九州行きの手段となったのは泉大津からの阪九フェリー。5年前のGWの時期に関門、福岡を回った時に往復で利用して以来である(その時の記事はこちら)。
今回は2等個室利用である。ベッドと荷物置き場があるだけだが、桟敷でなく個室で仕切られているのは大きい。寝転がって初めて、照明灯の下にコンセントもあるのに気づく。周りに気兼ねせず、ゆっくりと眠ることができる。
前回はGWで日も高かったこともあり、出航前から甲板のベンチに腰かけて景色を眺めながらビールなど飲んでいたのだが、今は冬。出航の17時半にはすっかり日は暮れる。それだけならいいのだが、風が強い。外に出ても立つのがやっとである。とても、甲板のベンチでビールなどという所業はできない。熱燗でも無理(・・・って、そういう問題ではなく)。左の写真は泉大津方面である。
出航と同時にレストランも営業開始だが、出航前から長蛇の列である。食事は明石海峡大橋を過ぎてからのこととして、フリースペースであるプロムナードの席も埋まっていて、ここはやはり大阪~神戸の夜景を見るか。寒いが完全武装すれば何とかなるだろう。
冬といえばイルミネーションであるが、冬の旅は日が暮れるのが早い分、早い時間から夜景を見ることができるのがよい。・・・にしても風が強い。そこは船室に接したところがちょうど風よけになっており、そこから眺める。景色は素晴らしいのだが、それをカメラに収めるだけの腕前とカメラを持っていないのがもどかしい。船自体が揺れているので、どうしてもブレてしまうのである。
空を見上げるとちょうど海の上だけ雲がかかっているが、その合間からいくつか星が見える。関空や神戸空港に発着する飛行機が流れ星のように飛び交う。
西へ向かう航路というと、私の中では井上陽水の「なぜか上海」が頭に浮かぶ。本物の上海には行ったことがないし、目指すのは九州の入口、新門司であるが・・・。
出航から1時間過ぎ、船内放送でも「間もなく本船は明石海峡大橋を通過します」とあり、船内から一斉に客が出てくる。ライトアップされた橋脚を代わる代わる写真に収める。今回は、「この橋を電車が走っている」という迷解説を彼女にするような男性はいなかったが・・・それにしても風が強い。記念写真を撮る人たちも半ば悲鳴を上げている。
明石海峡大橋も渡り終え、ここで食事とする。出航直後は行列もできる満席で、一時は入口も閉めていたが、もうガラガラである。こちらはカフェテリア方式で、トレイに食べたいものを取ってレジで精算する。テーブル席では九州言葉で酒盛りをやっているグループが2組ある。パックの焼酎が並び、水、湯、氷はレストランで取り放題だから、レストランの営業時間中は腰を据えて飲むことができる。トラックドライバーか旅行者か、フェリーは貴重な移動時間であり、移動空間である。
夕食を済ませ、こちらも長距離フェリーの面白さである展望浴場に入る。まだ個室で眠るには時間が早いので、プロムナードに向かう。ここで眠る前の一時を過ごす人もいれば、2等桟敷の満室ぶりを嫌ってか、こういうところで一夜を明かそうと完全武装の人もいる。確かにゆったりと自分のスペースは持てそうだが、いくら何でも寒そう・・・。ここで、船内限定のワインなどやりながら読書にいそしむ。
22時前には瀬戸大橋を通過する。もうこの時には案内放送もなく、甲板に出る人もわずかである。こちらはこういうものかと通過を確認し、そろそろ個室に入ることにする。翌朝は6時の到着であるが、やはり早く起きて入浴や朝食を済ませることになる。
翌朝は4時半に起床し、まずは入浴。その後、同じようにカフェテリア方式での朝食。フェリーは宇部沖を航行しているが、向かい風の影響で10分ほど遅れているようである。まあ、新門司からの連絡バスはフェリーの到着を待っての発車であるが、10分くらいならその後の行程も影響がなさそうである。そろそろ、また船内が到着が近づくということでざわつき始めた。
まだ夜も明けない新門司港に6時10分頃到着。クルマ利用の客も運転手以外は旅客用下船口から降りるため、結構ごった返す。暗いので、建物の外で自分のクルマを見つけるのが大変そうだ。そんな中、正面に停まっていた西鉄バスに乗車。ここから20分ほどで門司駅までやってくる。7時前ということでクルマの交通量もそれなりにあり、街としては朝の活動を始めているが、外が暗いのでまだ起きている感じがしない。
さてここからは博多に出て、福岡市営地下鉄~JR筑肥線経由で唐津に向かうのだが、ダイヤの関係があり、小倉から博多までの一駅は新幹線に乗る。やってきたのは500系。かつては時速300kmも記録するなど、飛行機に似た独特の車体は存在感があったものだが、今や半分の8両編成で山陽新幹線のこだま号として走っている。今となっては車内での快適さを重視した700系(レールスター)、N700系の陰に追いやられているようである。久しぶりに乗車し、窓側の座席に座ったが窮屈な感じは否めない。
博多に到着。ここでは新幹線の改札を出て地下鉄乗り場に直行する。これから、豊前、筑前を通過した肥前の国めぐりの始まりとなる・・・。