弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

オウム事件の行く末は?-松本被告人の控訴棄却決定に対する異議を東京高裁が斥ける!

2006年05月31日 | 経験談・感じたこと
世間を震撼させたオウム事件ですが、松本被告人の刑事裁判につて、先日、東京高裁が控訴棄却決定を出し、東京高裁の刑事裁判は実質的な審理がないまま、一応の終了となっています。

そこで、東京高裁の控訴棄却決定に対し、弁護側が控訴棄却決定に対する異議を申し立ててしたところ、昨日、東京高裁(おそらくは、刑事裁判を担当した裁判官と、異議に対する判断を行った裁判官とは異なるはずです)は、異議を斥ける決定を出したようです。

報道では、「松本被告の死刑がほぼ確定」と報じられていますが、弁護人側は諦めず最高裁に特別抗告して、何とか東京高裁での刑事裁判を復活させる方向で動いているようです。

私自身、ここまで複雑な刑事裁判を経験したことがありませんし、刑事弁護人の方針について口出しできる立場にはありませんが、法律を知らない素人の立場から考えた場合、何となく無駄な手続きだなぁと思ってしまいます。

ただ、今回の異議を斥けた裁判官が指摘する、「意思疎通や接見ができなくても、弁護人には記録の検討や知識、見識に基づき、趣意書の作成が期待されている」との指摘については、本当なのか?とは思ってしまいますが…。
個人的には、刑事被告人の意見を聞かずして、刑事裁判を進めろ!というのは、弁護士に全てのリスクを負わせた暴論としか思えません(刑事被告人から文句を言われるのは最終的には担当した刑事弁護人です。刑事弁護人が、被告人から後々懲戒請求や損害賠償やらで訴えられてしまっては、安心して刑事弁護などできません)。
今後その様な指摘がまかり通るなら、弁護人も人の子ですので、誰も刑事弁護をやりたがらないような気がします。。。

もっとも、被告人の訴訟能力について、もう少し違う争い方があったのではないかと少々考えてしまいます。
世間の注目が大きいだけに、難しい問題です。


関連リンク
http://news.www.infoseek.co.jp/topics/society/aum.html?
d=20060531hochi004&cat=60&typ=t

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「君が代」に関連するニュースいろいろ…

2006年05月30日 | 経験談・感じたこと
戦後タブー視されていたせいか、いつまで経っても国民的な統一コンセンサスが得られない「君が代」問題について、昨日、昨日と立て続けにニュースになっています。


1つは、君が代の替え歌がネットに流布されているという話題です。

ニュースのリンク
http://news.goo.ne.jp/news/sankei/shakai/20060529/m20060529000.html?fr=rk

どうやら、君が代の本来の歌詞と同じ口の開き方を行う方法で、全く別の歌詞を歌うという技らしいのですが、よく考えるなぁと、ある意味感心してしまいます。
もっとも、報道文の「正面から抵抗できなくなった人たち…(の)…抵抗運動」という文面を読むと、まるで江戸時代の隠れキリシタンを思い出してしまいます。

君が代については色々な意見があると思いますが、例えばサッカーのワールドカップ等で国歌を聞く場合に、果たして、君が代問題について意識して聞く人がどの位いるのでしょうか?
君が代に関する議論が、ものすごく遠い世界で行われているような錯覚に陥ってしまいます。



2つ目は、学校の卒業式で君が代斉唱の際に妨害行動を行った元教師に対する、刑事裁判が行われたというニュースです。

ニュースのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060530-00000033-mai-soci

色々な思想が絡んでいて、刑事裁判は複雑な方向で進んでいたようですが、結論的には、検察官の懲役刑求刑に対して、裁判所は罰金刑の有罪判決を行ったようです(但し、被告人は即日控訴したので未確定のようです)。

おそらくは、君が代斉唱が自分の思想信条に反するのに、起立して歌わせるということは何事だ!という考え方が根底にあると思われるのですが(但し、被告人側の弁護団は、別の争い方をしているようです)、卒業式は基本的には生徒のためにあるイベントですので、生徒側に不快な思いをさせる行動は、やはり問題有りといわざるを得ないような気がします。

やはり、君が代問題は根深いのでしょうか!?

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消滅時効がたった1日経過していたとして、損害賠償請求が棄却される!

2006年05月29日 | 法律情報
報道によると、医療過誤事件の被害者側が、病院に対して損害賠償請求を行っていたところ、消滅時効期間が経過しているとして、請求棄却判決がなされたようです。

ここで消滅時効とは、法律が定める一定期間が経過した場合、お金を支払わなくても良いとする制度です(但し、一定期間経過前に訴訟提起を行う等すれば、時効の中断と言って消滅時効の成立を遅らすことができる制度もあります)。
よく卑近な例としてあげられるのが、飲み屋のツケは1年間、黙っていれば消滅時効となるので支払わなくても良い…といったものです。

今回報道されている案件は、どうやら医療契約に基づく診療内容に不備があったとして債務不履行に基づく損害賠償請求を求めていたようですので、消滅時効期間は10年となります(但し、本件では、消滅時効期間経過前に内容証明郵便で督促を行っているので、10年6ヶ月が消滅時効期間のようです)。

ただ、どうやら被害者側が、消滅時効の期間満了時について間違った認識を持っていたようであり、訴状を出すのが消滅時効の期間満了の日から1日遅れたため、消滅時効により請求棄却という結論となったようです。

ちなみに、消滅時効による請求棄却ですから、おそらくは判決理由の中でも、医療ミスがあったか否かについて何ら判断が行われていないものと思われます。

被害者が輪からすれば、損害賠償請求は認められないは、公権的な判断も示されないはで踏んだり蹴ったりのような気がしますが、気になるのは、被害者側の代理人弁護士の職務遂行が適切であったかという点です。

もし、被害者側の弁護士が、消滅時効の期間満了について間違っていたというのであれば、これは確実に懲戒理由となると思われます。
我々弁護士の世界では、消滅時効は「特に気を付けるべき事項」として認識されています
また、私及び私の友人の弁護士は、消滅時効の問題はとにかく怖いので、消滅時効完了の1週間前までには訴状は提出するよう心がけています。

本件について、どの様になるのか気になりますが、被害者側弁護士の職務遂行についても若干気になります。


関連リンク
http://www.asahi.com/national/update/0526/NGY200605260010.html

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これで微罪でも訴追される可能性が増える!?-刑法の改正の概要

2006年05月26日 | 法律情報
もう間もなく施行される改正刑法ですが、法務省が新旧対照表を公開しています。

法務省のホームページ
http://www.moj.go.jp/HOUAN/KEIHO-KEISO/refer04.html


とりあえず記憶の片隅にでも入れておかなければならないのは
○ 公務執行妨害罪に罰金刑が新設!(今までは懲役刑or禁固刑のみ。ちなみに今回の改正で禁固刑は削除)
○ 窃盗罪に罰金刑が新設!(今までは懲役刑のみ)
○ 業務上過失致死傷罪の罰金刑の上限が上がる!(50万円→100万円)


これまで、公務執行妨害罪・窃盗罪はこれまで懲役刑等しか規定されていなかったため、形式上は犯罪になっても、わざわざ刑事裁判までは…という検察側の事実上の判断がありました。
また、原則的には、初犯の場合、懲役刑では実刑判決を出さない(執行猶予付き判決が多い)という裁判所側の傾向もありました。

しかし、罰金刑程度であれば、肉体的な拘束を伴うわけでもなく、お金さえ払えば何とかなる、ある意味「比較的お手軽」な刑というイメージがあります。
そのため、今後は、検察庁も罰金刑を求めて起訴する、裁判所も罰金刑による実刑判決を下す、ということで、国民にとっては、厳しい判断がなされる可能性が極めて高くなると思います。

まぁ、悪いことをしなければ良いのですが、ちょっと出来心で…と言い訳して、起訴を免れたり、執行猶予判決だから、しばらくおとなしくしておけば痛くもかゆくもない…という甘い認識は捨てた方がよさそうです。

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大丈夫? 違法駐車対策にトラック協会が荷物を取りに来るよう顧客に要請

2006年05月25日 | 経験談・感じたこと
改正道路交通法で最も影響を受けると言われている、運送業界ですが、この度、対策案!?を発表しました。
ものすごくストレートなのですが、
『お客様、荷物の受け渡しは運送車の側でお願いします』
だそうです。。。

運送業界の団体は、運送車への取締りについては配慮して欲しい等の陳情活動を警察に行ったりしていたようですが、結局どれも今一つで、最終的には、上記のように顧客へのお願い作戦となったようです。

まぁ、今回の改正法によって、違法駐車の取締り運用基準(?)が、運転者が不在で路上に車両が駐車されていること、という事実だけで対象となるため、一瞬でも運転者が不在となれば、違法駐車で取り締まられてしまうということになりそうです。

違法駐車対策としては、かなり効果のありそうな法律ですが、少なくとも現状にはマッチしていない制度でしょうね。
「ちょっとの間だから、いいじゃない。。。」という発想を、運送業界関係者だけではなく、我々自身も変えていかなければならないことになりそうです。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060524-00000068-mai-soci

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【刑事弁護人は必見!?】国選弁護に関する報酬基準が近く公表

2006年05月24日 | 法律情報
国選弁護事件とは、簡単に言うと、被告人自ら弁護士を依頼することが難しい場合(例:弁護士費用がない、弁護士の知り合いがいない等)に、国が選任した弁護士を弁護人として付ける事件のことを言います。
(ちなみに、堀江氏の刑事事件については、自ら弁護士を選任していますので、私撰弁護事件と言います。)

この国選弁護事件を担当した際、弁護士は、国から弁護士報酬を支給してもらうこととなりますが、結構安価に設定されていて、「頑張れば頑張るほど、割が合わなくなる」と言われている状態でした。
そこで、この弁護士報酬について、事件の重大性や弁護活動の時間等の従量制にすることで、弁護士報酬に幅を持たせる制度に変更されるようです。

実際の基準については、近く公表されるとのことですので、今後弁護士になろうと思う人などは、「刑事弁護で得られる収入は大体これくらいか」と確認しておいて良いと思います(世間で思われているほど、高額ではありません。従って、国選刑事弁護の報酬だけで生計を立てようと思うのであれば、考え直した方が良いでしょう)。


ちなみに、弁護士以外の一般市民の方は、このニュースに関連して、次の点につき確認しておけば良いと思います。

国選弁護事件の場合、弁護士費用は国から支給される以上、被告人その他関係者から、それ以上の報酬を受け取ってはならないとされています。
従って、万一、国選刑事弁護人が、別途報酬等の請求を行った場合、その弁護士は問題があると言わざるを得ませんので、すぐに弁護士会等に連絡をするべきでしょう。



関連リンク
http://www.asahi.com/national/update/0523/TKY200605220367.html

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警察庁が違法駐車取締まりに関するQ&A集を公表しています

2006年05月23日 | 法律情報
民間業者による違法駐車の取締まり等を認めた改正法が、いよいよ施行されますが、そのことに関して、警察庁が、Q&A集を公表しています。

今回の改正法の大きなものは、警視庁のホームページによると
①車両の所有者などを対象とした放置違反金の制度が導入されること。
②民間の駐車監視員が放置駐車違反の確認を行うこと。
③悪質・危険、迷惑な違反に重点を置き、短時間の放置駐車も取り締まる方針であること
④放置違反金を納付しないと車検が受けられなくなること。
のようです。


あと最近はやりの!?の詐欺絡みで気を付けておいた方が良いのが、
『民間の取締業者(駐車監視員)は、違反金の徴収を行うわけではないこと』
でしょうか。
警察庁のホームページでは、「放置駐車違反の確認や標章の取付けを行うだけです。都道府県公安委員会が、後日、放置違反金の納付命令を行った上で、徴収します。」と明示されていますので、万一、違反金を払えと言われたら、ちょっと疑った方がよさそうです。


警察庁の該当するホームページへのリンク
http://www.npa.go.jp/koutsuu/shidou27/qa.htm

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橋下弁護士が申告漏れで追徴課税を受けたそうです。

2006年05月23日 | その他
今や弁護士業務の売上げより、タレント活動としての売上げが大きいのではないか!?と言われている、橋下弁護士ですが、報道によると、申告漏れで約1000万円の追徴課税を受けたそうです。

ちなみに、ニュースのタイトルでは、「税法…詳しくなかった?」と記載されていましたが、おそらく多くの弁護士は、税法にはあまり詳しくないと思います(税務のプロはやはり税理士ですね)。
私も、ある程度のことなら分かりますが、やはり税務は怖いのと、「餅は餅屋」ということで、税理士に必ずお願いするようにしていますね。

でも、弁護士は法律のプロということで世間では通っていますが、何故、税法だけは別個のものとして扱われているのでしょうか?
私なんかは、税法は完全に異業種の分野という認識がありますが、世間的にはこの認識が通るのでしょうか?

ちょっと不安に思います。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060523-00000024-san-soci

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電話加入権の一方的値下げは違法として国とNTTに集団訴訟!

2006年05月22日 | 法律情報
携帯電話が普及した現代社会では、もはや死後化しつつある「電話加入権」ですが、この電話加入権の価値について、一方的に値下げしたのは違法であるとして、電話加入権取扱業者等が中心となって、集団訴訟を提起するようです。

固定電話を利用する人にとっては馴染みがあると思うのですが、新規で電話回線を引く場合、電話加入権という権利を取得する必要があります。
この電話加入権の価値については、NTTが国から認可(許可?)を受けて定めているようですが、去年の3月に、電話加入権の価値を半額に定める旨改訂しました。

このため、電話加入権を貸出し等する会社の売上げが減少してしまったり、担保として電話加入権を取っていた会社が、債権回収時にうまく回収できなかったり等の影響が出ているようです。
また、一般家庭において電話加入権を持っている人は、あまり肌身では感じることはありませんが、電話加入権という資産価値が一方的に失われていると言える状態になっています。

上記のような、一方的な資産価値の減少は違法であるとして、今回の訴訟の至ったわけですが、まぁ、確かに、資産価値の減少も分かりますが、携帯電話が普及している現在において、電話加入権の資産価値が昔と同じままで良いのか?という疑問は残りますね。

私も詳しく知りませんが、確か、NTTは電話加入権は厳密には私有財産ではないという説明を行っていたような気もします。
この訴訟が、単純な私有財産の侵害訴訟として捉えることができるのか、仮に私有財産の侵害であるとして、価値を減少させる行為はやむを得ないものとして相当性を有するのかがポイントになるような気がしますが、一石を投じる訴訟になりそうです。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060522-00000034-kyodo-soci

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性同一性障害の児童を、肉体的性ではなく精神的性で受入れ

2006年05月19日 | 法律情報
報道によると、性同一性障害の児童(肉体的には男性、精神的には女性とのこと)について、教育委員会は、精神的性別を重視して、女性として受け入れることを決めたようです。
かなり思い切った判断と評価されると思いますし、おそらく日本では初めての扱いではないでしょうか。

ところで、性同一性障害に関する法律は、実は2年ほど前から施行されており、この法律によって、戸籍上の性別を変更できることとなりました。
しかし、実際には2人以上の医師の診断や、子供がいないこと等の要件があり、この法律で戸籍上の性別を変更できるのは、かなり制限されています。

私も、刑事弁護の過程で、肉体的にも精神的も女性だが、戸籍上の性別は男性ということで、拘置所での処遇につき配慮するよう求めたり、上記法律に基づく性別変更を行うための要件となる医師の診断を受けされるために、特別に外出許可を行うよう求めたりしたことはありますが、やはり一般的には性同一性障害に対する認識は低く、色々と苦労した覚えがあります。
(ちなみに、刑事弁護の公判において、実刑で刑務所に入ることになるとしても、性同一性障害であることに配慮して、女性刑務所での処遇を要請する旨の弁論を行ったところ、裁判官も検察官もきょとん…としていました。。。)


今回の処遇については、賛否両論があるとは思いますし、これを機に議論が深まればとは思います。
ただ、本件については、素人的発想ですが、小学校2年生の児童のようですので、今後の成長に応じて本人が性別について考え直すときが出てくるのではないか、その際どの様に対処していくのか、肉体的な性別と精神的な性別の相違について、他の児童とのコミュニケーションがとれるのか等難しい問題が山積みと思われます。

是非とも、場当たり的な対応にならないよう願うばかりです。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060518-00000062-mai-soci

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