まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

最上川舟唄~羽越紀行・1

2006年06月26日 | 旅行記B・東北

P1010275 「土日きっぷ」の旅の初日、上野から早朝の山形新幹線「つばさ」に乗車。朝早い便であるが、指定席は満席、自由席には立ち客も出る。

九州はじめ西日本では大雨の被害が出ているようだが、東日本はちょうどこの週末は梅雨前線からは遠ざかっており、雲の間から時折日差しも見える。

福島から「ミニ新幹線」区間となり、板谷峠を越えて山形盆地へ。米沢からは米沢牛使用をうたった「すきやき弁当」に「牛肉どまんなか」の積み込みがあり、事前に予約していた客を中心にさばける。しまった、それなら朝上野で弁当など買うことなかったのに・・・。

ところでこの山形新幹線、ミニ新幹線であるために普通の列車ともすれ違う。「あれ、普通の電車も走るんだ・・」と、後ろの座席にいたおばさんが仲間にそう伝える。新幹線といえば普通コンクリートで特別に仕切られた「フル規格」がイメージされるだけに、逆に驚くのも無理はないか。「やっぱり田舎よねえ・・・」というこのおばさんの言葉には新幹線というものに対するさまざまな含蓄があるように思われる。

山形で半数の客を降ろし、後は減る一方。「今朝摘みたてのさくらんぼはいかがですか~」と車販が回る。そういえばこれからがさくらんぼの出荷真っ盛りである。この後通った山形県内のいたるところでも、さくらんぼ、特に「佐藤錦」がメイン商品として並べられていた。

終点新庄着。ここから陸羽西線、通称最上川ラインに乗り継ぐ。途中の古口で下車。ここは最上川下りの観光船の最寄り駅となっており、半数の乗客や家族連れが「土日きっぷ」を運転手に見せて下車する。

P1010279 船のりばは古口駅から歩いて5分程度。昔の船番所をかたどった武家屋敷風の建物で乗船受付をする。週末のこととて団体客が多いが、飛び込みの一人客でも余席はあるようで、すぐに船が出るという。

桟橋には数艘の船が横付けされており、乗船申し込み時に書いた名前と人数が係の人によって呼ばれ、どの船に乗るか割り当てられるようだ。定員が決まっているだけに組み合わせがあるのだろう。私も名前を呼ばれ、ほかの一人客や数人のグループ客とともに、団体さんのいる船に乗ることになった。

御座船に足を伸ばし、船頭が軽くエンジンをかけて川の中ほどに船を出す。後は流れに任せて進むのみだ。20艘を超える船が稼動しており、下流から回送となって上ってくる船と何回もすれ違う。船の名前は全て「第○○芭蕉丸」。まさに「兄弟船」である。

P1010283流れの中に出ると水面をスーッと涼しげな風が通り抜けるのがわかる。前日まで雨だったせいか水量も多く感じられ、こうして間近でみるとまさに「五月雨を集めて早し最上川」である。列車やクルマなどで上面から眺めるより、こうして水面に近いところでは流れの速さを感じさせる。水の多いとき、深いところでは水深が10メートルを超えるところもあり、水面より水中のほうが流れが速いので、大人でも足元をすくわれるとか。そういうこともあり、この辺りの最上川は遊泳禁止という。

流れは速いが船の旅はのんびりしている。山形弁まるだしの船頭のユーモラスなガイドに、乗っている人たちの心もなごむ。この最上川ライン下り、船頭のガイドも有名なアイテムの一つ。P1010294

P1010293 途中、川の対岸にある休憩所に立ち寄る。かつては人も住んでいた対岸であるが、急流の向こう側というその不便さからかいつしか廃村になったという。そこをこの船会社が買い取って、休憩所・売店のほかに散策コースなどを整備したとか。船の上から食べ物や飲み物の注文ができるとのことで、私も鮎の塩焼きを所望。天然ものの解禁は7月1日というが、川の船の上で川魚を味わうのもぜいたくな心持ち。

P1010291 船が下るうちに、これも名物、ガイド船頭による唄の披露。「真室川音頭」、「おしんの子守唄」(そうそう、あの「おしん」も、この川を下って酒田に奉公に出たという話である。その時には最上川でロケを行い、船頭役で実際にこの船会社の別の船頭が出演したらしい。もっともオンエアーでは「後姿だけで顔が出なかった」とかで、以後NHKの仕事はやらないと言ったとか・・・・船頭談)、そして最後は「最上川舟唄」である。

ヨーイサノマカショ
エンヤーコラマカーセ
エーエンヤーエー ヤーエー
エーエンヤーエード
ヨーイサノマカショ
エンヤーコラマカーセ・・・

民謡独特の抑揚で歌詞の意味などないのだが、この流れに実にマッチした節回しである。最上川の下流には、日本海の物流の拠点のある酒田がある。この酒田から北海道へ、そして「江差追分」の源流となったという説もある。

1時間の川くだりがあっという間に過ぎたような気がする。川を船で下るという異体験と、船頭のガイドのなせる技か。

P1010287 復路は路線バスで、川に並行する国道をさかのぼって元の船番所に戻る。バスの窓越しに何層もの川下り船を見下ろす。スピード感あった川下り船も、こうして国道を快走するバスから見れば実にのんびりしているように見える。視角による印象の変化というのはあるのだなあ。これからも鉄道やクルマの旅で数多くの河川と接することが多いだろうが、一つ河川の見方というのが変わったような気がする。

古口駅に戻り、再び鉄道の人となる。またしても最上川沿いにのんびり走る気動車。しかしそれでも先ほどのバスより速く感じられ、あっという間に川下りの区間を走り抜ける。鈍行とはいえ、これが鉄道の底力か。

P1010277 川下りの区間を終えると庄内平野に出る。米どころ庄内を支えているのもこの最上川だ。この後は、この川の河口で栄えた町・酒田に出ることにする・・・・。(続く)

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