ほそかわ・かずひこの BLOG

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婚外子の均等相続化で、日本の家族を揺るがす民法改正1

2013-12-11 08:52:43 | 家族・家庭
●115年ぶりの民法規定の改正

 本年9月、最高裁は、結婚していない男女の子供、いわゆる「婚外子」が、結婚した男女の子供である「嫡出子」の半分しか相続できない、とする民法の規定について、違憲と判断した。判決は、嫡出子と婚外子の相続を、従来の2:1から1:1つまり均等にすることを命じるものである。判決は、理由として「婚姻や家族の形態が著しく多様化し、国民意識の多様化が大きく進んでいる」こと、「国連も本件規定を問題にして、懸念の表明や法改正の勧告などを繰り返してきた」ことを挙げた。
 これを受けて政府与党は、民法の改正案を作成した。婚外子の遺産相続分を嫡出子の半分とする民法の規定を削除するという案である。改正案は11月21日衆院本会議を通過し、12月5日の参院本会議で全会一致により可決、成立した。
 これによって、婚外子と嫡出子の相続分は原則として同等となった。明治民法以来の規定は、115年後の今、「差別」として解消された。改正民法の付則に基づき、法施行前でも最高裁決定後に開始した相続には、さかのぼって適用される。
 この民法改正案とともに、民主党などが出生届に嫡出子かどうかを記載するとした規定を削除する戸籍法改正案を提出した。こちらは、衆院で公明党が賛成したが、自民党が反対し否決された。だが、戸籍法の改正を求める動きは今後も続くだろう。
 私は嫡出子・婚外子の相続を均等とする民法改正は、日本の家族を揺るがすものと思う。均等相続の弊害を防ぐため、家族を保護する法制度の強化が必要である。またそのためにも憲法を改正し、家族保護条項を設けることが急務である。

●最高裁の違憲判決
 
 9月4日、最高裁大法廷は、結婚していない男女の間に生まれた非嫡出子(婚外子)の遺産相続分を嫡出子の半分と定めた民法の規定が、「違憲」とする初判断を示した。
 規定の合憲性が争われたのは、平成13年7月に死亡した東京都の男性と、同年11月に死亡した和歌山県の男性らの遺産分割をめぐる家事審判で、いずれも家裁、高裁は規定を合憲と判断し、婚外子側が特別抗告していた。明治時代から続く同規定をめぐっては大法廷が平成7年に「合憲」と判断、小法廷も踏襲してきた。だが、特別抗告審で、法の下の平等を保障した憲法に違反するかが争われた。最高裁は14裁判官全員一致で、規定を「違憲」とした。
 違憲と判断されたのは、民法第九百条四項のただし書きである。

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第九百条(略)
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
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 このただし書きを違憲とした最高裁大法廷決定の要旨は次の通り。

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法廷意見

 相続制度は、それぞれの国の伝統や社会事情、国民感情のほか、婚姻や親子関係への意識や規律を総合的に考慮した上で、どのように定めるかは立法府の合理的な裁量権に委ねられている。
 婚外子の相続分を嫡出子の半分とする本件規定で生じる区別に、立法府の裁量権を考慮しても合理的な根拠が認められない場合は、憲法違反と理解するのが相当だ。
 平成7年の最高裁大法廷決定は合憲と判断したが、国民の意識などは時代とともに変遷する。不断に検討、吟味されなければならない。
 本件規定が設けられた昭和22年の民法改正以降、日本では婚姻や家族の実態が変化した。高齢化の進展に伴い、生存配偶者の生活の保障の必要性が高まって55年には配偶者の相続分が引き上げられるなどした。その後も婚姻や家族の形態が著しく多様化し、国民意識の多様化が大きく進んでいる。
 一方、諸外国では1960年代後半以降、婚外子と嫡出子の差別が撤廃された。現在、日本以外で差別を設けている国は欧米諸国にはなく、世界でも限られた状況だ。国連も本件規定を問題にして、懸念の表明や法改正の勧告などを繰り返してきた。
 日本でも平成6~18年に、住民票や戸籍での続柄の記載を婚外子と嫡出子で同様に取り扱うようになったほか、20年には婚外子の日本国籍取得を認めない国籍法の規定を違憲とする最高裁大法廷判決も出た。
 相続分の平等化の問題は、かなり早くから意識されて準備が進められたが、法案の国会提出には至らず、現在も法改正は実現していない。
 国民の意識の多様化が言われつつも、増加している婚外子の出生数が欧米に比べると少ないことなど、法律婚を尊重する意識が幅広く浸透しているためと思われる。しかし、本件規定の合理性は憲法に照らして婚外子の権利が不当に侵害されているか否かの観点から判断されるべきだ。
 最高裁は、7年の大法廷決定以来、本件規定を合憲とする判断を示してきたが、7年の決定でも反対意見や、昭和22年の民法改正当時の合理性が失われつつあるとの補足意見が述べられていた。
 平成15年3月31日の同種訴訟の判決以降の判例は、その補足意見の内容を考慮すれば、合憲の判断を辛うじて維持したものとみることができる。
 本件規定の合理性に関する種々の事柄の変遷は、その一つだけでは相続分の区別を不合理とすべき理由にはならない。しかし、昭和22年から現在に至るまで、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかだ。
 そして、認識の変化に伴い、父母が婚姻関係になかったという、子自らが選択や修正する余地のない事柄を理由に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきである、という考えが確立されてきている。
 以上を総合すれば、遅くとも今回の相続が始まった平成13年7月当時は、相続分を区別する合理的根拠は失われており、本件規定は憲法に違反する。
 ただ、今回の決定の違憲判断が既に行われた遺産分割に影響し、解決済みの事案にも効果が及べば、著しく法的安定性を害することになる。
 従って、今回の決定は13年7月からこの日の決定までに開始されたほかの相続について、本件規定を前提に行われた遺産分割の審判や裁判、分割協議、合意などで確定的となった法律関係に影響を及ぼすものではない。

補足意見

▽金築誠志裁判官 最高裁決定の効果は遡及するのが原則だが、法的安定性を害するときは後退させるべきだ。予測される混乱を回避するためになされたもので、違憲判断と密接に関連しており、単なる傍論ではない。
▽千葉勝美裁判官 決定が、違憲判断の拘束が及ぶ範囲を示したのは異例だ。現行の規定を前提に築き上げられた法的安定性を損なう事態が生じるのを避けるための措置で、法令を違憲無効と判断する際には必要不可欠というべきだ。
▽岡部喜代子裁判官 夫婦と嫡出子という婚姻共同体の保護には十分理由があるとしても、嫡出子を当然のように婚外子よりも優遇することの合理性は減少した。全体として法律婚を尊重する意識が浸透しているからといって、差別を設けることは相当ではない。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130905/trl13090513580004-n1.htm
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 最高裁が法律の規定について憲法違反と判断したのは戦後9件目となった。違憲判決によって、国会は法律の改正を迫られた。 その結果、にわかに民法の改正がされた。第九百条四項のただし書きが削除され、嫡出子と非嫡出子(婚外子)の相続分が均等化された。

 次回に続く。

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