弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

「景観」は法律上保護に値する利益!-最高裁判所が初判断

2006年03月31日 | 法律情報
結構、報道でも騒がれていた、いわゆる国立大学通りマンション訴訟ですが、結果的には、住民側敗訴となりましたが、最高裁判所は、「住民が良好な都市景観の恩恵を受けるという景観利益は法律上保護する価値がある」と初めて判断しました。

もっとも、事案の解決としては、景観利益を侵害したとまでは言えないとされていますので、どういった場合に景観利益が侵害されたと言えるのか、今後の検討課題となります。

個人的には、「やり得」との批判はありますが、20メートルを超えた部分について撤去せよという判決は無理があるのではないかと思っていましたので(実際に済んでいた住民もいらっしゃったようですので…)、撤去請求までは認められず、後は慰謝料(損害賠償)の問題として何らかの解決が図られるのではないかと思っていました。
が、最終的には金銭賠償の請求も斥けられた格好です。

いわゆる風光明媚な観光地であればともかく、住宅街で景観利益をどの様に構築していくかは難しい問題だと思います。


関連リンク
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060331/mng_____sya_____005.shtml

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課徴金免除制度の初適用-独占禁止法の改正で

2006年03月28日 | 法律情報
今年の1月より施行された独占禁止法の改正の目玉である、談合等について自ら申告した場合には課徴金(=罰金のようなもの)は免除or減額されるという制度につき、第1号事案が生じたようです。

談合事件として報道されている水門工事談合事件がそれです。

さすがに申告した企業については公表されていませんが、おそらく談合していた当事者間では分かりうる状態になっているのではないでしょうか。

ところで、談合が申告されたこと自体はOKだと思うのですが、今後、申告した当事者はどの様な運命をたどっていくのか、むしろその点の方が興味があります。
事実上村八分状態となり営業という面では大打撃をうけるのか、悲惨な場合は雪印事件の時のように、申告者自体が倒産の憂き目にあってしまうのか、あるいは企業の法令遵守意識が芽生え、逆に談合が無くなる方向で動いていくのか等です(悲観的な見方かも知れませんが、前者のような気が…)。

ちなみに、今年の4月からは公益通報者保護法も施行されます。
企業としては、対外的なクレーム対策だけではなく、対内的な内部告発等にも対抗しうるだけの意識と準備が必要となります。

今後、内部告発を行った者が、どの様な運命をたどっていくのか、企業の法令遵守意識を図る意味でも知りたいところです。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060328-00000062-mai-soci

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明日から12月決算会社の株主総会集中日!

2006年03月28日 | 経験談・感じたこと
株主総会は締め日から3ヶ月以内に開催される必要がありますので、12月決算の会社は29日or30日のどちらかに大抵株主総会を開催します。

私も、某会社の株主総会におけるリーガル面の指導をするため、明日から某会社に張り付き状態になりますが、他の仕事が全く手つかずになるため、株主総会終了後は結構憂鬱な日々を過ごすことになります。

ところで、今年の5月1日からは、いよいよ新会社法が施行されます。
ある程度の規模を持つ会社はそれなりに対応策を考えているようですが、施行前の3月総会の会社であっても、新会社法の恩恵をスムーズに受けるべく、3月総会で定款変更の決議を提案しているようです。


関連リンク
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20060328AT2D2701L27032006.html


ところで、新会社法の内容については、色々と聞いたことがあるかと思いますが、間違えてはいけないのが、基本的に新会社法で認められた恩恵を受けるためには、定款変更が必要ということです。
従って、一般的に多いと言われている3月決算、6月総会のときは、かなりの会社が定款変更決議を提案するものと予想されます(それに関連した報道も多くなるでしょうね)。

弁護士等の法律家は、今年の6月総会に向けての事前準備をする際は、今まで以上に苦労することになるでしょう。
(正直言って、今回の会社法で、弁護士の中でも会社法に対応できる弁護士と会社法に全く対応できない弁護士とに、はっきりと色分けされると思います。私も努力しなければ…)

ちなみに、私が今回指導する会社では、特に新会社法に対応した定款変更を行う予定はないので、正直ホッとしているのですが、やはり株主総会は、予期せぬ事があり得ますので、なかなか気を抜くことができません。

私自身は総会屋を見たことがありませんが、一般の個人株主の質問の方が、何を聞いてくるのか分からないし、また、一人で独演会をする株主をどうやって制止するのか等、色々と気を遣うのは確かです。
(受付作業の際、子供連れの親子が来ましたが、子供は株主ではない以上、総会会場に入場させるわけには行かない旨告げて、もめたこともあります…)。

私もそうですが、企業の担当者(総務?)も、株主総会という大イベントを無事終了させるため、ギリギリまで四苦八苦する必要がありそうです。

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ちょっと厳しすぎる!?-神戸市の懲戒処分指針で自己破産も懲戒対象

2006年03月27日 | 経験談・感じたこと
報道ですが、神戸市が定めている懲戒処分指針について改定があったようです。
内容的には、
・セクハラは免職もあり得る
・パソコン等からの個人情報漏洩も懲戒対象
とのことですが、まぁ、現在の社会情勢からすれば当然といえば当然であり、逆に懲戒対象にするのが遅すぎるくらいのような気もします。

ただ、気になったのは個人破産をした場合も懲戒対象とする部分です。
単なるギャンブル等の浪費癖から自己破産した場合であれば、私事とは言え、市民からすれば、この様な人物に公務を安心して任せて良いのか?という疑問、公務員への信頼を害する場合も想定できるでしょうから、懲戒やむなしという気もします。
しかし、例えば、親の借金を肩代わりした、連帯保証で主債務者が破産したから一緒に連鎖破産した…という、あまり本人とは関係ない事情で破産に追い込まれた場合にまで、懲戒対象としてしまって良いものかは議論の余地がありそうです。

ちなみに、民間会社に勤務している人から破産の相談がある場合、必ず聞かれるのが、「自己破産したことが会社にばれないか」ということです。
結論的には、原則として「会社にばれることはない」となりますが、実際には、会社にばれたら最後、(特に中小企業であれば)自己破産=懲戒解雇あるいは退職に追い込まれる…という処分がなされているようです。

公務員の場合も、自己破産したことで懲戒処分の対象となり、懲戒内容が公表等されたら、当該公務員も事実上働くことができなくなるのではないでしょうか(収入が無くなったら、自己破産してまで経済的再起更生を図るというメリットがなくなるのでは)。

どの様に運用されていくのか、ちょっと気になります。



関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060327-00000067-kyodo-soci

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受刑者の手紙差出しを不許可にするのは違法-最高裁判決

2006年03月24日 | 法律情報
受刑者が刑務所の処遇について記載した手紙を外部(本件では報道機関)に差し出そうとしたところ、刑務所長が不許可にした、この様な不許可処分は違法ではないのか???

この点について争われた裁判につき、最高裁は、「受刑者の更生や刑務所内の秩序の維持などに放置できない障害が生じる場合に限って手紙の制限が認められるというべき」と判断し、上記手紙を差し出すことを不許可にした処分は違法と判断しました。
その上で、手紙を出すことを制限された(元)受刑者に対し、慰謝料として1万円を支払うよう国に命じました。

1万円という慰謝料が相当額といえるのかは疑問の余地がありますが、最高裁判所が上記のように判断したことはかなりインパクトがあるように思います。
というのも、監獄法46条2項では(分かり易いように以下は口語訳です)
「受刑者は、その親族ではない者と手紙の発受をすることができない。但し、特に必要有りと認める場合はこの限りではない」
と規定されているからです。

つまり、監獄法をそのまま素直に読む限り、手紙については原則ダメ、例外的にOKとなるはずなのですが、最高裁判所は、原則OK、例外的にダメと解釈するべきと判断しているのです。

何となく原則と例外を逆転させるのであれば、監獄法は違憲無効とするべきではないかとも思ってしまうのですが、さすがに!?そこまで踏み込んだ判断まではせず、監獄法の条文構造はともかく、その様に解釈するべきと言うに止まっています。
(元受刑者側は、憲法21条に規定する表現の自由を侵害する旨主張して、監獄法46条の違憲無効を主張したようですが、その点は認められていません)

まぁ、いずれにせよ、今回の最高裁判所の判断により、受刑者に対する処遇に変化が生じることは間違いないのではないでしょうか。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060323-00000120-mai-soci

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「有害サイトの利用」「ネットでの中傷」が補導対象!?-奈良県の条例案で

2006年03月23日 | 経験談・感じたこと
報道によると、有害サイトを閲覧する行為や他人をインターネット上で中傷する行為を「不良行為」と定義づけた上で、当該行為を行った少年を補導することができるという条例案が可決されたようです。

何となく、有害サイトを家で見ているだけでも「不良行為」と認定されてしまうのか?と多少違和感がありますが(というより、どうやったら表沙汰になるのか?)、インターネットの発達と青少年の福祉を考えた場合、この様な規制もやむを得ないという事なのでしょうかね。


関連リンク
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/03/22/11336.html

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PSE問題、「ビンテージ」の範囲を週内で確定へ-経済産業省

2006年03月23日 | 法律情報
電気用品安全法の全面施行があと10日になりましたが、先日、経済産業省が発表した「ビンテージ物については対象外」にするという点について、経済産業省は、今週末までに対象外となる物の基準を公表するようです。

なお、報道文を読んでいる限り、「1990年」を境にビンテージ物か否かを分けるように読みとれます。

以前にもブログで書きましたが、そもそもビンテージとは何物なのか(各個人の主観によって価値観が異なるのでは?)について、一義的な定義ができない現状において、単純に製造年等で線引きして良いのかどうかは多少疑問があります。
たしかに、客観的な基準を設けるとすれば、製造年等で線引きしなければ行けないのでしょうが…

4月以降に中古品の売買が劇的に変化してしまうのか、あるいはかけ声倒れに終わって法律違反の品物が流通する結果を招くだけなのか、状況を見守る必要がありますね。


関連リンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060323-00000201-yom-bus_all

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4月から原則連帯保証人はいりません!-信用保証協会が方針を変更

2006年03月22日 | その他
中小企業が金融機関から融資を受ける場合、信用保証協会の保証が条件であると言われることが多いですね。

そして、信用保証協会は、信用保証する代わりに、社長個人の連帯保証を求めることも多いですよね(これは法律的には、信用保証協会が融資機関に肩代わり返済したことによって取得する求償権に対して、社長個人の連帯保証を付けるというものです)。

日本では、融資を実行する場合、必ずと言っていいほど社長等の個人の連帯保証を求めるのが実務だったのですが(従って、株式会社会社形態にした場合、法理論上は有限責任しか負わないと言われても、実際には連帯保証が付されますので、株式会社形態であっても実質的には無限責任というのが実情です)、近年は個人の連帯保証は制限すべき出るという風潮があり、個人の連帯保証を取らないで済む融資を実行しようとする機運がありました。

この様な中、信用保証協会が、本年4月より、原則的に連帯保証人を求めない方向で信用保証を行うという運用方針の変更を行うとの発表がありました。

これは中小起業経営者にとってはありがたい話だと思いますが、信用保証協会は、個人の連帯保証を取らずにやっていけるのだろうか?とちょっと疑問な点もありますね。

ちなみに、近時の民法改正では、個人の連帯保証を取る場合、責任範囲が制限されること、書面による契約が絶対条件であることを等が絶対条件とされ、法律的にも、個人の連帯保証を制限する方向で動いています。

政府による新規事業のバックアップ体制構築の一環かも知れませんね。



関連リンク
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20060320i514.htm

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愛犬が噛み殺されたことに対する慰謝料が認められる!-名古屋地裁

2006年03月21日 | 法律情報
これまでも愛犬等のペットが事故等で死んだ場合、慰謝料が認められるケースというのは一部あったのですが、せいぜい5万円迄というのが実務でした。

というのも、ペットは法律的には動産、要は「物」に過ぎず、物が傷ついた場合の慰謝料というのは原則的に認めないと言うのが裁判所の考え方だったからです。
(よく交通事故損害賠償で、愛着のあった車が事故により損壊したのだから慰謝料を払え等の請求を行う被害者がいますが、まぁ、まず95%以上の確立で慰謝料請求が認められることはありません)。

今回の裁判では、どうやら数十万円程度の、今までと比較して高額の慰謝料が認められたようです(報道では67万円となっていますが、犬の火葬代、弁護士費用等が含まれて67万円のようですので、慰謝料金額だけを取り出したらもう少し下がるはずです)。

まぁ、ペットに人権を!ということを主張する人にとっては、慰謝料請求を認めるのは当然という結論になるとは思われますが(ただ、そもそも人権は人間に与えられる権利であって、人間以外のものに人権を与えるという論法自体が矛盾していると思いますが…)、近時の流れとしてペットに対する愛着・精神的安らぎ等について、法的に保護を与えようとする傾向があります。
従って、慰謝料の金額が高額化してくるのは当然の流れだと思われます。
ただ、どの程度まで高額化するかは、今後判例の流れを見ていく必要があると思います。
ちなみに、私の勝手な予想では、人間が傷害を負った場合の慰謝料ほどにはならないと思われます(半分もいかないのでは?)


関連リンク
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060318/eve_____sya_____004.shtml

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これが弁護士の実態だ!!-日弁連が弁護士からのアンケート結果を公表しています

2006年03月20日 | 経験談・感じたこと
一度は憧れる!?弁護士ですが、その実像は結構ヤミに包まれていると思います。
そこで…という訳ではないですが、弁護士からのアンケートに基づいた実際の弁護士の現状について、日本弁護士連合会がアンケート結果を公表しています。

アンケート結果を見て、私なりに気になったのは、
・弁護士の約40%が東京にいること
・約80%が弁護士5人未満の零細(?)事務所であること
・弁護士活動による所得1000万円未満の弁護士が約35%を占めること
・1週間の執務時間について一番多いのは約50時間以上~60時間未満となっていること
等々です。

まぁ、全員の弁護士がアンケート結果に回答したわけではないの(有効回答数も書いていません)、どこまで正確に反映されているかという問題はありますが、私個人としては、大体アンケート結果と相違ない感覚を持っています。

最近、司法改革の流れで、弁護士が大量増員される方針が打ち出されていますが、一般的に優雅(?)に思われている弁護士も、しょせん上記のように、大金持ちになれるような職業ではありません。
従って、お金目当てで弁護士になりたい!というのであれば、個人的にはやめておいた方がよい職業だと思います(笑)。

ちなみに、私は、修習生時代にお世話になった指導弁護士から、「弁護士で大金持ちになることは絶対できないよ。小金持ちだったらなれるかもね」というアドバイスを頂きましたが、このアドバイスの意味は、今になって実感できるようになりました。。。


関連リンク
http://www.nichibenren.or.jp/ja/jfba_info/census/

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