ほそかわ・かずひこの BLOG

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人権69~国家の起源

2013-11-10 08:37:31 | 人権
●国家の起源

 次に国家の起源について述べる。起源には、諸説ある。代表的なものは、①征服国家説、②階級国家説、③家族国家説、④王権神授国家説、⑤社会契約国家説である。
 征服国家説とは、国家は強い集団が弱い集団を武力によって征服し、これを支配することによって成立したとする説である。グンプロビッツが提唱した。歴史上事例が多数あり、ユーラシア大陸では、古代から遊牧集団が農耕集団に侵攻し、征服・支配して形成した国家が多く現れた。ある共同体が他の共同体を征服・支配すると、共同体と共同体の間で、支配―服従の関係が生まれる。支配する共同体は、支配集団としての共同性を持って支配階級となり、服従する共同体は、被支配階級となる。異民族・異文化集団の間で征服・支配がされると、階級間で民族・言語・習慣等の異なる国家が生まれる。
 階級国家説とは、国家は社会の経済的発展に伴う階級分化によって生じたとする説である。マルクス=エンゲルスが提唱した。政府(国家は誤訳)は階級抑圧の機関であり、階級対立の終末とともに消滅すると説く。だが、実際は共同体が経済的・内発的に階級分化して発生した国家は少なく、世界史的には外発的な征服・支配による国家が多い。そこで私は、国家モデルとしては、征服した支配共同体で階級分化が進み、支配階級に身分的な上下が生まれ、さらにその下に征服された被支配階級が存在するという三層構造が適当と考える。近代西欧国家の場合は、非西欧地域に植民地を持ち、植民地全体が征服された被支配階級となった。周辺部を支配する中核部の支配共同体の内部で、階級分化が進み、自由化・民主化が広がり、権利が拡大された。
 家族国家説とは、国家は家族が拡大または連合して成立したとする説である。メインが提唱した。家族国家の典型は、日本である。日本は古代に氏族の連合で大家族的な国家を形成した。日本的家族国家は大王(おおきみ)を中心とし、大王は天皇(すめらみこと)となった。天皇と国民は共通の先祖を持つ、または先祖の代から君臣関係にあるという観念が、受け継がれて今日に至っている。今上天皇は、第125代の天皇である。神武天皇以来、一貫して男系継承で皇位が継承され、神話に現れる家族が現在も続き、神話の時代と同様に皇室が国家・民族の中心となり、国民が一つの家族のような意識を持っている。他の国家は、歴史の早い段階で、家族的な共同性を喪失している。
 以上の3つの説は、歴史的に実在する国家をもとに類型化したものである。

 次に、王権神授国家説とは、西欧における絶対王政の思想基盤で、国家はキリスト教の神から授けられたとする説である。フィルマーが提唱した。国家は神の創造物であり、国家の統治は神意にもとづくものであるとする。国王は神の代理人であり、国王の権力は神によって与えられ、国王はただ最後の審判で神に対してのみ責任を持つとされた。ただし、西欧の歴史において、まったく根拠の無い説である。実際はローマ・カトリック教会の権威の低下によって、地上における神の代理人が法王から国王に代わり、国王が統治する領域においては、法王をさておいて、国王が神の権力の代行者となったものである。人権の観念は、王権神授説への反発の中から発達した。王権が神授とされるので、民権も神授だと対抗したものである。
 社会契約国家説とは、国家の成立は人間の理性に基づく契約によるとする説である。ホッブス、ロックが提唱した。王権神授国家説に対抗し、市民革命の理論となった。社会契約説には、君主に主権を委託し、君主が主権を行使する場合と、国民が代表者を通じて議会政治で主権を行使する場合がある。前者は君主主権論、後者は国民主権論となる。人権の思想は、社会契約説とともに展開された。だが、社会契約説も歴史的・実証的でなく、頭の中だけで考えた思考実験の産物である。イギリスでは早くも18世紀に歴史家にして哲学者のヒュームによって否定されている。イギリスでは、君主主権論を基本にして、君主制のもと、議会を通じた君民が共同で統治する君民共治の国家観が発達した。アメリカは独立、フランスは革命によって、共和制の国家が建設され、国民主権の国家観が発達した。
 以上の2つの説は、西欧において思想として説かれたもので、歴史的には実在しない観念的な国家像である。

 上記の国家起源説のうち、近代西欧では、王権神授国家説がまず現れ、これに対抗して社会契約国家説が登場した。続いて社会契約国家説の観念性を批判して、征服国家説、階級国家説、家族国家説が展開された。現実の世界の歴史においては、最も多いのが征服国家であり、征服国家は階級国家の側面を含む。これに対する例外が家族国家であると整理できよう。

 次回に続く。

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