弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

司法修習を卒業できない不合格者が過去最高に!!

2006年09月29日 | 経験談・感じたこと
法科大学院が出来たため多少制度が変わってきていますが、いわゆる旧司法試験を合格すると、1年半の間、司法修習生という公務員の資格が与えられて、司法修習(要は研修です)を受けることとなります。

この司法修習は、1年半の研修さえ受ければ良いというものではなく、9月中旬頃より約3週間かけて行われる卒業試験(=業界では2回試験と呼びます。2回試験と呼ぶ理由については色々と諸説ありますが、司法試験が1回目の試験だとすると、司法修習における卒業試験が2回目だからという風に私は教わりました)に合格しなければなりません。

合格できない場合、裁判官・検察官・弁護士の法曹資格が与えられないことになります。

で、今年の卒業試験の合格発表が昨日行われたのですが、不合格者が10人、合否判定留保者が97人と去年の約3倍、率にして過去最高になったとのことです。

これでは、司法試験合格者の門戸を大きく開けても、卒業試験で足止めを喰ったら、社会に法曹資格者が供給されないのでは?という批判もありそうですが、卒業試験を実施した最高裁判所によると、合否基準は例年通りで変更していないとのことです。
上記最高裁のコメントを意地悪く解釈すれば、今回の司法修習生については能力不足があったということを暗に示しているような気がするのですが…

ちなみに、不合格者は来年以降に再度卒業試験を受けることとなります。
一方、合否判定留保者は年末に行われる追試試験を受けて、合格すれば、同期とは少し遅れますが晴れて法曹資格を与えられることとなります。

司法試験に受かったら後はエスカレータ…と思ったら大間違いです。


関連するニュースへのリンク
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/
20060929k0000m040100000c.html

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母の愛と言っても…息子に不利な証言を行う証人に対し、母親が暴行して逮捕!

2006年09月28日 | 経験談・感じたこと
検察側が準備した証人を刑事裁判で証人尋問使用した際、母親が息子(=刑事被告人)に不利な証言をするので妨害しようと思い、当該証人に裁判所内で暴行等したと報じられています。

裁判を傍聴した人であれば分かると思いますが、いわゆる当事者・証人等が座る席と傍聴席とは間には、腰の高さくらいの柵はあります。
しかし、手を伸ばせば証人が待機する席までは簡単に届く状態にありますので、暴行しようと思えば暴行できる状態です。
天井くらいの高さまでの柵は必要ないと思いますが(まるで裁判が檻の中で行われている状態となりますよね…)、今後、何らかの対応策は必要でしょう。
特に、刑事裁判であれば、刑事被告人の付き添いで刑務官がいますので、ある程度制圧することが可能ですが、民事裁判となれば、刑務官などはいませんので安全面では結構問題があるように思います。

なお、もう間もなく実施される裁判員制度の場合、裁判員は民間の一般人となる以上、裁判所外での安全対策というものがかなり重要になると思います。
裁判は公開で行われる以上、加害者側の関係者が顔を覚えて、後で暴行事件等に巻き込まれる…なんて事もあり得るかも知れません(もちろん、職業裁判官でも上記のような可能性は否定できませんが…)。

まぁ、いずれにせよ、ちょっと考えさせられる事件です。


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060927-00000162-jij-soci

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酒気帯び運転による交通事故損害賠償につき、3億円の賠償命令!

2006年09月27日 | 法律情報
報道によると、酒気帯び運転の乗用車と交通事故にあった被害者が、加害者に対し損害賠償を求める民事訴訟を提起していたところ、裁判所は約3億円の支払いを命じる判決を出したとのことです。

最近、飲酒運転による交通事故について関心が高いため、この様な裁判が報じられていると思われますが、個人的には3億円が高額かというと、どうもそうではないような気がします。
といいますのも、交通事故損害賠償については、ある程度損害額の基準化が図られており、その基準から推測すると、極端に高額とは言えないように思うからです。
特に、本件では重度障害(意識不明で寝たきりとのことです)に対する将来介護費用の請求が認められていることからすると、被害者側からすれば、3億円は決して高い数字とは言えないのではないでしょうか。

今回の裁判の中で、飲酒運転であることがどの程度損害賠償額に反映されているのか、興味があります。


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060927-00000405-yom-soci

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奈良女児殺害事件で死刑判決!

2006年09月26日 | その他
一時期大きく報じられていた奈良県で発生した女児の誘拐殺人事件ですが、奈良地裁は本日、求刑通りの死刑判決を行ったようです。

ニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060926-00000036-mai-soci


これまでの刑事裁判の傾向からすると、無期懲役ではないか?と予測していました。
ところが、奈良地裁は、「被害者が1人であることを考慮しても、幼少の女児で性的被害に遭っていること、犯行の計画性や残虐性、被害者感情などの点で、数だけをもって死刑を回避することはできない」と述べて、これまでの刑事裁判の傾向を打破する旨明確に述べています。

この事件は、弁護人としては控訴するしか対応策がなでしょう(ただ被告人の素行からすると、大阪池田小学校の刑事事件のように弁護人が控訴しても、本人が自ら取り下げる可能性がある懸念もありますが…)。
その上で、我々弁護士としては、上級審による死刑の判断基準の明確化を待つことになると思われます。
というのも、広島の女児殺害事件では無期懲役が出ていますし、少年事件ですが山口県光市の無期懲役を破棄した最高裁判決がでる等、最近、死刑判決について運用にブレがでていると思われるからです。

今回の奈良地裁の判決は、過去の傾向に捕らわれない判決となりましたが、今後どうなるのか注意したいと思います。


ちなみに、死刑判決が出ても、法務大臣が死刑執行命令を行わなければ、いつまで経っても死刑は執行されません。
そして、小泉内閣下で法務大臣を担っていた杉浦氏は、ずっと死刑執行命令を拒否していた旨報じられています。

死刑判決を出す裁判官の悩み、死刑執行を行う法務大臣の悩みが伺い知ることができます。

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ウルトラマンは誰のもの?-著作権の帰属を巡って、中国で裁判沙汰に

2006年09月25日 | その他
ウルトラマンと言えば、日本国内では「円谷プロ」が著作権等の独占的な権利を有していると思われていると思います。

しかしながら、海外では円谷プロが独占的な権利を有していると判断されているかというと、そうではないようです。
実は、日本の最高裁において、日本国外における独占的利用権は円谷プロではなく、タイの会社に帰属すると判断されているのです。

この様な背景事情のもと、タイの会社が中国国内でウルトラマンのキャラクターグッズ等の販売を開始したところ、円谷プロが待ったをかけるべく、今度は中国の裁判所に差止め等の裁判を提起したとのことです。

近年、日本が海外に誇れるものとして、アニメ等のキャラクター・コンテンツ等であると言われており、いわゆるコンテンツビジネスというのが一種のブームになっています。
ただ、キャラクターを直接保護する法律がないため、日本国内では商標法、著作権法、意匠法等で保護しようと対策を立てるのですが、海外では日本の国内法と異なる場合が多く、日本国の法律をそのまま前提として輸出してしまったら最後、海外での権利が無くなってしまうという問題が発生しているようです。
従って、日本国内でも、海外でもコンテンツビジネスを行うのであれば、しっかりとした法務チェックを行うことは今や必須の状態となっています。

なお、上記で指摘した最高裁の判例は、ウルトラマンの著作権帰属の問題につき、著作権を利用させる旨の合意があったか否かが問題となった事例です。
ただ、おそらくは弁護士等の専門家の目を通していなかったと思われるのですが、合意内容として期限を定めず、いわば無期限の利用権を設定したと認定されていることが大きなポイントです。
ちょっとした不注意が、後々尾を引っ張ってしまう…というのが法律問題の特徴です。

是非とも面倒くさがらずに、一度弁護士等に相談されることをお勧めします。


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060924-00000007-san-int

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オウム裁判の余波が早速…東京高裁が弁護人らにつき、訴訟妨害として処置請求へ

2006年09月23日 | 法律情報
前代未聞の幕切れに終わった松本被告人の刑事裁判ですが、東京高等裁判所は、高裁での刑事弁護人による刑事弁護活動は不適切かつ訴訟妨害であるとして、週明けにでも、弁護士会に対し懲戒を行うよう請求を行う旨、報じられています。

まぁ、今回の刑事弁護活動については、弁護士間でも意見が大きく分かれているようですし、やはり死刑事件をあの様な形で集結させてしまったという点からすると、東京高裁が上記請求を行うことは、予測されたことと思います。

この請求があった後、弁護士会がどの様な判断を行うのか、私も一弁護士として注目しています。


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060923-00000001-yom-soci

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せっかく保釈決定を取っても、保釈保証金を支払えないと堀の外には出られません!-姉歯被告人の事例

2006年09月22日 | 経験談・感じたこと
報道によると、一時期騒然となった耐震偽造の姉歯被告人について、刑事弁護人が頑張って保釈決定を取ったにもかかわらず、被告人が保釈保証金を準備することができず、実際には保釈されていないとのことです。

姉歯被告人の刑事事件は、どうも国選弁護人就任しているとのことですので、もともと私選弁護人を選任するだけのお金を持っていない以上、保釈保証金である500万円もの大金を準備することは、そもそも難しかったのかもしれません。
(その点、やはり堀江被告人とか村上被告人などは、500万をはるかに越える保釈保証金であったにもかかわらず、きちんと支払っているのですから、やはりお金は持っているんですね。)

なお、最近、保釈保証金につき弁護士の間で話題になっているのが、保釈保証金を貸し出しますと広告をしている貸金業者です。
私も被告人から偶に聞かれたりしますが、弁護士の間でも色々と風評があり、そもそも当該貸金業者は何者なのか??ということで、若干議論があるようです。
まぁ、貸金業者も色々と考えてきますね。。。

ところで、下記引用のニュースでは、「刑事弁護人が保釈保証金を肩代わりする場合もある」と記載されていますが、少なくとも私が弁護士になった時の新人研修では、保釈保証金を弁護人が肩代わりすることは弁護士倫理に反する行為であり、行うべきではないと習ったのですが、肩代わりすることは本当なのでしょうか?
ちょっと疑問です。



関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060922-00000048-sph-soci

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国旗掲揚時に起立することを求める東京都通達は違憲!!-東京地裁が違憲判断&慰謝料請求を認める!!

2006年09月21日 | 法律情報
「日の丸」を巡る問題について、石原都知事と教職員との間で激しい対立が生じていることは、報道等でも大きく取り上げられています。

この対立の一環だと思うのですが、国旗を掲揚した際に教職員は国旗に向かって起立しなければならないこと、国歌を斉唱しなければならないこと等を定めた東京都の通達につき、教職員側が、憲法19条の思想良心の自由に反する等として通達の違憲無効を求めていた裁判で、東京地裁は、教職員側の主張通り、憲法19条に違反するとして通達を無効とする判決を出したようです。

また合わせて、違憲の通達及び校長の職務命令により精神的損害を被ったと認定して、教職員側に慰謝料を支払うよう命じる判決も出したようです。


国旗国歌法が制定された現状において、この様な判決が出るとは想像がつきませんでした。
正直びっくりですし、ある意味「画期的(挑戦的?)」な判決と言えるかもしれません。
ただ、間違いなく、東京都側は控訴するでしょうから、この争いは東京高裁、最高裁へと続くと思われます。

ところで、昨日自民党総裁に選任された安倍氏は、小泉首相の下で国旗国歌法案に関与した方ですし、また政策として教育基本法の改正を掲げています。
この判決は、政治の世界にも大きな影響を及ぼすかもしれません。


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060921-00000009-yom-soci

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裁判所で行われた特定調停が、裁判所によって「不適当」と裁判所が判断される!

2006年09月20日 | 経験談・感じたこと
報道によると、四国中央簡易裁判所で行われた特定調停において、多重債務者が、利息制限法に基づく利息過払い分について十分に検討してもらえず、結局、不利な調停結果となってしまったとして、国家賠償を求める裁判が行われていたようです。

報道上、どの様な請求を行ったのか不明確ですので何ともいえませんが、(慰謝料請求、利息制限法に基づいて弾き直し計算した場合の過払い分の損害賠償請求?)、結果的には国家賠償請求は棄却されたとのことです。が…
四国中央簡易裁判所での特定調停手続きは「不当」と認定されたようです!

私自身は経験したことはありませんが、弁護士業界の噂では、確かに、特定調停手続きにおける調停委員が、利息制限法に基づいて利息・元本の弾き直し計算を行うことについて十分な能力が備わっていない担当者が少なからずいる、と言われてきました。
今回の裁判は、この噂がまさしく実証されたような形になったのですが、結論が請求棄却ですので、「不当ではあるが違法ではない」という、法曹界独特の!?言い回しで問題が片づけられた格好です。


調停委員は、別に法律の専門家が選任されるわけではなく、いわゆる町の名士のような方も選任されているようです(特に地方では)。
従って、弁護士等の法律家と呼ばれる人と同じ能力を担保させることは難しいとは思われますが、特定調停事件であれば、ある程度マニュアル化させることができるはずですので、うまく正しい法適用ができるよう改善する必要があると思います。


関連するニュースへのリンク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060920-00000019-mai-soci

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「終末期医療に関するガイドライン(たたき台)」について

2006年09月19日 | 法律情報
厚生労働省が、「終末期医療に関するガイドライン(たたき台)」と題する文書を公表し、広く国民から意見募集を求めています。

私も詳細に内容を検討したわけではありませんが、厚生労働省が実施したアンケート結果によると、苦痛を伴う延命治療行為を中断することについて、肯定的な意見が多いようです。
従って、今後の安楽死or尊厳死の議論に少なからずの影響がありそうな事項の記載が多いのが特徴のように思います。

安楽死等につき、医療と法律の狭間で混乱が生じている状況下において、このガイドラインがどこまで整備されるか(ある意味免罪符として機能するか)、今後の議論に注目したいと思います。


厚生労働省へのリンク
http://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/iken/p0915-2.html

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