弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

法曹関係者の不祥事が続々と…

2006年06月30日 | その他
毎日、色々なニュースが流れてきますが、検察庁が誤認逮捕であることを認めて無罪論告をすること、弁護士はカジノ賭博の収益金を隠そうとしたことが大きく報道されています。

誤認逮捕の件は、約10ヶ月間拘留されていたとのことですので、被害者の方の苦労は並大抵のものではないと思います。
また、検察官も論告求刑で無罪求刑を行うとなると、メンツ丸つぶれになるでしょう。
結果論になってしまいますが、どうしてもっと早く気が付かなかったのか、原因を明らかにして、今後この様なことが起こらないようにして欲しいですね。
また、拘留等の決定をする裁判所も、安易に検察官の言うことを信用せず、もっとちゃんと判断してもらいたいものです。

誤認逮捕に関するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060629-00000236-kyodo-soci



次に、賭博収益を隠そうとした弁護士が逮捕されたというニュースが流れています。
報道文だけを見ている限り、架空の借金を作り上げて、その借金弁済という名目でお金を移し替えたような印象を受けましたが(一種のマネーロンダリング?)、どんなものなでしょうか?

ちなみに逮捕された弁護士は、賭博関係者の刑事弁護人を担当していたとのことです。
刑事弁護人といえば、つい先日も大阪の弁護士が共犯者存在を捜査機関に供述しないよう被疑者に求めとして、大問題になっていましたが、刑事弁護倫理が欠けてきているのでしょうかね(私が言えたものではありませんが…)。

もう一度、自分の弁護活動をしっかり見直す契機したいと思います。



賭博収益を隠した弁護士に関するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060629-00000134-mai-soci

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国選の刑事弁護事件を受任するに際して

2006年06月29日 | 経験談・感じたこと
最近、オウム事件や山口県光市の事件などで刑事弁護人に対するパッシング・批判が相次いでいますが、今日、私は、国選の刑事事件を受任する割当日でした。

大阪弁護士会の場合、予め割当日を弁護士に通知しておき、割当日に回ってきた刑事事件を、早い者勝ちで(!?)受任をしていく制度になっています。

このため、弁護士も人の子、受任するならなるべく○○な案件を…と考えてしまうため、弁護士会に早い目に行って、順番待ちをするという現象が起こります。
特に最近、弁護士の数が増えてきたためか、割当日として割り当てられている弁護士の数より事件数が少ないことがあるため、結構取り合いの状態になっているようです。

ちなみに私も、今朝並んできたのですが(今日は外の弁護士の出足が鈍かったのか、私は1番でした…)、確かに事件数は少ないような気がしました。

私のような若手弁護士は、イソ弁としての給料以外の収入を得るための比較的お手軽な事件受任のやり方という意識があります。
しかし、今後は、弁護士の数は増えるけど、案件数とのバランスが取れない(まぁ、刑事犯罪が減少するのであれば、それに越したことはないのですが)ということになるでしょうから、お手軽な事件受任というわけには行かないようになるかもしれません。

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刑事裁判の中で、民事上の損害賠償請求が可能になる!?

2006年06月28日 | その他
一般市民の方から「裁判制度がよく分からない」と言う中に、刑事裁判と民事裁判の違いがあります。

要は、刑事裁判は犯罪を裁くもの、民事裁判は(刑事との関係で言えば)犯罪被害者に対する金銭賠償を判断するもの、なのですが、交通事故裁判などを経験すると、刑事では、加害者=被告人が全面的に自分の非を認めながら、民事になると一転、自分の非を認めないということで、紛争が長期化し、いつまで経っても被害者が救われない…という状態がありました。
(まぁ、最近では、ちかん犯罪について、刑事では無罪、民事では痴漢有りという判断がなされて、矛盾しているのでは!?という話題も出ていますね)

そこで、従来から、刑事裁判の中で、民事上の損害賠償等の話も同様に解決できる制度を設けるよう働きかけが行われていたのですが、どうやら、刑事裁判の中で、裁判所による損害賠償に関する判決も一緒に行うことができるという制度が新たに設けられるようです。

ちなみに、実は、戦前の裁判制度では、刑事の中で民事の賠償問題についても一緒に行うことができるという制度になっていましたが、戦後、この様な制度は廃止されていました。
また、近年、加害者が、被害者に対し、被害弁償としてお金を支払う旨申し出て、当該申し出を被害者側が受け入れた場合、調書と呼ばれる裁判記録にその旨記載して、判決と同様の効力を持たせるという制度も設けられましたが、裁判所が判断を下すという性質のものではありませんでした。

今回話題になっている制度は、刑事・民事の問題が一気に片づくので、かなり利用のしがいのある制度になりそうです。
詳細な制度について調べる必要がありそうですね。


関連するニュースへのリンク
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20060625AT3S2302C24062006.html

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貸金業における利息の上限金利は、利息制限法の上限金利に統一されるようです

2006年06月26日 | その他
貸金業法上の上限金利と利息制限法上の上限金利との差(いわゆるグレーゾーン金利)につき、昨年来から最高裁判所が、貸金業者側に厳しい判決を立て続けに行っています。

この一連の判決を受け、政府も上限金利の見直しを検討していたのですが、どうやら、上限金利を、現行の利息制限法に定める上限金利で統一させる方向でまとまる様子です。

噂では、貸金業法上のグレーゾーン金利を廃止する代わりに、利息制限法の上限金利を引き上げるのではないかと言われていたのですが、基本的には、その様な噂も吹っ飛ばされたようです。

というわけで、借り手側にとっては、良い方向で動いているのですが、貸し手側はこの動きに対してどの様に対応するのでしょうか。

確か、一連の最高裁の判決の中には、貸金業法に基づく内閣府令が無効である旨判示したものがありますが、貸し手側からすれば、「行政の言いつけ通りにやってきたのに…」と文句が出るかも知れません。
どこか体力のある貸し手側が、「行政機関の指示通り動いたのに、裁判所で無効と言われた。これは行政機関の過失によるものだ!」として損害賠償請求等を行わないでしょうかね。

貸し手側がやって来たことはともかく、法治社会が進んでいると言うのであれば、この様な訴訟が起こってもおかしくないかも知れません。



関連するニュースへのリンク
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/keizai/20060624/K2006062306130.html

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小泉首相の靖国参拝訴訟で初の最高裁判決-結果は市民側の請求棄却!

2006年06月23日 | 法律情報
大阪地裁などで、傍論ながら、靖国参拝の違憲性が指摘され注目を集めていた、いわゆる靖国参拝訴訟ですが、本日、最高裁判所で判決がありました。

結果は予想通り(予定通り!?)、原告に請求を棄却、つまり国側勝訴です。
判決理由は、報道を見る限り、参拝によって、損害賠償の対象となる法的利益が侵害されたとは言えない旨述べたようです。
なお、注目されていた、靖国参拝に関する憲法判断については、一切触れられておらず、地裁レベルのような、踏み込んだ(あるいはやりすぎ!?)判断はなされていないようです。

この問題については、各地で色々と裁判を求める動きがありますが、個人的には、この問題を司法の問題で争っても、正直、国側勝訴の判決以外あり得ないのではないかと思っています。

というのも、靖国参拝は、直接的に特定個人を対象とした行為ではなく、また靖国参拝に対する受け止め方も、各個人によって異なる以上、究極的には一般の社会通念を下に判断する裁判所としても、判断のしようがないと思われるからです。

訴訟の結果ではなく、訴訟を行うことで政治的にプレッシャーを与えるという意味ので抑止力を狙っているのかも知れませんが、そうなると、政治で解決する問題になってしまうでしょう。

何となく、この訴訟については、堂々巡りのような気がするのでは私だけでしょうか。


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060623-00000104-yom-soci

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動産執行の現場で…

2006年06月21日 | 経験談・感じたこと
裁判で請求が認められる勝訴判決を勝ち取っても、相手方が支払ってくれない限りは、判決書は単なる紙切れに過ぎません。
そのため、強制的に支払わせるために、執行という手続きが存在するのですが、この執行手続きが、なかなか融通が利かない制度です。

私も、代理人弁護士として動産執行の申立を行い、差押え財産を探すべく、執行の立会に行うのですが、ある現場に行ったとき、パソコン等ある程度高価な物と思われるものは、何故か「●●所有物件」のような札が貼ってありました。

法律上は、Xに支払い義務があるのであれば、Xの財産に対して執行することになりますので、「Y所有物件」なんて書いてある札が貼ってあると、執行官は、嗜好現場でX所有物件なのかどうか判断が付きませんから、差押えの対象から外してしまいます。

とまぁ、法律の建前論からすれば、上記の通りなのですが、執行現場に行くと、どう考えても、「慌てて札貼っただけだろう!」「Xの物だろう!」と突っ込みたくなります。

私も代理人弁護士として立ち会っている以上、ささやかながら執行官に物言いをして、できるだけ差し押さえ対象にするよう交渉するのですが、なかなか執行官も首を縦には振ってくれません。

こうして動産執行は空振りで終わってしまうのですが、依頼者からすれば費用はかかるわ、しかし何も回収できないわで、踏んだり蹴ったりの気持ちになります。
もちろん、弁護士として、事前に費用が発生すること、無駄に終わるかも知れないことを説明し了解を得るのですが、依頼者に結果報告することは何となく気が引けてしまいます。

絵に描いた餅とは、まさしくこの様な場面を言うのかも知れません。

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山口県光市の母子殺害事件、最高裁判所が無期懲役を破棄差戻しの判決

2006年06月20日 | その他
当時少年だった被告人に対する罪責(量刑)が無期懲役が相当か否かが最大の争点になっている、いわゆる山口県光市で発生した母子殺害事件について、最高裁判所は、一審及び二審の無期懲役の判決を破棄し、事件を広島高裁に差し戻す判決を行ったようです。

ここ最近、かなり話題になっていた事件ですので、世間の注目を浴びていたのですが、結果的には、結論先延ばし…ということになったようです。

広島高裁で改めて審理されることとなりますので、まだまだ最終結論が出るまで時間がかかりそうですが、仮に広島高裁で死刑判決が出たとしても、弁護人側としては当然に最高裁に上告することとなりますので、最低でも1年以上はかかりそうですね。

刑事裁判の「長さ」が痛感される事件です。



関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060620-00000011-yom-soci

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「先使用権制度ガイドライン」が経済産業省と特許庁から公表されています

2006年06月19日 | 法律情報
知的財産権の保護を国家的戦略に位置づけようとする方針からか、最近、色々な官庁から、お助けマニュアル的なガイドラインが公表されています。

今回は、
『先使用権制度ガイドライン(事例集)の公表について-戦略的なノウハウ管理のために-』
という名称のガイドラインが公表されています。

この様なガイドラインを公表した目的ですが、そのまま抜粋すると

○国際的な競争が激しくなる中、企業は、開発した技術について、公開が前提となる特許権取得の対象とするか、ノウハウとして秘匿するかを戦略的に選択することが重要となっています。
○ノウハウとして秘匿した場合には、先使用権制度(*)の活用により、他者が特許権を取得した場合でも、事業の継続が可能となっています。今般、この先使用権制度の円滑な活用を図るため、特許庁では、先使用権制度ガイドライン(事例集)「先使用権制度の円滑な活用に向けて」を作成しましたので公表します。

(*)他者が特許出願をする前から、事業やその準備をしていた者については、他者が特許権を取得したとしても、例外として事業を継続できる制度

だそうです。


中小企業では、あまりノウハウ管理なんて意識していないかも知れませんが、よく例に上がるのが、コカコーラの事例です。
コカコーラのレシピについては、登場以来、全く公にされていません(噂によると、役員の中でもほんの一握りしか見ることができないようです)。
このようなコカコーラの戦略は、重要情報を公にしないことで、他社からの類似商品の出現を防止し、当該分野で唯一独占を狙った戦略といえるでしょう。

最近、何でもかんでも特許申請する風潮がありますが、特許申請すると言うことは技術等を公にすることにあります。
従って、模倣品が出現することは、ある程度覚悟する必要があります(もちろん、特許権侵害として、潰していくことは可能ですが)。

一方、重要情報を隠しておけば、究極的な模倣品対策とも言えるでしょう(もっとも、リバースエンジニアリング等で重要情報がバレてしまうこともあり得ますが…)。


ノウハウ・重要情報について、どの様に守っていくか、一度ガイドラインを見ながら考えても良いと思います。



経済産業省へのリンク
http://www.meti.go.jp/press/20060616008/20060616008.html

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経済産業省が「事業承継ガイドライン」を公表しています。

2006年06月16日 | 法律情報
高齢化社会を迎えるに当たり、中小企業等で誰がその事業を引き継いでいくのか、大きな問題になりつつあります。

そこで、経済産業省が「事業承継ガイドライン」というものを今般公表しました。
内容的にはかなりコンパクトですし、最後にチェックリストが付いているので、比較的読みやすいと思います。


経済産業省へのリンク
http://www.meti.go.jp/press/20060614002/20060614002.html

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電子公告では確認できない!!-カネボウの営業譲渡について、株主が怒りの声

2006年06月16日 | 法律情報
最近のインターネットの発達に伴い、会社の重要な経営情報について、一定の法律要件を満たせばホームページ等で公開することで、株主等の関係者に通知することが可能となりました(いわゆる電子公告といわれるものです)。

この電子公告の最大のメリットは、従来の新聞や官報等の媒体と比較して、圧倒的に費用が安くて済むというこです。

そこで、会社再建中のカネボウも、電子公告を採用し、事業部門の一部を他社に事業(営業)譲渡することを株主に対して通知するべく、ホームページ上で公開し、電子公告を行ったようです。

ところが、インターネットに不慣れな人や、インターネットを利用することができない環境下の人達が、事業(営業)譲渡の情報なんて知らなかったと大クレームを出していることが報道されています。


確かに、電子公告制度が法律上認められているとはいえ、全ての人がインターネットを利用することができるとは限りません。
従って、この電子公告制度の採用時から、上記のような問題が生じるのではないかと懸念されていたのですが、その懸念が現実化した格好になっています。

まぁ、官報なんて誰も見ませんし、新聞でも必ずしも全ての人が読むわけではありませんので、紙媒体であろうが、電子媒体であろうが、重要情報が知らされていなかったと言う人達はいると思います。
ただ、電子媒体の発達は、つい最近のことであり、少々尚早ではなかったか?と言われると、否定はできないと思います。

今回、知らなかったと言っている株主は500人以上と言われていますが、法律論的には、救済することは極めて難しいと思われます。
時代に逆行する子かも知れませんが、電子公告制度自体を、見直す必要性があるかも知れません。


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060615-00000070-mai-soci

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