電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高田郁『今朝の春~みをつくし料理帖(4)』を読む

2013年06月20日 06時04分39秒 | 読書
このところ熱心に読んでいるのが、高田郁著『今朝の春~みをつくし料理帖』です。角川書店ハルキ文庫の、どうやらずいぶん人気のあるらしいシリーズ中の第4巻。

第1話:「花嫁御寮~ははきぎ飯」。「三方よしの日」に、ふらりと小松原さまが現れますが、長居はせずに帰ってしまいます。ふと見ると忘れ物が。一方、伊勢屋の美貌の天然娘の美緒が澪に料理を習うことになったそうで、なんともはやな展開ですが、どこか憎めない。小松原さまの忘れ物は、医者の源斎のみたてでは、浮腫にきくほうき草の実なのだとか。食べられるようにするまでが大変です。小松原さまの驚くべき正体が、その母親の老女によって明かされます。また、美緒の大奥奉公の話もなくなります。

第2話:「友待つ雪~里の白雪」。「つる家」の常客の坂村堂と清右衛門が組んで、吉原の翁屋の「あさひ太夫」の正体を探る戯作を書く算段を始め、澪は気が気でありません。案の定、悪徳女衒の卯吉を又次が見たものだから、大騒ぎになります。あさひ太夫こと幼馴染の野江を守りたい一心で、澪は清右衛門と賭けをします。清右衛門は滝沢馬琴がモデルなのでしょうか、澪が天満一兆庵を再建し、四千両の金を稼ぎ出して、野江を見受けしてやれ、と言い出します。途方もないことですが、不可能ではないところが、すごい発想です。

第3話:「寒紅~ひょっとこ温寿司」。伊佐三とおりょうの夫婦の話です。願掛けを他人に話すとご利益がなくなる、なんて話は初めて聞きました。なにせ、この年齢まで願掛けなどしたことがないものですから(^o^;)>poripori

第4話:表題作「今朝の春~寒鰆の昆布締め」。聖観堂の料理番付で、登龍楼と「つる家」の決着をつけようと、鰆料理で競い合うことになります。献立と試作に悩む中で、お城の御膳奉行が横流しの罪で詰め腹を切らされたとか、公方様の召し上がる御前に短い髪の毛が入っていただけで首を刎ねられたとかいう会話に気を取られ、澪は指をざっくりと……痛そう。鰆の昆布締めで競い合いには敗れたけれど、小松原さまに優しい言葉をかけられて、煎り豆にほのぼのとした気持ちになります。

なかなかおもしろいシリーズで、大いに楽しんでおりますが、シリーズ四作目ともなりますと、少しずつ鼻につくところも出てきます。一言でいうと、表現が類型的、ワンパターンなのが気になります。例えば澪がつくる料理を初めて食べた種市の反応が、毎回ワンパターン(^o^)。テレビドラマなら「お約束」で良いのかもしれませんが、文章となるといささか鼻白む面も出てきてしまいます。まあ、純文学ではないのだから、あまり目くじら立てるな、という話なのですが。


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