まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

日本最長路線バス・・・十津川への遥かな道

2012年07月18日 | 旅行記E・関西

大和八木から新宮に向かう6時間半の路線バスの旅。旅行記が1時間あまりの行程で結構な量を費やしたので少しずつスピードを上げていこう。

Dscn5132五條バスセンターを出発し、吉野川の手前で国道168号線に入る。案内板には「十津川 新宮」と出ているが、ここからが長い道のりである。

Dscn5134昔ながらの風情を残すという五條の街並みも一度歩いてみたいなと思いつつ、吉野川の橋脚を渡り、前方に屏風のようにそびえる奥吉野の山々に挑んでいく。

Dscn5140ほどなく、バス専用の道路が分かれるのを見る。かつての国鉄が五條と新宮との間を鉄道で結ぶべく建設を進めた「五新線」の跡地である。途中まで橋脚を立て、トンネルも掘ったにも関わらず結局未成に終わり、バスの専用道路としても活用されたところである。私の乗っているバスはその橋脚を車窓の一つとして時折交差していくが、現在もこの高架橋をバスが走ることはあるのだろうか。

Dscn5143五條バスセンターでは10人いた乗客も2人下車し、車内は8人。そのうち八木からは6人。ここからしばらくはバス停での乗降もなく、時折後続のクルマに道を譲るためにバス停に退避するくらいで、淡々と走っていく。こういう実情から「特急」バスを名乗っているのかしら、と思ってしまう。まあこれも鉄道のローカル線を行く鈍行列車の味わいに似ているのかもしれない。ローカル線の車窓の友といえば缶ビールかワンカップを傾けたくなるが、トイレのついていないバスとあってはリスクが大きいとしてその辺りの水分は我慢することに。

かつての南北朝時代の北畠親房の本拠地にもなった賀名生を過ぎ、いよいよ山深くなる。先ほどまで青空が広がったかと思えば、にわかにバスがワイパーを使うようになるなど、天候も変わりやすいところである。その中でさしかかるのは天辻峠。

Dscn5150ここでは登坂車線もあり、バスは当然そちらを走るのだが、スピードもガクンと落ちる。時速で20キロくらいしか出ていないのではないだろうか。私のマイカーでかつて走り抜けた時も相当苦労した覚えがあるから、バスにとっては難儀な区間である。同じ県内ではあるが、吉野川水系と熊野川水系との分水嶺に当たるところである。

その峠をようやく越して、少々楽な感じで大塔地区に入る。こちらも南北朝、大塔宮護良親王ゆかりの地であるが、現在は豊かな自然や温泉をアピールしているところ。このあたりもまた立ち寄ってみたいところである。

Dscn5158温泉や宿泊施設のある「星のくに」を過ぎると急な下り。眼下に阪本の集落が見える。いよいよ押し詰まってきた感じの車窓であるが、奈良県の南5分の1を占める十津川への道はまだまだ続く。この辺りはダム湖も広がるが、この数日の豪雨の影響で水もかなり濁っている。まだ暴れ川にならずに済んだだけ幸いだったということか。

Dscn5164そのダム湖の一つ、猿谷ダムの脇を過ぎてすぐのトンネルである。この辺りまで来ると道幅もせまくなり、中央線もなくなる区間も増えてくるのだが、このトンネルも狭いところ。そこへバスが入る。と、前方からもトンネルに入る乗用車。まあハンドル捌きがそこそこできれば何とか離合できるかなというところだが、対向の乗用車は「どうしよう・・・」という感じで動きが取れない。後ろにもう1台来ていることからバックするのも難しいようだ。

そこへ、バスの後ろから何台ものバイクの爆音。五條方面からやってきて、前方にバスが居座っているのが気に食わないのか、エンジンを吹かして煽り立てる。また対向車もいることから、そちらに向かってのバッシングもあっただろう。

するとそこで対向車の後続のクルマの天井で赤いパトランプが光る。「そこのバイク!あおるのをやめなさい!」という車内からの警告。ただそれが聞こえないのかどうなのか、バイクの爆音はやまない。

そうするうちにバスと対向車が少しずつ動く形で、どうにか離合ができた。となれば、パトカーとバイク集団もすれ違うことに。「あおるのをやめろ!」「じゃかぁっしんじゃボケ!!」というやり取りがトンネルの中に響き渡る。その後バイクがどうなったかは・・・知らない。

Dscn5174熊野川に沿ってバイパス線の建設が進む。いずれ五條まで通る日は来るのだろうが、沿線の集落の足というバスの性格上、わざわざ旧道を通るところも。それにしても、こういう山間を切り開く日本の土木技術力というのもすごいなと感じさせる。それも自治体をめぐる「カネ」の力ということだろうか。一方で崩落したままの斜面もあり、台風や豪雨の爪痕というのが生々しい。

そんな大塔に「夢乃湯」という日帰り温泉施設があるのだが、この日はやけにクルマが多かった。敷地の駐車場に入れず国道の路肩に停めるクルマも結構あった。こんなに賑わう施設だっただろうか。ただ、夜のローカルニュースを見ると、昨年の台風12号の被害により、施設も避難所として使われるなどした影響で営業を停止していたのが、この15日で営業を再開したとのことである。営業再開記念ということで入浴料も無料だったとか。まだまだ多くの傷跡があるであろう奈良・和歌山であるが、これは復興に向けた明るいニュースである。

Dscn5186夢乃湯を過ぎてしばらく走ったところでようやく十津川村に入る。最初の見どころは谷瀬の吊橋。ここに近い上野地で2回目の休憩。狭い道を巧みなハンドル捌きで切り抜け、狭い駐車スペースに入る。20分ほど停車するが、「吊橋を対岸まで渡りますと発車時刻に間に合わない恐れがありますのでご注意ください」と運転手に送り出される。

Dscn5188その谷瀬の吊橋。これまでにたもとで見物したことはあっても、高所恐怖症の私としては時間云々よりもまず渡ることができない。

Dscn5192バスの乗客の中には真ん中あたりまでホイホイと出て折り返してきた人もいたが、私はといえば・・・・20メートルくらい進んだところでギブアップ。そりゃ、足を踏み出すごとに足元の板が動いたり、反対側が少し浮いたりという状況では(足を出すと板が浮くのは私の体重のせいかもしれないが)、先に進めるものではない。思わぬ冷や汗をかいた。

Dscn5198ここで昼食とする。大和八木で食糧は買い込んだのだが、橋のたもとの土産物屋で十津川産食材のめはり寿司を見つける。これをバスの発車までにいただく。何せ走行中にものを食べるというのは、このバスではまず不可能なこと。幕の内弁当なんぞ食べようものなら、辺りにおかずが飛び散って仕方ないだろう。にぎりめし、サンドウィッチあたりがバスの食事としては手頃かと。後、バスだからといっても、アルコールは酔いを助長するからやめておいたほうが・・・・。

Dscn5199ここで乗客が2人増え、再び2ケタ10人となり発車。ようやく十津川に入ったのはいいが、村の役場、あるいは温泉地区はまだまだ遠い・・・・。

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