電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第318回定期演奏会でモーツァルト、ニキシュ、ブラームスを聴く

2024年06月16日 06時00分21秒 | -オーケストラ
週末の土曜夜、山形市の山形テルサホールで、山響こと山形交響楽団の第318回定期演奏会を聴きました。プログラムは

  • モーツァルト:歌劇 「魔笛」K.620 序曲
  • モーツァルト:ミサ曲 ハ長調「戴冠式ミサ」K.317
  • ニキシュ:ファンタジー(オペラ 「ゼッキンゲンのトランペット吹き」 のモチーフによる)
  • ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102
      阪 哲朗 指揮、山形交響楽団、辻 彩奈(Vn)、上野 通明(Vc)
      ソプラノ:老田 裕子、アルト:在原 泉、テノール:鏡 貴之、バリトン:井上 雅人
      合唱:山響アマデウスコア

というもので、合唱を含む多彩なプログラムです。これと同じ曲目で、6月20日に東京、21日に大阪公演が予定されており、「さくらんぼコンサート」としてサクランボのプレゼントや物産販売もある人気の公演なのだそうです。

恒例のプレコンサートトークでは、西濱事務局長と常任の阪哲朗さんが登場、曲目の紹介と共に、合唱団アマデウスコアが定期演奏会に登場するのはコロナ禍以来はじめてであることや、終演後のアフタートークが復活することなどをアナウンス。そういえばホワイエで飲み物を提供するなどほんとにしばらくぶりのような気がしました。

さて1曲め:モーツァルトの歌劇「魔笛」序曲です。ステージ上には左から第1ヴァイオリン(8)、コンサートマスター席には髙橋和貴さんが座ります。右回りでチェロ(5)、ヴィオラ(5)、第2ヴァイオリン(7)、コントラバス(3)はチェロの左後方です。正面後方にはフルート(2)とオーボエ(2)、その奥にホルン(2)とクラリネット(2)、ファゴット(2)、最奥部にトランペット(2)とトロンボーン(3)、木管の右後方にバロック・ティンパニという楽器編成・配置です。もちろん、ホルンやトランペットは作曲当時に使われていたのと同じバルブのないナチュラルタイプで、当時の響きに近づいた演奏と言えます。演奏が始まると、三度鳴らされる冒頭の和音が透明感が高く、しかも速いテンポで奏される主部は活気があり心地よい。いかにも「これから楽しいドラマが始まるよ〜」といった雰囲気が横溢しています。

2曲めはモーツァルトの「戴冠式ミサ」です。編成は独唱4部(Sop,Alto,Ten,Bar)に混声4部合唱、オーケストラは 1st-Vn, 2nd-Vn, Vc, Cb の弦楽4部、珍しくヴィオラが休みです。これに Ob(2), Fg, Hrn(2), Tp(2), Tb(3), Timp, Org というもので、これは意図的なものなのか作曲当時のオーケストラの事情によるものなのかは不明。でも、ヴィオラのないオーケストラというのも考えにくいので、たぶん内声部の響きをオルガンで受け持つことにより、教会の響きに適合した透明感のあるものにしようという意図なのかもしれないと思うようになりました。
冒頭の「キリエ」の始まり、子音の「k」が強く明確に発音されるのを聴くと、ああ、いいコーラスだなあといつも思います。独唱も見事でしたし、合唱の純度の高さと当時のナチュラルタイプの楽器を使用しヴィヴラートを抑制したオーケストラにオルガンの響きが加わり、まさに教会堂の中のミサの雰囲気でした。



ここで15分の休憩。さっとホワイエに移動し、物販の様子をのぞきます。TシャツやCD/DVDはすでに購入済みだし、今回は辻彩奈さんのCD「ベリオ/ヴァイオリン協奏曲集」を購入しました。



3曲め、ニキシュの「ファンタジー」です。ニキシュと言えばあのニキシュ、ベルリン・フィルの伝説的名指揮者ですが、当時は指揮者は作曲をすることが多かったそうで、そう言えばマーラーもR.シュトラウスも指揮者でした。ジョージ・セルも若い頃は作曲をしていたし、セルがヨーロッパから引っ張ってきたブーレーズやスクロヴァチェフスキももともとは作曲家だったのですから、驚くことではない。むしろ、昨年春に長井市で阪哲朗さん指揮の山響で日本初演されたネッスラーの歌劇「ゼッキンゲンのトランペット吹き」のモチーフにより作曲されたもの、というところが注目点でしょうか。
楽器編成は、ヴィオラも戻って 8-7-5-5-3 の弦楽5部に Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(4), Tp(2), Tb(3), Timp, BassDrum, Cymbal, Triangle, Harp というものです。
この曲を聴くのはもちろん初めてですが、Tp首席の井上直樹さんが朗々と奏するTpソロに、オーケストラが後期ロマン派ふうの濃厚なバックをつける、なかなかカッコいい魅力的な曲になっています。東京と大阪の「さくらんぼコンサート」では、初めて耳にする音楽ファンも多いのではなかろうか。期待して良い音楽だと思います。

そして4曲め:ブラームスのVnとVcのための二重協奏曲。独奏 Vn と Vc に二管編成のオーケストラというものですが、晩年のブラームスが交響曲第5番としてはじめは構想していたというだけあって、並のコンチェルトではありません。冒頭のオーケストラの強い響きの中で奏されるチェロの力強さ、緊張感、瞑想の中に独奏ヴァイオリンが鋭く入ってきます。この二人の集中力は素晴らしく、思わず音楽に引き込まれます。山響も手に汗握るような充実の演奏を聴かせて、ホール内は咳き一つない集中力でした。独奏部あり室内楽のような二重奏あり、ヴァイオリン協奏曲やチェロ協奏曲のようなところもあり、オーケストラのシンフォニックな響きを堪能するところもあり、晩年のブラームスらしい、実に多彩で見事な音楽です。ブラヴォー! 辻彩奈さんも上野通明さんも阪哲朗さん指揮の山響も、ほんとに素晴らしかった。

アンコールは、辻さんと上野さんの二人で、J.S.バッハの「インヴェンション第1番」を。これも良かった〜!



終演後、ホワイエで久しぶりにアフタートークと称して演奏者とファンとの交流会が行われました。あまり正確ではないけれど、印象に残った発言を記憶により再現してみると、


阪さん いろいろなことが単純にコロナ前に戻っただけではない。コロナ禍でいろいろなことがあった。音楽は不要不急の存在なのかと迷うこともあったし、そんな中で支援のありがたさを感じた。本当に大切なものとそうでないものが見えたように思う。

辻さん 2回目のブラームスの二重協奏曲。1回目は堤剛先生とで緊張した。今回は同世代の上野さんとの共演で、また違うブラームスになったように思う。
上野さん ブラームスにはチェロ協奏曲がないので、チェロ奏者には大切な曲。今回はとても良い経験になった。山響は親切で熱心なオーケストラだと感じた。

とのことでした。これまでアンケートに何度か辻さんをリクエストしてきましたが、上野さんにもぜひまた山響に来てほしいと強く思いました。

※独奏者アンコールのことを書き忘れていたので、追加しました。

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週末は山響の第318回定期演奏会でモーツァルトとブラームスほか

2024年06月15日 06時00分42秒 | -オーケストラ
サクランボの収穫が全部終わったため、この週末は晴れて演奏会三昧、山響第318回定期演奏会の予定です。5月末から農作業にがんばったご褒美のようなタイミングで、なんだか嬉しい。今回のプログラムでは、辻彩奈さんのヴァイオリンが再び聴けるのは嬉しい。しかも上野通明さんのチェロでブラームスの二重協奏曲というのが楽しみです。もう一つは、モーツァルトの「戴冠式ミサ」。ソリストの顔ぶれはもちろんですが、久々に山響アマデウスコアの合唱が聴けるのが楽しみです。

  • モーツァルト:歌劇 「魔笛」K.620 序曲
  • モーツァルト:ミサ曲 ハ長調「戴冠式ミサ」K.317
  • ニキシュ:ファンタジー(オペラ 「ゼッキンゲンのトランペット吹き」 のモチーフによる)
  • ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102
      阪 哲朗 指揮、山形交響楽団、辻 彩奈(Vn)、上野 通明(Vc)
      ソプラノ:老田 裕子、アルト:在原 泉、テノール:鏡 貴之、バリトン:井上 雅人
      合唱:山響アマデウスコア

なんだか日照り続きのお天気で、野菜や果樹にも水やりが大事になってきているようです。朝晩の涼しいうちに、水やりをしておきましょう。

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リストの交響詩「タッソー、悲劇と勝利」を聴く

2024年06月06日 06時00分07秒 | -オーケストラ
過日、ネットラジオの「rondo_klausupro.m3u」を開いたら、たまたまリストの交響詩「タッソー、悲劇と勝利(tasso, lamento e trionfo)」が流れてきました。このネットラジオ局は、通常の mp3 形式の局よりも高音質で流しているせいか、思わずはっとするような深い音で音楽が流れました。あいにくLPでもCDでもこの曲は手元にありません。ネットで探してみると、いくつかの動画を見つけることができました。

youTube より、まずはカラヤン指揮ベルリン・フィル、1976年の録音から。
Liszt: Tasso - Lamento e trionfo, Symphonic Poem No. 2, S. 96 (After Byron)


続いて、コンスタンティン・シルヴェストリ指揮フィルハーモニア管、1958年の録音。
Liszt: Tasso, Lamento e Trionfo; Silvestri & The Phil (1958) リスト タッソー、悲劇と勝利 シルヴェストリ


もともとの題材はゲーテの『タッソー』だそうで、1950年刊の岩波文庫には翻訳があったようですが、残念ながら青空文庫にも収録されていないようです。自己の才能を過信する傲慢な詩人タッソーが破綻する話のようですが、リストはゲーテのこの作品のどこに共感し、作曲をしたのだろう? ちょっと興味があります。



というわけで、某密林から購入。こういうときには通販は便利。



昨日の農作業の記録;

■雑草対策に空き区画の耕耘
■トウモロコシの苗の植え付け
■ダイズの苗の植え付け
■サトイモの追肥

お天気もよく、よく働きくたびれました。今朝は早朝からモモの防除です。


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ヴォーン・ウィリアムズ「交響曲第5番」のCDを購入する

2024年06月01日 06時00分30秒 | -オーケストラ
先日の山響定期ではじめて実演に接したヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番、YouTube 等でいつでも聴けるとはいうものの、やっぱりCDでほしい、ということで、某密林に注文しました。演奏は、私の高校〜大学生時代にビクターから発表されていたアンドレ・プレヴィン指揮のロンドン交響楽団によるものです。映画音楽からクラシック音楽への転身ということで、当時は一種のキワモノ扱いされることもあったプレヴィンのレコードは、私のお財布の中身ではとても買えませんでしたので、一種の懐かしさからくる選択かもしれません。彼の晩年は、N響とのモーツァルトなど、とてもチャーミングな演奏を聴かせてくれていました。達者なピアノでジャズや映画音楽をやっていた時代は生活のためで、ほんとの希望はクラシック音楽をやりたかったんだ、ということをどこかで言っていましたが、私の小規模なCDライブラリの中でも、サン=サーンスの「七重奏曲」、メンデルスゾーンやシューマンのピアノ三重奏曲、ラフマニノフの交響曲第2番、あるいはアシュケナージとのプロコフィエフのピアノ協奏曲全集など、けっこう購入しています。ですが、学生時代に指をくわえて見ていたあのLPと同じ録音をCDで購入するというのは、ちょいと嬉しいものです。ある意味、半世紀ぶりの再会みたいなものでしょう。

届いたCDはさっそく Ubuntu Linux の RhythmBox でリッピングして、自室の簡易な PC-audio で聴けるようにしたほか、車のCDプレイヤーに持ち込んで、がんがんかけております。ヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番、やっぱりいいなあ。

【追記】YouTube で、まさにこの録音を見つけました。アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン響。
Vaughan-Williams Symphony No. 5 (Previn/LSO)


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山響第317回定期演奏会でマルケス、グリーグ、ヴォーン・ウィリアムズを聴く(2)

2024年05月20日 05時42分00秒 | -オーケストラ
土曜日の山響定期、後半はヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番です。ヴォーン・ウィリアムズというと、私のイメージは1970年頃にビクターから出ていたLPレコードのジャケットで、「海」とか「南極」とかの筆文字が縦書きされていたものです。たしかアンドレ・プレヴィン指揮のロンドン交響楽団の演奏だったと思いますが、もちろん私のお小遣いでは買えるわけがなく、以後数十年、実際に演奏に親しむことはありませんでした。結婚し、郷里にUターンして山形交響楽団や山形弦楽四重奏団の定期演奏会に通うようになって、「グリーン・スリーヴスによる幻想曲」や「トマス・タリスの主題による幻想曲」、あるいは「幻想的五重奏曲」などに接するようになりましたが、実際に交響曲の演奏に接するのは初めてです。手元には交響曲第5番のLPもCDもありませんので、事前に YouTube で聴いてみましたが、なんだか茫洋としていて今ひとつつかめない。これは虚心に実演に接するしかあるまいと考えて臨んだのでした。

第1楽章、プレリュード、モデラート〜アレグロ、テンポ1。開始は録音で聴くほど弱音ではなく、実演の良さで全体に明瞭に聞こえます。作曲された年代が第二次世界大戦の最中といいますが、そんな暴力と破壊のイメージではなく、むしろ優しい音楽に聞こえます。最後のホルンがミュートを付けて終わるように、威勢のよい強奏が目立つ音楽ではない。
第2楽章、スケルツォ、プレスト・ミステリオーソ(神秘的に)。例えばトロンボーンのコラール風の部分があったとしても、目立たずに全体の中にそっと色合いを添えるといったふうで、テンポが速いスケルツォではあるのですが、不思議な印象です。
第3楽章、ロマンツァ、レント。弦楽の響きがいいなあ。ここではイングリッシュホルンの音色が耳に残ります。高い音域をオーボエで、低い音域をイングリッシュホルンで、併奏するフレーズのなんと魅力的なこと! ホルンの旋律をトランペットが受けて高揚し、全体が静まっていきますが、管楽器のオルガン的な響きと弦楽合奏の息の長いゆるやかな響きが盛り上がりを作ります。コンサートマスターのヴァイオリン・ソロに導かれて、ミュートを付けたホルンやヴィオラやチェロなど、静かに祈るように終わります。ここのところ、いいなあ。大好きになりました。
第4楽章、パッサカリア、モデラート。チェロが主題を奏して始まる音楽は、管と弦にティンパニも加わり次第に力強さが増しますが、音楽の形式はパッサカリアです。緊密な響きはモダニズムが支配的だった大戦前の時代を感じさせません。音楽が祈るように静かに終わる時、作曲された当時の戦時下のロンドンと同様に、ウクライナやアラブでの戦争をふと思ってしまいます。



初めて実演に接したヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番は、ノーブルな音楽と聴きました。ネットで聴くのとは異なり、実演に接して初めてとても良い曲だと実感しました。良い機会を与えてくれた山響と指揮の藤岡さんに感謝です。ありがとうございます。

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山響第317回定期演奏会でマルケス、グリーグ、ヴォーン・ウィリアムズを聴く(1)

2024年05月19日 21時10分13秒 | -オーケストラ
日曜日に地域行事の予定が入っていたため、山響こと山形交響楽団の第317回定期演奏会は土曜日の夜に聴くことにしました。夕方から出かけた山形テルサホールは、幸いに駐車場も混雑せずに入ることができました。今回のプログラムは、



  1. アルトゥロ・マルケス:ダンソン・ヌメロ・ドス (ダンソン 第2番)
  2. グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
  3. ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲 第5番 ニ長調
     ペーター・ヤブロンスキー(Pf)、藤岡幸夫 指揮、山形交響楽団

というものです。開演前のプレトークは西濱秀樹事務局長と指揮の藤岡幸夫さんのお話でしたが、マルケスのダンソン第2番は山響の団員の中からリクエストがあって実現したのだとか。メキシコの現代音楽の代表的な曲だそうで、期待が持てます。グリーグのピアノ協奏曲は、初夏の季節に不思議に聴きたくなる曲ですが、ヤブロンスキーさんという世界のビッグネームの登場で、こちらも期待大です。そしてヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番。今まであまり馴染みのない曲目ですので、YouTube 等で予習はしたものの、本当の所はよくわからず、実演に期待することとして参加したものです。その意味では、たいへん興味深いプログラム。これを逃してなるものか!

第1曲、メキシコの現代作曲家アルトゥロ・マルケスの代表曲、ダンソン第2番。ステージ上の楽器編成と配置は、左から第1ヴァイオリン(10)、第2ヴァイオリン(8)、チェロ(6)、ヴィオラ(6)、右端にコントラバス(4)の弦楽5部、コンサートマスター席には犬伏亜里さんが座ります。今回、ヴァイオリン群の左端にピアノが加わり、中央奥に木管楽器、フルート(2:うち1はピッコロ持ち替え)、オーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)、木管の左右にホルン(4)とトランペット(2)、さらに右奥にはトロンボーン(3)とテューバの金管群、正面最奥部にティンパニ、その左にパーカッションとしてクラベス、スネアドラム、サスペンド・シンバル、ギロ、トムトム、バスドラムが並び、3人の奏者で演奏します。クラベスというのは拍子木のような2本の棒で音を出すもので、ギロというのはヒョウタンの外側に刻みを入れて、それをこすって音を出すもので、いずれも民族楽器に分類されるものでしょう。
演奏が始まると、弦のピツィカートとピアノとクラベスのリズムをバックにクラリネットが長めの旋律を奏でますが、これが酒場の雰囲気というのか、いかにも南米風で楽しい。トランペットもカッコいいし、演奏する楽員のみなさんもノリノリで、いやー、いい曲、いい演奏を聴きました(^o^)/

2曲めはグリーグのピアノ協奏曲です。楽器編成はやや整理され、中央にピアノ、10-8-6-6-4 の弦楽5部、これに Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2) の木管と Hrn(4)-Tp(2)-Tb(3) の金管、それに正面最奥部の Timp. というものです。ヤブロンスキーさんは北欧の人らしくスラリとした背の高い人で、颯爽と登場です。
第1楽章、アレグロ、モルト・モデラート。ピアノの左手、低音のキレがすごい。リアルで生々しさがあります。実演でもLPやCDでも何度も聴いているおなじみの音楽ではあるのですが、管のフレーズにピアノが優しくそっと合いの手を入れていることに初めて気づきました。
第2楽章、アダージョ。優しい弦の響きの中でピアノが静かにつぶやくように始まる緩徐楽章ですが、沈潜的な指揮の中でホルンが見事に決まります。
第3楽章、アレグロ・モデラート、モルト・エ・マルカート。ほんとに明晰なピアノで、オーケストラも触発されたように次第に熱を帯びて、チェロのトップと独奏ピアノの対話もいい感じ。オーケストラの強奏はときに独奏ピアノを上回る音量ですが、合間にはときどき胸元からハンカチを出し、汗を拭きながらの余裕のある演奏です。ピアノの見事さには思わず唖然呆然。いやー、良かった!

アンコールは、バツェヴィチのピアノソナタ第2番の第3楽章。グラジナ・バツェヴィチ(1909-1969)はポーランドの女性作曲家らしいです。初めて聴きましたが、思わずあっけにとられるほど見事な演奏でした。



ここで休憩が入ります。後半のヴォーン・ウィリアムズは、また明日の記事で。ちょいと1回では終わらない感じです。

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サッリネンの交響曲第2番をあらためて聴いてみる

2024年03月21日 06時00分12秒 | -オーケストラ
連日、雪混じりの寒い日が続きます。「寒の戻り」とはよく言ったもので、当地山形ではほんとにブルブル寒いです。幸いに、寺の役員会も地域自治会の総会も終わり、各種団体の役員改選なども一段落して、畑仕事にも不向きな、心安らかに休めるお天気なのかも。

退職してからは、未聴のCD等を繰り返し聴く「通勤の音楽」の時間がなくなり、新たな音楽に接するには山響等の演奏会を機会とすることが多くなりました。直近の定期演奏会でいえば、サッリネンの交響曲第2番「交響的対話」Op.29あたりでしょうか。そういえば、あの「パーカッションのための協奏曲」みたいな音楽はずいぶん印象的な曲でした。

昔なら、「もう一度聴きたい」→「CD等を探す」→「売ってない」ということで諦めるしかなかったところですが、今はネットで検索すればどうにかなる時代です。たまたま Google で

Sallinen symphony 2

で検索してみたら、いくつか動画を見つけることが出来ました。オッコ・カムさん指揮のものもあり、これはいいと何度も再生して聴いてみました。動画のうち、音声の方は演奏そのものなわけですが、画像のほうはまるっきり静止したイメージで、ステージ狭しと並んだパーカッションを奏者がダイナミックに打ち鳴らす生の演奏の印象とはだいぶ違うように感じます。



AULLIS SALLINEN. SYMPHONY Nº2


そんなことを言っていても、実際に自分の耳で聴くことができるのはありがたい。サッリネンの交響曲第2番、こういう緊張感のある音楽を楽しめるようになったのは、バルトークやプロコフィエフなど20世紀前半の音楽に聴き馴染んでからのように思います。一口にクラシック音楽と言っても、実に多彩な世界です。

もう一つ、サッリネンの「サンライズ・セレナーデ」Op.63、同じくオッコ・カムさんの指揮です。

Aulis Sallinen - Sunrise Serenade Op. 63


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山響第315回定期演奏会でサッリネン、ニールセン、シベリウスを聴く

2024年03月11日 06時03分51秒 | -オーケストラ
春なのに雪が舞うお天気が続いた3月、山形市のテルサホールで山響こと山形交響楽団の第315回定期演奏会を聴きました。今回のゲストはフィンランドの世界的な巨匠指揮者、オッコ・カム氏です。若い頃に、カラヤン指揮者コンクールで優勝(1969年)して一躍有名になった頃のことはよく覚えていますが、まさか当地・山形で何度も間近に接することができるとは思ってもいませんでした。前回の演奏会(*1)ではオール・シベリウスのプログラムで、「フィンランディア」、交響曲7番、2番というものだったと記憶していますが、コロナ禍での来日中止を経て今回再びの来演。サッリネンとシベリウスがフィンランド、ニールセンがデンマークですから、北欧の音楽に焦点を合わせた、待ちに待った演奏会です。

今回のプログラムは、

  1. サッリネン:交響曲 第2番「交響的対話」作品29
        *パーカッション 常盤紘生(山響首席奏者)
  2. ニールセン:フルート協奏曲 FS 119  フルート: 知久翔(山響首席奏者)
  3. シベリウス:交響曲 第1番 ホ短調 作品39
      オッコ・カム指揮、山形交響楽団

というもの。

指揮のオッコ・カムさんに西濱事務局長がインタビューするプレコンサートトークが興味深いものでした。サッリネンは長く交友が続く大切な作曲家で、オッコ・カムさん自身が今回の曲の初演者でもあるそうです。また、今回ソロをつとめる常盤さんと知久さんのお二人について、才能ある若い奏者で音楽の背後にあるものをとらえて演奏しようとする姿勢が素晴らしいと評価。ニールセンについては、ニールセンが以前住んでいた家を買い取り、現在オッコ・カムさんが住まわれているのだそうで、西濱さんが羨んでいました(^o^)/ 



さて1曲め、サッリネンの交響曲第2番 作品29 〜ソロ・パーカッションとオーケストラのための交響的対話〜という作品ですが、ステージ上には正面中央にマリンバ、ヴィヴラフォン、トムトム、ボンゴ、バスドラム、スネアドラム、アンティーク・シンバル、ゴング、ギロ、タムタム等の独奏パーカッション群が配置され、目を引きます。指揮台はこの後方で、弦楽5部が左から 10-8-6-6-4 の配置です。左手後方にハープ、正面後方にフルート(2)、オーボエ(2),その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)の木管群が並び、金管楽器は左手にホルン(4)、右手にトランペット(3)、トロンボーン(2)、テューバという楽器編成と配置になっています。
弦楽が下降する音階のような音を奏する中で、ヴィヴラフォン等が同様に下降音階を奏でたかと思うと、一転してパーカッションの本領発揮!なんてかっこいいんだろう。ソロの常盤紘生さんが真っ赤なシャツで登場した気持ちもわかるなあ。ネットで予習していったとはいうものの、実演の迫力と魅力は桁違いのものでした。

聴衆もやんやの拍手喝采、常盤さんのアンコールは、ネヴォイシャ・ヨハン・ジヴコヴィッチ「ヴィヴラフォンのためのスオミネイト」でした。



ステージ上からパーカッション群が退き、こんどはニールセンのフルート協奏曲です。楽器編成と配置は、左から 10-8-6-6-5 の弦楽5部に、正面奥に Ob(2), Cl(2), Fg(2) と木管楽器が並びますが、Fl は独奏フルートだけのようです。金管楽器は左手奥に Hrn(2) と正面奥 Timp. の右側に Bass-Tb だけで Tp がありません。ちょっと変わった編成です。独奏フルートの知久翔さん、冒頭から素晴らしい音と演奏。素人目にも難しそうなところを難なく吹き、ニールセン晩年の音楽を見事に表現します。例えばフルートの高い音とクラリネットの低い音の対比と掛け合いは魅力的ですし、弦楽の美しい響きが突然に荒々しく変わったりするところなど、1927年に完成された音楽らしく現代的な要素もあり、説得力のある音楽と感じます。ちなみに、Timp. は先のソリストの常盤さんが黒の衣装に早着替えのマジックを見せて参加していました。山響団員はタフでなければつとまらないのかも(^o^)/

聴衆の盛大な拍手を受けて、ソリスト・アンコールはドビュッシーの「シランクス」。神秘的な響きに思わずほぉーっとため息がもれました。

ここで15分の休憩。後半は、シベリウスの交響曲第1番です。Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(4), Tp(3), Tb(3), Tuba, Timp. Perc, Harp に弦5部という楽器編成です。第1楽章の冒頭の Timp. のロール?に始まり、クラリネットのモノローグが長く続きますが、これが実にいいのですよ! この曲の魅力にここでぐっとつかまれるのです。そして弦楽によって奏でられる音楽。オッコ・カム指揮の山響は、この曲の魅力を充分に聴かせてくれたと思います。音楽は悲劇的な要素をはらんでいるのですが、正直に言って、あんまり幸せすぎて終楽章のあたりではほとんど意識が落ちていたくらいです(^o^)/
いや〜、今回もほんとに良い演奏会でした。



終演後、お隣に座っていたご婦人に声をかけられました。「◯◯◯です」、ええっ、いやいや全然気が付きませんで失礼しました。某庄内の笛吹きさんの奥様でした。ずいぶんお久しぶりですが、そういえば我が家の母娘猫が元気だった頃、某千代丸クンをかわいがっていたはず、その後の消息もお聞きできませんでしたが、いろいろ懐かしく思い出してしまいました。



(*1): 山形交響楽団第268回定期演奏会でオール・シベリウス・プログラムを聴く〜「電網郊外散歩道」2018年4月

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シベリウスの交響曲第1番のいろいろな演奏を聴いてみる

2024年03月10日 06時00分05秒 | -オーケストラ
山響こと山形交響楽団の定期演奏会に予定されている曲目の中で、サッリネンとニールセンも大きな楽しみの一つですが、そうは言っても聴き馴染みのあるシベリウスの交響曲第1番が期待大です。手元にはCDのカラヤン盤があり、ずっと聴いています(*1)が、その他にはパブリック・ドメインの恩恵でアンチェル指揮チェコフィルの演奏(*2)や渡邉暁雄指揮日本フィルの演奏(*3)も楽しんでいます。

その他にも、様々な演奏に接してみようと、YouTube で探してみました。例えばパーヴォ・ヤルヴィ指揮、パリ管の演奏。

Jean Sibelius - Symphony No 1 in E minor, Op 39 - Järvi


続いて、ユッカ・ペッカ・サラステ指揮、ラハティ交響楽団の演奏。

Sibelius: Symphony No. 1 - Jukka-Pekka Saraste & Lahti Symphony Orchestra


ふだんの日常生活で楽しむことができるという点では、コンピュータ・ネットワークの時代の恩恵を痛感しますが、今回の定期演奏会は、パソコンのディスプレイとミニコンポの簡易 PC-audio で見て聴く音ではなくて、よく響く音響の良いホールで、眼の前で生身の演奏家が繰り広げる演奏会です。正直に言って、これは何ものにも勝る音楽体験でしょう。今回のオッコ・カム指揮山響の生の演奏が楽しみです。

(*1): カラヤンとベルリン・フィルの「シベリウス/交響曲第1番」を聴く〜「電網郊外散歩道」2008年3月
(*2): シベリウス「交響曲第1番」カレル・アンチェル指揮チェコフィル〜「クラシック音楽へのおさそい〜Blue Sky Label〜」より
(*3): シベリウス「交響曲第1番」渡邉暁雄指揮日本フィル〜「クラシック音楽へのおさそい〜Blue Sky Label〜」

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山響第314回定期演奏会でパウルス、チャイコフスキー、メンデルスゾーンを聴く

2024年02月12日 06時00分52秒 | -オーケストラ
鼻づまり症状が出て寝不足な今日この頃、なんとか頑張って山響こと山形交響楽団第314回定期演奏会に出かけました。少し出遅れたせいもあって、駐車場はどこも満車、仕方なく霞城セントラルの屋内駐車場に車を入れて、会場の山形テルサホールに向かいましたら、この日は県民ホールの反田恭平&ジャパン・ナショナルオーケストラツアー2024というコンサートとぶつかっていたのですね。テルサホールの山響定期はチケット完売、満席だそうで、幸いでした。今回のプログラムは、

  1. スティーヴン・パウルス:スペクトラ
  2. チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ長調 Op.23 上原彩子(Pf)
  3. メンデルスゾーン:交響曲第4番 イ長調「イタリア」Op.90
     キンボー・イシイ指揮、山形交響楽団

というものです。

開演前のプレトークが面白かった。指揮のキンボーさん、山形入りしてさっそく財布を無くしたんだそうで、周囲の人が一緒に探してくれて、まもなく無事に見つかったそうです。西濱事務局長も銀行のキャッシュカードを落として「これ誰のですか〜」と言われているのに気づいたことがあるのだそうで、うっかりなお二人というよりも、「山形あるある」かも(^o^)

さて、1曲め、「スペクトラ」という現代曲の楽器編成と配置は、左から順に第1ヴァイオリン(8)、第2ヴァイオリン(7)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)と指揮者を囲み、右端にコントラバス(3)となります。正面奥の前列にフルート(1)とオーボエ(1)、後列にクラリネット(2)とファゴット(1)、木管の左にホルン(2)、右にトランペット(1)とトロンボーン(1)というやや縮小した編成で、再後列にパーカッションが陣取り、ティンパニ、シロフォン、タムタム、スネアドラム、サスペンド・シンバル、ドラ、ウッドブロック、ムチ、シンバルと多種多彩。見ているだけで面白そうです。
演奏が始まると、いわゆる現代音楽の難解さはなく、鮮烈で楽しいものでした。特に第2楽章の2本のホルンが弦楽合奏と協奏するところや、第3楽章のパーカッションが活躍するところなど、とても魅力的に感じました。常盤さんのティンパニの迫力、平下さんの目を見張るマレットさばき、三原さんのスネアドラム?が思い切りが良くてナイス!でした。

2曲めは、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番です。ステージ中央にピアノが引き出され、8-7-5-5-3 の弦楽5部に Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2) の木管群、その左に Hrn(4)、右に Tp(2)-Tb(3)が並び、正面最奥部に Timp. という楽器配置です。上原彩子さんは鮮やかなピンクのドレスで登場、力強くダイナミックで、それでいて弱音部は限りなく優しく、もう素晴らしい演奏! 私もこの曲を聴くのはしばらくぶりでしたので、前日まで清水和音盤とかギレリス盤とかいろいろなCDを聴いて予習してきましたが、素晴らしい演奏を前にしてみんな吹っ飛びました。ブラヴォー!
そしてアンコールがまたため息ものでした。ラフマニノフの「幻想的小品集 メロディ Op.3-3 ホ長調」だそうですが、聴衆も息を呑む静けさの中に音楽が流れ、この時間がいつまでも続いてほしいと思うほど。



休憩の後は、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」です。ピアノが後方に退き、楽器配置は 8-7-5-5-3 の弦楽5部に Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), Hrn(2), Tp(2) に Timp. という編成。違うのは、ホルンとトランペットがバルブなしのナチュラル・タイプであることと、ティンパニもバロック・ティンパニを用いることです。このあたりは、作曲当時の楽器や奏法に準じることで、作曲家が思い描いた当時の音に近づけるという山響の特徴でもあります。
演奏が始まると、指揮のキンボーさん、中〜低音をしっかりと響かせて、その上で歌うように意図しているようで、例えば第2楽章ではチェロやコントラバスの持続する動きがよくわかります。第3楽章で突出しないナチュラル・ホルンが破綻なくバランス良く鳴らされると、ヴィヴラートを最小限に抑えたヴァイオリン群が入ってくるときのキラキラした輝かしさは例えようがない魅力です。終楽章、沸騰するようなサルタレロ。変なたとえですが、小さなミルクパンの沸騰ではなくて、中低音の土台の上に乗って、大鍋の沸騰みたいな迫力がありました(^o^)/



ああ、良かった。今回も良い演奏会でした。次回3月9日・10日の第315回定期は、世界の巨匠オッコ・カムさんが再び登場、これも特別な楽しみです。山響がある限り、私の楽しみはまだまだ続きそうです。



ところで、いただいたチラシの中で、遅筆堂文庫山形館のトークイベントで山形交響楽協会専務理事の西濱英樹さんの図書館トークの案内がありました。2月18日の日曜日の14時から東ソーアリーナにて。面白そう、行ってみたいと思ったら、ナンタルチヤ! 同日同時刻にサクランボの剪定講習会が入っているではないですか! すでに申し込み済で、うーむ、残念無念。遅筆堂文庫さん、何かの機会に、ぜひ皆さんに公開してくださいな。お願いしま〜す(^o^)/

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シューベルト「八重奏曲」をセル指揮クリーヴランド管の演奏で聴く

2024年01月05日 06時00分57秒 | -オーケストラ
元旦の寺の行事が終わると翌2日には他寺の住職が来宅、以後も来客があるかもしれないと留守にもできず、自宅にじっとしています。妻はときどき買い物に出かけますが、私はひたすら客待ちしながら主人兼主夫業に勤しむのみ。昔は「正月には掃除や水仕事、煮炊きなどはしないものだ」と言われたものでしたが、それは下男下女などを抱えていた地主の時代の慣習で、主婦を慰労するだけでなく奉公人を家に戻して休ませる意味もあったことでしょう。でも今どきは男性も包丁を持ち洗い物等をしなければ「協力的でない」という理由で離婚届を出されてしまうような時代です。また、これだけ食生活が多様で豊かになった時代に、冷たいおせち料理だけで朝昼晩を過ごすのは飽きてしまいます。いきおい、私が積極的に新しいメニューを開拓して、昼食だけでなく夕食も作るような意気込みで取り組むことが期待されて…いるのかな?

さて、私の好きな音楽、シューベルトの「八重奏曲」は、もともと少し規模が大きいけれども室内楽曲の範疇に入る曲(*1)です。ところが、作曲をよくし編曲が大好きで、スメタナの弦楽四重奏曲「我が生涯より」を管弦楽曲に編曲して演奏(*2)している指揮者ジョージ・セルが手兵のクリーヴランド管弦楽団を振った演奏が録音されているという情報をだいぶ前に入手しておりました。LPやCD等を探してはいましたが見つからず、ヒマにまかせてネットで探してみようと思い立ちました。

Schubert Octet Szell Cleveland

うん、これだね! ドンピシャで見つかりました。1965年のライブ録音のようです。

Schubert, Octet, D. 803; arr. Szell: Szell/Cleveland/live in 1965


もちろん、フルオーケストラではなく、4-4-4-3-2 の弦楽5部に Cl, Fg, Hrn が加わった、縮小編成になっています。ライブですので微小なキズはありますが、自然なテンポ、しなやかな弦楽、魅力的な管楽器の響きに、もしかしたらシューベルト自身がオーケストラ版を編曲していたらこうんなふうだったかもしれないと思ってしまいます。



能登半島沖地震の続報は、たいへんな状況のようです。東日本大震災の際は、津波被害を受けた太平洋沿岸部を目ざして、日本海側からもあばら骨のように通じた東西の道路を通って救援が入りましたし、空路も例えば山形空港から24時間体制で救援ヘリが飛んだように、隣県からの支援ができました。今回は半島部ということと地形的な要素に加えて津波被害もあり、陸路も空路も海路も困難が大きいようです。義侠心から救援に入ろうとした自家用車の列がかえって渋滞を引き起こし、救援車両の走行を妨げている面もあるとのこと。今はまだその時期じゃない。羽田空港の事故も、おそらくは1分1秒を争う緊急重要任務と認識した海上保安庁機と、通常の安全運行を最優先とする管制側との認識のズレが背景にあったための悲劇なのではないかと想像しています。揚陸艇で陸揚げした重機が動き出せば、また少しは状況が変わってくるかと思いますが、今はただ祈るばかりです。

(*1): シューベルトの八重奏曲〜「電網郊外散歩道」2010年4月
(*2): スメタナ「我が生涯」(ジョージ・セル編曲による管弦楽阪)〜「クラシック音楽へのおさそい〜Blue Sky Label〜」より、あるいは YouTube でも Smetana:String Quartet No.1 by Szell, Cleveland orch.

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山響第313回定期演奏会でベートーヴェン、ハイドン、ブラームスを聴く

2023年11月20日 18時24分01秒 | -オーケストラ
11月19日(日)の午後、山形市の山形テルサホールで山響こと山形交響楽団の第313回定期演奏会を聴きました。少し出遅れたこともあり、駐車場が軒並み満車になっていましたが、霞城セントラルの屋内パーキングに停めることができ、まずは会場へ。ホールに入り、西濱事務局長と指揮の鈴木秀美さんのプレトークを聴きました。鈴木秀美さんは山響の首席客演指揮者となって10年になるらしい。そういえば私も鈴木秀美さんの指揮のときにはかなり勇んで出かけているような気がします。なんと言っても、ハイドンのシンフォニーや初期シューベルトの魅力などを教えてくれたのが、鈴木秀美さんと山響の演奏でしたので。今回も、次のように魅力的なプログラムとなっています。

    バロック、モダン二つの世界で世界を席巻する名手 佐藤俊介と鈴木秀美 待望の共演が実現する!蘇るベートーヴェン
  1. ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61 Vn:佐藤俊介
  2. ハイドン:交響曲 第83番 ト短調「めんどり」Hob.I:83
  3. ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 作品56a
     鈴木秀美 指揮、山形交響楽団

今回の独奏者の佐藤俊介さんは、もちろん私も初めて聴きます。Wikipedia 等によれば、若くして才能を発揮し、モダン、ピリオド、両方で優れた演奏を示しながら世界的な活躍を続けている39歳、使用する楽器は羊の腸を素材とするガット弦を用いて演奏することが多いそうで、このあたりはチェロ奏者としての鈴木秀美さんとの共通点になっています。山響でもぜひ共演したいと願っていたけれどなかなかスケジュールが合わず、今回ようやく共演が実現したということのようです。

さて、今回は最初から協奏曲。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲という大名曲を演奏します。楽器配置は、弦楽が左から第1ヴァイオリン(8)、チェロ(5)、その奥にコントラバス(3)、ヴィオラ(5)、第2ヴァイオリン(7)という 8-7-5-5-3 という編成の対向配置です。正面奥に木管楽器が、フルート(1)とオーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)とファゴット(2)、正面最奥部にバロックティンパニが位置し、左にホルン(2)、右にトランペット(2)と金管楽器が並びますが、例によって両方ともナチュラルタイプのようです。
第1楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポから。バロック・ティンパニの抜けの良い音が800席のホールに気持ちよく響きます。管楽器の響きもバランスの良いまろやかさ。弦楽セクションの奏者の皆さんの表情がとてもいきいきしているみたい。開始される独奏ヴァイオリンの音色は、しなやかでやわらかく暖かい音。しかも、澄んだ音がホールの上方に上っていって消えていくようです。なるほど、これがガット弦とピリオド奏法と響きの良い小ホールとの相乗効果か。佐藤俊介さんの演奏は実に見事で多彩なもので、独奏部分だけでなく全奏でも奏いているみたい。カデンツァはメンデルスゾーンの頃のダヴィドフという人のものだそうです。鈴木秀美さんの指揮も、強弱等の対比を活かしながら活気があり推進力があります。思わず熱くなってしまう演奏でした。

満場の拍手に応えて、アンコールはバッハの無伴奏。残念ながら、会場を出るときに作品名、作品番号等の表示を撮影するのを忘れてしまいましたので、私のような素人音楽愛好家にはこれ以上の詳細は不明(^o^)/

ここでプログラム前半が終わり、15分の休憩となりました。
後半の最初は、ハイドンの交響曲第83番「めんどり」です。もちろん、私にとって実演では初めての機会ではなかろうか。8-7-5-5-3 の弦楽5部に Fl(1)-Ob(2)-Fg(2)-Hrn(2) という楽器編成です。鈴木秀美さんは指揮棒無しで登場。第1楽章:アレグロ・スピリトゥオーソ。この編成からは考えられないような迫力の始まりです。第2楽章:アンダンテ。例えば2nd-VnとVlaがpで奏すると次にはいきなりfで弦の全奏が対比されるというように鋭い対比を見せ、穏やかな緩徐楽章とひとくくりにはできません。第3楽章:メヌエット、アレグレット〜トリオ。おすましした舞曲ではなくて、けっこう活発なメヌエットです。第4楽章:フィナーレ、ヴィヴァーチェ。軽やかで晴れやかなアレグロ。全部の楽器が緊密なアンサンブルを展開しますが、とりわけ弦楽セクションがすごい!その中でFlとObが浮かび上がります。音楽が一度終わった風に見せかけてまた再開して思わず拍手しそうになるなど、ハイドン先生のお茶目さもチラリ(^o^)/

そして最後はブラームスのハイドン・ヴァリエーション。8-7-5-5-3 の弦楽5部に Piccolo, Fl(2), Ob(2), Cl(2), Fg(2), ContraFg(1), Hrn(4), Tp(2), Timp, Triangle という楽器編成です。指揮棒を持って登場した鈴木秀美さんは、実は「ハイドン・ヴァリエーション」を振るのは今回の定期演奏会が初めてなのだそうで、そんなこともあるのかと妙な感心をしました。
穏やかな表情の例の主題、そして変奏は切れ込みの鋭い対比を付けて、ブラームスの充実した音楽を奏でます。オーケストラの規模や奏法、ホールの大きさなどにもよるのでしょうか、言い方はヘンですが、ある種「茫漠としたブラームス」ではなくて「明晰なブラームス」に近いかも。例えばラスト近く、三原さんのトライアングルの音、今までCD等ではあまり意識したことがありませんでしたが今回はほぼ聴き取れて、主題をそっくりそのままなぞっているのではないのだな、と作曲家の芸の細かさを感じました。

今回も、良い演奏会となりました。最近、終演後に団員の皆さんがお見送りしてくれるのが定例となってきたようです。ニコニコ笑顔で帰途に着くことができ、これも嬉しいことです。

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山響第312回定期演奏会でコダーイ、サン=サーンス、サラサーテ、ドヴォルザークを聴く

2023年10月23日 06時34分40秒 | -オーケストラ
よく晴れた秋の日曜日、山響こと山形交響楽団の第312回定期演奏会を聴きました。今回は、小林研一郎さんの指揮、瀬崎明日香さんのヴァイオリンで、次のようなプログラムとなっています。

  1. コダーイ「ガランタ舞曲」
  2. サン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」 Vn:瀬崎明日香
  3. サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」 Vn:同上
  4. ドヴォルザーク「交響曲第8番」
     小林研一郎 指揮、山形交響楽団

いつもは、指揮者が登場して西濱事務局長とトークをするのですが、今回は何か趣向があるようで、左奥に使わないはずのピアノが置いてあります。指揮者に代わって登場したのは、今回の独奏者の瀬崎明日香さん。先ごろ逝去された山形交響楽協会会長の三井嬉子さんの思い出や、指揮者のコバケンこと小林研一郎さんのことなどを話しました。それから指揮者の小林さんが紹介されて登場、というよりも、話しながらピアノに向かい、コダーイのガランタ舞曲の旋律を紹介した後、フルートの知久翔さん、オーボエの柴田祐太さん、クラリネットの川上一道さんの三人に吹いてもらい、その魅力を話します。続いてホルンの勇壮な旋律とチェロの聴きどころを紹介、なるほど、あまり知られていない曲目の魅力を紹介して親しんでもらおうということなのだな。コバケンという愛称で親しまれている理由がわかりました。川上さんを山本さんと間違えた小林さんのおちゃめさも、苦笑しながらちゃんと手を挙げた川上さんも、筋書き通りにはいかない本番の面白さかも(^o^)/

それで、第1曲め、コダーイの「ガランタ舞曲」です。作曲家の石川浩さん執筆のプログラムノートによれば、この曲は「1933年に創立80週年を迎えたブダペスト・フィルハーモニー協会の祝賀行事のために書かれた作品」だそうで、2017年に飯森範親さんの指揮で聴いて以来(*1)、実演では二度目となります。楽器編成と配置は、左から第1ヴァイオリン(10)、第2ヴァイオリン(8)、チェロ(6)、ヴィオラ(5)、その右にコントラバス(4)と、ヴァイオリン群を増強、ヴィオラが少ないけれど、コントラバスも増やしているようです。正面奥にフルート(2)、オーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)、その奥にトランペット(2)、木管の左にホルン(4)、正面最奥部のティンパニの左にトライアングル、スネア・ドラム、グロッケンシュピールのパーカッションが並ぶ、というものです。
出だしのチェロの哀感を持った旋律が勇壮なホルンに引き継がれて曲が始まると、ダイナミックで美しい音楽となります。フルートからオーボエ、クラリネットと見事に引き継がれる例の部分も本当に魅力的で、リズムも響きも多彩な音楽・演奏に魅了されました。聴衆も爆発的な拍手、でも指揮者が言うとおり、「こんなスゴイ演奏には起立して表すべき」でしょう。スタンディングオベーションでした。

この後、独奏者の場所を取るためにヴァイオリン・パートを左に少し下げますが、楽器編成と配置は変わらず。左袖から独奏者が登場、少し緑色がかった水色のドレスで、瀬崎明日香さんの登場です。指揮者は先の「ガランタ舞曲」では暗譜でしたが、今回はスコアを置いているようです。サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」は、「序奏と気まぐれなロンド(輪舞曲)」というような意味でしょうか、スペイン風というかジプシー風というか、エキゾティックで高度に技巧的な音楽で、思わずリズムに乗せられてしまいます。大きな拍手に続き、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」を演奏します。オーケストラが哀愁を帯びて開始すると、独奏ヴァイオリンがやっぱりジプシー風の「あの」旋律を奏します。どうしても独奏ヴァイオリンに聴き惚れてしまいますが、寄り添うオーケストラの美しさも特筆モノです。とりわけ瞑想的なところ、弱音部の繊細な響きは素晴らしかった。
聴衆の大きな拍手に応えて、アンコールはドヴォルザーク「ジプシー歌曲集」から「我が母の教え給いし歌」を無伴奏で。今回はジプシー音楽との関連をテーマにしたということでしょうか、独奏ヴァイオリンがロマ出身のソプラノ歌手のように歌い、こちらも素晴らしかった。



ここで、15分の休憩です。

後半は、ドヴォルザークの交響曲第8番。楽器編成は、Fl(2,うち1がピッコロ持ち替え)、Ob(2,うち1がイングリッシュホルン持ち替え)、Cl(2)、Fg(2)、Hrn(4)、Tp(2)にTb(3)とTubaが加わります。弦は1st-Vnの最後尾に瀬崎明日香さんが加わり、なんとも豪華な 11-8-5-6-4 という編成。バランス的に弦の中低域パートには負担がかかるのかもしれませんが、ゲストの参加に楽員の皆さんの志気は高まっているようです。私の大好きなドヴォルザークの8番、お天気の良い果樹園で仕事をするときに聴きたい曲のナンバーワン、しんねりむっつりするのではなくて、やっぱり開放的に持てる力を存分に発揮するのが合うのかもしれないと思わせる爆発でした! 音楽の心を届けるのは客席だ!と言わんばかりに客席の方を指差しながら指揮する姿に、音楽と楽員をコントロールするのではなくて、あるいはひそやかにコントロールしながらも、演奏者の自発的な気持ちを引き出すのがコバケン流なのだなと感じさせる演奏でした。ブラーヴォ! スタンディングオベーションでした。

山響の定期演奏会には珍しく、アンコールがありました。山響との共演を約束していた三井嬉子さんを偲び、約束を果たしましたよと「ダニーボーイ」を。その後、三井さんは山響がしんみり終わるのは喜ばないだろうからと、ドボルザークの交響曲第8番、第4楽章の最後の爆発をもう一度! 楽員の皆さんも手を振ってお別れしました。ほんとに良い演奏会でした。



この前、写真撮影が解禁となるタイミングが事務局から明示されましたので、少しだけ撮影してみました。指揮者の指示でホルンセクションが起立し、聴衆の拍手を受けている場面です。いいなあ。写真を見ると思い出されます。

(*1): 山形交響楽団第264回定期演奏会でコダーイ、ニーノ・ロータ、ブラームスを聴く〜「電網郊外散歩道」2017年11月

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山形交響楽団第311回定期演奏会で酒井健治、モーツァルトを聴く

2023年09月11日 06時00分18秒 | -オーケストラ
9月10日の土曜日は、早朝から河川清掃ボランティアで草刈り作業に従事。前日はやはり早朝から農事実行組合の農業用水路の草刈りでしたので、2日続けての早朝労働となりました。終了後も思い立って反対側の堤防の管理用道路が蔓性の草がはびこっていましたので、これも刈り払いをして軽トラックが通れるようにしましたので、やや疲労気味。朝食後に昼寝をしようと思っていたら、野暮用が次々に発生して寝そびれてしまい、昼食後に山響定期のマチネに直行です。

駐車場は何かイベントがあったらしく混み合っていましたが、会場の山形テルサになんとか駐車できました。ホールに入ると、ステージ上はなんだか祭りの会場のような楽器の混み具合で、思わずびっくりです。西濱事務局長と指揮の阪哲朗さんに加えて、今回のプログラム最初の曲目「ジュピターの幻影」の作曲者、酒井健治さんも登場し、ヨーロッパ時代の話や曲についての話などを聞きました。滑舌の良い早口で、西濱さんとの掛け合いを聞いていると、どうやら関西のノリみたい(^o^)/

本日のプログラムは、

  1. 酒井健治:ジュピターの幻影
  2. モーツァルト:ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 K.467 務川慧悟(Pf)
  3. モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調「ジュピター」K.551
      阪哲朗指揮、山形交響楽団

というものです。

最初の曲目、酒井健治さんの「ジュピターの幻影」の楽器編成と配置がスゴイ。ステージ左から第1ヴァイオリン(8)、チェロ(4)、ヴィオラ(4)、第2ヴァイオリン(7)の対向配置、コントラバス(2)は左後方です。中央奥にフルート(2,うち1はpicc持ち替え)、オーボエ(2,うち1はEngHrn持ち替え)、その奥にクラリネット(2,スライドホイッスル持ち替え)、ファゴット(2,蛇腹ホース持ち替え)、木管楽器の両サイドに左がホルン(2)、右がトランペット(2)とやや小ぶりの編成ですが、その奥に並ぶパーカッション、鳴り物がスゴイ! プログラムノートによれば、アンティーク・シンバル、ヴィヴラフォン、チャイム、スプリングコイル、サスペンド・シンバル、ポリブロック、ウッドブロック、ムチ、タムタム、ラチェット、オクトブロック、ワルトトイフェル、マリンバ、ティンパニ、トムトム、トライアングル、ギロ、バスドラム、スネアドラム、ウォーターホーン、ハーモニックパイプ だそうです。

演奏が始まると、変わった響きの中にもところどころにモーツァルトの「ジュピター」交響曲の旋律が顔を出します。不思議な響きは何の音なのか、おそらく単一の音ではないのかも。ダイナミックに高揚する音楽と言うよりはむしろ、静的な祈りの音楽に近いのかもしれません。

続いて、ステージ中央にグランドピアノが引き出され、第2曲め、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番です。楽器編成と配置は、パーカッションはバロックティンパニだけになり、1st-Vn(8), Vc(5), Vla(5), 2nd-Vn(7), Cb(3) と通常編成に戻った弦楽5部に、Fl, Ob(2), Fg(2), Hrn(2), Tp(2), Timp というもので、弦楽5部の配置は同じで、Cl の位置に Hrn が座り、Tp の右にバロックTimp. という配置です。もちろん、ホルンとトランペットはモーツァルトが作曲当時の形のナチュラルタイプです。
演奏が始まるとなんとも気持ちが良い。ピアノの音は美しいし、溌溂とした音楽は耳に快いものです。早朝の作業の疲れもあってか、不覚にも第2楽章をうとうとしてしまいました。演奏者の皆さんには申し訳ないことながら、第3楽章の華々しい音楽に気持ちよく目覚めたという、なんとも締まらない状況です。でも、アンコールで演奏してくれたモーツァルトのピアノ・ソナタ イ短調 K.310 の第1楽章は、速いテンポで心に訴える力のある演奏でした。ぐっと来ました。

ここで15分の休憩です。
休憩の間に、山響の新しいCDの予約をしてきました。村川千秋指揮によるシベリウスの交響曲第3番ほか。ちょうど第3番のCDは持っていなかったので、願ったりかなったりです。9月22日頃に届く予定。これは楽しみです。

さて後半は、モーツァルトの交響曲第41番ハ長調「ジュピター」です。楽器編成と配置は、8-7-5-5-3 の弦楽5部は対向配置。これに Fl(1), Ob(2), Hrn(2), Fg(2), Tp(2), Timp. が加わります。ホルン、トランペットはナチュラルタイプ、バロックティンパニは1曲めの楽器配置の関係で右奥のトランペットの並びです。
この曲は手持ちのLPやCD等の録音も何種類かあり、実演でも飯森範親さん、鈴木秀美さんとの演奏等を聞いていますので、いわばふだんよく聴きなれた音楽の部類に入るでしょう。でも、阪哲朗さんとの「ジュピター」も良かった。オーケストラの響きが豪華でティンパニが効果的に作用し、抑制と開放が巧みに組み合わされた、実に聴き応えのある演奏でした。終楽章のフーガのところなど、ずっと聴いていたいと思わせる充実したもので、ほんとに良かった。聴衆の拍手の大きさと熱がよく物語っていたと思います。

終演後、気分良く帰宅しようと思っていたら、落とし穴がありました。駐車場から出ようとしたら、なんと、駐車券が見当たらない! いつものサンバイザーのカード入れにないのです。胸ポケットなどを焦って探しましたがどこに置いたのか記憶にない。後続の車は苛ついているだろうし、老害と言われても仕方がない事態です。スタッフの人に訳を話して誘導してもらい、車を駐車場に戻して隅から隅まで探しました。そうしたら、なんとショルダーバッグの背側ポケットにありました! おそらくは、いつものサンバイザーに入れようと思ったが一瞬やまぎん県民ホールと勘違いし、事前精算機で精算できるように胸ポケットに入れようとして、汗で湿ってしまうのを防ぐためにショルダーバッグの背ポケットに入れた、という流れだったのでしょう。

教訓:できるだけいつもと同じようにする。いつもと違うことをしたときは、意識してそれを覚えておく必要がある。


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山響・仙台フィル合同演奏会でドビュッシー、ラヴェルを聴く

2023年07月24日 06時00分48秒 | -オーケストラ
梅雨が明けた日曜の午後、山形市の県民ホールで、山響こと山形交響楽団と仙台フィルとの合同演奏会が開かれました。「東北ユナイテッド」と称して東北の2つのプロオーケストラが合同演奏会を開く試みは、すでにだいぶ回を重ねていますが、パンフレットには残念ながらそうした経緯を記録したデータはありません。このブログで検索してみると、最初に合同で演奏会を行ったのは、どうやら2012年のマーラーの交響曲第2番「復活」のとき(*1)らしい。以後、レスピーギ三部作やR.シュトラウス作品、あるいはマーラーの5番、ブルックナーの8番など、演奏規模が大編成を要するものを取り上げてきています。2020年からは「東北ユナイテッド〜東北は音楽でつながっている〜」と位置づけて取り組まれています。昨年は山響の50周年イヤーでしたが、今回は創立50週年を迎えた仙台フィルの記念年にあたりますので、仙台フィルの桂冠指揮者パスカル・ヴェロさんを迎えて、お得意のフランスものを取り上げた演奏会、ということになります。



開演前のプレトークは、山響の西濱事務局長が紹介して登場した指揮のパスカル・ヴェロさん、仙台フィルのコンサートマスター西本幸弘さん、そして今回出番が多い山響フルート奏者の知久知久さんの三人です。パスカル・ヴェロさんと知久さんは、同じパリ高等音楽院(のだめカンタービレ・ヨーロッパ編の舞台になった学校)で学んだ先輩後輩だそうで、フランス語でやりとり。うーん、フランス語ができるなんて、実にうらやましい(^o^)/ これに対して西本さんのほうは会場の山形県民ホールを絶賛、縄で縛って仙台に持って帰りたいほどだそうで、これにはパスカル・ヴェロさんも同意します。たしかに、宮城県民会館は私が学生時代の頃からの建物ですので、かなり老朽化しているのは確かだろうと思います。おそらく、2011年の東日本大震災の復興事業に予算を取られるため後回しにされて、仙台フィル50周年には間に合わなかったのだろうと推測しているところです。

さて、今回の合同演奏会のプログラムは、

  1. ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
  2. ラヴェル:ダフニスとクロエ 第2組曲
  3. ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ(管弦楽版)
  4. ラヴェル:ラ・ヴァルス (管弦楽版)
  5. ラヴェル:ボレロ

というもので、オールフランス音楽。開演前のステージを見ると、その規模の大きさがわかります。ざっと見たところ、ステージ左から第1ヴァイオリン(12)、第2ヴァイオリン(12)、チェロ(8)、ヴィオラ(9)、コントラバス(6)という、12-12-9-8-6 型の弦楽セクションに、正面奥に木管・金管、パーカッションもかなりの人数になるようですが、オペラグラスを忘れてしまい、左奥のハープ2台とチェレスタ2台のほかの詳細は不明。



客席の照明が落ち、楽員の皆さんが登場します。今回のコンサートマスターは仙台フィルの西本さんのようで、脇に山響の平澤さんかな。残念ながら、県民ホールの客席照明はストンと真っ暗に近い状態になりますので、山形テルサと違い、手元でメモすることもできません。したがって全体的な漠然とした印象になってしまいますが、ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」では、冒頭のフルート・ソロが見事で、その後の弦楽の量感を感じさせてくれるものでした。次はラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲。規模の大きいオーケストラ音楽を堪能させてくれる曲目です。すっきりした涼感を感じさせる面もあり、この季節にはぴったりかも。

ここで15分の休憩となりました。念のためお手洗いに行ってきましたが、とくに知人に出会うようなことはなし。なにせ客数が多いからなあ。テルサホールの2.5倍のキャパシティですから、顔見知りに出会う確率もそれなりに低下するのでしょう。

後半は、「高雅で感傷的なワルツ」と「ラ・ヴァルス」と続きます。鳴り物いっぱいでカラフルな管弦楽の響きを味わいます。そして弦楽セクションと木管楽器群の間に小太鼓が陣取り、「ボレロ」が始まります。3拍子の同じリズムをずっと繰り返すうちに、しだいに演奏者と聴衆の高揚感が一体化していく、そんな魔法のような音楽。大きな編成のオーケストラだけに、音のヴォリューム効果も絶大です。演奏が終わると、待ってましたとばかりにブラーヴォ!が出ました。

聴衆の大きな拍手に応えて、パスカル・ヴェロさん、アンコールのサービスです。しかも曲の途中から始めても含めて2回も! 曲は、ドリーブの「コッペリア」から、「スワニルダのワルツ」。後半はワルツとボレロ、3拍子で統一したんだよ、ということでしょうか。粋なプログラムというべきでしょう。



今朝になって、朝刊を見たら驚きました。地元紙・山形新聞にはすでにこの演奏会の記事が掲載されているではありませんか! 伊藤律子記者の署名記事で、コンパクトによくまとまった内容でした。某素人音楽愛好家ののんびりした記事とはだいぶ違います。さすがです(^o^)/



ただ、新聞社の表記基準により仕方がないのでしょうが、指揮者のパスカル・ヴェロさんのお名前が「ベロ」さんになっているのはどうも違和感があります。小学校でも英語教育が始まっているご時世に、「B」と「V」を区別しない表記基準は、時代遅れになりつつあるのではなかろうか。固有名詞や学術用語などについては、もう「ヴェルディ」「ヴェローナ」「ヴェニス」で良いのではなかろうか。

(*1): 山響・仙台フィル合同による第222回定期演奏会でマーラーの交響曲第2番「復活」を聴く〜「電網郊外散歩道」2012年7月

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