電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高田郁『想い雲~みをつくし料理帖(3)』を読む

2013年06月18日 06時04分53秒 | 読書
第一作『八朔の雪』がおもしろかったので、引き続きシリーズで読んでいる高田郁著『みをつくし料理帖』の第三作『想い雲』です。著者のお名前は「いく」さんだとばかり思っていましたが、巻末の著者名のルビを拡大鏡で見たら「かおる」さんだそうで、これはもう少しで友人知人の前で恥をかくところでした(^o^)/

第1話:豊年星~「う」づくし。大阪天満一兆庵の元女将だった芳が澪のために手放したかんざしを、「つる家」の主人・種市が探し出してくれましたが、常客の坂村堂お抱えの料理人・富三が、行方不明の息子の消息を探し出してやると偽って、芳からかんざしを巻き上げてしまいます。どうもこの男が、江戸店の倒産と佐兵衛の失踪の元凶なのでは?。鮎飯とはうまそうですし、「う」づくしの献立というのも良さそうです。

第2話:「想い雲~ふっくら鱧の葛叩き」。わが妻は大のヘビ嫌いで、ドジョウもウナギもダメです。ましてや、こんなに獰猛な鱧(ハモ)などは、ごめんこうむりたいところでしょう。吉原の翁屋にて、難しい鱧料理の腕を見せて楼主・伝右衛門の信頼をかちえた澪は、俄の騒ぎに紛れて、今は「あさひ太夫」と名乗る幼馴染の野江との心のつながりを、貝殻に託します。

第3話:「花一輪からふわり菊花雪」。「つる家」のライバル登龍楼をクビになった悪徳板長の末松が、意図的に「つる家」に似せて、女料理人を看板に、真似っこ店を出します。女料理人のお色気で、一時は「つる家」も閑古鳥が鳴きますが、結局は味を知る客から「つる家」に戻り、真似した店は食中毒を出してつぶれてしまいます。ところが、風評被害は本物の「つる家」にも及び、誤解したお客がさっぱり入らない日々が続きます。信頼を失うのは一瞬、回復には時間がかかるということか。きっかけになったのは、「三方よしの日」には酒を出す、という企画と、翁屋から手伝いに来てくれた「野江命」の料理人の又次でした。

第4話:「初雁~こんがり焼き柿」。「つる家」で下足番をしている少女ふきには弟がいますが、借金のかたに奉公している登龍楼から飛び出して、姉の所へ訪ねてきます。姉は小さな弟を追い返してしまいますが、弟は奉公先に戻らず行方不明に。皆で探し回るものの手がかりがなく、ただ一人の肉親を思い、ふきは憔悴してしまいます。ようやく安否が知れた時の「つる家」のそれぞれの考え方が興味深い。もう一つ、第3章の最後、小松原さまのセリフが、今回もいいですねえ。

【追記】
2020(令和2)年1月に再読しました。こに さんのご指摘どおり、小松原様のセリフは第3話でした。訂正して感謝いたします。
ついでに、「駒繋ぎ」という植物はどんなものか、検索してみました。なんと、果樹園の草刈りで手抜きをすると、荒れ地から伸びてきてすぐにはびこってしまう、厄介なあれでした(^o^)/
物語上は名セリフですが、果樹園管理上は決して歓迎はできない植物ですね〜(^o^)/

コメント (5)