弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

求刑の10倍の罰金刑が下る!!-豚肉関税脱税事件で東京地裁

2005年12月28日 | その他
報道によると、輸入豚肉に関する関税法違反事件で、検察側が罰金500万円の求刑を行ったにもかかわらず、裁判所は、求刑が軽すぎるとして罰金5000万円とする判決を行ったようです。

法律上は、検察官の求刑に対して裁判所は拘束されることはありませんので、求刑より重い判決を出すこと自体は問題ありません。

ただ、従前の慣行といいますか、たいてい検察官は量刑相場より重めの求刑を行い、裁判所は、求刑よりちょっと低めの判決を出すというのが当たり前でした。
このため、我々弁護人としても、検察官の求刑からすると、おそらく判決はこのくらいですねという説明を被告人に行っていたのですが、今後は安易に説明できなくなりますね。

特に、裁判員制度が始まった場合、量刑がどの様になるのか弁護人としては予見不可能という事態に遭遇するかもしれませんね。


関連リンク
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20051228AT1G2800T28122005.html

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代理出産に関するTBS報道に対し、損害賠償請求訴訟を提起した向井亜紀氏、一審は敗訴!

2005年12月27日 | 法律情報
講演内容が歪曲されて報道されたとして、向井亜紀氏がTBSに対し、名誉毀損に基づく損害賠償請求等を行った裁判で、東京地裁は向井さん側の請求を棄却したようです。

講演内容を作為的に編集したか否かが争点だったようですが、裁判所も指摘する通り、果たして「法務省を批判した」と報道することが、向井さんの社会的評価を下げたと言えるかは結構微妙な問題だと個人的には思います(政府批判=社会的評価を下げるとは直ちに言えないのでは!?)。

まぁ、代理出産という個人の尊厳に関わる微妙な問題だとは思いますが、名誉毀損という観点からすると、少々筋が違うのかなぁ…という気がします。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051227-00000164-kyodo-ent

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市職員の暴言によってPTSDになった市民が、国家賠償請求!

2005年12月27日 | 法律情報
報道によると、市職員が「殺したろか」と怒鳴ったため、市民がPTSDになり、50万円の慰謝料請求が認められたようです。

…とここまで書けば、一方的に市側が悪いように見えますが、どうも裁判所に事実認定によると、その市民側は、市役所の職員が、全く話を聞いてくれないことに憤慨し、旦那さんと一緒に市役所に乗り込み、執務室に無断で立ち入るは、一方的に市職員を責め立てるは、市職員の胸を押すは、で結構色々やっているようです。

これに対して、市職員側もキレてしまって暴言を吐いたようです。

確かに暴言を吐いてPTSDになったというのであれば、理屈上は慰謝料の対象になるとは思いますが、何か経緯を見る限り、やりきれない部分は多少感じますね…

ちなみに、請求額は500万円ですが、認容額は50万円で、裁判所も上記経緯を考慮して減額している節はあります。


判決全文
http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/c1eea0afce437e4949256b510052d736/12b7fa6357873c59492570e30002b439?OpenDocument

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未決拘留者との接見、電話による方法が容認される?

2005年12月26日 | その他
未決拘留者とは、刑事裁判での判決が確定する前まで、拘置所等に身柄拘束されている人のことを言います。

これまで、未決拘留者と接見する場合、直接弁護人が拘置所・警察等に赴いて、接見するしか方法しかありませんでした。
いちいち拘置所等に行くとなると手間・暇がかかるため、なかなか接見ができず、未決拘留者との打合せも間延びする等の問題がありました。
特に、将来導入される裁判員制度を念頭に置いた場合、今までとは違って(今までは月1~2回程度しか公判は開かれていませんでした)、連続開廷となりますので、被告人との接見も時間的制約が出てきます。

ちなみに、警察であれば、ある程度時間の融通がきくのですが、拘置所の場合、接見時間帯が決められているため、例えば夜に接見することは一切できませんでした(時間内で接見しなければならないため、当然、順番待ちも生じます)。
このため、未決拘留者が拘置所に入っている場合、接見するのも一苦労というのが実情でした。

もし、電話による接見が可能となる場合、弁護人としては、かなり被告人との連絡が取りやすくなるため、基本的には歓迎すべきことだと思います。
ただ、そのような人が出ないことを祈りたいのですが、手抜き弁護人が、電話のみよる接見で済ませてしまい、一切面談しなくなるという新たな問題が起こるのではないか?という心配も多少あります。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051222-00000285-kyodo-soci

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芸能界の危ない業界慣行?

2005年12月22日 | その他
報道によると、某プロダクションに所属していた女性アイドルが、プロダクション社長より売春を強要されたとして、当該プロダクションと社長に対して損害賠償請求訴訟を提起し、一部認められる判決が下されたとのことです。

その社長は、訴訟において、「CD出すには金がかかる。金が必要なのだから売春して稼ぐのが業界である」と主張したようです(正気とは思えませんが…)。

まぁ、当然の事ながら、そんな主張は裁判所では認められなかった訳ですが、一般論として、法律と異なる慣習は、どこまで法律上保護されるのか?という問題は、実は法律学(特に民法学)では難易度の高い問題とされています。

私が弁護士に成り立ての頃に聞いた話として、京都地方での慣習について、「京都地裁では慣習に基づき勝訴できるが、大阪高裁では慣習がないがしろにされ、最高裁では慣習の存在自体否定される」というものがあります。

実際はどうなのか知りませんが、いずれにせよ慣習を主張するのであれば、社会的に納得のいく合理的理由がひつようとなりますね。


関連リンク
http://www.sankei.co.jp/news/051221/sha099.htm

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違法駐車の民間委託、来年6月1日から!!-道路交通法の改正施行日が決定

2005年12月21日 | 法律情報
来年6月1日から、違法駐車関係の改正を行った道路交通法が施行されるようです。

やはり今回注目すべき事項は、違法駐車の取り締まりを民間に委託することを認めたことでしょう。

今までは、警察(=御上?)が取り締まっているんだから仕方がないと思って従っていた人も、民間業者が行っているとなると、素直に従わない人が出てくるのではないかと少々不安です(年末になると、特番で警察官関係の番組が放映されることが多いですが、違法駐車については抵抗する人が少なからずいますよね)。

運用状況については興味津々です。

ちなみに、今回の改正ではもう一つ、違法駐車を犯した運転者に対して責任追及ができない場合(違反金を支払わない場合を想定しているのでしょうか?)、使用者(一般的には車両所有者になりますかね)に対して責任追及することを認める内容となっています(身代わりで支払えということですかね)。

今回の改正が、もくろみ通り違法駐車の抑制につながればと思います。


警視庁のホームページ内にある概略説明
http://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku20/gaiyou.pdf

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東証不具合について、証券会社が大批判!!

2005年12月20日 | 経験談・感じたこと
東京証券取引所とみずほ証券との誤発注問題により、棚ぼた的に利益を得る格好となった証券会社が、利益を返上するが、そもそもこのような問題に巻き込まれて迷惑だ!?と言わんばかりに、東証に対して批判の大合唱を行っているようです。

まぁ、法律論的には、証券会社が返還する義務は無いと考えるのが筋なんでしょうが、社会的な目を気にして!?証券会社も自主的に利益返上するようです。

でも、証券会社からすれば、まさしく大迷惑な話であって、東証に文句の一つでも言いたくなるのは当然のような気がします。


関連リンク
http://news.www.infoseek.co.jp/topics/business/shoken.html?d=20fuji65260&cat=7&typ=t

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PL(製造物責任)事故と事後対応-松下電器の対応を見て

2005年12月20日 | 経験談・感じたこと
最近、松下電器のCMが全くなくなり、代わりに石油温風器の回収を促すCMが流れていますね。

年末商戦に向けて、企業競って宣伝広告を行うのが通常のこの時期に、あえて松下側があのようなCMを流したというのは、ある意味勇気ある決断だったのではないかと思います。

ところで、製造物責任法(PL法)では、「欠陥」により損害が生じた場合、製造主等は損害賠償責任を負いなさいと規定されています。
このため、欠陥商品をそのまま放置していると、いつPL事故が発生するか分からない、従って、いつ松下側はPL法に基づく責任を負わされるか分からないという事態が想定されます。

そのようなリスクある状態を減らす意味でも(当然、一般消費者に危害が加えられないようにするためにも)、松下側としては、何としてでも石油温風器を回収したいと考えていたのでしょうが、報道によると、半分近くは何処にあるのか分からない(=回収しようがない)状態とのことです。

確かに20年近く前の商品ですので、もう捨てられている可能性もあるのでしょうね。
そのため、実際にこの世に存在しない可能性もあると思います。
ただ、松下側からすれば、しばらくの間(半永久的に?)はPLの恐怖にさらされることになるのかもしれません(もちろん消滅時効の問題はあるかもしれませんが…)


関連リンク
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20051220AT1C1900819122005.html

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イモビライザーによって管理していても車両の盗難は可能-大阪地裁で判決

2005年12月19日 | 法律情報
まず、イモビライザーとは、エンジンキーをシリンダーに挿入した際、両者の電子的な照合を行い,合致しないとエンジンを始動させない仕組みのことを言います。

本件は、イモビライザーを付けていたんだから、車両が盗難されるわけがないとして、保険会社が盗難に基づく車両保険金請求を拒絶したため、提起された訴訟のようです。

技術の進歩はすさまじいので、確かに保険会社側の言い分も分からないわけではないのですが、大阪地裁も指摘している通り、レッカー車で車両ごと盗難する可能性も想定されますので、イモビライザーを搭載しているから車両の盗難は無かったと回答するのは早計なような気がします(最近はあまり聞かなくなりましたが、一時期、銀行のATMをショベルカーで丸ごと盗難するという事例が多発したことからすると、裁判所の認定もあながち不当とまでは言えないと思います)。

ただ、事実上「盗難はなかったこと」を保険会社側が立証しなければいけませんので、あらゆる可能性を想定しなければいけない保険会社も対応は大変ですね。


関連リンク
http://autos.goo.ne.jp/news/society/article_77468.html

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弁護士の仕事と年末

2005年12月18日 | 経験談・感じたこと
弁護士の仕事は、あまり時季に関係がないと言われいます。

よく税理士の仕事なんかは、12月くらいから年末調整等で忙しくなって、年明けからは税務申告の関係で多忙を極めるというパターンのようですが、弁護士はそういったことはありません。

ただ、弁護士という仕事柄、相談者からの依頼から始まる仕事ですので、年末になると、相談者も忘れていたことを色々と思い出すことが多いらしく、年内中に何とか解決できないかと相談に来る人が多くなります。

そういう意味で、弁護士の仕事も多少年末は忙しくなるのかもしれません。

今日も事務所に出て仕事をしていますが、暖房機もなく寒い中、たまに「俺って何故こんな日まで仕事しているんだろう…」と思いつつ、仕事をこなしています。

まぁ、私が仕事をこなすことで、相談者が喜ぶのであればそれに越したことはない!と言い聞かせてこなすのみですかね。

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