裁判員制度対象の刑事事件に関する記事ですが、次のような記事を見つけました。
地検の全検事参加・弁護士会は精鋭で…新作戦
要は、刑事事件が主たる業務である検察官は全ての検事の対応能力の底上げを図る、一方、弁護士は、刑事弁護のエキスパートである少数精鋭部隊で対処するということですが、ある意味当然の流れかなという気がしています。
少なくとも、私のような普段刑事弁護に全く関与していない弁護士なんかが、突然、裁判員制度対象の刑事弁護を行うとなると、私自身が大パニックになり右往左往することは、まさに「火を見るよりも明らか」ですし(恥ずかしい話ですが…)、何より私に刑事弁護を依頼せざるを得なかった依頼者にとっては迷惑以外何ものでもないと思います。
(国選事件の場合、被告人は弁護人を選択できないんです…)
その意味で、弁護士会としてその様な対応ができるのであれば、その様にした方が良いとは思います。
が、問題は刑事弁護を得意とする弁護士が少ない(かもしれない)地方会では、どの様に対処していくのかという点です。
地方会では、弁護士の数との関係上、否応なく刑事弁護を普段行っていない弁護士が対応せざるを得ない場合も想定されますので、結局は、検察庁と同じく、地方会に所属する弁護士(会員)の能力底上げという対応策を打たざるを得なくなるような気がします。
数年後には、刑事弁護に十分な対応能力を有する弁護士の数は、地方会の方が多いという現象が生じるかも知れません。
ところで、私なんかは、刑事弁護に対する認識が非常に甘いと思いますので(少なくとも日常業務の中に刑事弁護はありませんし、電車等で読む書籍に刑事弁護に関する題材はありません)、依頼者に迷惑をかけない&自分自身が不適切弁護でリスクを背負わないためにも、そろそろ刑事弁護の世界から足を洗うべきではないかと考えるようになっています。
つい先日も、次年度の刑事事件の配点登録を受けるか否かのアンケート用紙を受領したのですが、このまま登録を続けるべきか否か、かなり悩んでいます。
一応、刑事弁護の登録抹消&法テラスとの契約解除の用紙はもらいましたので、後は書いて提出するだけなのですが、刑事弁護を一切しないと割り切ってしまって良いのか、若干躊躇しているのも事実です。
(ただ、裁判員制度を始め、刑事弁護の世界があまりに深化したと感じているため、能力的に担保できていないなぁと自分自身では思っています。情けないことですが…)
あと数日で結論を出さなければならないのですが、おそらく最後は『エイヤー』で決めることになるでしょうね。
P.S. 地方会での(刑事弁護に対応できる)弁護士の数が少ないから、弁護士の数を増やすべき!という議論は、個人的には大雑把すぎると思います。
少なくとも、今の制度上、個々の弁護士において、どの様な弁護業務を行うかは各人の任意に委ねられていますので、数を増やしても、刑事弁護の担い手が増えるという構造にはなっていないからです。
都市部では、刑事弁護を売りにしている法律事務所も実例として生じていることから、弁護士の数が増えればマーケティング・営業戦略(差別化というべきか)の観点から、地方にも刑事弁護を主たる業務とする弁護士も現れるはずだ!という立論もあるかと思いますが、しょせんは可能性に過ぎないと思います。
ちなみに、上記のように考えているため、今業界内でホットな話題となっている、「司法試験合格者数を減らせ!」という流派に私が属するかのように思われるかもしれませんが、
・弁護士数を増加させること=刑事弁護の担い手が増えるとは限らない
と言っているだけで、合格者の増減の問題とは全く次元を異にすると考えています。念のため。
(法曹人口問題については、増員(維持)派、減少派のどちらの言い分もそれなりに当たっている部分はあると思いますので、結論を出せと言われても出せません)
※よろしければこちらもご覧下さい。
インターネット・電子(IT)取引、労務・労使・労働問題、フランチャイズ、債権回収を中心業務にしている弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の法律情報ページ
にほんブログ村