電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高田郁『小夜しぐれ~みをつくし料理帖(5)』を読む

2013年06月23日 06時05分54秒 | 読書
角川ハルキ文庫の人気シリーズ、高田郁著『小夜しぐれ~みをつくし料理帖』を読みました。シリーズ第五巻、だいぶ年上の小松原さまをひそかに慕いながら、幕府御典医の御曹司で誠実な町医者の源斉に思われるという想定は、著者が想定していると思われる女性読者には、思わずウットリものかもしれません。還暦を過ぎた中高年男性読者には、孫娘の幸福を願いつつハラハラするような心境になってしまいますが(^o^)/



第1話:「迷い蟹~浅蜊の御神酒蒸し」。「つる家」の主人・種市がひどい風邪をひき、ようやく治りかけたら、店に昔の悪妻が無心にやってきます。なぜ今頃?と思いますが、娘を失うに至った経緯が明らかになり、それは怒るのも当然となります。でも、それだけでは収まりませんで、何よりも小さな子供の姿が、復讐の念をやわらげたことが何よりでした。
第2話:「夢宵桜~菜の花尽くし」。伊勢屋久兵衛方で、源斉先生が倒れたとのこと。医者の不養生と言うよりも、要するに過労です。短い療養期間中、澪が料理を頼まれます。働きすぎて精根が尽きたときには、大根や昆布、コンニャクやレンコンなど「こん」が付くものが良いそうで、玉子のお粥を合わせて出しました。うーむ、栄養学的にはどうなのでしょうか。まさか、温めた牛乳というわけにもいかないでしょうし(^o^)/
伊勢屋さんとしても、娘の美緒のご縁を冷静に見定める良い機会になったようです。
そんな中にあって、澪は吉原の翁屋から、上客のために花見の料理を依頼されます。献立に悩みますが、やっぱり小松原さまの暗示をもとに、考えたのが菜の花料理でした。当時は油一升金一升の時代。まことに贅沢な献立、というわけです。
第3話:「小夜しぐれ~寿ぎ膳」。伊勢屋さんは、源斉先生の想い人は娘ではなく澪らしいと決断をした模様で、中番頭の爽助を婿に取れと言い出したらしく、美緒は「つる家」にプチ家出を図ります。しかし、狭い店にはかくまう余地もなく、坂村堂が引き受けることに。色々ありますが、源斉先生の意中の人は澪であることに気づき、美緒さんは爽助さんとの結婚を承諾します。これに対しての、

想う人とは違うけれど、ご縁で結ばれた相手と手を携えて生きていく

という芳の言葉は、なかなか味があります。
第4話:「嘉祥~ひとくち宝珠」。こんどは視点をガラリと変えて、小松原さまこと幕府の御膳奉行・小野寺数馬の悩みが描かれます。辛党なのに、公方様のために新しい菓子を考案しなければならなくなって、苦い日々を送ります。
猛女烈女の母・里津と妹・早帆、妹の亭主が旧友の駒沢弥三郎で、数馬が三十代まで独身を貫いた理由が、「猛獣使いは飽いた」からなのだそうな。なるほど、それでずっと年下で「ひそかに想いを寄せる」タイプの澪さんがかわいいのでしょう。好きな菓子は何かと問われて、「煎り豆です」と答えた澪の一言から、可愛い宝珠のような菓子が生まれます。
この章は、おそらく今後の波乱の展開を準備するものなのでしょう。


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2 コメント

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美緒さん (こに)
2020-12-27 15:57:12
大店の我儘し放題のお嬢様かと思いきや、立派な女性で驚きました。
縁のある方と結ばれる、確かにそうですね。
このシリーズはすとんと腹に落ちる言葉が出てくることが多いです。ぴったりの場面に分かりやすい言葉で伝えられるのが良いと思います。

今後の波乱の展開、益々楽しみになりました(#^^#)
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こに さん、 (narkejp)
2020-12-27 20:25:56
コメントありがとうございます。ほんとに、包丁を持ってはダメ出しをされ、源斎先生への思いは熱烈でも、ご縁はなさそうでしたね。この後、美緒さんもいろいろ苦労するのですよ。乞う、ご期待(^o^)/
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