弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

上司は部下をしっかり監督する責任と義務がある!-歴代の役職員に対し4000万円の賠償命令

2006年02月28日 | 法律情報
一昔前に青森の公社職員が、公社のお金を横領(約14億円)して、外国人女性に対し貢いでいた事件で、当該もと職員の上司に対し、管理責任を問う裁判が青森地裁で行われていたようです。
そして、今日、青森地裁で判決があり、上司らに対し約4000万円を支払うよう命じたようです。

何故4000万円なのか?という疑問もありますが、上司個人に対し責任を問うというのは異例中の異例ではないでしょうか。
報道によると、青森地裁は「人事配置について善管注意義務違反があった」と認定したようですが、何となく、結果が重大であり無責と訳にもいかないので、責任を認めちゃえ…という勢いで判決が出されたような気もするのですが、そのように感じるのは私だけでしょうか(あくまでも判決文を読まないことには分かりませんが…)。

ちなみに、注意義務違反の有無は、人事配置を行った当時(あるいはまさしく横領行為が行われていた当時)の時点で判断することになります。
したがって、人事配置について善管注意義務があったと認定するのであれば、横領行為を行った人物について、人事配置を行った当時、上司個人は、怪しい人物であったことを見抜かなければならないということにもなりそうですが、何となく違和感を感じます。

なお、横領行為が行われないよう組織として防止措置を執れるような人事配置を行わなければならないというのであれば、役員個人の問題と言うよりは、公社そのものの問題のような気もします。

まぁ、いずれにせよ、部下をもったらしっかり指導・監督しないと、上司個人に責任が降りかかってしまう可能性があるので、しっかりしなければなりませんね。



関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060228-00000029-jij-soci

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過払い金で経営体力が奪われている!?-大手消費者金融4社で過払い金返還1年で500億円!

2006年02月27日 | その他
このブログでも時々書いていますが、近時、最高裁判所が消費者金融側に厳しい判決を相次いで出しています。
それに従い、消費者金融側も過払い金を借り主に返還する手続きを取っているようですが、その総額が、大手4社だけでも1年で500億円に達することが報道で公表されています。
この様な状態が続くと、消費者金融もいずれは経営破綻!?ということにもなりかねないような気がしますが、大丈夫なんでしょうか?(←私が心配することではありませんが…)

ところで、債務者からの依頼で任意整理案件(=破産等の法的手続きをとるのではなく、あくまでも話し合いで債務免除してもらったり、長期の分割弁済を認めてもらう等して、債務者の経済的再起更生のお手伝いをすること)を行う場合、過払い金で弁護士費用を賄っている案件が少なくありません。
したがって、過払い金が当然に債務者に返還されているかは、実はよく分からない部分もあります。

ちなみに、法律的な観点はともかく、手軽にお金を貸してくれる消費者金融という存在自体は消費者経済の中では、もはや不要とは言い切れなくなっているものと思われます。
消費者金融も利息制限法内で利息を取って利益を出すようにビジネスモデルの転換を求められているのもかも知れません。



関連リンク
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/keizai/20060226/K2006022503680.html

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逃げ得は許さない-酔いがさめて出頭した被告人を危険運転致傷罪で起訴!

2006年02月27日 | その他
交通事故被害者の声などを受けて成立した危険運転致死傷罪ですが、実際の運用では結構難しい問題があります。

危険運転致死傷罪が成立するためには、「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」であることを検察官が刑事裁判で立証する必要があります。
刑事裁判実務では、この立証方法として、呼気検査の結果、あるいは血中アルコール濃度検査の結果を用いて行うのが通常です。
しかし、これらの検査は、検査を行った時点でのアルコールの有無・程度しか判定できないため、酔いがさめてしまうと、アルコールの有無・程度が判定できず、一番重要な「事故を起こしたときのアルコールの有無・程度」が測定できないという問題点がありました。
このため、危険運転致死傷罪で立件しようにも証拠がないということで、検察官としても同罪で起訴することを躊躇する状態となっていました。

ところが、この度、大阪地検は、たしかに上記検査結果は無いが、知人等の証言からして飲酒していたこと、酩酊状態であったことは明らかであり、、「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」に該当するとして、危険運転致傷罪で起訴したと報道されました。

たしかに、インターネット等を見ていると、危険運転致死傷罪からの免れ方として、とにかく酔いがさめるまで逃げ回ることと記載されています。
ただ、この様な法の隙間を狙って、自らの責任を免れようとする者に対しては、断固たる態度で臨まなければなりませんので、今回の大阪地検の判断は勇気がいるとは家、真っ当な判断だと思います。

もっとも、本件では、知人等の証言から裏付け証拠を得ることができたようですが、本当に一人で飲みに行って事故を起こした場合、証言等も得ることができない可能性が残りますので、やはり、危険運転致死傷罪で立件することは困難という場合もあり得ます。

結局は、「飲んだら乗るな」を守ることが一番ですね。



関連リンク
http://www.sankei.co.jp/news/060225/sha061.htm

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奈良の騒音おばさんの刑事事件-検察側は3年を求刑

2006年02月24日 | その他
ニュースなどでかなり衝撃的な映像が流れたことで話題になった、奈良の騒音おばさんの刑事事件ですが、このたび結審し、検察側は3年を求刑したようです。
一方、弁護側は無罪弁論を行ったようです。

事件の扱い方はともかく、相変わらず被告人は、責任転嫁とも取れるような発言を法廷で行ったようで、裁判長から発言を止められるハプニングもあったようです。

傷害の求刑3年ということからすると、ギリギリ執行猶予が付くかも!?という線のような気もしますが、報道で伝え聞くところによると、あまり反省もしてないようであり(弁護側は無罪で争っている以上、当然かも知れませんが…)、仮に有罪判決が出される場合、結構実刑判決と言うこともあり得るかも知れません。



関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060224-00000178-kyodo-soci

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住友信託銀行が控訴へ-旧UFJとの統合破棄に関する訴訟を不服として

2006年02月24日 | その他
以前にも記入しましたが、住友信託銀行と旧UFJとの統合破棄に関する訴訟について、一審の東京地裁は全面的敗訴で終わりました。

住友信託銀行側は不服があるとして控訴する方針があることは伝えられていましたが、報道によると、控訴するにしても、原審の主張とは異なり、別の主張を構えるとのことです。

原審判断については色々と分析されていますが、要は、住友信託銀行側が求めた、「統合が実現したのであれば得られたであろう利益相当額が損害である」という主張に無理があるのでは!?ということです。
そのため、おそらくは住友信託銀行側としては、統合交渉までに発生した費用(人件費等)が無駄になったと主張して、損害賠償を求めてくるものと予想されます。

住友信託銀行側についている弁護士としても、このままでは引き下がれないでしょうから、ありとあらゆる主張を行うとは思われます。
何らかの形で損害賠償が認められる可能性が高いと思いますが(もしかしたら和解?)、判決が出された場合、経営統合等の交渉を一方的に破棄した場合の案件にかかるリーディングケースになるものと思われます。



関連リンク
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20060224AT2Y2300G23022006.html

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自社所有地内に産廃を野ざらしした業廃棄物処理法違反!-最高裁が初判断

2006年02月23日 | 法律情報
所有権を有する者は、当該所有物を自由に使用・収益・処分することができる…これは法律を勉強した人であれば、一度は聞いたことがあると思います(いわゆる所有権絶対の原則といわれるものです)。

上記法理からすると、土地の所有者は、当該土地についてどのように利用しても良いはずであり、たとえ産業廃棄物であっても、所有地内に置いているのであれば全く法律に違反しないということになりそうです。

でも、所有地内とはいえ、産業廃棄物が野ざらしに置かれていたら、周りの人は迷惑ですし、ちょっとおかしいんじゃないの?というのが一般的な感覚ではないでしょうか。

今回、所有地内に産業廃棄物を置いているだけだから、廃棄物処理法違反では無いとして争っていた事件につき、最高裁判所は、産業廃棄物を単に野ざらしにしているのであれば、たとえ一時的であっても保管ではなく、不法投棄に当たると判断して、破棄物処理法違反で有罪と判断しました。

まぁ、この判断が所有権絶対の原則の例外に当たると判断するかどうかはともかく、産廃をの野ざらしにしているのに、「保管しているだけだ!」と強弁することは今後できなくなりますね。


関連リンク
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060222i117.htm

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「虫けら」発言に賠償命令-宝塚市長の発言に対して神戸地裁伊丹支部

2006年02月23日 | その他
何だかギスギスした世の中と言うべきか、それとも発言者の見識を疑うべきか・・・いずれにせよ、報道によると、市長が市議会議員に対して、「虫けら」などと罵倒したことは不法行為に該当するとして、慰謝料請求を行っていた裁判につき、30万円の慰謝料を認める判決が出たようです。

ちなみに、この裁判は泥沼だったようで、市長側もこの様な裁判を起こされること自体が名誉毀損である!?と主張して裁判を起こしていたようですが、そちらの方は請求棄却されたようです。

最近、この手の裁判が増えているようですが、少なくとも公職にある人は、この様な発言は慎むべきでしょうね(発言の重みが違いますよね)。
また、一般市民も気を付けなければ、相手によっては裁判まで起こされてしまうリスクを常に抱えていることをもっと認識するべきだと思います。
私も短気なので、気を付けなければ。。。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060222-00000189-jij-soci

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混乱広がる電気用品安全法の施行-中古家電の売買はどうなるの!?

2006年02月22日 | 経験談・感じたこと
私も今年になってから初めて知ったのですが、電気用品安全法という法律があり、今年の4月から指定された中古家電(テレビ、冷蔵庫など白物家電も結構含まれているようです)は、PSEマークが無い限り販売することができないようです。

何だか、リサイクルの流れに逆行する様な気もしますが、建前は、消費者が安全に中古家電を使用できるようにするためだそうです。

ちなみに、この法律の積極的な宣伝が遅かったためか、中古業界では今頃になって大混乱になり、経済産業省への問い合わせはひっきりなしで行われているとのことです。
また、経済産業省も混乱を沈静化させようと「抜け道!?」を教えることで四苦八苦しながら対応しているようです。

それにしても、中古業界はこの法律を遵守できるのでしょうか?
去年の個人情報保護法の騒ぎの時でも、結局、対応できるのは大手の企業のみであって、中小企業はほぼ未対応で現在に至っているものと予想されます。
結局は、PSEマークの付いていない中古家電は4月以降も世の中に出回り続けるような気がするのですが…。


関連リンク
http://www.asahi.com/business/topics/TKY200602200084.html

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学生無年金訴訟-高裁では相次いで原告敗訴

2006年02月22日 | 法律情報
現在、20歳以上であれば全員国民年金に加入する義務がありますが、昔は学生であれば国民年金に加入するか否かは任意とされていました。

この様な時代背景の中で、学生時代に何らかの障害を負ったが、国民年金に加入していなかったため(おそらくは原告側の主張では加入したくても、加入できるという情報が無かったので加入できなかったという主張だったと思います)、国民年金のうち障害基礎年金を受給できなったのは違法であるとして、全国で裁判が起こされています。

一審の地裁判決では、違法と判断されて、原告側に障害基礎年金相当額の支払いを命じる判決も出されていましたが、控訴審では、今のところ全て適法との判決で、国側勝訴の判決が続いています。

今回も広島地裁では違法と判決されていましたが、広島高裁は逆転判決で、適法(国側勝訴)の判決となりました。

あまり詳細な事情等を知らない私が言うのも何ですが、国民年金に加入していなかったのであるから、支給されなくても仕方がないのでは…という素人的発想をつぶすような主張・立証がないと、本件のような訴訟はなかなか「違法」という判断を認定してもらうことが難しいのではないでしょうか。
(何かの番組で見ましたが、国民年金に加入できるという情報が積極的に告知されていれば入っていた、と主張しているのを見たことがありますが、心情的には分かりますが、何となく後付け的な主張のように聞こえてしまったことがあります)。

もちろん、何らかの形での被害者救済があれば良いのは言うまでもありません。


一連の訴訟を見ていて、ちょっと複雑な気持ちになります。


関連リンク
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060222STXKD011522022006.html

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建築偽装問題を受けて国交省が対応策公表-新築住宅には強制の欠陥保険を付保する!?

2006年02月21日 | その他
報道によると、一連の耐震偽装問題において被害者保護のあり方を検討していた国土交通省は、新築住宅については、売り主に対し、強制的に欠陥保険(?)に加入させて、万一の場合に保険で填補するという方針を打ち出したようです。

まぁ、リスクヘッジの保険というのは考え方としては間違っていないとは思いますが、保険料は結局、売買価格の中に反映されて、買い主が事実上負担するような気がしますが、その点はどうなのでしょうかね。

また、保険会社も賠償額が巨額になりすぎるとして反対する立場を示しているようですので、仮に強制保険制度を導入したとしても、保険料は高額になるような気がします。

また、補償額について限度額を設けるようですので、全部賠償されるというわけには行かないようです。
結局、自動車でいう、自賠責保険のようなイメージなのでしょうか?

未だ案の段階ですので、この構想自体が流れてしまうかも知れませんが、どの様な方向で話が進んでいくのか注目ですね。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060221-00000101-yom-soci

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