「野球は筋書きのないドラマ」。・・・あらゆるところで言い尽くされた、今となってはベタな表現であるが、この言葉を実感することになったのが、この週末の関西独立リーグの試合観戦である。
一度目はこの前の記事にある、9日の住之江球場での大阪対明石戦。9回表にノーヒットで2点を取って明石が同点に追いついたその裏、守備の乱れもあってあっさりと満塁となり、代打・平松のタイムリーで大阪のサヨナラ勝ち。9回の攻防に試合の見せ場があった。
明けて10日。前日は住之江での観戦後、梅田に出て職場の新入社員の歓迎会に出席していたが、目覚めはよい。二日酔いになっていないことを確認してクルマを走らせる。午前中に丹波篠山を見物後、やってきたのは兵庫県は丹波市にある「春日スタジアム」。市町村合併前は春日町に属していたことからこの名前である。
周りを緑に囲まれた、自然豊かな球場である。前日の住之江のような街の公園とモーターボートに囲まれた球場とは対照的で、こうしたさまざまな顔の球場めぐりができるのも、独立リーグ観戦の面白さである。ちなみに、ここ春日スタジアムでは毎年NPBのウエスタンリーグの試合も行われているという。
明石や大阪からの観客を見込んでか、丹波市の観光協会がテントを出して黒豆やら生キャラメルのPRを行っていた。逆に、丹波の人に明石を知ってもらおうと、野球を通した両市のコラボである。こういう、「町のPR」も大いにやっていいことだ。特に、播磨・丹波・淡路がホームグラウンドの明石レッドソルジャーズには、「兵庫ディスティネーションキャンペーン」ともタイアップして大いにがんばってほしい。
場内へ入る。選手との距離がすごく近く感じられる。ただ、バックネットが数本もの太い柱で支えられているのがちょっと邪魔に感じたので、一塁側の芝生席の前列にレジャーシートを敷いて観戦。こうした「桟敷席」もまたよいものだ。国技館のように焼き鳥やビンビールはないけれど。それにしても暑く、クルマでなければビールがおいしい日である。
この日は、両チームの監督・コーチ以下全選手が一人一人紹介されるとともに、地元・丹波市出身の明石・近藤の「凱旋試合」というイベントが行われた。「地元の人に喜んでもらえるよう、また、今日は母親も観戦に来ているので、試合で活躍して母の日のプレゼントとしたいと思います」という挨拶。この試合は2番・ショートで先発出場。
ちなみにこれが明石のマスコットキャラクター「ソルちゃん」。背番号は子午線にちなんで「135」。明石ダコとチームカラーの赤をモチーフにしたキャラなのだが、見れば見るほどどこぞのNPB球団のキャラクターに似てやせんかと思う。いつの日か「共演」してほしいものだ。
明石の先発は、「コウノトリ翔る郷から翔け!」という横断幕も出ていた、豊岡出身の百合。ローテーションなのか、地元に近いところでの試合ということで先発に送り出したのか。
1回裏、明石先頭の竪道(たてみち)がヒットで出塁。続く打者は近藤。最初は送りバントを試みたがうまくいかず、結局強攻に切り替えて空振り三振。しかしこの時に竪道が走り、盗塁成功のアシストとなった。この後、4番・田中のタイムリーで1点先制。
3回裏、再び先頭の竪道がヒットで出塁し、打者は近藤。今度は送りバントをきっちりと決め、大阪のサード・藤本のエラーと新川のタイムリーで2点追加。3回までで3対0と、大阪先発の土肥を攻略する。
さて明石のスタンドだが、今日は地元の少年野球のちびっこたちの姿が目立つ。また、ボールボーイを務めるのは「丹波ガールズ」という女の子のチーム。ちびっこたちは始球式を務めたり、明石の選手からボールをもらったり、ファールボールを捕ろうと走り回ったりとうれしそうだ。ちなみにこの日の観衆は318人という発表だったが、町のイベントという側面も考えればちょっと少なかったかな。選手を応援する横断幕や幟はあるのだが、これは球団スタッフが用意したもので、双方ともリードする応援団はおらず、ボールの音とグラウンドの掛け声だけが響く。でも、それもまたよしかな。
明石先発の百合は安定した投球で、4回までパーフェクト。5回もこの日5番に入った平松に初安打を許すものの併殺で切り抜ける。7回まで被安打2の無失点と好投。
一方の大阪・土肥も4回以降は力のある投球を見せ、7回裏に近藤の内野安打を含め一死2・3塁のピンチも切り抜ける。このまま3対0で試合が終わりそうに思われた。ただ、昨日のこともあるし、どうなることやら。
その予感なのか、8回に大阪打線が急につながりだす。途中出場の吉野が三塁打を放ち、二死後、長谷川がこれも三塁打で1点返す。続く林のタイムリーでもう1点返し、3対2となる。ここで林が盗塁を試み、キャッチャーの悪送球を誘って一気に三塁へ。続く平下は凡退するものの、終盤で3対2となり、大阪ベンチが一気に明るくなったように見えた。
ここでブルペンに向かうのは、昨日9回の登板でサヨナラを許した前田。私もキャッチャーのすぐ横に立ち、かつて150キロの豪腕で鳴らした右腕の投球を実感する。ストレートがミットでパチン!となる乾いた音がたまらない。
大阪・土肥は8回まで投げきり、こちらも失点3ながら被安打6と先発としての役割を果たしたといえるだろう。残すは9回表の大阪の攻撃で、ここで満を持して前田が向かう。「今日は頼むぞ!」とスタンドから声がかかる一方で、「まずは同点や!昨日のこともあるで!」と大阪ベンチからも声が飛ぶ。
先頭の山門が三振に倒れるものの、続く碩野がバットを折りながらレフト前へ運ぶ。ここで迎えるのは、前日サヨナラ打の平松。やはり、回るところには回ってくるものだ。
ここからが、????であった。
平松の当たりはセカンドへの平凡なゴロ。誰もが4-6-3のゲッツーで試合終了・・・と思った瞬間、明石セカンドの新川がショートへ悪送球。送球がレフトへ転々とする間に、代走・奥本が俊足を飛ばして一気に生還。これで3対3の同点。
・・・・になったかと思ったら、今度はレフトの北山からのバックホームの送球がとんでもないところに、これを見て「行け!行け!」の大声とともに、何と打った平松までが一気に生還。4対3、試合終了目前が逆転である。
こういうことがあるんやな、ホンマ。それも2日続けてというのだから、本当、勝負はゲタを履くまでわからないものである。
・・・と、そう結論つけるのは早かったかな。9回裏のマウンドには、昨日「ノーヒットで同点に追いつかれた」遠上。四球の師匠?の石毛コーチとともに登場である。
その遠上、3ボールまで行くこともありヒヤッとさせる場面もあったがこの日は「炎上」なし。最後は、この試合での活躍が期待された(1安打、1犠打でまずまずと思うのだが)近藤を力のないレフトフライに討ち取り、試合終了。昨日のこのカードと同じ4対3で、大阪の連勝となった。これで「首位」キープだそうな。
この2連戦、観客としては最後までわからない試合に出くわし、また先発投手の出来もよかったのだが、いかんせん両チームとも守備と走塁に課題が見られたかな。
NPBのように本塁打がものをいうのとは違うリーグであるため、それだけに一つの走塁、一つの守備が重要である。長打力は一気に伸びるものではないが、守備と走塁は鍛えてチームとして鍛えて伸びるところ。いくつかのミスも漫然としたプレーの結果ではないだけに、大いにがんばってほしいところである。
さて、これで関西4チームのうち、3チームの主催試合を観ることができた。あとは、吉田えり人気で観客動員も最も多いという神戸での試合である。吉田の登板は早くて5月下旬というが、実戦で出られるようになってからまた出かけることにしようかな・・・・。