弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

インターネット上の表現と名誉毀損~本日の東京高裁の判断

2009年01月30日 | 法律情報
インターネット上でチェーン展開するラーメン店を中傷するような書き込みを行った被告人に対する、控訴審判決が本日ありました。

原審では無罪だったのが、控訴審では逆転有罪判決になったようです。


報道へのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090130-00000109-jij-soci


ちなみに、この問題については前提として、名誉毀損罪が成立しない場合の例外要件に関する知識が必要となります。

すなわち、おおざっぱに言えば、名誉毀損的な表現行為があったとしても、
①事実の公共性がある
②目的の公益性がある
③真実性の証明がある(但し、真実であることを立証できなくても、真実であると信じたことについて相当性があればOK)
ことを検討し、①~③全ての要件を満たす場合には、名誉毀損罪が成立しないという前提知識です。


この点、原審(東京地裁)は、上記要件のうち、③の要件について修正し、緩和する(被告人有利にする)判断を示しており、この判断が出されたときは大きな注目が集まりました。
(世間的には注目がなかったかもしれませんが、私個人は興味を持ちました)

しかし、東京高裁は、従来通り、上記①~③の要件を前提とした上で判断し、被告人を有罪とする判断を行ったようです。
(東京地裁の要件修正を否定したようです)


インターネット上の表現だから要件を緩和する必要があるのか?(要件緩和を正当化できるのか?)という疑問点は、東京地裁が判断した際に率直に感じていました。
が、双方言い分があり、この点は色々な考え方あるところだと思います。

被告人側は最高裁に上告するのでしょうか?
(裁判当事者である被告人は大変でしょうが)上告するのであれば、最高裁の判断が待たれるところです。

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楳図かずお氏の住宅に関する訴訟で東京地裁の判決

2009年01月28日 | 法律情報
楳図かずお氏の赤白しましま壁面の住宅に関する訴訟について、楳図かずお氏の勝訴判決が本日出たようです。

ニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090128-00000562-san-soci


仮処分の段階で楳図かずお氏側の主張が認められていた以上、本訴段階でひっくり返る可能性は少ないだろうな…と思っていましたが、予想通りの判決のようです。


ちなみに、個人的に興味があったのは、「景観利益」という法律上の利益がどの程度まで裁判所が認定するのかという点でした。
(そもそも景観利益という法律上の利益が認められるのか、認められるとすれば誰に帰属するのか、景観利益と他の権利との調和はどの様に図るのか等)
が、報道レベルではどの様に裁判所が判断したのかよく分かりません(上記リンク先の言い方からすれば、少なくとも今回の原告らには景観利益という法的利益は帰属していないとも読めますし、他の報道文を読んでいると、景観利益が原告らに帰属することを前提とした上で、本件については景観利益の侵害はないと判断したと読むこともできます。まぁ、この点は判決文が公表されるのを待って研究したいと思います)。

それにしても、第一審の判決なので、まだまだ続く可能性があります。
仮に、裁判はこれで集結したとしても、いわゆる近隣訴訟については遺恨が残りやすく、訴訟終了後もいがみ合ったまま…ということもあるようです。
楳図かずお氏が、「原告の方々とは、無理やり仲良くなると言うことではなく、気を配りながら、時間が解決するのを待ちたい」とコメントしたのであれば、まさしく訴訟だけでは全てが解決するわけではないということを示す言葉だと思います。

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写真撮影

2009年01月27日 | その他
私が所属している「ガルベラ・パートナーズ」グループでは、私のような弁護士以外に税理士、社会保険労務士、コンサルタントが所属しています。

今回、グループ全体のパンフレットとホームページの改訂を行おうという話となり、所属している専門家の顔写真を掲載するべく、各人で顔写真を用意するという話になりました。

私は安易に家庭用のデジタルカメラで撮影すればよいと思っていたのですが、他の方々はプロのカメラマンに依頼して撮影してもらい、そのデータを購入するとのこと。

他の方々がきれいな写真を撮るのに、私だけ汚い写真を撮るわけにはいかないので、本日、紹介してもらった写真スタジオに行って、撮影してもらいました。

撮影前に簡単なメイクはするとは聞いていたのですが、ファンデーションを塗ったり、眉毛を描いてそろえたり、髪の毛を整えたりと、結構な時間をかけて変身しました。
そして、カメラマンより顔の表情や体の向き、肩の位置など細かく指示を受けて10枚以上写真を撮りました。

その中から1枚選択してデータを購入するわけですが、正直、自分の写真をまじまじ見て選択するのは気恥ずかしい所があります。

結局、ネクタイの色を変えて2パターンで複数枚撮影してもらった関係上、2枚を選択し購入することにしました。

データの受け渡しは10日後と言うことですので(おそらく写真の修整が入るのだと思います)、データを入手次第、ホームページにアップしたいと思います。

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過払い金ビジネスは不滅?

2009年01月24日 | 法律情報
過払い金返還請求権の消滅時効について、最高裁判断が出たようです。

最高裁判断を伝えるニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090122-00000101-jij-soci


内容的には、過払い金返還請求権を行使する側(借り手側)が有利な判決のようで、ブログの世界だけで見る限り、概ね好意的に受け入れられているようです。
(業者側にたって活動している弁護士や司法書士は、過払い金返還請求権側に立って活動する弁護士や司法書士より数が少ないと思われますので、当たり前と言えば当たり前ですが…)



ところで、知り合いから、こんなことを言われました。

「これで、過払い金ビジネスは永遠不滅ですね!」

まぁ、指摘はその通りかもしれません。
が、顧客対象となる過払い状態になっている借り手は、今なおたくさんいるんでしょうかねぇ…。また、業者側は支払う体力があるんですかねぇ…。
この業界のことは詳しくないのでよく分かりませんが…。
(なお、そもそも「ビジネス」と言われること自体に、反感を抱く弁護士・司法書士の方も多いかもしれません。)


ちなみに、私は、過払い金返還ビジネス(?)については、完全に後発組(というか何十歩も出遅れています)ですので、今後もこの分野に積極的に参入するつもりはありません。
(個人的には、レッドオーシャン(=競争が激化している分野)に当たると思っています。
鉄道広告なんかを見ていても、以前は『過払い金』『自己破産』という文字だけをうたっていましたが、最近では「お客様の声」を掲載したり、「信頼の…」「実績の…」とか、イメージしやすいキャッチフレーズを付けたりとか、他者との比較を意識した顧客の囲い込み(?)のような広告が目に付くようになってきたと感じています。)


過払い金返還請求権を多数こなしている知り合いの弁護士・司法書士を見ていると、「羽振り良さそうだなぁ…」と正直思いますが、私は私で興味のある分野(インターネット取引、労務分野、フランチャイズ取引など)をボチボチとこなしていきたいと思います。

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偶にはこんな事もある。

2009年01月23日 | 経験談・感じたこと
私が気合いを入れていた裁判について、先日尋問手続きが行われました。

尋問前に裁判所主導の和解の話もあったのですが、依頼者の方が「絶対に和解したくない」と言って、決裂していたので、
「尋問手続き終了→次回は判決」
という頭で尋問手続きに臨みました。

尋問終了後、裁判所から再度、「和解を試みたい」とのことだったので、一応おつきあい程度に話だけ聞こうと思いつつ、せっかくなので依頼者と一緒に裁判官の話を聞くことにしました。

和解の内容としては、私が予想していたとおりのものだったのですが、おそらく依頼者が「No!!!」と言って終わるだろうなぁ…と思っていたところ、「先生頑張ってくれたので、後は先生に任せます」との返答。

私は、予想していなかった返答に「え!?」となってしまい、しどろもどろに…。
(とっさに、一度持ち帰って依頼者と協議し別の日に…と言ったところ、裁判官は早く和解成立させたいためか、「出来れば今日決めて!」と責めたてれられ(?)、何故か私が追い込まれました。)

結局、依頼者とその場で協議の結果、和解が成立し、思った以上に早く案件が終了することになりました。
(頭の中では、判決→双方控訴になると考えていたので、あと1年弱はかかるなぁと考えていました)


後で、私の方から「なんで和解する気になったの?」と尋ねたところ、「尋問手続きを通じて、私の言いたいことは裁判官に言えたので満足です」ということでした。

尋問が一種のガス抜き(?)になったみたいです。
ちなみに、依頼者側の証人になってくれた人は、主に酒席でしか会ったことがないため、「先生、見直しました!」というお褒めの言葉(?)も頂戴しました。
(まさか、酒席の時のようなノリで裁判に臨むと思われていたのだろうか?)


まぁ、結果オーライということです。

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弁護士のスタンス?

2009年01月20日 | 経験談・感じたこと
以前、既に複数の弁護士に相談したという方の法律相談を受けました。

事案に関する見通しについて、個々の弁護士によって異なるということは見聞することなのですが、その相談者の方が面白いことを言っていました。


<A弁護士>全く箸にも棒にもかからないので諦めた方が良いとして受任しなかったとのこと。
<B弁護士>「顧問契約を締結してくれるのであれば受任するよ」と言ったとのこと。
<C弁護士>必要以上に不安を煽ってきて(?)、依頼を勧めてきたとのこと(少なくとも相談者にはその様に感じたようです)。
<D弁護士>(専門外なのでと断った上で)電話口で、「相手方の請求はちょっと問題あるとは思うけど、弁護士会で弁護士紹介を受けて下さい」と説明してきたとのこと。


色々やり方があるんだなぁ…と思う、今日この頃でした。
(ちなみにご相談内容自体は、よくある事例であり、別にご相談者の方が不合理なことを主張している訳では無いように感じました。そのため、私からは、一度持ち帰ってもらって検討してもらい、機会があれば受任すると言うことで法律相談を終えました。)

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拍子抜け…

2009年01月17日 | 経験談・感じたこと
今週は気合いが入っていた「裁判」と「調停」事件がありました。
そのため、念入りに調査し、書面も書き上げて「いざ!」となっていたところ、

・裁判は、相手方が第1回期日が始まる直前に訴えの取下げ
・調停は、相手方も当方の言い分を基本的には認めるとの返答

で気合いが空回り(!?)する状況でした。

もちろん、依頼者様にとっては紛争の早期解決という意味で望ましいのですが…
(ただし、裁判の方は訴え取下げであるため、いつ蒸し返されるか分からないという意味で、対応策を検討する必要があります)
まさしく「肩すかし」です。


もっとも、今週はホームページ経由での問い合わせが多く、インターネットビジネスに関するご相談や労務に関するご相談等が複数ありました(しかも遠方の方が多かったです)。

私のホームページでは、メイン業務としてインターネットビジネス、労務問題、フランチャイズ問題の3点に絞ってあります。
このため、アクセス数は積極的にインターネットで仕事を受注する法律事務所と比較すれば、数百分の一、数千分の一以下だと思うのですが、絞ってある分、比較的ホームページを見た人からの問い合わせ率は高いように感じています。

ホームページを唯一の営業の柱にすることはリスクが高すぎてできませんが、もう少し比重を高めても良いのかなぁ…なんて気がしています。
(といっても、営業方法としては、数少ない人脈に頼る、市役所等の法律相談で受注する等くらいしかありません。
一方、テレビ・ラジオ広告は顧客ターゲットが絞れないので行う気がありませんし、雑誌等の広告媒体もなぁ…と考えたりします)


船井総研が1月末に弁護士向けのマーケティング講座を開催するようなので、その講座DVDでも買って勉強しようかなぁ…

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いつの間に…

2009年01月10日 | その他
本日付の日経新聞朝刊の隅っこに、来年度の大阪弁護士会の会長が決まったことが掲載されていました。

ここ数年、毎年会長選挙があり、(関係者は票集め等で大変なのは分かりますが)この時期は執拗に電話攻勢があり、辟易することが多かったので、今年は無選挙であっさり決まったと言うことはありがたいことです。

ただ正直言うと、私のような若手弁護士にとっては、どなたが会長になったとしても大きな影響は無いと思います。

最近、大阪弁護士会に所属する弁護士の悪事が報道されるようになってきているので、とにかく自分が間違った方向に行かないように自制するのみです。

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神戸地裁で弁護士が刺される!

2009年01月08日 | その他
法廷内ではなく、法廷から廊下に出てきた弁護士が刺されたようです。


(以下、TBSニュースより引用
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4033884.html)

 8日朝、神戸地方裁判所で弁護士の男性が男に千枚通しで両手を刺され、軽いけがをしました。男は裁判所の職員に取り押さえられ、現行犯逮捕されました。
 午前10時半ごろ、神戸地裁2階の廊下で、刑事裁判を終えて法廷から出てきた弁護士の辻忠雄さん(77)が、突然、千枚通しを持った男に襲われました。辻さんは、防御しようとした際に両手の掌を刺され、軽傷です。
 警察の調べによりますと、男は、この裁判を傍聴していた神戸市須磨区の無職、由良順司容疑者(60)で、裁判所の職員にその場で取り押さえられ、傷害の現行犯で逮捕されました。
 由良容疑者は、辻さんと面識がなく、警察の調べに対し「裁判を傍聴するのが趣味で、以前から弁護士全般に反感を持っていた。弁護士なら誰でもよく、刑務所に入りたかった」と話しているということです。

(引用終わり)


無差別殺人という言葉が、最近いろんなニュースで聞くようになりましたが、「誰でもよかった」といわれてしまうと、防ぎようがないですね。
特に、裁判終了後、相手方本人から襲われるかもしれないということは考えが及んでも、全く面識がない場合には、気をつけようがないですね。

この事件から学ぶとすれば、傍聴席の動向まで気を付ける必要があるということでしょうか…

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昨晩、電子メールでご質問された方へ…

2009年01月05日 | 法律情報
まず、最初にお断りを。

このブログを通じて、個別の法律相談に対する回答を行っておりません。

また、当職が管理しているホームページにおいても、顧問先や依頼者以外の方で、電子メールのみでの法律相談は受付けておりません。


ですが、ご質問者のメールを誤って削除してしまったようで、「電子メールのみでのご相談は受けておりません」という返答もできませんので、やむを得ず、ご質問事項に対する考え方の概略だけでも記載しておきたいと思います。
(ご質問者がこのブログを読んでくれるか分かりませんが…)

また、他の閲覧者にも参考になると思いますので、質問を抽象化した形で以下記載しておきます。





<ご質問内容>
Web上でサイトをクリックしたところ、会員制(?)アダルトサイトへの承認となってしまい、電子メールで高額の請求が来た、支払わなければ回収業者等を利用してでも支払ってもらうと書いてあるが、どうすればよいか?


<考え方の概略>
おそらくは不正請求の類と思われることから、支払う必要ないと考えます。
対処法としては、(メールで督促が来ても)無視するのが一番と言うことになります。

おそらく電子メールの中に、「家まで押しかけるぞ!」とか「勤務先まで行ってやる!」等々色々書いてあると思います。
が、ご相談者が電子メールアドレスのみしか情報を出していないのであれば、電子メールアドレスが分かっているからといって、住所や電話番号等が分かることはあり得ません。
(プロバイダーが管理していると思われる住所・連絡先情報が、サイト運営者・不正請求者に対して、開示されることは通常考えられません。もちろん、電子メールアドレスの文字情報から容易に推測できるのであれば別ですが…)


念のため、法律的な観点から申し上げますと、「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」の第3条において、クリックの押し間違い等の錯誤による申込みは無効が原則と規定してあります。
もっとも、例外として、申込み内容を確認できる措置(典型的にはネット通販等でよく見られる、注文内容の再確認画面など)を講じていれば、錯誤無効の主張はできないと規定されています。
ただ、不当請求の類は、申込み内容を確認できる措置など講じていないと思われますので(だからこそ思いもよらない請求が来てびっくりするのだと思います)、例外規定に該当することはほぼ無いのではないかと思います。

というわけで、支払わずに無視しましょうというのが基本的な考え方になると思います。

なお、あくまでも上記事項は当職の個人的見解に過ぎませんので、実際の対処をされる場合には、上記事項だけで判断せず、必ず専門家にご相談下さいね。









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