健康診断の結果は正常でも、食後すぐに短時間だけれど急激に血糖値が上がるような人がいるという。これを「血糖値スパイク」と呼ぶらしい。問題なのは特別に検査しなければ分からないことと、この血糖値スパイクを日常的に繰り返している人は、血管が傷つけられ、突然死やガンの発症、認知症へのリスクがあがるなど、さまざまな問題を引き起こす原因であるということのようだ。
メカニズムとしては、食後誰でも血中の血糖値はある程度上がるのは当たり前だが、膵臓からインスリンがでて血中の糖を細胞に取り込むということがなされている。ところが人によっては細胞が、この糖を上手く取り込めない場合がある(個人差であるとか、生活習慣などに原因があるらしい)。そうすると当然血糖値は跳ね上がる。それでは困るということでさらにインスリンは大量に放出されるが、それが体にはいろいろと都合が悪いらしい。
まず細胞が糖を取り込めない状態で、大量の活性酸素というものが発生する。これが血管そのものを傷つけることが分かっている。血管の壁が傷つくと、それを修復するために免疫細胞が血管と細胞の間に入り込み、その結果血管自体が狭くなる。これがいわゆる動脈硬化で、動脈硬化が起こると、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなるというわけだ。そういうものが突然死ということにもつながる。
また多量のインスリンが放出されると、記憶力が低下することが分かってきた。脳内を調べると、アミロイドベータといわれる物質が増えていることが判明。この物質がアルツハイマー型認知症の原因とされ、神経細胞を殺す有害な老廃物であることが分かっている。要するにこのアミロイドベータを大量に蓄積させることに繋がっている。また、インスリン自体が細胞を増殖させる作用があって、がん細胞を増殖させてしまう危険もあるという。
まったく恐ろしいことだが、そのような血糖値スパイクを起こしているだろうとされる人は、推計で日本に1400万人いるとされる。40歳以上だと2割ほどが疑われるらしい。いわゆる肥満やメタボ予備軍のような人ばかりでなく、痩せている人でも体質なのか生活習慣のためなのか、一定以上潜んでいる。
しかし悲観してばかりで諦めるのは早い。ちゃんと予防する手立てはある。しかもそんなに難しくは無い。
まず、食べる順番である。先に野菜を摂り、肉魚を食べ、最後にご飯やパンを食べるといいらしい。まあ、そうかと思うけど、肉魚をご飯と一緒に食べるから美味しいともいえるので、最初の野菜以外は、それなりに難しいかもしれない。
また、正常値の人でも朝ごはんを抜くと、その後の食事で血糖値スパイクが起こることがあることから、食べる間隔をあけすぎるのも良くないのかもしれない。翌日検査の人などはどうするんだとも思うが、病院だからそれは無視するかもしれない。検査後ガッツリというのは、危ないかもしれない。また、習慣的には朝ご飯は食べましょうという常識的なことかもしれない。
三つ目は、食後にはむしろすぐに体を動かす方がいいらしい。すぐに寝ると牛になるという迷信はあるが、以前は食後の運動は控えた方がいいと言われていたことも聞き覚えがあるかもしれない。血流が筋肉などに流れ、胃の消化吸収を妨げるためである。逆にいうと消化吸収が遅れることになって、急激な血糖値上昇も抑えられるということらしい。激しい運動をする必要は無く、食後に軽く散歩する程度でいいらしい。
どうも自覚症状があるような現象ではないようで、結局は自分なりに防御としてそういう可能性を排除すべく生活習慣を考えるしか、今のところ方法はなさそうだ。考えてみるとそれらの習慣が極端に負担になるとも考えにくい。むしろ血糖値スパイクで将来に不安がある方が、恐ろしい日常というべきなのではなかろうか。