まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第14回中国観音霊場めぐり~「かわせみ やませみ」・「いさぶろう しんぺい」連結特別列車

2020年08月18日 | 中国観音霊場

博多駅の1・2番ホームには多くの鉄道ファン、子ども連れがそわそわした様子で列車の到着を待っていた。これから乗るのは「かわせみ やませみ92号」・「しんぺい92号」の門司港行きである。

このところ、毎年のように日本のどこかで豪雨や台風による被害が発生している。2020年は7月に九州で豪雨が発生し、鉄道では特にJRの肥薩線、くま川鉄道、肥薩おれんじ鉄道が大きなダメージを受けた。特に肥薩線は球磨川にかかる明治以来の橋脚が流されるなど被害が大きく、復旧のめどは立っていない。

そんな肥薩線の応援企画として、この8月8日から同線を走る観光特急「かわせみ やませみ」、「いさぶろう しんぺい」の2列車を連結させ、鹿児島本線の博多~門司港を往復する臨時列車が運転されることになった。運転日は8月中は毎日、9月~11月は土日祝日。7月の終りに発表されたもので、たまたま鉄道関連のニュースサイトを見ていて目に留まり、全席指定とのことで、JR九州のホームページから購入。特急なので青春18きっぷは使えず、乗車券も別途購入だが、せっかくの機会である。自分が肥薩地方をどのくらい応援できるのかは別として。

10時40分の発車だが、博多駅は多くの列車が発着することもあり、入線したのは4分前。車外・車内で慌ただしく撮影が始まる。

まずは青の車体の「かわせみ やませみ」。2017年にデビューした列車で、車内はこうした山鳥が棲む自然、球磨川の景色をイメージして、青や緑をベースとしたシートを用いたり、内装にも人吉・球磨産の杉やヒノキが使われている。

また車内も通常のリクライニングシートの他に、ボックスシート、ベンチシートなどさまざまなタイプの座席がある。今回の運行に当たっては通常シートのみ販売されており、ボックスシート、ベンチシートはフリースペースの扱いとなっていた。私も最初こちらに座ったが、隣席にオッサンがどっかりと座り、車内探索には気を遣うかなと思い席を立つ。

もう一方の「いさぶろう しんぺい」は2004年から導入の車両で、こちらは私も過去にちょい乗りしたことがある。熊本・人吉から吉松に向かう下り列車は「いさぶろう」、吉松から人吉・熊本に向かう上り列車が「しんぺい」と列車名が別で、今回私が乗るのは上り列車ということで「しんぺい92号」である。「いさぶろう」とは人吉~吉松間が開業した当時の逓信大臣だった山縣伊三郎、「しんぺい」は当時の鉄道院総裁で、後に内務大臣として関東大震災後の東京復興計画の中心となった後藤新平からつけられている。JR九州はこうした感性があるのかな。そりゃ、大関魁皇も特急列車の名前になるわな。

今回の豪雨時には肥薩線の真幸駅に閉じ込められていたがその後脱出して、日豊本線経由で博多まで来ることができた。

こちらは木目調のテーブルつきボックスシートが並ぶ。実は過去に「しんぺい」に乗車した時は、乗客が多かったためかボックスシートの居心地があまりよくなく、結局立ち客用のスペースで矢岳越えの景色を楽しんだ。ただ今回、両列車の様子を見ると、さまざまに意匠を凝らして目で楽しませる工夫がちりばめられている「かわせみ やませみ」ではなく、「しんぺい」のほうが落ち着いて、かつての汽車旅のムードが出ているなと感じた。これは、「かわせみ やませみ」が観光に特化しているのに対して、「しんぺい」が本数の少ない人吉~吉松間のローカル輸送も担っていることもあるのかなと思う。結局こちらのシートに落ち着く。

実は、「かわせみ やませみ」そして「しんぺい」の2列車それぞれの博多~門司港間の指定席を購入していたのだ。これは不正乗車になるのかどうかわからないが、2つの列車を乗り比べてみようという思惑もあった。いずれの車両もいわゆる「水戸岡デザイン」で、この言葉にはいささか食傷気味なのだが、個人的には「いさぶろう しんぺい」車両はまだ落ち着いていて好みに近い。他の相客もおらず、こちらでのんびりと行くことにしよう。

途中の駅では駅員さんの盛大なお出迎え、お見送りがある。また沿線にも撮影の人、見送りで手を振る人も多い。

車内販売のカウンターが「やませみ」の車両にある。球磨焼酎があるということで、普段は乙類の◯◯焼酎はほとんど飲まないのだが、せっかくなので行ってみる。ただし大勢の客が並んでいて、行列は隣の「かわせみ」の車両まで延びている。待つ間に八代~人吉間の沿線の観光スポットを紹介した映像など眺める。球磨川がつくりだした美しい自然も多いところだが、一方では今回の豪雨災害をもたらした暴れ川でもある。また、沿線の特産品についても紹介されている。

結構待った後、球磨焼酎の飲み比べセットを購入して座席まで持ち込む。常圧(原料の味わいや旨味がしっかり残る)、減圧(クセがなくすっきり)、そしてオリジナルの牛乳焼酎(フルーティーさも加わる)の3種類。いずれもストレートで、チェイサーの水もついてくる。外に広がるのは筑前、豊前の平野だが、肥後の雰囲気を楽しむ。肥薩線の復旧にはかなり時間がかかることだろうが、またいずれ、彼の地も訪ねてみたいものである。

博多からの停車駅は香椎、折尾、黒崎、小倉、門司だが、この他にも途中駅で後続の快速列車の通過待ちをするなど、あくまで観光臨時列車。先を急ぐことなくのんびり進む。

博多から1時間半あまり、12時14分に門司港に到着。門司港に入線する時は速度を極端に落とす。終着駅(正しくは鹿児島本線の始発駅なのだが)に敬意を表しているかのようである。ホームはかつての風情を残すシンプルな構造だが、こうした列車にはよく似合う。

到着後しばらくは撮影タイムとなる。「もじこう」の駅名標を一緒に入れるのもいいだろう。

改札を出て、門司港駅舎の前に立つ。先月来た時は雨の中だったが、今回は見事な晴天である。いやこの晴天以上に暑さが強く、すぐに引っ込んでしまう。暖冬~コロナ~豪雨~猛暑・・・2020年の日本の気候風土も厳しいものになっている。今回の行程は16日まで続くが、体力が持つかどうか・・。

本来ならばここで門司港レトロや九州鉄道記念館を訪ねるところで、他の乗客もこうした観光に向かう人が多かったが、これらは先月に訪ねたこともあり、今回は省略。かと言って関門海峡を船で渡ることもせず、この日は北九州内で過ごすことにしている。そのために再びホームに戻り、小倉まで列車で移動することに・・・。

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