IT “それ”が見えたら、終わり。/アンディ・ムスキエティ監督
スティーブン・キング原作のホラー。以前テレビ版を少し見たような気もするが、観てみるとほとんど忘れていた。けれど見た目より怖くない冒険物語になっている。どこかでも同じ比喩が見られるが、どちらかというと同じキング作品でも「スタンド・バイ・ミー」のような少年少女の友情物語になっている。また、アメリカにある学校の圧倒的ないじめ問題と家庭における大人の暴力も描かれていて、そちらの方がなかなかに恐ろしいかもしれない。多様性を認める世の中を欲する原動力には、このような時代と抑圧された保守的な背景があるためだろうと理解できるのではなかろうか。
ある雨の日にまだ幼い弟が行方不明になってしまう。おそらく下水に落ちて死んだのだろうとは思われるが、死体は見つからないままなのだ。そういう過去がありながら、町では子供や少年の謎の失踪が続いている。だんだんと分かっていくのは、この町はある周年周期でそのようなおぞましい事件が繰り返されている歴史があることだった。また悪夢のような幻想のような出来事に遭遇する子供たちがいて、学校の居づらさとは別に子供たちは苦しめられていた。いずれは“それ”が、子供たちに襲い掛かるかもしれない。大人には見えないピエロなどの姿をした”それ”を退治しない限り、本当の平和はあり得ない。しかしながら圧倒的な恐怖と戦いながら、本当に団結して”それ”を退治することが可能なのだろうか……。
まだ腕力も強くない子供たちにとって、”それ”と個人で対峙してもどうにもならない問題であるようだ。一人ひとり個別に子供たちは襲われ、そうしてあるいは酷いホラー体験を重ねていく。”それ”はかなり近づいていて、間違いなく自分たちは餌食になっていくのだろうと予想される。他にも学校にはすさまじい暴力をふるってくる不良グループがいる。子供のくせに車に乗りまわし、ナイフや銃を持っている。単にいじめられるだけでなく、殺されるかもしれないのだ。しかしいじめられる少年たちであっても、仲間同士で遊ぶ間は、一時の平穏でもあり楽しい毎日である。なんとかうまく立ち回りさえすれば、わざわざ恐ろしい敵と対峙することなく、難を避けて生き延びていくことができるのではないか。
そういう選択もあるはずなのだが、彼らの中には、家庭を含めて複雑な事情も絡んでいる。子供だからこそ逃げられない問題もあるし、子供だから自ら解決しなければならないこともあるのだ。
なかなかに厳しい立場に置かれながら、痛快ともいえる冒険物語になっている。ホラー要素は思ったより怖くないので(何より怖がりの僕が言うので間違いないです)、頑張って観てみましょう。