10 月 10 日~12 日頃まで、全銀ネットのシステムが不具合を起こし、三菱 UFJ 銀行など 10 行で決済処理ができないという事態となったこと、まだ覚えておられる方も多いかと思います。
私は、三菱 UFJ 銀行をメインバンクにしているため、色々と困ったことが起こったのですが、皆様はいかがだったでしょうか?
さて、送金システムの停止を法的に考えた場合、決済処理ができなかったことで利用者が被った損害を金融機関に損害賠償できるというのが理論上の帰結です(なお、銀行約款等で色々と制約がありますが、ここでは一旦無視します)。
では、その「損害」は何かというと、約定日に決済できなかったことにより生じた遅延損害金となります。この遅延損害金ですが、特約が無い限り法律上は年5%です。例えば、10 万円の支払いを 2 日間遅れた場合、548 円の損害が発生したと法律上は算出することになります。
おそらく皆様は「低い!」と思われるのではないでしょうか!?
私もその通りだと思います。しかし、法律上はそう結論付けるほかありません。
ところで、本件問題の本質的な被害は、期日通りの決済ができなかったことで、
・金融機関が保有する信用スコアが低下した
・取引先からの信頼を失った
・従業員の会社に対する忠誠心が低下した
等々の“信用”に関するものだと思います。しかし、上記で記載した通り、法律上はこの「信用」に対しては一切の補償がありません。
「そんな殺生な…」という声が聞こえてきそうですが、これが“現実と法のギャップ”なのかもしれません…。
弁護士 湯原伸一 |