ギルベルタ商会のベンノの後援を得て、紙作りにトライすることになったマインとルッツは、和紙作りの手法で紙を作ることにします。いろいろな材料を試すうちでなんとかモノになりそうなのがフォリンで、偶然に高級紙に使えそうなことがわかったのがトロンベという木の若枝でした。ところがこのトロンベというやつが実に物凄い。マインが手に持っただけで種が成長し、土の上にはじけるとみるみる成長するというのですから、ジャックと豆の木も真っ青、まさに魔木と皆が恐れるだけのことはありますが、マインはまだトロンベの本当の怖さを知らないようです。
ただ、失敗もありました。前世の記憶を持つマインは、ルッツの前で紙作りを「前にやったことがある」と言ってしまうのです。虚弱なマインがどこでこういう知識を得たのだろうと疑問に思っていたルッツは、
「…お前、誰だよ?」
と問うのです。このあたりのやり取りが、実に良いですね〜。
紙作りに目処が立って、髪飾りとともに見本を持って行くと、ベンノは新しい植物紙に合格を出し、ルッツを見習いに採用するとともに、「マインが作ったものをルッツが売る」という形で契約魔術を行い、商業ギルドに連れて行って仮登録を行います。これで、洗礼前の二人も売買ができる資格を得ます。
商業ギルドのギルド長は、ギルベルタ商会のベンノとは犬猿の仲ですが、マインの髪飾りに興味を示し、溺愛する孫娘のフリーダのために、新しい髪飾りを注文します。フリーダの髪飾りは、髪や衣装の色に併せた特注品とすることを主張したために、マインはギルド長の家を訪れ、フリーダと会って注文を受けますが、商売の才能を持ち、金貨を数えるのが趣味というフリーダは早速マインをロックオンします。それはそうでしょう。立体的髪飾りだけでなく、髪の毛がつるつるになる「リンシャン」の製法を知っていて、出回って間もない砂糖を使ったお菓子カトルカールの製法まで知っているマインは、フリーダにとってはよだれが出るほど欲しい人材なのです。しかも、同じ年頃で同じ「身食い」という病気を持った少女どうしなのですから、フリーダがマインに強い興味を示すのは当然の成り行きでしょう。
マインが頑張り過ぎると熱を出して倒れるというのは定番の「事件」ですが、どうも今回の倒れ方は重大事態のようで、突然に意識を失ったマインを、ベンノはギルド長の家へ運べと命じます。さて、マインの命はどうなる?
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「Do It Yourself」中心から、物語はしだいに広がりを増していきます。様々な工房に注文して製品を完成させ、それを売る方向へ、一歩ずつ進み始めます。それにしても、初めてファンタジーな世界を感じさせた「契約魔術」に必要な血判が痛そう(^o^)/
ワタクシにはとても住めそうにない世界です(^o^)/
でも、お話の流れが実にスムーズで、中高年でも楽しめるファンタジーとなっており、実に面白いです。