まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第9番「大龍寺」~近畿三十六不動めぐり・17(山中の名刹と再度山頂)

2018年06月05日 | 近畿三十六不動
新神戸駅から布引の滝などをめぐって1時間半後、大龍寺の山門に出る。「別格本山」の石碑に加えて、近畿三十六不動、摂津八十八札所、西国愛染明王といった札所の立て札が見える。神戸市内にあって山中の名刹らしい風情がただよう。

山門をくぐると100mはある急な上り坂が続く。そこを何とか上りきると開けたところがあり、さらに石段を上る。

「毎日登山一万回」を記念する石碑がある。「毎日登山」とは神戸の文化の一つとされている。明治の開港以降に居留した外国人が始めたのが市民にも広まったもので、市街地のすぐ背後に山があることから、毎朝山に上り、山上で記帳するのを日課にするのだという。今ではそうした登山の会も結構あるようで、一万回というと、1年が365日だからざっと30年かかる。中には二万回を記録した方もいるというからすごい。布引の滝や再度山、大龍寺はお手頃なコースとしてその筋では有名らしい。私は初めて来たが、一回来ただけでゼイゼイ言っているようでは足元にも及ばない。

仁王門をくぐるとまた石段だが、今度は四国八十八所、西国三十三所のお砂踏みとして祠が並ぶ。大龍寺の敷地の広さがうかがえる。

大龍寺は奈良時代の政治家・和気清麻呂の手で開かれたとある。天皇の命で寺院建立のために摂津の国を訪ねていた清麻呂だが、このあたりで政敵・弓削道鏡が放った刺客に襲われる。この危機に、龍と見まがうほどの大蛇が現れて刺客を追い払い、清麻呂は助かる。これに霊験を感じて、この地に如意輪観音を祀ったのが大龍寺の起こりという。

石段を上がると本堂が建つ。ちょうどハイキング姿の人たちも手を合わせているところだ。本堂の前、こちらから左手にはぼけ封じ観音、そして右手には弘法大師の像が立つ。大龍寺は弘法大師とも縁が深く、遣唐使として唐に渡る前、この地でも修行をしていた。航海中に暴風雨に遭った時に龍が現れて守ったという伝説があるが、この龍は大龍寺から来たと言われている。また、遣唐使からの帰国後にもこの地を訪ねて修行した。弘法大師が二度来たから「再度山(ふたたびさん)」という名前になったという。こうして見ると、観光寺院とは異なるが結構メジャーな札所だと言える。

ハイキングの人たちと入れ替わるように本堂でお勤め。ここでは如意輪観音の真言を唱える。そして、近畿三十六不動めぐりは隣接する不動堂でもう一つお勤め。

境内には毘沙門天や大黒天を祀るお堂もあれば、数々の石仏もある。境内の多くは江戸時代以降に再興されたものだが、歴史の風格を感じさせる。

さて納経帳だが、本堂や不動堂から少し石段を下りた霊命殿で受け付けている。こちらは法要なども行われる現代風の立派な建物。納経帳も、玄関で靴を脱いで法要が行われる広間で受け付ける。観音、そして不動の祭壇も設けられており、ここで手を合わせるだけでもありがたい気持ちになりそうだ。

納経帳のバインダーを差し出すと、「お持ちしますのでしばらくおかけになって」と、広間のパイプ椅子を勧められる。腰掛けると、「しいたけ茶です。塩分補給でお菓子もつまんでください」と、湯呑みが出てくる。納経に来た人たち皆に勧めていたから、大龍寺ならではのお接待なのだろう。しいたけ茶はお茶というより(永谷園の)お吸い物に近い味だが、ここまで歩いてきた身にはちょうどよい塩加減だった。

しばらく休んで、さらに上を目指す。奥の院として大師堂があり、四国八十八所の祠をたどって行くと着くことができる。

さらには、再度山の頂上の下に、弘法大師が彫ったという亀の石がある。そこに向かうがこれが難所。木の間を虎ロープで結んでいたり、両手を前に出して石を掴まないと上れないところもあり、プチ修行気分である。

さらに上は木が切り倒されていて、何となく道が続いているようだ。再度山の頂上かと這うように上る。

果たしてそこは標高470mの再度山の頂上だった。木が切り倒したのも最近のようで、長らくは山頂も木々に覆われていたのだろう。

目の前にはこの景色。眼下の神戸市街はもとより、大阪市街、あべのハルカス、さらには生駒山系まで見える。うーん、自然破壊と言われればそれまでだが、木を切り倒したのも何となくわかるような気がする。夜になったらこれまで広く知られたのとは一味違う景色が広がるのだろう。

時刻は13時近く、ここで昼食とする。当初はこの先の再度山公園でと思っていたが、山頂がこのような景色で、おまけに他に人はいない。ちょうどいい感じの切り株があったので腰を下ろす。

持参したのは、神戸の駅弁で知られる淡路屋の「六甲山縦走弁当」。少々小ぶりだが、おにぎりの他にはタコの煮付け、すき焼き風(神戸牛を意識?)、イカナゴのくぎ煮などがおかずとして入っており、神戸らしさをさりげなく取り込んだ一品である。感想としては「ビールが欲しい!」だが、ビールは山を下りるまでお預けだ。

そして、ここで次の札所へのくじ引きとサイコロをやってしまう。当初は同じ神戸エリアとして、大龍寺と箕谷の無動寺を合わせてまわるつもりだったが、大龍寺までのアクセスもあり、結局別エリアとした。まあ、私だけのルールなので・・。

改めてくじ引きで出たのは、

1.大原(三千院)

2.豊中宝塚(不動寺、中山寺)

3.神戸(無動寺)

4.和歌山(根来寺)

5.生駒(宝山寺)

6.東山(聖護院、青蓮院、智積院)

・・・しっかりと無動寺が出ている。この後のサイコロで無動寺の目が出れば、「ちゃんとエリアごとに行け」との思し召しなんだろうなと勝手にイメージする。

そんな中で出たのは、「2」。豊中から中山寺という、街中型の組み合わせ。初めてとなる豊中の不動寺はともかく、中山寺はどの札所めぐりにも顔を出すいわば常連である。駅からのアクセスもよいので、これからの時季でもあまり天候を意識しなくてもいいかなと思う。

再度山まで行ったことで折り返しとする。時刻は13時、下山ということで歩き始める・・・。
コメント    この記事についてブログを書く
« 第9番「大龍寺」~近畿三十... | トップ | 第9番「大龍寺」~近畿三十... »

コメントを投稿