まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

茨城交通湊線へ

2007年09月24日 | 旅行記C・関東甲信越

P9243883JR常磐線の勝田駅に降り立つ。行き止まり式の1番ホームに1両の気動車が停まっている。これから乗る茨城交通湊線だ。乗り換え口で土日祝日のみ発売の1日フリーきっぷ(800円)を買い求める。単純に終点の阿字ヶ浦まで往復しても安く上がるという。

この線には昨年の10月に初めて乗りに来たが、その時は旧国鉄のキハ22に乗った。今回もその手の気動車を期待していたが、停まっていたのは同社のオリジナルである3710形というやつ。後で知ったことだが、旧型気動車は輸送力の多い朝の時間帯や、あるいは冷房装置がないので秋から冬場に動かすのだという。

P9243911さてこの湊線も存廃が議論されている。茨城の私鉄といえば、今年の3月に鹿島鉄道が廃線になったのが記憶に新しい。クルマ優位の茨城にあって鉄道を維持するのは難しいことだろうし、茨城交通もバスと鉄道を抱え、不採算部門を整理したいというのも経営の論理というものだろう。ホームには「未来へ走れ おらが湊線」という、「おらが湊鉄道応援団」による幟が立てられている。この応援団は那珂湊の商工会が中心となって活動しているようである。路線図を改めて見ると、全線ひたちなか市を通っているのがわかる。

15人くらいの乗客を乗せて発車。常磐線の線路から分かれ、カーブを曲がったかと思えば次の日工前。陸上自衛隊の駐屯地を過ぎると、刈り取りを終えた水田地帯を走る。このあたりの広々とした景色が、湊線の撮影ポイントである。

P9243886_1P924392015分ほどで、沿線の中心地である那珂湊着。ここでほとんどの乗客が下車。前に来た時は通っただけだったから、今日はここで途中下車する。ちょうど反対方向からも列車がやってきて、駅は一時の賑わい。昔ながらの風情を残す駅として知られる。地方私鉄の旅の面白さである。

P9243918待合スペースの一角に、先の「おらが湊鉄道応援団」のサービスステーションなるカウンターがあった。旧型気動車の写真入りの「応援団員証」をぶらさげた、地元のボランティアらしき男性が、私のような「乗りに来た客」に声をかける。「こうしてあちこちから乗りに来てくださって、ありがたいです」とか、「おかげさまで、新会社をつくろうというメドが立ちそうで、なんとか廃止は避けられるようです」とかで、厳しい状況には変わりないが応援団としての手ごたえも少しずつ感じているようだ。

P9243897P9243905ここで応援団作成のイラストマップをいただき、町の散策。那珂湊は古くから「東廻り航路」の港町として栄えたところで、那珂川、霞ヶ浦、利根川の水運を利用して江戸とのつながりもあったようだ。今でも古い商家や土蔵がところどころに残っており、「まちかど博物館」として訪れる人の目を楽しませる。また、水戸藩主徳川斉昭により設けられた反射炉跡を見たり、町と太平洋を見下ろす高台にあるかつての水戸藩別邸跡に立ったりと、イラストマップに従って町中を歩いて1時間コースである。

P9243910この港町としての活気を感じられるのが、太平洋に面したおさかな市場。水戸をはじめ関東各地から水産物目当てに大勢の観光客が訪れるスポットである。那珂湊の「地物」ばかりではなく、三陸や北海道から送られたものも多いのだが・・・・。観光バスも乗りつけており、ちょうどお昼どきとあって賑わっている。残念ながら自宅で調理ができないので新鮮な魚も目の保養である。

P9243909三陸直送の生ガキが売られており、その場で食べられるとあって早速いただく。何もつけずにそのまま、というのがよい。

それじゃここで昼食にしようということで、市場の中の回転寿司へ。各地からよりすぐりのネタがグルグルと回る。ただし、1皿100円の格安チェーン店のようにはいかず、値段もそれなりのもの。標準は210円、315円だが、高いものでは1皿840円とか、1050円とかもする。うーん、これは目の保養用だな。周りの客も、高級ネタに手を伸ばす人はほとんどいない。私も一番高いので地物のヒラメ。ただ安いものもしっかりしており、旬のサンマ握りとか、初めて見たアン肝の握りとか、いろんなネタを試してみる。

P9243916P9243921腹もできたところで那珂湊の駅に戻り、次の阿字ヶ浦行きが着くまでの間、側線に入れられた、あるいは留め置かれた車両たちを見る。駅舎、構内、車両をひっくるめて、昔ながらの鉄道の風情を改めて感じる。

P9243927やってきた阿字ヶ浦行き。那珂湊の町を抜け、イモ畑が広がり、10分ほどで終点着。こちらも、終着駅らしい風情だ。ここまでやって来たのは汽車旅派ばかりで、折り返しの列車で引き返しそうな感じだったが、実はこの駅から5分ほど歩けば太平洋に出る。かつては上野から直通の海水浴列車も出ていたそうである。駅が広いのもその名残という。

P9243935やってきた太平洋。風も強く、豪快に打ち寄せる波。その中で泳ぐ人の姿もあるが、まばら。外にいる分には涼しく、そろそろ秋の気配である。

そして最後の仕上げは温泉。ということで、海水浴場を見下ろす「のぞみ」という日帰り温泉施設へ。海を見下ろすという各種露天風呂を楽しむ。地下1500メートルを掘り当てたという温泉でゆったりし、夏の疲れを癒すとする。

P9243930茨城交通湊線。全線のキロ程は短いが、風情ある駅舎・車両あり、町並みあり、味・温泉あり・・・となかなか内容の濃い路線である。東京からも日帰りで十分楽しめるので、湊鉄道応援団ではないが、ローカル私鉄めぐりの1ページにおすすめ。

うーん、次こそは寿司の「高級ネタ」に挑戦するか・・・?

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