弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

岩盤浴は「不衛生」との記事に、岩盤浴業者側が怒りの提訴!

2007年01月31日 | 法律情報
週刊誌の記事掲載については、よく芸能人が事実無根であり名誉を傷つけられたとして裁判沙汰になることはありますが、今回報道されているのは、某週刊誌に岩盤浴は不衛生とする趣旨の記事についてです。

報道によると、某週刊誌は
「岩盤浴は『細菌・カビがウヨウヨ』だ」
「施設には一般家庭のフローリングの240倍の菌類が生息」
「水虫菌や大腸菌も含まれていて不衛生」
「レジオネラ菌発生の危険性もある」
などと記事を掲載したそうです。

この記事に怒ったのが岩盤浴業者側。
記事の内容自体が科学的根拠に基づかないものであり、売上減少分と名誉(信用)毀損に基づく損害賠償を行うよう裁判提起したようです(記事の差し止めを求めているかは報道文からは不明です)。

当然、記事の真実性が争点になるのでしょうが、損害論として考えた場合、売上減少分の損害の立証はかなり難しいのではないかと思います。
なぜなら、売上減の要因として、当該記事のためではなく、例えば、岩盤浴ブームが去ったからとか、顧客満足度が低くて、リピータ客が減ったとか等様々な要因が考えられるからです。
単純に、当該記事の掲載によって客数が減り、売上が減少したとは言えないでしょうし、当該記事と売上減との因果関係を立証することは、並大抵のことではないように思います。

裁判の筋としては、やはり何処かで着地点を見いだすべく、和解でしょうか。。。



関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070130-00000133-mai-soci

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20年間無戸籍の人って…

2007年01月30日 | 法律情報
日本人であれば、必ずと言っていいほど戸籍があるのですが、今回報道されている事例は、親が出生届を出していなかったため、20年間無戸籍だったという事例が報じられています。

これだけでもびっくりなのですが、出生届が出されていなかった理由が、「戸籍を取っても、学校に行かせる金がない」と両親が説明しているとのこと。
こうなってくると「???」としか言いようがありません。
ちなみに、この方は義務教育を受けずに20才まで成長したそうです。

そういえば、つい最近でも修学旅行のためにパスポートを申請したところ、戸籍がないことが判明したという学生の例が報道されていましたが、日本人であれば戸籍はみんな持っているという常識は既に崩れているのでしょうか?

悩ましい問題です…


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070130-00000207-yom-soci

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「女性は産む機械」って…厚生労働大臣の発言を巡って

2007年01月29日 | その他
「女性は産む機械」
厚生労働大臣が、この様に発言したそうです。

間違っても公の場で言うべき発言ではないと思いますが…
少子高齢化社会への抜本対策として、出生率を上げたい政府としては、やはり女性は仕事等などせずに、ひたすら子供だけを産めばよいというホンネがあるのでしょうか?

ちなみに、当の大臣は、すぐに発言を撤回し謝罪したそうですが、単純に謝罪して終わるのでしょうかね。
なお、大臣としての適格性を問う等の政争の道具として利用するのも結構ですが、そもそも少子高齢化社会の対応策として、出生率を上げることだけが唯一の方法なのか、もっと根本的な議論を国会でして欲しいなぁと思います。


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070129-00000048-mai-pol

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抑止効果はあるか!?-「自動車運転過失致死傷罪」という罰則を新たに設ける構想

2007年01月26日 | 法律情報
報道によると、法務省は、新たに「自動車運転過失致死傷罪」という犯罪を設けるべく、刑法改正を図るようです。

自動車事故に関しては、近年、被害感情と罪責のアンバランスが言われているところですが、改正案によると
・酒気帯び運転中の過失致死傷の最高刑は現行の懲役6年から10年引き上げ
・酒酔い運転中の場合は懲役7年6月から10年6月に引き上げ
られるそうです。

危険運転致死傷罪の創設等、自動車事故に関しては色々と改正が行われていますが、何処まで行っても抜け穴があるように思われます。

今回の改正で自動車事故が減るのでしょうか?


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070125-00000130-mai-pol

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将来社長になったはずだから、社長として得られる収入額を前提に損害賠償を支払え!?

2007年01月25日 | 法律情報
報道によると、家電量販店の大手であるヤマダ電機の社長の長女が交通事故によって亡くなったことに対する、損害賠償請求訴訟の判決があったようです。

交通事故損害賠償訴訟であれば、別に珍しくも何ともないのですが、特徴的なのは、逸失利益(=将来、得られたであろう収入)の算定方法として、長女は将来社長に就任したはずだから、社長の収入額をベースに逸失利益を算定するべきであると主張していた点です。

この様な主張に対し、裁判所は、社長の収入額をベースに算定することを否定し、死亡前の長女の年収額等を考慮して逸失利益を算出したとのことです。
(長女の遺族側の請求額は約7億円であるのに対し、裁判所の判決額は約7000万円とのことですが、だいぶ開きがありますね。過失相殺等の減額事由があったのかもしれません。)

個人的には、将来社長になるか否かは確定的な事情とは言えない以上、社長の収入額を前提とする逸失利益を認めなかった裁判所の判断は、法律論としては妥当だと思いますが、遺族側からすると、色々な思いがあったものと推測されます。

人の命に貴賤はないのですが、法律論としての損害賠償額に置き換えると、どうしても個々人によって差額が出るのは仕方のないことと割り切るしかないようです。


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070124-00000119-jij-soci

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大丈夫!?-労働契約法案の柱は「就業規則で労働条件変更可!!」

2007年01月24日 | 法律情報
一定範囲の労働者について、残業代を支払わなくて良いとするホワイトカラーエクゼンプション制度の導入について、さんざんもめたことは記憶に新しいと思います。

ところで、今度は、厚生労働省が早期成立を目指す「労働契約法」において、一定の条件を満たせば、個別労働者の同意を得なくても、就業規則によって労働条件を変更することが可能となる法律を制定する方向で動いていることが明らかになりました。

ちなみに、今の労働判例の中でも、労働条件について、一定の合理性があれば就業規則の改定により変更可能とする判例法理がありますが、今般の労働契約法では、当該判例法理を明文化する動きのようです。
なお、詳細な内容が不明ですので、何とも言えませんが、今後、労使双方で「一定の条件とは何か」で大きな議論を巻き起こしそうな気がします。

それにしても、労働契約法制については、何となく経済界からの要請で改正議論が進んでいるような気がするのですが、今後どの方向に向かって行くのでしょうか?

やはり一部で噂されている、今年の参議院選挙が終了してから、一気に議論が進むのかも知れませんね。


関連するニュースへのリンク
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070124AT3S2301Y23012007.html

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公園のある所を住民登録できるか?-大阪高裁が否定の判決

2007年01月23日 | 法律情報
日本では、住民登録が当たり前のように行われており、行政側も住民登録されていることを前提に行政サービスを提供したりする等しています。

ところで、様々な事情により家を追い出され、公園等で野宿生活になった場合、どこに住民登録すればよいのでしょうか?
この問題について、実は、原審である大阪地方裁判所は、野宿生活とは言え公園での生活の実態がある以上、住民登録を認めるべきであるとして、申請者側に対して勝訴判決を行っていました。
ちなみに、大阪地裁の判決文は次のリンク先で見ることが出来ます。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/1CCCD41134377F3A4925711B0005F766.pdf


しかしながら、大阪市側は控訴しており、本日、大阪高等裁判所は、原審を逆転させ、申請者側敗訴の判決を言い渡しました。
まぁ、予想通りと言えば予想通りでしょうか…(原審判決は、どちらかというと救済判決の色が濃かったように思います)

申請者側の心情的な点は理解できるのですが、やはり公園での生活は違法占拠である点は免れることが出来ない以上、違法占拠状態を追認するような住民登録は出来ないとなるのはやむを得ないように思いますが、どんなもんでしょうかね。

大阪高裁がどの様な理由で申請を認めないとしたのか、現段階では不明ですが、どような利益考慮をしたのか興味があります。



関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070123-00000038-mai-soci

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知らなかったでは済まされない!-宝塚のカラオケ火災で

2007年01月22日 | 経験談・感じたこと
「消火器の使い方がよく分からなかった…」
宝塚のカラオケ店で発生した火事により、3人が死亡した事件で、当時の店員が上記のように供述しているとのことです。

まぁ、確かに消火器の使い方が完全に理解している!という人は少ないとは思いますが、何もせずに避難したという点は頂けません。

ただ、今回の件は、一従業員のみに責任を押し付けるわけには行かないでしょう。
もともとカラオケ店として届け出られていたのではなく、事務所兼倉庫として届け出られていたとのことで、消火設備は無かったようです。
また、避難路等の設備も不十分だったようです。

したがって、法律的には、
・火災等に対する防止措置を講じる義務を怠ったこと
・消火器等の使い方を十分に教育指導する義務を怠ったこと
の2点が問題となりそうです。

でも、10年以上も前からカラオケ店として営業していたとのことですが、行政は気が付かなかったのでしょうか?
今後、放置していた(?)ことに対する行政側の責任追及と言うことも問題なるかも知れません。


それにしても、私も偶に出くわすのですが、意外と不動産物件を賃借する際に、当該物件が利用目的に適合していない場合があり得ます。
(本件であれば、カラオケ店として出店不可の物件になっている等)

お店を出店する場合には、是非とも、利用目的に適合するか否かのリーガルチェックをして欲しいと思います。


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070121-00000037-jij-soci

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取り調べで「踏み字」って…鹿児島地裁が国家賠償を認める

2007年01月19日 | 法律情報
報道によると、「お前をこんな人間に育てた覚えはない」「早く正直なじいちゃんになってください」などと、父親や孫のメッセージに見立てた言葉を書いた紙3枚を無理やり、少なくとも3回踏ました捜査方法につき、鹿児島地裁は、

「取り調べ手法が常軌を逸し、公権力をかさにきて原告らを侮辱するもので、精神的苦痛は甚大」

として60万円の支払を認める判決を下したようです。

「踏み字」なんて聞いたことがないのですが、警察側は、「黙秘する態度は親族の気持ちを踏みにじるのと同じと諭すためだった」と主張していたそうです。

何だか警察の言い分は、怒りを通り越して滑稽としか思えないのですが、こんな捜査方法があると言うこと自体が驚きです。

こんな捜査方法をやっているからこそ、警察は「取り調べの可視化」に強く反対するのかも知れませんね。


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070118-00000134-mai-soci

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日本では起こりえない!?-ホテルで南京虫に刺されたとして数億円の損害賠償請求!

2007年01月17日 | その他
なかなか数億円単位の損害賠償請求訴訟は経験したことがないのですが、報道によると、訴訟大国(!?)アメリカでは、イギリスで最高級ホテルに宿泊した際、南京虫に刺されて肉体的・精神的苦痛を被ったとして数億円の慰謝料請求を求める裁判が提起されたとのことです。

少なくとも日本法のみを扱い、かつ私の乏しい経験の中では、数億円の慰謝料というのは聞いたことがありませんし、もちろん請求したことなどありません。

アメリカの慰謝料請求の実務を知りませんので、数億円という数字自体はもしかすると珍しくないのかも知れません。
が、日本で慰謝料と言えば、交通事故による死亡の場合で3000万円前後とされており、この交通事故の場合に準じて相場が決められている傾向がありますので、数億円の慰謝料請求を裁判所に出した場合、ほぼ間違いなく、裁判所から「この主張は法外ではないか?」と思われてしまうでしょう。

それにしても、報道によれば、
ホテルに南京虫がいた→南京虫に刺された&持参の荷物の中に入り込んだ→荷物と共に南京虫も家まで付いていった→家を消毒せざるを得なくなった
等本人は主張されているとのことです。

慰謝料の金額もともかく、日本法で言えば、
・そもそもホテルに南京虫が存在したのか
・上記のような経過をたどったのか(因果関係の問題)
の2点も争点となりそうです(日本法では、請求する側が当該事実を立証する必要があります)。

個人的には、ちょっと無理筋っぽい様な気がするのですが…


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070117-00000046-jij-int

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