電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩。時々は実際に散歩を楽しみます。

佐藤由美ピアノリサイタルでショパン、メンデルスゾーン、シューマン、リストを聴く

2018年09月02日 06時04分42秒 | -独奏曲
午前中ようやく雨が上がったかと思ったら昼過ぎにまた降りだすような不安定なお天気でしたので、桃の収穫を途中で諦め、妻からチケットをもらった「佐藤由美ピアノリサイタル」に出かけました。14時開演、東根市のさくらんぼタントクルセンターのホールです。ここは、横26席×14列の計364席、補助席を出しても400席に見たないような小さな多目的ホールです。ステージ上にはピアノが一台のみ。花も飾りも一切無し。でも、反響板が左右、天井と奥に傾斜をつけてセットされ、音の面での配慮はなされているようです。



当日のピアニスト、佐藤由美さんが紺色のドレスで登場します。プログラムに記載のプロフィールを見ると、愛知県一宮市出身、東京芸大大学院修士課程修了、日本モーツァルト音楽コンクール第1位、6年前から東日本震災地で「愛知からの音便りコンサート」を毎年開催されているのだとか。どうやら、行動的な女性のようです。

プログラムは、ショパンから。

ショパン ワルツ 第1番 変ホ長調 Op.18 "華麗なる大円舞曲"
     ノクターン 第2番 変ホ長調 Op.9-2
     スケルツォ 第2番 変ロ長調 Op.31

途中に曲目を解説するトークを交えながら進むのかなと思ったら、違いました。主催者代表挨拶として、白髪の老婦人が登場、今回のリサイタル開催のいきさつを紹介します。なんでも、この方が電車の中でピアニストと隣席になり、京都から東根市蟹沢の某寺に移住してきたことなどをお話したところ、この春にお寺での演奏会を開くことになったのだそうです。実際にお寺で演奏会が開かれたのですが、残念ながらそこでは電子ピアノしか用意できなかったそうで、タントクルセンターのホールにはグランドピアノがあるということですぐに申し込み、ピアニストはロサンゼルスの演奏会に旅だった、ということだったそうな。で、お寺の檀家の方々が中心になり、いろいろ準備をして、ようやくリサイタルの開催にこぎつけた、ということのようです。なるほど! 久々にショパンの音楽をナマで楽しみました。

続いて、メンデルスゾーンです。

メンデルスゾーン 無言歌集より "ヴェネツィアの舟歌"
         同 "狩の歌"
         幻想曲 嬰ヘ短調 Op.28 "スコットランド・ソナタ"

大好きな無言歌集から二曲を聴くことができただけでなく、スコットランド・ソナタの実演を聴けたのは、田舎在住の素人音楽愛好家にとってはたいへん嬉しいことです。

休憩の後、こんどはシューマンです。

シューマン 子どもの情景 Op.15

うーん、これも良かった〜! 日頃から録音では日常的に接している音楽ですけれど、都会の巨大なホールではなく、演奏家の息遣いまで聞こえるような小規模なホールで間近に実演に接すると、シューマンの音楽の持つ繊細な魅力が感じられて、良かった〜! 後で役割があるらしい小さなお子さんが少々ぐずったのは、まあ、それも子どもの情景の一部ということで(^o^)/

最後は、リストです。ピアニストご本人が、自分は手が大きいほうだと話していましたが、スラリとした長身の上に恵まれた指をお持ちとはいえ、リストの曲はそうやすやすと演奏できるものとはいえないわけで、ピアニストが「三曲とも障害物競争です。応援よろしく!」というのも頷けます。

リスト パガニーニ大練習曲 第3番 "ラ・カンパネッラ"
    愛の夢 第3番
    メフィスト・ワルツ 第1番 "村の居酒屋の踊り"

わーお、お客さんからブラヴォーが飛び出しました。ほんとに立派な演奏で、クラシック音楽などにはあまりご縁が薄いと思われる方も少なくなかろうに、聴衆を思わず興奮に引き込む力は、さすがにリストです。

うーん、実に魅力的なプログラムと演奏に、大満足で帰途につきました。帰路はまたもや降りだした土砂降りで、農作業は諦めて音楽三昧を選んだのは正解だったようです。

【追記】
佐藤由美さん、交通事故に遭ってかなり深刻に悩んだ時期もあったみたいです。
ピアニスト佐藤由美の公式ブログ〜ゆみのすけ音楽会
でも、制約はあっても、元気に音楽を演奏できるようになったのは何よりのこと。できればシューマンの「謝肉祭」とか「ピアノソナタ第1番」とか、また聴いてみたいと思いました。

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コルネリア・ヘルマンのピアノでシューマン「幻想小曲集」Op.12を聴く

2018年04月19日 06時01分06秒 | -独奏曲
1837年、27歳のシューマンのピアノ曲「幻想小曲集」作品12は、若い頃からずっと好きな音楽です。LPではルービンシュタインのピアノで、CDではアルゲリッチやコルネリア・ヘルマンのピアノで聴いています。とりわけコルネリア・ヘルマンのCD(V:VICC-60503)は、山響の202回定期(*1)の際に、会場で買い求めたのではなかったか。今はこのCDを取り出して聴いたり、パソコンに取り込んだものを聴いたり(*2)することが多くなりました。

  1. 夕べに
  2. 飛翔
  3. なぜに
  4. 気まぐれ
  5. 夜に
  6. 寓話
  7. 夢のもつれ
  8. 歌の終わり


清新でロマンティック。でも、思わせぶりは最小限に、諧謔の味も苦すぎません。いいなあ。つい手が伸びます。録音が新しいのもポイントの一つ。通勤の音楽には、ppでロードノイズに負けてしまう面はあるけれど、今の爽やかな季節を、清新なピアノ独奏をバックにして走り抜けるのも気持ちの良いものです。

I=3'18" II=3'24" III=3'03" IV=3'32" V=4'01" VI=2'32" VII=2'41" VIII=4'21"
total=26'52"



同じCDに収録されているシューマン「アラベスク」も好ましい演奏ですし、ブラームスの「六つの小品」Op.76も魅力的ですが、また別の機会に。

(*1):山響第202回定期演奏会〜大作曲家の青春時代〜を聴く(2)〜「電網郊外散歩道」2010年1月
(*2):ぼーっとして音楽を聴いている時間〜「電網郊外散歩道」2017年9月

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ハイドンの「ピアノソナタ第32番ロ短調」を聴く

2017年02月12日 06時01分28秒 | -独奏曲
少し前に購入し、しばらく通勤の音楽としていたCDで、ハイドンのピアノ・ソナタを聴きました。スヴャトスラフ・リヒテルの1984年のライブ録音から、第32番ロ短調Op.14の6を取り上げます。同年の夏に、ミュンヘンでデジタル録音されたもので、ライブ録音らしく曲の前後に聴衆の拍手が入ります。デッカ原盤のUCCD-9941という型番のCDは限定盤だったらしく、もう1枚も同時に入手しておりますが、ジャケット写真もなんだかボケた写真を無理に引き伸ばしたみたいな粗い画像で、あまり感心しません。でも、演奏はさすがの説得力。

第1楽章:アレグロ・モデラート、ソナタ形式。
第2楽章:テンポ・ディ・メヌエット。
第3楽章:プレスト。

時代的には、大きな表現力を獲得したロマン派以降のピアノはまだ登場せず、チェンバロからフォルテピアノへ移行していく頃の作品なのでしょう。ダイナミックな低音で周囲を畏怖させるようなタイプではなく、どちらかといえば中高音を中心にコロコロと指がよく回るようなタイプの曲と言ってよいのでしょう。でも、ロ短調の調性どおり、劇的な起伏も充分に持っています。現代のグランドピアノで演奏されるハイドンのソナタは、そうした要素も過不足なく表現しているようです。

参考までに、演奏データを示します。
■スヴャトスラフ・リヒテル
I=7'00" II=3'47" III=5'16" total=16'03"

ネット上でも探してみました。いくつかの動画がありましたが、Google君の一押し順位らしいものを一つだけ。

Carl Cranmer - Haydn Sonata in b minor, Hob XVI: 32


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通勤の音楽にハイドンのピアノソナタ集を選ぶ

2016年12月17日 06時01分53秒 | -独奏曲
USBメモリーに入れた音楽をひととおり聴いてしまったみたいで、新しいものをと探してみたら、少し前に購入していた(*1)ハイドンのピアノソナタ集が目にとまりました。スヴャトスラフ・リヒテルのピアノで、1980年代中頃の演奏会を収録したデッカのライブ録音です。

1980年代の中頃といえば、当方は子育てと遠距離マイカー通勤をしながら、趣味のレーザーディスクでオペラにハマっていた時期です。ハイドンのピアノソナタなどという地味な録音は、目に入りようがありませんでした。

今のところ、ざっと通して聴いているところですが、へぇ~、あのリヒテルもこういう曲を演奏していたのかと驚いているところです。不明と言えば不明、いまさらながらリヒテルのピアノの説得力を感じています。

(*1):高校の仲良し同窓会に出かけ、山形弦楽四重奏団の定期演奏会のチケットを購入する~「電網郊外散歩道」2016年10月

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伊藤恵のピアノで、シューマン「暁の歌」Op.133を聴く

2016年09月08日 06時01分13秒 | -独奏曲
以前の山響定期(第254回,*1)で購入してきた、伊藤恵さんのCD「シューマニアーナ」Vol.4(fontec:FOCD9324,1991,DDD)を聴いています。お目当ての「ピアノソナタ第1番」はたいへんステキな演奏で、通勤の音楽にも愛聴しておりますが、同盤に収録された「暁の歌」Op.133は、どうもロードノイズの大きな通勤の音楽には似合わないみたい。ピアノソナタ第1番(*2)のほうは、訴える力のある音楽ですので運転しながらでも大丈夫ですが、「暁の歌」のほうは、もう少し静かな落ち着いた環境で聴きたい音楽です。

例えば晩夏の夜、自宅のPC-audio用のミニコンポを通じて、ヘッドホンで静かに聴くときに、心にしみる音楽と言えばよいのでしょうか。

  1. Im ruhigen Tempo 落ち着いたテンポで
  2. Belebt, nicht zu rasch 元気に、速すぎないように
  3. Lebhaft 生き生きと
  4. Bewegt 動きをもって
  5. Im Anfange ruhiges, im Verlauf bewegreres Tempo 始めは静かに、それから動きのあるテンポで

1853年、若きブラームスが、デュッセルドルフ在住のシューマン夫妻を訪ねてきた年の作品。たぶん、体内に潜む梅毒の原因となったトレポネーマ(スピロヘータと言った方が通りやすいか?)が少しずつ内蔵器官や神経組織を侵し、体調不良が明らかになってきつつあった頃でしょうか。シューマンのデュッセルドルフ時代というのは、少しずつ異変が、本来は見えないはずのものが見えたり、聞こえないはずの声や音が聞こえたりする症状が、顕著に現れてきた時期かと想像しています。

その意味では、力と意欲にあふれた音楽とはなりえず、ともすれば途絶えがちになる楽想を手繰り寄せながら繊細につなぎ合わせたような音楽も、なるほどと理解できます。わりと好きだなあ、こういう音楽(^o^;)>poripori
アルカイックな味のある第4曲などは、とりわけ印象的です。

同時に、傍らで夫(父親)を見守るクララや子どもたち、家族の心配と不安もあったことでしょう。そこに登場する来客が、青年ブラームス。不安や心配を一時わきにおいて、驚きと興奮をもって歓迎したであろう家庭のようすもまた、想像することが可能です。



YouTube にも、この曲の演奏がありました。かなり遅いテンポで始まります。
Robert Schumann. "Gesänge der Frühe" Op.133. 1853


(*1):山形交響楽団第254回定期演奏会で池辺晋一郎、シューマン、ベートーヴェンを聴く~「電網郊外散歩道」2016年7月
(*2):シューマン「ピアノ・ソナタ第1番」を聴く~「電網郊外散歩道」2007年12月
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オルガン音楽の受け止め方

2015年07月27日 06時05分10秒 | -独奏曲
若い頃は、迫力あるオーケストラ音楽と同様に、オルガン音楽の圧倒的な響きを好んで聴いておりました。でも、年齢とともに小編成の室内楽などに嗜好が少しずつ変わってきております。

例えば、J.S.バッハの「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」などは、若い頃にはそれこそ聴き惚れたものでしたが、今はむしろ、その威圧的な響きに反感すら覚えてしまうほどです(^o^)/

とは言いながら、例えば同じ J.S.バッハの「主よ人の望みの喜びよ BWV147」などには共感するのですから、オルガンの響きが苦手というわけではないのです。要するに、聴衆をひれ伏させるタイプの音楽に対する抵抗感なのでしょうか。同じパイプオルガンでも、巨大で有名な楽器の音よりも、恩師の葬儀で聴いたような(*1)小型のオルガンの優しい響きが好ましいと感じます。

おそらくは、加齢にともなう聴力の減退を防ぐための、自己防衛的な嗜好の変化なのだろうと思いますが、大音量でガンガン再生するだけではない、静かな楽しみ方が増えてきているようです。そういえば、ヘッドホンを使う頻度が、若い頃よりもずっと減っている気がします。

写真は、DENON の My Classic Gallery シリーズから、「バロック名曲集-2」です。型番は、GES-9207。

(*1):恩師の葬儀に出席~「電網郊外散歩道」2005年1月

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ホジャイノフのピアノでシューベルトの「さすらい人幻想曲」を聴く

2015年05月25日 06時03分36秒 | -独奏曲
当ブログでは、同じ曲目を何度も取り上げることは、あまりありませんが、たまに例外があります。例えばベートーヴェンの交響曲第9番は3回も記事を書き、サヴァリッシュ指揮チェコフィル、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管、クルト・マズア指揮N響を取り上げています。

シューベルトの「さすらい人幻想曲」については、アルフレート・ブレンデルとミシェル・ダルベルトの録音を取り上げた記事を書いていますが、今回、2014年の11月に山響第240回定期でベートーヴェンの第4番のピアノ協奏曲を演奏したニコライ・ホジャイノフさんのピアノで、彼の愛奏曲を集めたCDが良かったので、取り上げることといたします。曲の成り立ちや構成については、先の記事(*1)のとおりですので割愛。

ニコライ・ホジャイノフという若いピアニストは、18歳でショパン・コンクールのファイナリストに残ったという史上最年少記録を持つ逸材(*2)です。私が実際に演奏を聴いた感想は、

ホジャイノフさんのアンコールは、ビゼーの「カルメン」の旋律が次々に出てくる、すごい技巧的な曲で、思わず呆気にとられるほどです。ホジャイノフさんのピアノは、強音のダイナミックな力強ささだけでなく、弱音がすごくきれいで、生まれたときからコンパクトディスクがあった世代なんだな、と感じさせられました。

というものでした。

実際にCDを聴くと、とても生き生きとした「さすらい人幻想曲」で、意味深げなもったいぶったところはなくて、若いシューベルトが眼前に登場したような、溌剌とした新鮮さがあります。本人自筆の署名があるからという贔屓目だけでなく、説得力のあるCDを、通勤の音楽としてもしばらく聴いてきました。2012年4月24~25日の2日間、群馬県みどり市の笠懸野文化ホールでデジタル収録されたビクター盤で、「ニコライ・ホジャイノフ/マイ・フェイヴァリッツ」という題名のついたVICC-60824という型番のCDです。録音もたいへん明瞭です。

■ホジャイノフ盤
I=5'53" II=6'53" III=4'30" IV=3'39" total=20'55"
■ブレンデル(Pf)盤
I=6'02" II=6'43" III=4'48" IV=3'31" total=20'04"
■ミッシェル・ダルベルト(Pf)盤
I=6'30" II=7'16" III=5'13" IV=3'36" total=22'35"

(*1):シューベルトの「さすらい人幻想曲」を聴く~「電網郊外散歩道」2008年8月
(*2):ニコライ・ホジャイノフ~プロフィール:ビクター・エンタテインメント
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お年玉付き年賀状をきっかけにベートーヴェンのピアノソナタ第30番を聴く

2015年01月25日 06時04分11秒 | -独奏曲
今年の年賀状のお年玉当選番号を調べたら、3等の切手シートが3枚当たっていました。しかも、ぜんぶ30番ばかり(^o^)/
30番と言えば、ベートーヴェンのピアノソナタ第30番を連想します。そういえば、第30番、しばらく聴いていないぞ。これは、30番を聴け!というミューズのお告げかも(^o^)/

というわけで、本日はベートーヴェンのピアノソナタ第30番を。若い頃に初めて聴いたのは、アルフレート・ブレンデルの最初の録音でした。例の、日本コロムビアの廉価盤「ダイヤモンド1000シリーズ」中の1枚で、後期の3曲を収録したこのLPを、それこそすりきれるほど聴いたのが懐かしい。

休日のお楽しみは、ちょいと毛色の違う演奏をと考え、YouTube で「Beethoven Piano sonata 30」で探してみたら、こんなのを発見。ダニエル・バレンボイムの演奏です。今は指揮者として活動しているだけなのかと思ったら、ちゃんとピアニストとしても活動しているのかな? 頭はすっかり白くなり、ベートーヴェンの晩年の作品を演奏するのにふさわしい風貌になっているようです。

Beethoven Sonata N° 30 Daniel Barenboim


ずいぶんロマンティックな演奏ですが、しかし、ほんとにいい曲ですね~。思わずため息が出ます(^o^;)>poripori

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ミシェル・ダルベルトの演奏でシューベルト「ピアノソナタ ハ長調 D.613」を聴く

2014年12月05日 06時01分38秒 | -独奏曲
このところ、通勤の音楽として聴いているのは、ミシェル・ダルベルトが演奏したシューベルトのピアノ曲から「ピアノソナタ ハ長調D.613」です。「さすらい人幻想曲」のCDに収録されたもので、未完に終わったD.613のソナタを両端楽章とし、間にD.612の美しいアダージョを配置した形で演奏されており、なんとも不思議な優しさを持った音楽として聴くことができます。

第1楽章:モデラート。冒頭は、どこかで耳にしたような、ベートーヴェンのソナタを連想させるものですが、しだいにシューベルトらしい世界に入っていきます。まるでベートーヴェンのようではありません。だから、諦めて未完のままに放置したのでしょうか(^o^;)>poripori
第2楽章:アダージョ、ホ長調。これは、美しい音楽ですね~。
第3楽章:アレグレット。本当は速度の指示はないようなのですが、ここではアレグレットで、という解釈のようです。このCDでは、演奏の最後が楽譜通り唐突な終わり方ですので、ああ、遺作断片なんだなと感じられます。

この実にチャーミングな音楽を聴くと、ミシェル・ダルベルトがこの曲を録音しようとした意図が、なんとなくわかるような気がします。他のピアニストでこの曲を録音している人はあまり多くないようで、その中では、NAXOS のマルタ・デヤノヴァ盤(*1)は、曲を補筆完成して録音しているそうです。

私が聴いているのは、1993年1月と翌1994年1月及び6月に、DENONによってスイスのコルゾー、サル・ド・シャトネールでPCM収録されたデジタル録音で、COCO-70700 という型番のCDです。

(*1):NAXOS Music Library より、F. Schubert Piano Sonatas No.7-21, Marta Deyanova

YouTube にも、いくつかの録音や動画がありました。
まずは、第1楽章:
Franz Schubert - Piano Sonata in C major, D 613 - I. Moderato


続いてこのCDでは第2楽章として扱われた、D.612 の美しいアダージョ。残念ながら演奏者は違いますが(^o^;)>poripori
Schubert - Adagio in E Major, D. 612 (for piano)


最後に、未完の第3楽章(純粋には第2楽章):
Franz Schubert - Piano Sonata in C major, D 613 - II. Without tempo indication

ただし、この演奏では誰かが補筆してあるようで、唐突な終わり方にはなっていないようです。

マルタ・デヤノヴァ(Pf)の演奏動画もありました。
Marta Deyanova Schubert Unfished Sonata D 613.wmv


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ウェーバー「序曲集~四手のためのピアノ編曲」を聴く

2014年11月10日 06時04分32秒 | -独奏曲
以前、たまたま購入したナクソス盤(*1)で、ウェーバーの「序曲集~四手のためのピアノ編曲」を聴いています。歌劇「魔弾の射手」序曲や「オベロン」序曲等の、夢幻的で香り高いオーケストラの響きを聴き馴染んでいるものですから、こうした四手のためのピアノによる序曲集には、はじめだいぶ違和感がありました。ところが、聴き慣れると、音楽の骨格があらわになるようで、これはこれでたいへんおもしろい。また、ふだんはあまり馴染みの薄い曲目も集めた選曲もあって、なかなか興味深いCDになっています。例えば「トゥーランドット」序曲などは、もちろんプッチーニの音楽ではありません。

  1. 歌劇「アブ・ハッサン」 J. 106 - 序曲
  2. 歌劇「ペーター・シュモルとその隣人たち」 J. 8 - 序曲
  3. 歌劇「リューベツァール」 J. 44-6 - 序曲
  4. 歌劇「シルヴァーナ」 J. 87 - 序曲
  5. 劇音楽「トゥーランドット」 Op. 37, J. 75 - 序曲
  6. 劇音楽「プレチオーザ」 Op. 78, J. 279 - 序曲
  7. ジャベル序曲 Op. 59, J. 245
  8. 歌劇「魔弾の射手」 J. 277 - 序曲
  9. 歌劇「オイリアンテ」 J. 291 - 序曲
  10. 歌劇「オベロン」 J. 306 - 序曲

歌劇「トゥーランドット」といえば、フィギュア・スケートのバックに流れるように、今ではプッチーニのそれをすぐに思い出しますが、実はウェーバーもこのお話に付随音楽をつけていた(*2)のだそうです。それも、プッチーニのいささか大げさなほどのロマンティックな音楽ではなくて、滑稽味あるいは剽軽な味を持つ音楽です。もともとは、ルソーの音楽辞典からとった中国の音楽を題材にしたものだそうですが、これは西欧が中国を見る目を表したものなのでしょうか。聴き慣れると、ピン・ポン・パンのようなユーモアも感じられるようです。



演奏は、アレクサンダー・パレイ(Alexander Paley)とブライアン・ゼガー(Brian Zeger)の2人で、NAXOS 8.553308 (*3)という型番で1999年に発売されたものだそうです。



いや、本当は独奏曲じゃないのだけれど、他にカテゴリーがないので、とりあえずここに入れておきましょう(^o^)/

(*1):春の陽気に誘われて音楽CDを二枚購入~「電網郊外散歩道」2014年3月
(*2):これはすごい~Wikipediaの「トゥーランドット」解説~「電網郊外散歩道」2006年3月
(*3):NAXOSの本CDの紹介ページ~一部を試聴可

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加古隆ソロ・ピアノ・リサイタルのこと

2014年10月19日 06時03分14秒 | -独奏曲
映画「蜩ノ記」を観て、思い出しました。そういえば、加古隆さんのソロ・ピアノ・リサイタルの記事を書いていないなあ、と。
備忘録ノートには記しておりましたので、振り返ってみたいと思います。

去る9月21日、山形テルサ・ホールで、妻と子どもと一緒に、加古隆ソロ・ピアノ・リサイタルを聴きました。曲目は次のとおり。

第1部
 (1)空と、波と~雨の石畳
 (2)白い巨塔
 (3)アクア・ブルー
 (4)組曲「蜩ノ記」
  1:山里の四季、2:残された時間、3:秋谷のテーマ
 (5)少年時代
 (6)湖沼の伝説
~休憩~
第2部
 (7)パウル・クレー~色とかたちのポエム
 (8)葛飾北斎~江戸の風景
 (9)ポエジー
 (10)パリは燃えているか
 (11)黄昏のワルツ
アンコール:アラビアの夏

加古隆さんは、たしか子どもがよく聴いていたCDで耳にしたのだったと思いますが、リサイタルのパンフレットであらためてプロフィールを眼にしました。すべて自作の音楽でのリサイタルというのも初めてです。

フランス印象派ふうの響きもあれば、ジャズ風のテイストもあったり、また現代音楽の要素もあったりで、多彩なピアノの響き、音色、リズムを楽しみました。できれば、CDを見つけてじっくり聴いてみたいものです。

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イザイ「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番」を聴く

2014年07月05日 06時02分25秒 | -独奏曲
昨年の今頃、山響モーツァルト定期で購入したCDで、イザイの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」を聴いています。演奏は、松田理奈さん。作品27の6曲から、第2番イ短調を取り上げます。ちょうど、演奏会当日のアンコールで披露したのが、この曲の第1楽章でした。

あれ、どこかで聴いたことがあるなあと思いましたが、それもそのはず、J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番」の第1曲(前奏曲)の旋律が使われ、それが見事に尖鋭なイザイの音楽になっています。添付のリーフレットによれば、曲はジャック・ティボーに献呈され、それぞれの楽章には次のような表題が付けられているそうです。

第1楽章:「幻影または執念」、前奏曲。ポコ・ヴィヴァーチェ。
第2楽章:「憂鬱」、ポコ・レント。
第3楽章:「亡霊たちの踊り」、サラバンド、レント。
第4楽章:「復讐の女神たち」、アレグロ・フリオーソ。

次の第2楽章からは、ベルリオーズやサン=サーンスが用いた「怒りの日」の旋律が登場、ゆっくりとした緩徐楽章です。そして、舞曲ふうと言うにはずいぶん風変わりですが、リズムはたしかに舞曲風ではあります。エネルギーは次第に蓄積され、フィナーレは尖ったイザイの音楽が変奏されていきます。

松田理奈さんの演奏は、内向的な集中力だけではない、外に向かうエネルギーや、客観的な形をきちんと整える理性的な面も、兼ね備えていると感じます。
2010年にフィリア・ホールで収録されたデジタル録音で、たいへん明瞭に美しく、ヴァイオリンの音色を聞くことができます。型番はビクターのVICC-60758です。

(*1):山響モーツァルト定期第19回でヴァイオリン協奏曲第1番と交響曲第23・28番等を聴く~「電網郊外散歩道」2013年6月

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田部京子のピアノでシューマン「交響的練習曲」を聴く

2012年09月23日 06時04分54秒 | -独奏曲
ようやく涼しさを感じる秋の郊外路を走る通勤の音楽に、このところ取り上げていたのが、田部京子のピアノによるシューマン「交響的練習曲・子供の情景」のCD(DENON COCO-70931)でした。今から13年前の1999年の8月に、群馬県の笠懸野文化ホールで収録されたPCM/デジタル録音で、キーシンのライブ録音(*1)にはトラック分けがなされていないこともあり、よく聴くものです。

もともとクララ・シューマンを代弁者として作品を発表していたR.シューマンですから、女性ピアニストの演奏は、本来あるべき姿でしょう。実際、初版にあった練習曲二つを加えた田部京子さんの演奏は実に魅力的で、詩的で、美しい。当方、遺作変奏がお気に入りなのですが、遺作変奏の配置は、練習曲9の後に5曲を順にまとめて配置し、その後に練習曲10~12を置く形をとっており、キーシンともリヒテルとも違う独自のものになっています。田部さんの考え方なのでしょう。その理由や合理性といった専門的なことは、当方の手に余るものですが、通して聴くと、遺作変奏の中で展開される叙情性からフィナーレに至る高揚まで一貫した説得性が感じられ、音楽解釈の多様性を示すものなのでしょう。

週末に自宅のステレオ装置で聴くときは、録音も自然で優秀で、ピアノの豊かな響きがよくとらえられており、たいへん楽しめるものです。

■田部京子(Pf)
total=39'52"
(主題、第1~第3変奏、練習曲、第4~第7変奏、練習曲、遺作変奏1~5、第8~第9変奏曲、フィナーレ)
■エフゲニー・キーシン(Pf)
total=27'10"
(遺作変奏1~5は、別々に挿入されている模様。)
■スヴィャトスラフ・リヒテル(Pf, LP:Victor MKX-2002)
I=10'05" II=24'00" total=34'05"
(Iは第1練習曲から第5練習曲、IIは遺作変奏1~5に続き、第6~第12練習曲)

(*1):シューマン「交響的練習曲」を聴く~「電網郊外散歩道」2007年2月
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ラヴェル「夜のガスパール」を聴く

2012年05月02日 20時04分06秒 | -独奏曲
ラヴェルの「夜のガスパール」は、通勤の朝にはまったくふさわしくない音楽です。とくに「絞首台」は、だんだん気分が沈んでいってしまいます。ところが、夜になると、とたんに雰囲気にぴったりになります。とくに、体調が悪くウーロン茶で済ませた宴席の帰りに、近道をしようと真っ暗な林道の中を車で走るとき、ラヴェルの音楽は黒いと感じます。真っ黒です。しかも、真っ黒の中に、ピカッと光るものがあります。夜の音楽。アルゲリッチの演奏は、まさにぴったりです。

かつて、若い頃に、ヴラド・ペルルミュテールのピアノで聴き親しんだ音楽。あれは、NHK-FMのエアチェックだったのでしょうか、1970年ごろ、オープンリールのテープだったような記憶があります。今はすでにありませんが、再度いまの立場で聴き直せば、どのような印象を持つのだろうと思います。

■マルタ・アルゲリッチ(Pf)
I=6'12" II=6'35" III=9'15" total=22'02"
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ベートーヴェン「ピアノソナタ第21番《ワルトシュタイン》」を聴く

2011年12月02日 06時05分11秒 | -独奏曲
通勤の音楽は、このところ、ベートーヴェンのピアノソナタ第21番「ワルトシュタイン」を聴いています。この曲は、メランコリーなど吹っ飛ばすほどの勢いと力のある音楽で、いかにも「ベートーヴェン!」という感じの作品で、わりに好んで聴いています。若い頃には、アルフレート・ブレンデルの最初のヴォックス録音から、というよりは例のコロムビアの廉価盤、ダイヤモンド1000シリーズ中の一枚(MS-1053-VX)で聴き、近年は DENON のクレスト1000シリーズから、ブルーノ・レオナルド・ゲルバーのCD(COCO-70751)で聴いています。

この曲は、1804年に作曲され、同年の交響曲第3番「英雄」とともに、豊かな創造の時期の代表的作品の一つだそうです。ダイム伯爵未亡人(ヨゼフィーネ・ブルンズウィック)との恋の時期でもあり、創作の自覚によって昂揚し、意気軒昂であった時期の作品ということにななるのだそうな。ベートーヴェンの曲では、ハ長調という調性は祝典的な傾向があるということですが、本作品もたしかにエネルギッシュで意気高い作品と言ってよいのかも。それまで使っていたワルター製のピアノに不満を持っていたベートーヴェンは、パリのエラール社から新しいピアノを贈られ、これがたいそう気に入って作曲をしたのだそうです。完成した曲はワルトシュタイン伯爵に献呈されたためにこの副題が付いたのだそうですが、ところで「ワルトシュタイン」って、誰?

ベートーヴェンを取り巻く人々に関するこの種の疑問に対しては、青木やよひ著『ベートーヴェンの生涯』が役立ちます。これによれば、ボヘミア出身の由緒ある貴族ワルトシュタイン伯爵家のフェルディナントは、1788年にボンを訪れ、おそらくブロイニング家でベートーヴェンと知り合ったとされています。

もともとモーツァルトの崇拝者で自分もピアノ演奏や作曲を手がける音楽通だったこの若い伯爵は、たちまちルードヴィヒの才能に惚れ込み、親しい友となると共に熱心な支援者となった。お互いの住居を行き来して合奏を楽しむこともあれば、ルートヴィヒに新しいピアノを贈って喜ばせたのも彼であった。一方、ヴァルトシュタインが選帝侯の劇場で古代ゲルマン風のバレエを上演した折には、ルートヴィヒがそれに音楽をつけている。(p.53)

またワルトシュタイン伯は読書クラブなどボンの文化活動に積極的に参加し、後に会長となるほどの中心的メンバーであったそうで、オーストリア皇帝ヨーゼフII世が没したときに、追悼集会を企画し、その音楽をベートーヴェンに委嘱したとのことです。青木やよひさんは、続けてこう書きます。

二十歳を目前にしたルートヴィヒにとって、これは大役だった。読書クラブには、人類愛と革新の気風を備えた錚々たる芸術家や知識人がいて、彼を見守っていた。その期待に応えるはじめてのチャンスだったからだ。しかも彼としてもその作品には、単に皇帝の死を悼むというだけでなく、身をもって変革を実践した一人の「英雄」を悼むという意味をこめたいと、心に期していた。(p.54)

こうして生まれたのが、ベートーヴェン初の管弦楽付き声楽作品『皇帝ヨーゼフII世葬送カンタータ』であり、後にハイドンがこれを高く評価し、世に出るきっかけとなった、ということです。いわば、若い頃のヒーローで大恩人だった人、ということでしょう。

第1楽章:アレグロ・コン・ブリオ、ハ長調、4/4拍子。独特のハ長調の主和音の低い連打と高音の対比で始まり、次第に明るさを増していきます。ブレンデル盤の解説(栗山和さん)によれば、フランスではこの曲を「あけぼの L'aurore」と呼んでいるのだとか。なるほど、雰囲気は理解できます。第2主題は、連打の第1主題とはずいぶん違い、穏やかなものです。展開部は、転調によって雰囲気を変えながら高まりを見せ、華やかです。
第2楽章:導入、アダージョ・モルト、ヘ長調、6/8拍子。瞑想的な始まりです。静かで、しかも深い。アタッカで次の楽章に移ります。次の楽章の予告編と言うにはあまりにも見事な、実に魅力的な音楽です。
第3楽章:ロンド、アレグレット・モデラート、ヘ長調、2/4拍子。第2楽章から切れ目なく続く、華麗で長大なロンドです。最後の、疾駆する prestissimo は、pp から ff まで、新しいピアノを使って、力いっぱいに表現しているようです。

ゲルバー盤は、1989年12月4~5日、オランダ、ライデンのスタッツヘホールザールでのデジタル録音、制作は馬場敬、録音はピーター・ヴィルモースとなっています。録音は鮮明で、DENON らしい、ホールの響きを生かしたものです。
ブレンデル盤は、収録の日付や場所など、データの記載がありませんが、たしか1960年代初頭ではなかったかと思います。録音はステレオですが、時代の制約でしょうか、鮮明とはいえないけれど聴くのに支障はない、といったところでしょうか。

■ゲルバー(Pf)盤
I=10'51" II=3'59" III=10'06" total=24'56"
■ブレンデル(Pf)盤 - VOX原盤
I=11'03" II+III=13'24" total=24'27"

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