電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高田郁『心星ひとつ~みをつくし料理帖(6)』を読む

2013年06月27日 06時05分10秒 | 読書
このシリーズを読み始めて、ついに六巻まで来ました。角川ハルキ文庫の高田郁著『心星ひとつ~みをつくし料理帖』です。表現が類型的だとか何とか、文句を言いながらも、けっこうおもしろく読んでいます。

第1話:「青葉闇~じっくり生麩」。「つる家」の常連である坂村堂は、実は一流料亭「一柳」の店主・柳吾の息子だったのだそうな。麩は山形県東根市の名物であり、生麩も美味しく食べておりますが、本書では江戸っ子の評判がずいぶん悪く、製法もなにやら大層な秘密のようです。かの店主もずいぶん事大主義的な方のようで、息子と対立してしまうのも頷けます。
第2話:「天つ瑞風~賄い三方よし」。登龍楼も吉原の翁屋も、澪の料理のウデを利用しようと策謀をめぐらします。欲をかけば引っかかるのに、澪は引っかかりませんでした。かわりに野江と言葉を交わすことができました。
第3話:「時ならぬ花~お手軽割籠」。あまりにボヤが多いので、奉行所から命じられる前に、町年寄から時間制限付きで火気使用の自粛の通達が出てしまいます。飲食店にとっては死活問題ですが、どうにもなりません。そこで、知恵をしぼって考え出したのが、持ち帰りの弁当を売る商売。今ならば、さしずめお持ち帰りホカ弁といったところでしょうか。そんな時に、澪に弟子入り志願した武家の妻女は早帆といい、小松原さまに良く似た人でした。そして、早帆に連れられて行った屋敷は、御膳奉行・小野寺数馬のもので、母・里津から嫁入りの話を聞かされますが、澪は怖くなり、逃げ帰ってしまいます。
第4話:「心星ひとつ~あたり苧環(おだまき)」。せっかくの「三方よしの日」に、小野寺家の用人が現れて、澪を武家奉公にと言います。躾、作法、教養の他に武術も教えるとの言い分ですが、「つる家」の面々にはピンと来ません。小松原さまと呼んでいた人が実は小野寺さまで、ほうきの実の老女は母、早帆さまは妹だということが判明し、澪も皆も様々に思い悩みます。小松原さまが現れて、直接に澪にプロポーズ。

「俺の女房殿にならぬか」
「ともに生きるならば、下がり眉がよい」
「答えよ、下がり眉。俺の女房殿になるか」

かなり上から目線で強引ではありますね~。
ただし、澪が「はい」と返事をした後にも、

「どこぞの旗本の養女になってしまえば難しいが、それまでなら、お前次第で道を変えることは出来る」
「良いか、決して無理はするな」

などという台詞を残して立ち去ります。ハハーン、この話は壊れるんだな、と想像してしまいました。ああ、やっぱり!



表現がときに類型的という弱点はあっても、ストーリー展開はなかなか読ませてくれます。娘料理人が、次はどんな料理を考えるのかという期待と、想い人や女主人、幼馴染みの運命など様々な人間模様が気になって、思わず一気に読んでしまう時代小説です。

※数ヶ所、誤変換がありましたので、訂正しました。(2017/04/30)

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2 コメント

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現代でも (こに)
2021-01-25 08:19:41
家柄とまでいかなくても経済状態の違いとか「格差婚」は存在するものですが江戸時代のそれは天と地のようなものでしょうね。
小野寺も家を捨てるわけにもいかず辛いところですね。

源斎先生と澪はどうなるのかなぁ?
どうにもならないのかなぁ?
先生だって御父上は御典医ですしね。
とにかく次巻が楽しみです。
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こに さん、 (narkejp)
2021-01-25 19:54:09
コメントありがとうございます。「みをつくし料理帖」シリーズはいよいよ佳境に入って、ますますおもしろくなります(^o^)/
源斎先生はね、実は………う〜ん、言いたい、でもネタバレ厳禁だからなあ(^o^)/
ひとつだけ。先生は御典医になるつもりはありませぬ。
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