中国四十九薬師めぐりも無事満願となり、帰りの列車まで時間があるのでローカル線の若桜鉄道に乗ることにした。当初は、いったんレンタカーで終点若桜まで行き、若桜からの往復乗車ができるかと思ったが、列車の時間に間に合わなそうなので途中で断念し、郡家に戻ることになった。
その途中で駅をのぞいてみよう。若桜鉄道には開業当時からの駅舎や施設が多く残されており、合計23点が登録有形文化財に指定されている。ローカル線のこととて、駅舎を建て替えるお金がなかった・・のかもしれないが、今となっては昔ながらの姿を伝えるものとして、若桜鉄道の売りとなっている。
やって来たのは安部駅。1932年開業当時の駅舎、プラットホームがそのまま残されており、これらも登録有形文化財に指定されている。駅舎には美容室が入っている。
安部駅は映画「男はつらいよ」のロケ地にもなったそうで、駅舎内には当時の写真やポスターも飾られている。「男はつらいよ」シリーズ、ほとんど見ていないので映画のことはよく知らないのだが、昔ながらの鉄道風景はよく登場するという(それらを特集した書物もある)。
もう1ヶ所、安部駅の隣の隼駅を訪ねる。こちらも1929年の駅舎が登録有形文化財として残されている。そして、今はその筋にとって「整地」として知られている。
「隼」という駅名が、スズキのバイク「ハヤブサ」と同じということで、バイク専門誌の企画がきっかけで全国から「ハヤブサ」のライダーが集まるようになった。毎年、ライダー、鉄道ファンが集結する「隼駅まつり」も行われている。
かつての駅事務室は売店になっており、若桜鉄道や「ハヤブサ」オリジナルのグッズが並ぶ。また、日本地図が広げられて、どこから来たのかピンを刺すことができる。広島からもそれなりにいるが、関西、さらには首都圏が別枠になるくらい圧倒的に多い。
私がいる間にも駅舎に1台のバイク(おそらく「ハヤブサ」だろう)が横付けされた。店主と気軽に会話していたから近くの常連さんなのだろう。「隼」という駅名はこのあたりの地名から取られたそうだが、まさか開業から数十年の時を経て、バイクライダーの聖地になるとは思わなかっただろう。
駅舎に隣接して客車が留置されている。ライダーハウスとしての活用を見込んでここに持って来たそうだが・・。
郡家駅に向かう。駅横の駐車場にレンタカーを停める。改札口横にはJRの「みどりの券売機」はあるが、若桜鉄道の乗車券は駅舎内の観光案内所での取り扱いとある。若桜まで往復の乗車券を買おうとすると、1日フリー乗車券のほうがお得と案内される。郡家~若桜は片道440円、往復880円に対し、1日フリー乗車券は760円である。