まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

長島ダムとミステリートンネル

2016年09月02日 | 旅行記D・東海北陸
大井川鐵道の井川線で現在の終点である接岨峡温泉まで行き、折り返しの便で長島ダムにて途中下車。フリーきっぷを持っているのでこのあたりは柔軟に動ける。

ダム駅で下車したのは私一人。駅はダムの上と同じ高さにあるが、向こう側に行こうと思えば一度ダムの下まで下り、また上る必要がある。高低差が100メートルだから結構しんどい。クルマの通れる道がジグザグ下っていて、その道をショートカットするように階段が所々にある。

なぜ途中下車の駅を長島ダムにしたか。一つは、アプト式を使うくらいの急勾配を行くトロッコ列車を外から見ようというもの。そしてもう一つは、これは客車にあったパンフレットを見て初めて知ったのだが、下のアプトいちしろまでウォーキングコースがあり、現在の線路になる前の廃線跡、そしてトンネルを通るというものである。廃線跡を歩くというのにひかれるし、ここは「ミステリートンネル」という、奥大井の一つのスポットになっている。同じ歩くなら、上りより下りのほうが歩きやすいかなと。

まずは、堤を下りながらトロッコ列車を見送る。普通の道路なら90パーミルの勾配はよくあるのだろうが、鉄道では異例である。先頭の電気機関車がブレーキの役目を果たす形でそろそろと下っていく。レールを刻む音がダムに響く。

下まで行くとそこはダムを見上げる公園である。ダム見物というのはあまりしたことがないのだが、下から見上げる構図というのも珍しいのではと思う。対岸に渡る橋は「しぶき橋」という名で、放水を間近に見ることから名づけられた。

今度は逆に階段を上がる。アプトいちしろへは遊歩道となっており、トンネルが現れる。トンネルは2つあり、これが最初である。とりあえず入ってみる。やはり空洞の中は外よりもいくらかひんやりしている。少し歩くと出口がうっすらと見え、双方の出口に差し込む外の光を頼りに歩く。

・・・ここで、お気づきの方もいるかもしれない。「懐中電灯は?」と。

そう、この時の私、懐中電灯は持っていなかった。光るもの、照らすものといえば、スマホの液晶画面とデジカメのフラッシュくらいで、こんなのは役に立たない。一つ目のトンネルは128メートルだったから通れたようなものだ。

トンネルを出るとキャンプ場が広がる。川に沿って、トロッコ列車とダムを見上げることができる。このキャンプ場も廃線利用だが、特に夜などは、周りに灯りもなく、より秘境感を味わうことができそうだ。トンネルを肝だめしに使うとか。

・・・で、その2つ目のトンネルだが、今度は375メートルと、先ほどの3倍の長さがある。そして入口には、「お楽しみドッキリ処があります」「野生の蝙蝠に逢うこともできます」という手書きの看板がある。「ドッキリ処」って何やねんと思うが、これがミステリーたる所以なのだろう。野生のコウモリというのも見たことがない。懐中電灯もなくこの距離に挑むのは無謀だと思いつつ、一方で「壁づたいに歩けば何とかなるか」という気持ちもあってそのまま入る。

・・・やはり、無謀だった。まだ後は日差しがあるものの、お先は真っ暗である。数十メートルは入ったが、やはり「こらあかん」と、回れ右で入口まで戻った。

廃線跡のウォーキングで、長いトンネルを潜った経験はある。ただ、それは長いトンネルを歩くことが事前にわかっていたから、懐中電灯はもちろん持参していた。しかし、今日のミステリートンネル歩きは、当日の現地で、急に思い立ったことである。やはり行き当たりばったりではあかんこともあるな・・・・と思う。

これは後で知ったことだが、ダムの上にある「ふれあい館」という長島ダムの紹介施設に行けば、ミステリートンネル用の懐中電灯の貸し出しがあるそうだ。もう少し上に行けばよかったことで、今となっては惜しいことをしたと思う。懐中電灯を借りなかったばかりに、このままアプトいちしろまで歩くことを断念しただけではなく、再びしぶき橋を渡り、高さ100メートルの堤をまた上って長島ダム駅まで戻らなければならなくなったので・・・。

上りの堤では息が上がり、駅に戻って次の列車に間に合ったのにホッとした。アプトいちしろからトロッコ列車が上がってきて、長島ダムで接岨峡温泉からの列車と行き違う。列車が行き違うだけでなく、電気機関車が切り離しと接続で下っていくのだが、私は客室に入り、ボックス席にどっかりと座って、まずは汗を拭く。

往路よりも復路は淡々と進む感じで、外の景色をボーッと眺めながら川沿いに下る。少しずつ人家が見えてきて、13時14分に千頭に到着。私が乗る14時53分発のSL「かわね路」までは結構時間があるが、昼食もまだだし、駅でゆっくりしようと思う。

ところが・・・・。

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