ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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高齢化社会における家族のあり方1

2013-11-11 08:49:26 | 家族・家庭
 10月6日に長野県で「高齢化社会における家族のあり方」と題した講話を行った。介護をテーマとする催しの参考に話したものである。その要旨を掲載する。

●家族とは何か

 家庭には家族がいる。家族とは、親子、夫婦、兄弟等、人間としての最も基本的な結びつきである。親がいて、自分がこの世に生まれて、生きている。自分に続いて、子供や孫がいる。また親から祖先にもつながっている。家族は、生命で結びついている。
 家庭とは、人がそこで生まれ、育ち、死ぬところ。また日々、生活する場所であり、安らぎの場所でもある。多くのアンケートによると、あなたにとって一番大切なものは、と聞かれて、家族と答える人が多い。家族は、心で結ばれている。
 家族の絆はかけがえのないものであり、人間関係の基礎である。家庭が崩壊し、家族がバラバラになると、人々の心が荒廃し、社会は混乱し、国は伝統や文化を失う。

●家族があるから、人類である

 人間の子供は生まれたばかりの時は、自分ではほとんど何もできない。非常に未熟な状態で生まれ、成熟するまで誕生後数年もかかる。これを、ネオテニー(幼形成熟)という。ネオテニーは生物学上、人類最大の特徴ともいわれる。
 人間は、脳が発達して頭が大きくなった。未熟なうちに産まないと、子供の頭が産道を通らない。そこで未熟な状態で産むようになったと考えられている。
 こうした子供を育てるため、母親は出産後、数年子供にかかりきりとなる。自分のことを自分で出来ない子供と、それを連れた母親。自然界で生存していくには、きわめて弱い存在である。その弱い母子を守り支える役割を担う者が、父親である。父親が母子とともに生活し、守り、面倒を見ることによって、子供をネオテニーの状態で産んで安全に育てることが可能になった。この仕組みを、家族という。
 父・母・子からなる家族が成立したことによって、人類は生存と繁栄が可能になった。複数の家族が集団で狩猟採集を行い、また定住して農耕を行う。複数家族の共同生活が、文明の発達を可能にした。家族あっての人類である。家族がなければ、人類はなくなるのである。

●日本の家族の変化

 家族はこのように大切なものだが、わが国の家族は急速に変化している。大きな問題の一つが高齢化である。
 わが国は、世界最速で高齢化が進んでいる。本年9月15日の総務省の発表によると、65歳以上の高齢者は3186万人、4人に1人が高齢者となった。世界で最も高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)が高い。国立社会保障・人口問題研究所は平成47(2035)年には3人に1人の割合となると予想している。
 高齢化は、少子化と一体の現象である。男女とも晩婚化、非婚化が進む。また子供は欲しくないという夫婦が多くなっている。出産年齢にある女性全体の平均出生数(合計特殊出生率)は、平成17年に過去最低の1.26にまで低下。その後、団塊ジュニア世代の出産期ピーク等で上向きになり、22~23年1.39→24年1.41と上がっているが、人口を維持できるのは、2.08。重要なのは、女性一人が産むこの人数が減るだけでなく、子を産む女性の数も減っていること。そのため、24(2012)年度の日本人の出生数は5年連続で減り、102万9433人と過去最少を更新した。
 高齢化・少子化によって、わが国は人口減少の傾向となっている。本年発表の人口動態調査で、人口は1億2639万3679人と4年連続で減少した。14歳以下は過去最少の1660万人となり、少子高齢化に歯止めがかからない状況だ。本年現在、国立社会保障・人口問題研究所では、人口が平成42(2030)年には1億1522万人、72(2060)年には8674万人になると予測している。
高齢化は、少子化・人口減少と同時に進行している。日本人は皆、こうした日本の社会の大きな変化の流れの中にある。
 高齢化に対応するため老人介護の社会化が進められている。その一方、福祉政策や年金制度のあり方が問題になっている。また高齢者を狙った振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺が増加。警察庁の発表によると、振り込め詐欺だけで、25年上半期の被害総額が約109億円。警察官、銀行員、弁護士等になりすます悪質なものが多い。よほど注意が必要。
 その一方、生活困窮・孤独による高齢者の犯罪が増えている。東京都内では24年にあった万引きで、65歳以上の高齢者の摘発数が19歳以下の少年を上回った。犯罪に手を染める高齢者の60~80%が一人暮らしだという。
 これらの犯罪傾向から浮かび上がってくるのは、家族関係の希薄化、家族が本来持っていた働きの低下である。

 次回に続く。

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