奈緒母子、重富利次郎・霧子らは夕食を共にします。磐音たちが帰った後を、伊鶴儀配下の者たちが襲撃しますが、利次郎と霧子、空也までが残っていたとあっては、襲撃者たちもかなうわけがありません(^o^)/
どうやら、伊鶴儀登左衛門の切り札の男は、坂崎磐音に深い怨みを持つ者のようです。ハハーン、もしかするとあの人かな?
第4話:「寛政の戦い」、第5話:「最後の戦い」。国家老・坂崎正睦が動きます。藩士らに総登城を告げる触れ太鼓が鳴らされ、中老・伊鶴儀一派との対決となりますが、ここから後は実際に読んでからのお楽しみということで、あらすじを追うのは止めましょう(^o^)/



この長い物語を、作者はどうしめくくるのか、興味深い結末はなかなか後味の良いものでした。春風駘蕩が持ち味の主人公が悲劇で終わっては話が台無しですし、かといって単に刺客を倒し続けて終わりでは竜頭蛇尾の感を免れません。豊後関前藩の陽炎の辻で始まった物語を再び同じ地で閉じるという円環を、主従あるいは親子の世代交代という手法で後に続くらせん状の物語に転じることで、作者は余韻を残す結末に変えてしまいました。こういう作劇術の点からも、最終話をおもしろく読みました。

あとは、全巻一気再読というお楽しみが待っていますが、しばらくは雪かきと母屋の書棚の整理処分などに追われて、まだまだ先になりそうです。

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佐伯泰英『竹屋ノ渡~居眠り磐音江戸双紙(50)』を読む

2016年01月10日 06時03分42秒 | -佐伯泰英
だいぶ前に著者が50巻で完結予定と公言していたのが、先にもう一巻増えそうなのでゴメンネと予告していた『居眠り磐音江戸双紙』シリーズ、このたび第50巻と第51巻が同時刊行され、ようやく完結しましたが、作者はどんなふうに決着させたのか、興味深いところです。その第50巻、佐伯泰英著『竹屋ノ渡』を読みました。

第1話:「父と子」。姥捨の郷で生まれた空也クン、今や14歳となり、一人稽古の時期を過ぎて道場での稽古を許されています。その実力は、今や師範代となった神原辰之助も瞠目するまでに成長し、本人も父・磐音の後継者として自覚して来ているようです。江戸城において、将軍・徳川家斉と対面し、後継として認められたのですから、神保小路に尚武館道場を再興することも含めて、速水左近さんの助力が大きいですなあ。
第2話:「殴られ屋侍、戻る」。シリーズ第25巻『白桐ノ夢』(*1)で、殴られ屋という面白い商売をしていた武士がいました。実は旧藩を救った行為を逆恨みされ、敵として追われる立場でしたが、返り討ちにして諸国浪々の旅に出たのではなかったかと思います。その向田源兵衛さん、神保小路の尚武館道場が取り壊されたことを知り、小梅村を訪ねてきたのでした。うーむ、この人の再登場という私の予想は、見事に当たりました(^o^)/
第3話:「右近の決断」。速水右近にも婿入り話が舞い込み、実は迷っているところで向田源兵衛と立会うことになり、なにやら悟るところがあった模様です。おそらくは、剣術家として非情になりきれない自分の性格に気づいたということでしょう。婿入り話のお相手は、どうも右近の亡き友の妹らしい。いい話ではないですか。磐音は、神保小路に尚武館道場を再興した後の小梅村に、田丸輝信を補佐する形で向田源兵衛さんに客分として助力を依頼します。豊後関前藩では、奈緒母子が紅花栽培で苦労しているようです。残る気がかりは、土子順桂吉成との件です。
第4話:「尚武館再興」。今は物産事業で貧乏藩を返上したらしい関前藩は、尚武館道場の再興に祝い金五百両を奮発します。しかし、中居半蔵のねらいは別のところにありました。坂崎正睦が病がちとなった隙を狙って、どうも中老一派が私腹を肥やし、藩の実権を握ろうと画策しているらしい。坂崎磐音と空也の父子は直心影流の奥義を徳川家斉に披露し、尚武館は実質的に徳川家の道場となった形です。
第5話:「十一年目の誓い」。土子順桂吉成との果し合いは、酒を酌み交わした上で静かに始まり、見事に終わります。この場面は、歌舞伎というよりは能の場面のようですなあ。後に残る課題は、関前藩に残る、国家老・坂崎正睦が未だに引退できない事情に大鉈をふるうことでしょう。いつのまにか寛政の改革も終わりを告げ、松平定信も老中首座を退きます。



うーむ、本書の表題は、物語の結末に向かってこれまでの話の流れを渡すという意味も掛けたのでしょうか。舞台はどうやら豊後関前藩に移りそうな気配です。思えば、『陽炎ノ辻』で三人の若者が斬り合うはめに陥った物語の始まりも豊後関前藩でした。長い物語の大団円は、やはり始まりに戻らなければならないのでしょう。

(*1):佐伯泰英『白桐ノ夢~居眠り磐音江戸双紙(25)』を読む~「電網郊外散歩道」2009年7月

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佐伯泰英『意次ノ妄~居眠り磐音江戸双紙(49)』を読む

2015年08月04日 06時04分02秒 | -佐伯泰英
長く続くシリーズもいよいよゴールが近くなった大長編『居眠り磐音江戸双紙』シリーズですが、最新刊の著者の「あとがき」によれば、予定よりも1巻だけ多くなり、来年(平成28年)の1月に第50巻と第51巻を同時刊行して完結、だそうです。ふむふむ、それは目出度い。ほとんど惰性で読んでいるとはいえ、結末はやはり気になります。



小梅村の尚武館坂崎道場では、空也クンと睦月チャンの兄妹が老犬・白山を心配しています。前の老中・田沼意次の死去の知らせをもたらしたのは、今は引退している速水左近。もう一つの情報は、老中首座に就いた松平定信が、田沼政治を急展開すべく、某商人をブレーンに据えようとしているとのこと。それが今津屋でないところに、定信からの依頼=将軍の剣術師範就任を断りつづけている坂崎磐音との距離感があらわれているようです。

しかし、書名のとおり、田沼意次氏は懲りない人のようで、またまたナントカの一つ覚えのように、生前に刺客を放っていたようなのです。全部で49巻も続けて読んできた読者にしてみれば、こうなるともはや「作者の妄」に近い展開ですなあ(^o^)/

松平定信の「寛政の改革」で奢侈禁止令が出されるというインサイダー情報を入手した磐音クンは、最上屋奈緒の紅花商売を心配しますし、松浦弥助の情報によって判明した柳生永為ら七人の刺客団を切り崩し、松平定信暗殺の未然防止のための策略をめぐらして、それは半ば成功しつつありますが……、というお話。



うーむ、この大長編エンターテインメントでは、敵はくるくる変わるのが特徴です。始まりは確か豊後関前藩の内紛で、黒幕は国家老の宍戸文六でした。次は今津屋が両替屋行司に就任する以前の同業者仲間の実権争いで、この時は今津屋は田沼側だったはず。それがいつの間にか田沼父子が巨大な敵に変わってしまい、次々に妙ちきりんな刺客を送り込むだけでなく、豊後関前藩の江戸家老が企んだ阿片抜け荷の黒幕さえも田沼父子になってしまっていました。ところがトリックスター佐野善左衛門さんの軽挙妄動によって田沼意知が死に、今回は意次さんも亡くなります。物語としては新たな敵が出現しないと困るわけで、土子順桂さんが最後の敵になるのでしょうか、それとも松平定信が敵に回ることになるのか?

やれやれ、つまるところ武術は護身の術であり、敵を倒すのは政治と軍事なのだ、ということか。結局は「一介の剣術家・坂崎磐音、次々に押し寄せる刺客をしのぎきることができるか?!」という物語に終わってしまうのでしょうか(^o^)/
全部で51巻もかかってそれだけに終わるのかどうか、作者のお手並み拝見、といった気分です(^o^)/

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佐伯泰英『白鶴ノ紅~居眠り磐音江戸双紙(48)』を読む

2015年02月05日 06時03分21秒 | -佐伯泰英
双葉文庫の新刊で、佐伯泰英著『白鶴ノ紅~居眠り磐音江戸双紙(48)』を読みました。前巻では、出羽山形の前田屋奈緒母子の救出のために弥助と霧子の師弟が向かっておりましたが、本巻では途中経過がごそっと省略され、その二年後、奈緒母子は江戸で無事に暮らしております。



第1章:「輝信の迷い」。利次郎と辰平は、それぞれ霧子・お杏と祝言を挙げ、豊後関前藩及び筑後福岡藩黒田家の家臣となっております。尚武館坂崎道場に残された田丸輝信は、自身の将来に悩み、焦ります。ところが、輝信の兄の一人次助は、金もうけがしたいと家を出てすでに武士ではなく、その地歩をしっかりと固めていますが、弟に十年の修業を無にしてはならないと諌めます。心優しく都合に合わせるのが得意な作者は、なんと早苗さんを相手方に配しました(^o^)/

第2章:「八朔の雪」。奈緒母子の江戸暮らしは、まずは順調のようです。奈緒さんは、職人として一流であるだけでなくビジネスの才能もあるようで、「最上紅前田屋」を開店します。商うのは紅染めだけでなく、口紅も製造販売するのだとか。ふーむ、紅花から色素カルタミン(*1)を抽出精製するのですか。そのためには大量の紅餅を必要とし、入手にはかなりの元手が必要なはず。バックについたのは、某今津屋か、あるいは出羽山形藩でしょうか(^o^)/

第3章:「秋世の奉公」。商売上手な奈緒さんの最上紅前田屋は繁盛し、武村武左衛門の末娘・秋世が本格的に手伝うことになります。現代風に言えば、アルバイト君が正社員に昇格したようなものか。「また一人、娘が旅立つのか」と呟く武左衛門の感傷は理解できなくもないですが、日ごろの行状を思えば「よく言うよ」の部類でしょうか(^o^)/
それよりも、久々に新たな登場人物です。豊後関前藩の新顔で、物産所に勤務することになった米内作左衛門さんは、なかなか頑張り屋のようです。剣の才能はそれほどでもないようですが、経理総務畑に強いという想定で、もしかして中居半蔵が亡くなるとか、その準備のための布石? 幕府のほうも、将軍家治が危篤状態にあり、今後どういう展開になるのかちょいと先が読めません。

第4章:「老中罷免」。老中・田沼意次は、田沼意知の城中刃傷事件による死去を受けて、急速にその力を失います。さらに、領地は減封、上屋敷は没収、本人は謹慎の沙汰を受けてのことでした。豊後関前藩では、権力中枢の動きとは関係なく、藩主実高と磐音が、旧姓小林奈緒の江戸での暮らしぶりを話題にしながら歓談します。しかし、だいぶ酔っているにもかかわらず、刺客の襲撃を軽く退けるなど、磐音クンは相変わらずスーパーマンです。むしろ看過できないのは、田丸輝信と早苗サンの進展もさることながら、次の権力者となる松平定信の腹の内でしょう。

第5章:「お代の還俗」。鎌倉の尼寺・東慶寺を訪ねた中居半蔵と磐音の目的は、藩主実高の正妻であるお代の還俗を迎えに行くことでした。奈緒の運命と殿からのプレゼントである紅板がお代の決意を促し、六郷の渡しで養子の俊次との対面となります。もとはといえば、嫡子のないことが原因となった夫婦の溝は、人柄の良い福坂俊次の存在により、解消されていくことが期待できます。

さて、残るはあと二巻。

(*1):紅花の赤い色素カルタミンを得るには…… 紅花の花弁を押し潰してもみ洗いし、水溶性の黄色い色素を溶かし出し、残りの花弁を練り固めて紅餅にします。この中に、水に不溶の赤い色素カルタミンが含まれています。草木灰等に含まれる炭酸カリウムを用いてアルカリ性の水溶液を作り、これに紅餅をほぐして溶かし、カルタミンのアルカリ塩にして溶かし出します。紅餅のかすを取り除き、きれいにしたカルタミンのアルカリ塩水溶液に酢またはクエン酸を加えて中和し、水に不溶のカルタミン色素だけを沈殿させるという原理で、得られるようです。

(*2):カルタミンの分子構造の推定は、丹下ウメさんとともに我が国初の女性帝国大学学士となった黒田チカさんの業績(1929)でした。後に、実はC原子を介した二量体の構造であることが判明(学位論文:PDF)しましたが、NMRなど機器分析の装置もない時代に、ほぼ正しい構造を推定できていたことに驚かされます。


【追記】
『居眠り磐音』シリーズで、奈緒さんがらみで、出羽国山形だとか紅花だとか、地元ゆかりの単語が出てくると、とたんにいろいろと調べ始めます。今回はカルタミンの抽出法と、構造決定の化学史でした。自分でも物好きだなあとは思いますが、こういうのがけっこう楽しいものです(^o^)/
まあ、山形在住の『居眠り磐音』ファンで化学専攻のブロガーの記事ということで、もしかしたら他にはない特徴かもしれません(^o^)/

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佐伯泰英『失意ノ方~居眠り磐音江戸双紙(47)』を読む

2015年01月24日 06時09分06秒 | -佐伯泰英
『陽炎ノ辻』に始まる佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙』シリーズも、ついに第47巻まで到達しました。本巻では、絵師・北尾重政の絵筆を通して、小梅村の尚武館坂崎道場の日常風景を描きながら、出羽国山形の前田屋奈緒母子の苦難を救うべく旅立つ師弟、老中田沼意次と磐音の対面など、エンターテインメント的名場面ば展開されます。

第1章:「弥助の出自」。幕府の密偵であった松浦弥助は、わが手にかけた若者の遺髪を持ち、伊賀の泉下寺に参ります。供養の後に向かったのは、出羽国山形の前田屋奈緒母子のもとへ、でした。磐音は偶然にもやくざの借金取りに追われる絵師の北尾重政を助け、尚武館坂崎道場に居候させることになります。

第2章:「神保小路の屋敷」。弥助を助けるべく霧子も山形へ出発し、磐音は奈緒母子を迎え江戸で暮らせるように根回しを始めます。やっぱり頼るのは今津屋の由蔵さん。しかし由蔵さんの情報網・人脈の幅広さと的確さには、驚かされますね~(^o^)/

第3章:「婿選び」。奈緒の働く先については、本所の紅花染め職人の篠之助親方が力になってくれそうです。ところが道場に戻ったら、迷惑な爺さんと孫娘と七人の侍が道場破りに来ていました。なんでも、孫娘の婿選びのために剣術の試合をしたいという申し出、それはまた破天荒なというか、無茶苦茶というか、作者はよくもまあこういうストーリーを考えだすものです(^o^)/

第4章:「玄妙妖術ひな」。妖女の妖しさは、「八犬伝」中の「玉梓の怨霊~」なみですね~(^o^)/
また、それを熱心にスケッチする北尾重政殿は、充分に怪奇作家の資格有りです。

第5章:「失意の方」。やっぱり! 田沼意知の墓前で意次と1対1で対面したというのに、磐音クンは家基の、あるいは養父母の仇!と立ち向かうこともせず、どうやらその気はなくなったようです。田沼意次の晩年は、誰かに仇討されたという史実はないので、磐音が敗北するか、仇討を諦めるか、悟りを開いて赦しを与えるくらいしかないのでは(^o^)/
さて、作者はどのような結末を与えるのでしょうか。あと残すは3巻です。

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佐伯泰英『弓張ノ月~居眠り磐音江戸双紙(46)』を読む

2014年07月30日 06時01分09秒 | -佐伯泰英
双葉文庫の人気シリーズ、佐伯泰英著『弓張ノ月~居眠り磐音江戸双紙(46)』を読みました。マンネリが懸念される書き下ろしスタイルの長編時代小説も、ついにここまでお付き合いしてしまいました。こうなれば、あとは完結を目指すのみです(^o^)/

本巻は、要するにこれまでチョコマカと動いてきたトリックスター佐野善左衛門が、本来の歴史的役割である、田沼意知に対する江戸城中での刃傷事件を決行します。その背後にあるのが、白河藩主松平定信を中心とする反田沼勢力の動きなわけですが、こうなると主人公の役割は霞んでしまいます。そこで、将軍の信頼をバックに権力を握る田沼意次の怒りから、剣術の弟子の一人である松平定信らをどう守るのかが当面の課題となります。また本筋としては、磐音らが田沼意次を仇として狙いつづけるのかどうかが今後の課題としてクローズアップされてくる、という内容です。

第1章:「行動の朝」。当日の朝の、小梅村尚武館道場、米沢町今津屋、品川柳次郎家、金兵衛長屋、鵜飼百助の研ぎ場など、嵐の前の様子を描きます。弥助と霧子の師弟の忍びが、しばらくぶりに屋敷に戻った佐野善左衛門の昂ぶりを磐音に伝えます。
第2章:「お杏の覚悟」。嫁入り前の箱崎屋お杏さんは、こんなところに居続けてよいのか? 不思議ですが、良いのだそうです(^o^)/ まあ、話の都合上、ともに困難に遭遇してくれないと、坂崎ファミリーの一員になれません(^o^)/
この章でも、弥助・霧子の忍びの師弟が活躍の中心となりますが、なにやら豊後関前藩の坂崎正能が登場したりすると、今後も坂崎パパの出番がありそうです。
第3章:「五人の若年寄」。江戸城中、田沼意知刃傷事件の場面を描きます。作者は、濡れ場はあまり得意ではないようですが、こういう緊迫した事件を描くのはうまいです。ポイントは、刃傷事件で使われた刀の持ち主を問われるのを恐れ、佐野家の刀とすり替える経緯です。なるほど、それで研ぎ師・鵜飼百助さんが意味を持つわけですね。
第4章:「斬奸状」。事件を受けて、幕府内部で政治的に事後処理が行われる様子を描くとともに、磐音が密かに反田沼勢力の自重を求める書状を送った、その効果が描かれます。当然のことながら、各藩の若手による剣術試合のほうは延期になります。
第5章:「無為の策」。南町奉行所のエース、大頭の知恵者同心・笹塚孫一は登場するわ、出羽の国の前田奈緒母子は登場して江戸に帰ることになるわ、なにやら関係者がみんな江戸に集まってきそうな勢いです。大団円に向かって歩み始めたのか、それとも作者お得意の壮烈な悲劇に向かって歩み始めたのか、待て、次号! という章です。



そうですね~。うーむ。理由が未だによくわかりませんが、佐々木玲圓夫妻が殉死したのは、田沼意次が徳川家基を暗殺したからで、田沼意次は師匠夫妻の仇のはず。佐野善左衛門が田沼意知に切りつけたからといって、そこは変わらないと思います。にもかかわらず、仏間に入って合掌したら死んだ玲圓が「人の命を絶つことではのうて、生かす道を考えよ」という声が聞こえたという場面は、不思議です。これは、長い連載の間に、主人公磐音クンの気が変わったとしか考えようがない(^o^)/

まあ、扇を集めて旅した(*1)結果、奈緒をあきらめておこんにのりかえることになった(*2)わけですが、あのときも急に気が変わったようですし、今度もまた気が変わるのは、作者の都合で別に不思議ではありません(^o^)/
いずれにしろ、この大江戸エンターテインメントの結末をどうつけることになるのか、今後が楽しみです(^o^)/

(*1):佐伯泰英『雪華ノ里~居眠り磐音江戸双紙(4)』を読む~「電網郊外散歩道」2008年10月
(*2):佐伯泰英『龍天ノ門~居眠り磐音江戸双紙(5)』を読む~「電網郊外散歩道」2008年11月


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佐伯泰英『空蝉ノ念~居眠り磐音江戸双紙(45)』を読む

2014年01月20日 06時02分28秒 | -佐伯泰英
双葉文庫の一月新刊で、佐伯泰英著『空蝉ノ念~居眠り磐音江戸双紙』を読みました。長く続くシリーズも第45巻となり、四捨五入すれば50の大台に乗るようになりました。どんな形で完結するものか、興味深いところです。

第1章:「肘砕き新三」。前巻で、顔なじみの奉行所同心だったからと油断し不覚にも伝馬町女牢に幽閉されるというはめにおちいった松平辰平の名誉挽回に、磐音は肘砕き新三という老武芸者との対戦を指名します。辰平は見事にこれを斥けますが、どうも田沼父子の回し者というわけでもなさそうです。むしろ、佐野善左衛門が白河藩主の松平定信のもとに居るらしい、という情報が眼目か。

第2章:「三つのお守り札」。辰平と対戦し喀血した老武芸者の病状を案じた磐音は、桂川甫周国端の往診を請います。国端さんも、多忙の身なのにすすんで往診。エラいものです。一方、博多の豪商・箱崎屋の末娘・お杏と辰平との対面は、意外に早く実現してしまいます。

第3章:辰平は、お杏を屋敷に案内し、両親に引き合わせることになります。辰平の母お稲とお杏とは、なにやらいつの間にかメル友の関係になっているようで、これだから女性は油断がなりません(^o^)/ いっぽう、松平定信の屋敷を見張る木下一郎太と弥助・霧子ですが、番小屋の一造が貴重な情報をもたらします。佐野善左衛門は、やはり松平定信にかくまわれているとのこと。どうやら、政争のにおいがします。

第4章:「小梅村の宴」。辰平の両親と箱崎屋に今津屋も加わり、ビジネスとプライベートを兼ねたような宴に、福岡藩黒田家から客人があったり、無駄足となりましたが松平定信もやってきたりと、顔ぶれが賑やかです。そして、当然のことながら、主題は辰平とお杏との婚約と辰平の身の振り方です。福岡藩からの客人は、そのためのものでした。

第5章:「老武者の妄念」。箱崎屋の父娘は、尚武館坂崎道場の練習風景を見学します。辰平と利次郎との対決は火の出るような激しさで、胴相打ちとなります。一方、佐野善左衛門がかくまわれている松平定信の屋敷には、どうやら様々な勢力がひそかに顔を出しているようで、こういう政争には関わらないほうが賢明、という判断を、磐音クンもしたようです。それより、この老武者の一念こそ、題名どおり空蝉の念だったのではと思います。



チョコマカと動いていたトリックスター佐野善左衛門は、ようやく本来の歴史的役割の舞台に立つことになった模様。結末がどのように描かれるのか、ますます興味深いところです。

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佐伯泰英『湯島の罠~居眠り磐音江戸双紙(44)』を読む

2014年01月11日 06時01分43秒 | -佐伯泰英
双葉文庫の12月新刊で、佐伯泰英著『湯島の罠~居眠り磐音江戸双紙』を読みました。人気シリーズの第44巻です。当シリーズでは悪役となっている田沼意次・意知父子が失脚するまであと少しですので、トリックスター役の佐野善左衛門がウロチョロするのはしかたがないのですが、どうもこの人に振り回されて、話がいかにもセコイ感じが漂います。

第1章:「霧子の復活」。小梅村の民家を回収した尚武館坂崎道場の改築の最中に、陸奥白河藩藩主の松平定信が訪ねて来ます。殿様剣法でない、王者の剣を示唆されて、坂崎磐音クンと師弟の関係に。策士の殿様にしては、えらくあっさりと決めちゃった感があり、展開早い!復活した霧子は、田沼意次の愛妾だったおすなの弟・五十次を発見し、追跡します。どうやら五十次は、佐野善左衛門のチョコマカ行動を追っているようで、なんとか暗殺を防止します。

第2章:「闇読売」。師匠の坂崎磐音が弟子の重富利次郎の将来について案じているところへ、土佐藩の山内豊雍は、父の重富百太郎の隠居の代わりに利次郎が兄とともに奉公する願い出を、飢饉を理由にやんわりと拒絶します。現代ならば、不況を理由に、新規雇用の余裕はない、と言うところでしょう。一方、世間では佐野善左衛門が刷らせた田沼父子告発の闇読売が撒かれます。佐野善左衛門が田沼に予定よりも早く口を封じられては大変(^o^;)です。そこで考えてうった手が、もう一種類の闇読売でした。このあたり、毒をもって毒を制する謀略戦の様相を呈しております。

第3章:「五十次の始末」。白河藩主・松平定信さんは、再び小梅村の坂崎道場を訪ね、ずいぶん剣術修行に熱心です。まあ、田沼時代の後を継ぐ中心人物だけに、なんとか主人公の物語に絡めるには、剣術修行が一番良いという判断なのでしょう。松平辰平クンは、坂崎道場の普請改築の完成記念に、ゆかりの藩の若手からなる剣術試合を企画します。ふーむ、これは反田沼の諸藩連合の布石と見ました。一方、五十次の命を救った弥助・霧子の忍びの師弟は、豊後関前藩の明和三丸の水夫として送り込みます。

第4章:「辰平失踪」。利次郎と霧子のカップルを、豊後関前藩は剣術師範として引き受けても良いと言います。将来の就職先として、思いがけない提案に喜んだものの、それでは田沼父子との戦いから離脱することになろうからと、二人はしばらく待ってほしいと要望。ふーむ、磐音クンは良い弟子を持ちました(^o^)/
ところが、剣術試合の発案者である辰平が行方不明になります。どうも、湯島天神から奉行所の同心一行に同行する形で、途中から消息不明になっているのです。久々に笹塚孫一の出番です。

第5章:「女牢の髷」。笹塚孫一と奉行の牧野成賢との会話は、いかにも古狸と大狸とのやりとりのようでいて、かなり有益なものでした。佐野善左衛門の行動に、なぜいちいちそこまで義理立てしなければならないのか、作者の都合だとはわかるのですが、登場人物の側の事情はよくわかりません。とにかく松平辰平救出作戦は決行され、戦いは始まりました。



木下一郎太と酒豪らしい菊乃さんとの間に、どうやらおめでたのようです。ただし、作者は幸せな夫婦を苦難に遭わせるという習性がありますので、うかつには喜べませんが(^o^)/

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佐伯泰英『徒然ノ冬~居眠り磐音江戸双紙(43)』を読む

2013年07月28日 06時03分02秒 | -佐伯泰英
いつの頃からか、主人公のはずの坂崎磐音が無敵に強すぎるのに加え、おこんとの仲も盤石で物語にならないと踏んだのでしょうか、作者は周辺の若者たちの人間的な成長を意識して描くようになっています。その一人、元雑賀衆の女忍・霧子が、豊後関前藩の養嗣子として英明さをうかがわせる福坂俊次への襲撃事件で負傷し、毒矢によって生死の境をさまよっている状況から物語は始まります。

第1章:「修太郎の迷い」。若狭小浜藩の江戸藩邸から船で小梅村の尚武館坂崎道場に戻った霧子でしたが、依然として意識が回復しません。他人の夢の中に入り込んで戦うことさえできるスーパー磐音クンが、霧子の意識の中に入り込んで、ちょいと揺り動かせば目覚めるような気もするのですが、そこはやっぱり若い利次郎の出番を作る必要がありまして(^o^)/
竹村武左衛門の長男・修太郎は、本シリーズには珍しい「落ちこぼれエピソード」かと思いましたが、ちゃんと向き・不向きを考慮した展開が用意されておりました。

第2章:「万来見舞客」。尚武館の東西戦には、速水左近もPTAの立場で見学に来ており、加えていろいろな重要人物も顔を見せております。奥の接待はおこんさんですから、粗相があるはずもなく、密談もごく自然に行えるのでしょう。表向きは直心影流の奥義秘伝公開にびっくりしているところですが、実は背後の政治的な場の設定に、作者の苦労がうかがえます。霧子さんの回復は、目出度いことです。

第3章:「師走奔走」。師匠というのは大変です。弟子のために東奔西走しなくてはなりません。利次郎・霧子に加え、竹村修太郎の研修志願の一件もあります。さらに、遠く出羽国山形では、奈緒が幼児を三人もかかえて難儀をしている模様です。それにしても利次郎クン、もう27歳にもなっているのですか。なんだかそんな年齢には思えませんね~(^o^)/

第4章:「大つごもり」。竹村修太郎は、鵜飼百助のもとで研ぎ師の修行をすることになり、利次郎と霧子は相思相愛の度を深めますが、松平辰平と筑前博多の豪商・箱崎屋の末娘お杏との仲はどうなるのか。遠距離文通の中身までは明らかにされておりませんが、このへんのじれったいやりとりは、作者の不得意とする分野なのでしょう(^o^)/
磐音と利次郎は、旧藩主・福坂実高に拝謁、物産事業で景気がいいようで、ポンと五百両も謝礼を出してくれました。1両を10万円とすると、500両は5000万円に相当します。なんだか出来すぎた話ですが、それを言うならもともとこの物語が出来杉君のお話ですしね~(^o^)/
帰路の強盗事件なんて、ほんの付け足し、原稿用紙の枚数稼ぎのようなものか(^o^)/

第5章:「極意披露」。年が明けて天明4年。田沼意知が斬られる事件まで、あと3ヶ月となりました。どうりで、佐野善左衛門がチョコチョコ登場するわけです。そして小梅村の尚武館坂崎道場では、五百両で増築の話が進みます。新年の具足開きの際には、若狭小浜藩主・酒井忠貫がお忍びで姿を見せ、速水左近と同席します。磐音と辰平による直心影流の奥義披露は、静かな、力強い感動を呼び起こします。そして、出羽国山形の奈緒からは、近況を綴る礼状が届きます。事件政変を準備する静けさと見ましたが、さてどうか。

この長い長~い物語も、あと二年で田沼意次が失脚することになりますので、どういう結末になるのかが興味深いところです。

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佐伯泰英『木槿ノ賦~居眠り磐音江戸双紙(42)』を読む

2013年02月10日 06時05分23秒 | -佐伯泰英
昨年12月と今年の1月と、2ヶ月連続して刊行された佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙』シリーズのうち、最新刊の『木槿ノ賦』を読みました。木槿はムクゲと読ませているようで、晩夏に咲く庭木で、小型の芙蓉のような花が、朝に咲き、夕べには落ちる、あれでしょうか。

第1章:「若武者」。これは、利次郎でも辰平でもありません。なんと、継嗣のない藩主・福坂実高が養子に迎えた福坂俊次のことでした。なるほど、これが昼行灯と評される国家老・坂崎正睦の秘策・切り札だったわけですね。しかも、すでに上様のお目通りも実現して、名実共に継嗣として認められたといいます。田沼意次が、よく認めたものです。ふーむ、これなら、実高とお代の方との和解と再会も不可能ではないと見ました。

第2章:「照埜の墓参り」。実高の養子・俊次は、幕府の定めにより、人質として江戸に残らなければなりません。実高は、磐音に師事し、修行するように命じます。むろん俊次は最初からそれを願っていたわけですが。坂崎正睦と照埜は、国元に帰ることとなります。警護役の若侍もなかなか筋が良いようで、関前藩は剣術の方は人材が豊富なようです。

第3章:「旅立ちの朝」。坂崎正睦と照埜は小梅村を出立します。別れの宴は多士済々、賑やかでしたが、出発の朝はぐっと密やかに。しかし、関前藩の次期藩主・福坂俊次も見送りに来ておりました。陸路の途中、鎌倉の縁切寺に立ち寄ったのは、お代の方との対面の場を準備したためでしょう。作者は、人情で盛り上げようとしているようです。もちろん、多少の攻防戦は用意されておりますが。

第4章:「俄の宵」。出来の良い若者たちがいれば相対的に不出来な若者もいるというのは、自然なことです。竹村武左衛門の息子の修太郎は、母親の過保護がたたったか、どうも思わしくありません。さらに、新たな襲撃者は、短弓に南蛮渡りの猛毒を塗ってあるとか。物騒な話です。加えて磐音は、短慮を絵に描いたような佐野善左衛門の、田沼意次に対するストレス発散のお相手も勤め、カウンセラーの役割も果たします。遠く山形では、奈緒が前田屋内蔵助の介護をする事態も伝えられ、心配事は絶えません。

第5章:「短刀の謎」。尚武館佐々木道場の改築の際に、地中から出土した二振りの古刀のうち、短刀の研ぎが進みます。そこには、葵の御紋とともに、「三河国佐々木国為代々用命 家康」という言葉が刻まれておりました。武家地の拝領屋敷といい、徳川家と佐々木家との深い関わりとともに、何らかの秘命を示唆します。それはそうと、起倒流鈴木清兵衛道場の師範・池内某が、関前藩継嗣・福坂俊次を襲撃させようという密談を、弥助が聞いてしまいます。なんとか襲撃の舟は撃退したものの、藤子滋助が負傷し、霧子が毒矢で深手を負ってしまいます。許せぬ所行と、起倒流鈴木道場に出向き、白河藩の松平定信ら諸大名の居並ぶ前で、主を悶絶させたものの、霧子の生死は危うそうです。

若き徳川家基が急逝するのは歴史的事実ですから、これはいたしかたないものの、佐々木玲圓夫妻を殉死させた作者です。ここで霧子さんを死なせることは充分にありえます。『水滸伝』みたいに、登場人物を次々と死なせる心づもりじゃなかろうなと、先読みしすぎの読者は、つい警戒してしまいます(^o^)/



意外だったのは、木下一郎太の伴侶となった菊乃さんがお酒が好きなこと。まさか、それで離縁になったわけではないでしょうが、全国の酒蔵にとっては心強い味方でしょう。女性がみな甘党とは限りません。男性がみな辛党とは限らないのと同様です。

もう一つ付け加えれば、実高とお代の方の不和は、藩主は隔年で国元へ、正室と継嗣は通年で江戸に暮らさなければならないという幕府の定めた人質制度が背景になっていることはほぼ間違いないことでしょう。単身赴任の経験から言っても、そのことは確かなことです。一般に、愛情は会っている時間に比例し、離れている距離に反比例するものです。これを、当方では「愛情に関するnarkejpの法則」と呼んでおります(^o^)/

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佐伯泰英『散華ノ刻~居眠り磐音江戸双紙(41)』を読む

2013年02月04日 06時05分43秒 | -佐伯泰英
前巻では、豊後関前藩の国家老にして坂崎磐音の父親である坂崎正睦が江戸に密行し、江戸家老一派に拉致されたところを救出されるというお話でした。背景にあったのが江戸家老一派の阿片抜け荷であり、さらに背後には田沼意次・意友父子がいるというのですから、ずいぶんとまあ、ご都合主義も甚だしい展開ではありますが、そこはそれ、大江戸エンターテインメントですから(^o^)/

第1章:「睨み合い」。父正睦を救出した磐音は、小梅村の尚武館坂崎道場で弟子たちを指導している毎日です。正睦と速水左近の対談を通じて、一定の目処をつけた上で、懸案解決に向け、磐音は宮戸川の鰻を手土産に、豊後関前藩の江戸屋敷に赴きますが、お代の方の変わりように驚くばかりです。でも、伝えるべき情報はきちんと伝えます。これ、大事。

第2章:「世継ぎ」。磐音は中居半蔵と会い、藩主実高とお代の方夫婦の離間の経緯を告げられます。磐音らが紀州の隠れ里で田沼意次・意知一派の追求をしのいでいたとき、世継ぎのない藩の行く末を思う弱みを突かれ、正室に無断で側室を置いたことが決定的でした。それは、江戸家老・鑓兼参右衛門のたくらみであり、お代の方を籠絡することで藩政の実権を握ろうとするものです。中居半蔵は、国家老・坂崎正睦と会い、反撃の策を練ります。その第一歩は、坂崎正睦がお代の方に対面することでした。

第3章:「堀留の蝮」。組織の職階上は、江戸家老よりも国家老のほうが上位です。このあたりは、本社の専務取締役と支社長との関係のようなものでしょうか。中居半蔵の後任が決まらない物産方の組頭を、国家老の職権で稲葉諒三郎を任命、正式には藩主・実高の上府の際に追認を得ることとして、物産事業はようやく再開されます。深刻な話を中和しようと、武左衛門の放浪のエピソードが挿入されますが、どうもあまり面白くありません。むしろ、物産事業を妨害するやくざ者たちを撃退する利次郎の活躍のほうが面白い(^o^)/

第4章:「祝い着」。紀伊藩剣術指南を藩主直々に命じられた関係で、紀伊、尾張、関前など各藩から尚武館道場に修行に通う者が増加します。縫箔の修行中のおそめは京都に修行に上ることとなり、赤子の祝い着を持参し、小梅村を訪れます。時の流れは、少年と少女を頼もしい若者に変えています。一方、弥助と霧子の調べにより、鑓兼参右衛門と田沼一派との密談内容が判明し、坂崎正睦は速水左近、中居半蔵らと連携をとりながら、藩主・実高の名代として藩邸に乗り込むこととなります。もちろん、磐音は実高の意を体し、護衛として随行します。

第5章:「再びの悲劇」。この章は、江戸屋敷に巣食う鑓兼一派と対決し、勝利を収め、事態の収拾に苦慮する内容ですが、子を持つ・持たぬが自由ではなかった時代が舞台とはいえ、正室お代の方がいささか哀れです。

ところで、国家老がこんなに長期間国元を空けていて、関前藩の行政は大丈夫なのでしょうか。藩主がいるわけだから、最終決裁は大丈夫なのでしょうが、まさか藩主が自ら実務を取り仕切るわけはないので、組織上の代理、補佐役の存在が注目されるところです。

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佐伯泰英『春霞ノ乱~居眠り磐音江戸双紙(40)』を読む

2012年11月01日 06時02分17秒 | -佐伯泰英
双葉文庫の新刊で、佐伯泰英著『春霞ノ乱~居眠り磐音江戸双紙(40)』を読みました。表紙は舟着き場での祖母と孫の遭遇の場面のようで、青緑を基調とした絵は、いかにも時代を感じさせます。

第1章:「思わぬ来訪者」。国家老の奥方の江戸入りとは、それだけで敵方に大きな攻撃材料を与えるようなものでしょうに、そんなことは本作のような講談調大江戸エンターテインメントには問題外、ひたすら祖母と孫の対面の場面を盛り上げます。
第2章:「突き傷」。関前藩の新造船で阿片の抜け荷が行われているとの疑惑が浮上し、藩主実高と国家老・坂崎正能とが合意の上で、江戸屋敷に直接乗り込むことを計画したらしいことが判明。ところが、正能は何者かに拉致されてしまいます。中居半蔵が命じていた陰目付もまた、背中からの突きで殺害されてしまいます。
第3章:「必殺の突き」。坂崎正能にひそかに随行した者の情報によれば、かつて同じ突き傷で死者が出た船にも乗っていた者は二名。帳付方の内藤朔次郎を試しますが、尻尾を出しません。江戸家老の名前は、何かやりかねない鑓兼参右衛門というもので、怪しさ満開です。
第4章:「正能の行方」。父の行方を探索する磐音は、江戸家老の鑓兼参右衛門の身元調査を始めます。紀伊藩の御目付の情報をたどると、紀伊和歌山の伊丹家から豊後関前の鑓兼家に養子に入ったことなどをつかみます。また、紀伊徳川家当主の治貞公直々に、紀伊藩江戸屋敷の剣術指南を命じられます。そして、正能の行方は、意外な場所でした。
第5章:「照埜の憂い」。磐音、平助、弥助、霧子、辰平、利次郎らによる正能救出作戦と、関前藩新造船・明和三丸における争闘が描かれて、前編の幕となります。どうやらこの事件は、まだまだ後まで尾を引きそうです。



それにしても豊後関前藩というのは、なんと争い事が絶えない藩であることか、という批判を予想したのか、小藩の阿片抜け荷も実は田沼意次・意知父子がらみで、江戸家老も田沼につながる人物ときては、いくらなんでも出来杉君でしょう(^o^)/
それほどに用意周到な田沼父子が、公儀隠密も動かせる立場にありながら、なぜ金兵衛や由蔵や幸吉、おそめ等の身近な人々を人質としないのか、案外に田沼さん(*)もうっかり者なのでしょう、きっと(^o^)/

(*):時代小説における田沼意次の描き方~「電網郊外散歩道」2009年1月
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佐伯泰英『秋思ノ人~居眠り磐音江戸双紙(39)』を読む

2012年06月27日 06時02分46秒 | -佐伯泰英
酒席の待ち時間に、ふらりと最寄りの書店に入ったときに、佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙』シリーズ第39巻『秋思ノ人』が刊行されているのを見つけ、さっそく購入して読みました。

第1章:「速水左近の再起」。物語の始まりは、山梨県の人が聞いたら怒り出しそうな「甲府勤番山流し」などという境遇にある速水左近さんの生活ぶりです。やっぱり清廉潔白、公明正大、誠心誠意、勤勉力行な日々を送っており、地元の人や下級官吏たちから絶大なる信頼を得ておりました。幕府の御側御用取次役であった速水左近さん、田沼意次に対して徳川御三家が勢ぞろいして速水左近の復権を要求したことで、総者番に任ぜられます。このお役目は、朝廷との対応なども含まれることになるのでしょうか、磐音が紀州滞在時に仲良くなった人たちとのご縁が出てきそうです。でも、それは江戸まで無事に帰れたらの話。
第2章:「抜け道」。速水左近の甲府出立を三日早めるようにと言う通達のおかげで、磐音らによる警護の計画は出遅れます。速水杢之助・右近の兄弟は、父を警護するために、磐音と霧子とともに出立します。そのころ速水左近の一行は、老中間が足を挫いてしまい、途中の温泉で療養中。
第3章:「待ち伏せ」。飛び道具を用いた待ち伏せに、弥助と霧子が活躍します。杢之助と右近の二人の息子が助勢に駆けつけると知って、速水左近さんは思わず感動したようです。磐音が登場した時点で、もう決着は着いたようなものです。磐音が強すぎるため物語になりにくいので、都合悪く間に合わない場面に周辺人物が活躍するように変えたのかもしれません(^o^;)>poripori
ただし、田沼意知が短気な佐野善左衛門政言を取り込もうとする動きを描いた場面は、後に重要な伏線となると思われます。
第4章:「戻ってきた三味線」、第5章:「果てなき戦い」。三味線作りの名人・鶴吉が田沼意次の愛妾おすなのために作った三味線を、遊び人のおすなの弟・五十次が持ってきたとのこと。鶴吉が磐音に伝えた情報は、やはり今後の展開に絡むものなのでしょうか。北尾重政や吉原会所の四郎兵衛など、懐かしの顔ぶれが再登場します。五十次を背後で操るのは、元黒鍬者の仁左衛門という男のようで、霧子さんは、仁左衛門の家に住み込みます。磐音vs田沼父子に加えて、怪しい第三の男の登場でしょうか。なんとなく、波乱が予想されます。おこんさんと空也クンは、申し訳程度に登場し、あまり大きな出番はありません。



佐野善左衛門という人は、もしかして田沼意知に切りつけた人?田沼父子の失脚のきっかけになるのが、佐野さんの短気な性格だとしたら、あまりぱっとしない結末になりそうなのですが、はたしてどうか(^o^;)>poripori

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佐伯泰英『東雲ノ空~居眠り磐音江戸双紙(38)』を読む

2012年02月08日 06時03分00秒 | -佐伯泰英
この一月に発売されたばかりの最新作『東雲ノ空』を読みました。佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙』シリーズの第38巻です。
当ブログでは、平岩弓枝著『御宿かわせみ』シリーズを抜き去り、幕藩体制の下、大長編エンターテインメントとして、最長連載となっております。さて、どこまで続きますやら。

第1章:「橋上の待ち人」。磐音・おこんらの一行は江戸に到着するのですが、身代わり大作戦とは考えましたね。しかも、品川柳次郎・お有夫婦が一役買うとは、意表をついたグッドアイデアです。御寮のわきの農家を改築して、小さいながらも道場とするとは、よく田沼一派の妨害を受けなかったものと不思議です。
第2章:「一同再会」。金兵衛さんと由蔵さんの二人とも、空也クンを前に大感激。尚武館道場の再出発を東雲の空に誓います。利次郎は霧子を伴い父親に無事帰着の挨拶、意中の人・霧子さんを堂々と紹介します。なかなかすがすがしく立派です。
第3章:「霧子の迷い」。作者は、利次郎だけがホットな話題ではバランスが取れないと感じたか、辰平クンにも博多の箱崎屋の末娘お杏さんというお相手を急遽設定したようです。それにしても、雑賀の下忍から旗本家の次男坊の嫁にというのも、たしかに激変には違いありません。まあ、このコンビならお似合いだとは思いますが。そうしているうちに、弥助の正体も判明し、公儀お庭番衆の暗闘も描かれます。鵜飼百助さんには次男坊が後継となりそうですし、今津屋への押し込みも未遂で捕えてしまい、南町奉行所の笹塚孫一・木下一郎太とも再会し、江戸の人たちの半分くらいは挨拶を済ませたくらいかも。
第4章:……と思ったら、次の章は「挨拶まわり」という題でした。船宿川清にも挨拶を済ませて戻ってみると、弥助が帰っておりました。公儀お庭番衆の組織改変の立役者であった柴崎露庵のもとへ復命したとのこと。なるほど、公儀お庭番が組織に反して一人だけ磐音を助けるのはおかしい。それで、作者は弥助に組織を抜けるという措置を取らせたのでしょう。新たに故・佐々木玲圓の屋敷の主となった日向鵬斎とかいう者が訪ねて来ますが、あまり大物ではなさそうで、竹村武左衛門の娘の早苗が小梅村の尚武館道場に戻ってくるとか、身重のおこんの診察のために、桂川国端・桜子夫妻に会ったりとか、速水左近の奥方に挨拶し励ましたりするなど、なかなか多忙です。
第5章:「月命日」。徳川家基に殉死した佐々木玲圓・おえい夫妻の月命日の日に、坂崎磐音は監視の目をやり過ごし、佐々木家の墓所に参ったはずが、なぜか公儀お庭番道灌組の頭・甲賀臑八が単独で待ち受けていました。これも不自然な設定です。これまでの磐音の強さを知るお庭番ならば、集団で待ち受けるのが普通ですし、第一、なぜ佐々木家の隠し墓所を知っていたのかも解せない。死んだ雹田平なら不思議な透視術という説明もありましたが、甲賀臑八は登場早々に自爆です。あっけない!利次郎ではありませんが、「他愛もないな」と思ってしまいます(^o^)/
谷戸の淵のお茅さんのところへは、短気な佐野善左衛門が姿を見せ、江戸城内では田沼意次と御三家のやりとりがあって、速水左近の復活の可能性が出てきました。あまり強くもないのに出番の多い蟋蟀駿次郎という武士は、今後どんな役回りを演じるのか。たぶん、磐音・おこんの子供の誘拐とか、卑怯なものだろうと想像しますが、さて、どうか(^o^)/

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佐伯泰英『一矢ノ秋~居眠り磐音江戸双紙(37)』を読む

2012年01月28日 06時02分47秒 | -佐伯泰英
佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙』シリーズも、第37巻となりました。『一矢ノ秋』という題名からみて、敵に一矢を報いる戦いの季節ということでしょう。坂崎磐音クンは、あまりに強すぎて、もう天下無敵というところで、弱点と言えば、おこん・空也という家族ができたこと。だからこそ、紀州高野山の奥にある姥捨ノ郷に隠れ住み、しばらく時を待っていたのでした。

第1章:「春の章:桜鯛さわぎ」。まずは江戸の様子から。品川柳次郎・お有夫婦に懐妊のきざしあり、媒人となってもらった奥医師・桂川甫周国端さんに診察を願います。結果はもちろんおめでたですが、磐音からの書状も届いており、義父にあたる金兵衛さんに秘かに伝えるために、苦心の演技をします。でもね~、これだけべらべらと喋っているのですから、ちょいと立ち聞きすれば、全部バレバレだと思うんですけどね~。

第2章:「夏の章:早苗蜻蛉」。いっぽう、姥捨の郷での磐音主従の生活は、姥捨雑賀衆とともに田植えの準備でした。これも、雹田平一味が姥捨ノ郷を突き止めていないためです。ところが、雑賀衆の儀助親方らの一行が、一の口付近で遺体となって発見されます。相手は19人で、頭分は唐人らしいとのこと。追う者と追われる者、滝つぼを背に、6人対19人の激闘です。

第3章:「秋の章:ぴらぴら簪」。こちらは江戸。品川お有の懐妊で、岩田帯の祝の席におなじみの顔ぶれが集まります。由蔵さんが遅刻とは珍しいと思ったら、なるほど、手代は松平辰平クンの変装だったのですね。たしかに、皆さんに情報が伝わり便利ではありますが、磐音に縁のある人たちがこれだけ集まっているのに、お庭番などが盗聴していないのは不思議です。
松平辰平クン、ひそかに佐野家に趣き、佐野善左衛門と面会するのですが、雹田平一味が京にいると聞き、京都に向かって出立してしまいます。なんと短兵急な人でしょ!利次郎クンが霧子さんにぴらぴら簪を買ってくるなんて、純情ですね~。いっぽう京都では、雹田平の根城を町奉行所が訪れて追い出してしまい、かわりに根城に選んだのが茶屋本家の北側にある古い貸家。実はこの家に通じる地下道があって、動静が筒抜けになるという仕掛けでした。シャーロック・ホームズ『赤毛連盟』も真っ青の情報戦は、雹田平側の敗け(^o^)/

第4章:「冬の章:七人の侍」。田沼意次の愛妾おすなが自ら高野山詣でをして姥捨ノ郷に隠れ潜む坂崎磐音親子を抹殺しようと伝えてきます。透視能力を持つ雹田平が、京都で磐音たちと対決しようと待つところへ、思いがけず佐野善左衛門が乗り込んで来ます。佐野家の家系図を横取りされ、田沼家の家系図を偽造するのに使われてしまったのですから、怒りはおさまりません。でも、相手が悪かった。雹田平はただの系図屋ではないようです。ここで佐野善左衛門が切られては、田沼の失脚の主役がいなくなってしまうと思ったか、作者はここで奥の手を出して来ます。正義の味方登場!という場面は、いかにもテレビ的。そして、戦いの舞台は別に設定されることに。

第5章:「再び春の章:決戦」。この章は、せっかくですので伏せておきましょう。雹田平ばかりかおすなまでも、「おのれ、憎っくき坂崎磐音~!」という運命になるかどうか、お楽しみに、としておきます。



しかし、雹田平の透視能力は、仏教各派の経文の向こうには届かないのだそうな。うーむ、ということは、壁の裏側に書かれた経文には、誤字脱字は無かった、ということだな(^o^)/
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