弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

耐震偽装問題に新たな動き-住民側がヒューザーの破産申立て

2006年01月31日 | その他
以前から報道されていましたが、耐震偽装問題の被害者側住民が、販売業者出るヒューザー社の破産申立て手続きを東京地裁に行ったようです。

よく誤解されるのですが、破産法上は、破産申立てを行うことができるのは、債務者(破産者)だけではありません。
債権者(破産者に対しお金を貸している人など)が破産申立てを行うことは可能です。
ただ、「地獄の沙汰も金次第」ではありませんが、裁判所に破産申立てを行う場合、申立費用を申立人側が負担する必要があります。
つまり、今回の件では、住民側が裁判所に納める必要があります(おそらくは100万単位の費用を求められているはずです)。
従って、住民側としては新たな出費を負担してでも破産申立てをしたかったという強い意思の表れではないでしょうか。

なお、今回の件に限らず、よく債権回収の相談を受ける場合、相手(債務者)の態度が不誠実なので、(嫌がらせで?)破産させて息の根を止めたい!と言う人がいます。
しかし、上記のように、破産するにしても、債権者側が破産費用を裁判所に納める必要がある旨説明すると、「返済してもらえないのに、新たに追加出費を迫られるのは納得いかない」として、破産申立てすることを諦めてしまいます。

破産申立てするにしても、追加出費を迫られるのは何となく矛盾を感じるのは私だけでしょうか?


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060131-00000003-yom-soci

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アメリカ並みの弁護士人口にするには、毎年約21万人の司法試験合格者が必要!?

2006年01月30日 | 経験談・感じたこと
司法改革の大きな目標として、弁護士人口を増やすことが叫ばれていますが、日本がよくお手本にするアメリカと比較した場合、今後5年間でアメリカ並みの弁護士人口にするには、毎年約21万人の司法試験合格者を生み出す必要があるとの、法務省の資料が公表されています。

約21万人も受験者を集めることができるのか、根本的に疑問がありますが、21万人も1年間で増えた途端、弁護士業のみで食べていけない人が溢れ出すような気がします。

何でもかんでもアメリカを真似てしまっていいものか?と思いますが、しかし、この様な資料が出ること自体、法務省側としても、まだまだ弁護士人口の増加を行う意思を示しているんでしょうね。

まぁ、現状でも、弁護士事務所で雇ってもらえない(イソ弁になれない)新人弁護士が出ている状況ですので、今後はますます、司法試験に合格しても、「バラ色」の人生を送れる保証は無いに等しい状態になるでしょうね。

まだしばらくは、ある種の社会的ステイタスが弁護士にも認めらるでしょうから、弁護士になりたい!という人も増えていくでしょうが、「飯にありつけない弁護士」の存在が社会的に認知されてくると、賢い人は、弁護士を生業としたいと思わなくなるような気がします。

今後10年、20年経って、どの様な結果が出るのか…?今更ながら不安です。


法務省の資料
http://www.kisei-kaikaku.go.jp/minutes/wg/2005/1109_2/addition051109_2_03.pdf

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今ごろ?ようやく??-裁判所が「ワード」を導入することを決定

2006年01月27日 | 経験談・感じたこと
意外と知られていないと思うのですが、裁判所は、これまでパソコンのワープロソフトは「一太郎」「ATOK」でした。
このため、裁判所からデーターを欲しいと要望を受けたときは、ワードと一太郎の互換性が問題となり、色々と苦労することがありました。

が、現役裁判官からの情報によると、頑なに!?ワード(エクセルも)を拒み続けてきた裁判所が、ついにワード・エクセルを導入することを決定したようです。

私の場合、依頼者とのやり取りはワード&エクセルでやりますので、事務作業が減るという意味で喜ばしい情報です。
ただ、個人的には、昔から一太郎に慣れ親しんだこともあり、今後一太郎を利用する機会が極端に減るだろうなぁ…と思うと、ちょっと寂しい気もします。
もっとも、私は、ワード文書を利用しますが、日本語ソフトは「MS-IME」ではなく、専ら「ATOK」派です。
まぁ、色々と理由はありますが、何となく「ATOK」の方が日本語対応が進んでいるような気がしますね。

それにしても、日本国内のワープロソフトシェアも、マイクロソフトの寡占化がますます進みそうですね。

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探偵業者が設置したビデオカメラによる撮影はプライバシー権侵害!-京都地裁が判断

2006年01月26日 | 法律情報
報道によると、マンションの自室近くの通路に探偵業者がビデオカメラを設置していたことに対し、ターゲットとなっていた人物がプライバシー権侵害を主張して慰謝料請求していたところ、京都地裁は、一部ですが認める判決を出したようです。

判決内容を読んでいないので、何とも言えませんが、これまでのプライバシー権訴訟とは少々傾向が違うように思えます。

というのも、裁判例上問題となるプライバシー侵害とは、私生活をみだりに公開されない権利(法的利益)が侵害されたことを言います。
そうすると、本件のような場合、あくまでも室外での状況を撮影していただけであり、私生活を公開されたとは必ずしも言い切れないと考えられます(本来的に、外出時は不特定多数の人にその人の外見なりを見られるわけですから、そもそも非公開ということがあり得ませんよね)。

もしかすると、従来のプライバシー権の定義自体に変更があったのか、あるいは探偵業者にもっと違法な手段により、ターゲットを精神的に追いつめてしまった事情があったのかも知れませんが、何となく、しっくりとしない所があります。

判決文が公開されたら、内容を調査してみたいですね。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060126-00000005-mai-soci

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国籍に基づく入居拒否に対し、家主に賠償判決-神戸地裁尼崎支部

2006年01月25日 | 法律情報
報道によると、国籍による入居差別により精神的苦痛を被ったとして、家主と仲介業者に対し、損害賠償を求める訴訟を提起したところ、家主に対してのみ一部認める判決が出たようです(認容額は請求額の1/10のようです)。

基本的には、家主が誰を賃借人とするか自由に判断できるはずです。
が、「国籍による差別」は、憲法にも規定されている通り重大な差別です。
そこで、家主側において、国籍により入居を拒絶することは正当な行為ではなく、かえって相手に精神的苦痛を与えたというロジックで、判決が出されたように思います。

ちなみに、大阪では、最近、某弁護士が国籍による入居差別を受けたとして、家主と大阪市の双方に対して損害賠償を求める裁判が提起されたと話題になっていましたが、今回の判決は、こちらの裁判にも影響を与えるものと思われます(ただ、伝え聞くところでは、家主は民間人のようであり、何故大阪市に対して損害賠償請求を行っているのか不明な点はありますが…)。

自己責任が強調される世の中になってきましたが、自分ではどうしようもない国籍による差別は、今後も厳しく裁判所で判断されていく傾向が続くように思います。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060125-00000012-mai-soci

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捜査当局の失態!?-捜査方法に問題があるとして、刑事事件で無罪判決、別の少年事件では国家賠償が認容

2006年01月24日 | 法律情報
昨日のライブドア堀江社長の逮捕というショッキングな事件が公表され、捜査当局による素早い捜査方法について国民の関心が集まっていますが、一方で、捜査当局による捜査方法に問題があったとして、大変重大な判決が公表されています。

一つは、名古屋で発生した幼児連れ去り殺人事件につき、被告人が、捜査段階で行った自白については、捜査当局より無理矢理になされたものであって、任意性がない(要は自ら自発的に話をしたものではない)・信用性がない(嘘をついていた)と争っていたところ、裁判所もその主張を認めて無罪判決を出しました。

もう一つは、上記とは全然別の少年事件ですが、裁判所が捜査当局の当時の捜査方法を厳しく糾弾しており、捜査方法に違法があったとして、国家賠償請求が認められています。


捜査方法にケチを付けられ、後で無罪判決や国家賠償請求が認められてしまうと、結局何のための捜査だったのか?ということになってしまいます。
今回の、ライブドア事件についても、一部報道では、やり過ぎとしか言いようがないパッシング報道を行っていますが、捜査当局としては、周りに流されることなく、冷静に対処して欲しいと思います。



関連リンク1(幼児連れ去り殺人に関する名古屋地裁判決の報道)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060124-00000103-yom-soci

関連リンク2(岐阜地裁多治見支部における副検事批判の判決文)
http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/c1eea0afce437e4949256b510052d736/be56841d967e6b2a492570ff00213879?OpenDocument

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公害訴訟再び!?ーアスベスト被害者が国家賠償請求を求めて提訴へ

2006年01月23日 | その他
報道によると、アスベストで健康被害を受けた被害者の方々が、今春にも国家賠償を求めて訴訟を提起するとのことです。

厚生労働者や環境省の不作為による法的責任を明確にするため、と訴訟提起の目的が語られていますが、何となく、チッソ水俣訴訟などの公害裁判と同じような状況に陥っているような気がします(歴史は繰り返されるのか?)。

おそらく訴訟においては、国側にどの様な義務が生じており、その義務違反があったことを被害者側が主張・立証することになると思われますが、かなり立証の困難が予想され、裁判は長期化するように思います。
また、おそらくは消滅時効の壁もあるでしょう。

どのように展開していくか注目したいと思います。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060123-00000201-yom-soci

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侮辱罪で拘留29日の実刑判決!-スナックで「デブ」と言ったことに対し

2006年01月20日 | 法律情報
なかなか侮辱罪で立件されることなんて無いのですが、起訴までされて、しかも実刑の有罪判決が出てしまったという、極めてレアなケースが報道されています。

報道では、スナックで初対面の女性に対し、被告人が「デブ」と言ったようで、女性が警察に被害届を出していたようです。
なお、被告人は、発言していないといて無罪主張しており、この判決後、即日控訴した様子です。

私も刑事弁護をやりますが、「拘留刑」に該当するような刑事弁護はやったことがありませんので、今後、この裁判がどの様に進んでいくのか興味がありますね。

なお、間違えやすい用語として、
・懲役=監獄で身柄拘束され、作業が課せられるもの
・禁固=監獄で身柄拘束されるだけのもの(作業無し)
・拘留=拘留場で身柄拘束されるもの(作業無し)
という相違点があります。
ちなみに、監獄と拘留場はどの様に異なるのか、あまり分かりません。。。


関連リンク
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060119it13.htm

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建物への落書きは建造物損壊-最高裁が初判断

2006年01月19日 | 法律情報
報道ですが、公園のトイレに落書きした被告人が、建造物損壊罪で起訴されていたところ、建造物損壊罪で有罪になったようです。

これだけを見ると、何のこと!?と思う人がいるかも知れません。
一般的なイメージとしては、「損壊」というと、何かを壊したり物理的に破壊することをイメージする人が多いと思います。
そうすると、建物に落書きしただけでは、壊したりしたことにならず、建造物「損壊」にはならないのでは?と疑問が出るわけです。

最高裁判決によると、「建物の外観や美観を著しく汚損し、原状回復に困難を生じさせたのは、損壊に当たる」と判断しています。
このような判断の根底にあるのは、法律上(というより法律解釈ですが)、「損壊」とは、物理的な毀損だけではなく、使用価値を減却することも含まれているからです(一般的なイメージとはちょっと異なりますね)。

ちなみに、器物損壊罪に関する判例で有名なのが、飲食器に放尿したことも器物損壊罪で処罰されています。

この様に、法律用語は、一般的なイメージとは異なることが多いので、注意する必要がありますね。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060119-00000101-yom-soci

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宮崎被告の最高裁判決は短い!?

2006年01月18日 | その他
昨日、最高裁でも死刑判決を言い渡された宮崎被告の刑事裁判ですが、判決文が短すぎるのでは?と一部から疑問の声が挙がっているようです。

ちなみに、最高裁判決の全文は、次のアドレスで見ることができます。
http://courtdomino2.courts.go.jp/judge.nsf/%24DefaultView/F6A0A53D2A92A655492570F900246DA7?OpenDocument

まぁ、確かに短いと言われれば、そうなのですが、最高裁判所は本来的に憲法違反の問題を扱ったり、法令解釈の統一を行うところですので、短いのはやむを得ないのではという気がします(どうやら上告理由も情状面が主たるもの、つまり死刑は厳しすぎるというのが主張の骨格のようです)。

我々弁護士は、死刑判決が出た場合、慣例的に、上級審の審判を仰ぐということをやっています(色々と理由はあるようですが、一番大きいのは犯罪者といえども、国家権力が生命を侵害して良いのか、という考え方に基づくようです)。
したがって、最高裁まで判断を仰ぐことになったのは、我々弁護士からすればやむを得ないような気がしますが、一方で、事件終結まで多年を要するという批判は、どこまでいっても免れることができないような気がします。

どうも刑事弁護をやっていると、弁護士として当然やるべき事と、一般市民感情の「ヅレ」を感じることが多いですね。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060117-00000270-kyodo-soci

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