2月22日「竹島の日」式典が、島根県、返還要求運動県民会議などの主催により、松江市で開かれた。9回目となった。安倍政権は昨年に続いて内閣府政務官を派遣した。亀岡政務官は「竹島は歴史的事実に照らしても国際法上もわが国固有の領土である。政府として地元の思いを重く受け止めている」と政府の立場を表明した。
与野党の国会議員を含む約500人が出席した。島根県の溝口善兵衛知事は、式典で安倍晋三政権の姿勢を評価する一方。韓国の不法占拠の既成事実強化の動きについては「決して容認できない」と批判した。また、国際司法裁判所(ICJ)への単独提訴や竹島の日の政府制定、政府主催の式典開催など7項目の要望書を亀岡氏に手渡した。
2月7日の「北方領土の日」は政府の制定であり、政府が北方領土返還要求全国大会を全面的に支援し、歴代首相や関係閣僚が出席してきた。本年2月7日には、安倍首相が大会に参加した。これに比し、「竹島の日」は、政府ではなく島根県の制定である。安倍政権は昨年2月に閣議決定した答弁書で「竹島の日」を政府制定にすることを検討するとしたが、結論が出ていない。また、自民党は政府主催の式典開催を、一昨年の衆院選の公約にしたが、今年も開催が見送られた。政府は「竹島の日」を政府制定にし、また政府主催の式典を開催すべきである。
竹島は、歴史的にも国際上もわが国固有の領土である。その点をより明確にする資料が出てきた。わが国政府は、これまで長久保赤水(せきすい)が作製した初期の日本地図「改正日本輿地路程(よちろてい)全図」(1779年初版)などに竹島が記されている事実をもとに、「遅くとも17世紀半ばには竹島の領有権を確立した」と主張してきたが、本年1月、島根県の竹島問題研究会の調査で、江戸時代後期に作製された複数の地理学者らによる地図5点に、いずれも竹島が日本領として記載されていることが分かった。これによって長久保以外の学者も竹島を日本領としていたことが裏付けられ、江戸時代から広く竹島は日本領という認識が定着していたと言えるだろう。
竹島問題研究会は、全国の図書館や博物館で18世紀末から19世紀初めに作られた地図に竹島が記載されていることを確認した。それらの地図とは、寛政2(1790)年作製の「蝦夷風俗人情之沙汰付図(えぞふうぞくにんじょうのさたふず)全図」と「蝦夷草紙(えぞそうし)全図」(2点の内容は同じ)、寛政8(1796)年の「寛政亜細亜(かんせいあじあ)地図」と「日本並北方図(にほんならびほっぽうず)」(同)、文化3(1806)年の「華夷一覧図(かいいちらんず)」の5点である。
「蝦夷風俗人情之沙汰付図全図」と「蝦夷草紙全図」は北方探検家の最上徳内が作製し、現在の竹島と鬱陵島を日本領として茶色に彩色している。
「寛政亜細亜地図」と「日本並北方図」は経世家で地理学者の本多利明によるサハリンや朝鮮半島などの東アジア地図で、竹島を「松島」、鬱陵島を「竹島」と記し日本領としている。
「華夷一覧図」は蘭学者で地理学者の山村才助の手になり、アジアや欧州が描かれ、竹島を「松シマ」、鬱陵島を「竹シマ」と示し日本領として赤く彩色している。同時代の地図には珍しい「日本海」の表記もあるという。
「当時の著名な地理学者らの地図で共通して竹島を日本領としており、幕府や主要な藩、知識人に認識が広まっていたことが分かる」と研究会は述べている。今月22日に行われた「竹島の日」式典後の記念行事では、研究会が初めて一般向けに出版した「竹島問題100問100答」が紹介された。これまでの研究活動の集大成となるものという。研究会座長の下條正男拓殖大教授は、「(竹島問題を)客観的な事実に基づき理解しておかないと(日本の国民も韓国側の主張に)流されてしまう心配があった」と説明し、執筆者の一人、塚本孝東海大教授も「島根県だけでなく、全国で竹島学習が始まると期待しており、その際に参考になると思う」と期待を示したと報じられる。
問題は、こうした歴史的資料によって竹島が日本領であることが確実に裏付けられているにもかかわらず、これまで積極的に教育がされていないことである。近年ようやく教科書における竹島の記述が是正されつつあるが、本年1月28日下村博文文部科学相は、教科書作成や教員による指導の指針となる中学校と高校の学習指導要領解説書を改定し、尖閣諸島と竹島を「固有の領土」と明記したことを正式に発表した。文部科学省は同日、学習指導要領の解説書を改定したことを都道府県教育委員会や都道府県知事などに通知し、領土教育について「指導の充実」を求めた。この通知は教育委員会を通じて各学校に示され、授業を行う際の指針となるもので、中学校の社会科、高校の地理歴史と公民、中高の地理と公民の解説書について、改定後と改定前の記述を示すとともに、「明治期にわが国が国際法上正当な根拠に基づき竹島、尖閣諸島を正式に領土に編入した経緯に触れることを明記した」などと、改定のポイントを明らかにした。その上で、竹島は韓国に不法占拠され、尖閣には領土問題が存在しないとの政府見解に沿った内容を追加した。高校日本史などでも竹島と尖閣を領土に編入した経緯を取り上げることを求め、領土教育を強化するという。今春申請を受け付ける中学校教科書の検定から反映される。
先に触れた地図は、視覚的でわかりやすい。教科書にはコラム記事で、数枚の地図を載せ、竹島は江戸時代から広く日本領と認識されてきたと明記するとよいと思う。
関連掲示
・拙稿「竹島の日と日本海名称問題」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/fbc3df156b882962dbef82533a293a97
与野党の国会議員を含む約500人が出席した。島根県の溝口善兵衛知事は、式典で安倍晋三政権の姿勢を評価する一方。韓国の不法占拠の既成事実強化の動きについては「決して容認できない」と批判した。また、国際司法裁判所(ICJ)への単独提訴や竹島の日の政府制定、政府主催の式典開催など7項目の要望書を亀岡氏に手渡した。
2月7日の「北方領土の日」は政府の制定であり、政府が北方領土返還要求全国大会を全面的に支援し、歴代首相や関係閣僚が出席してきた。本年2月7日には、安倍首相が大会に参加した。これに比し、「竹島の日」は、政府ではなく島根県の制定である。安倍政権は昨年2月に閣議決定した答弁書で「竹島の日」を政府制定にすることを検討するとしたが、結論が出ていない。また、自民党は政府主催の式典開催を、一昨年の衆院選の公約にしたが、今年も開催が見送られた。政府は「竹島の日」を政府制定にし、また政府主催の式典を開催すべきである。
竹島は、歴史的にも国際上もわが国固有の領土である。その点をより明確にする資料が出てきた。わが国政府は、これまで長久保赤水(せきすい)が作製した初期の日本地図「改正日本輿地路程(よちろてい)全図」(1779年初版)などに竹島が記されている事実をもとに、「遅くとも17世紀半ばには竹島の領有権を確立した」と主張してきたが、本年1月、島根県の竹島問題研究会の調査で、江戸時代後期に作製された複数の地理学者らによる地図5点に、いずれも竹島が日本領として記載されていることが分かった。これによって長久保以外の学者も竹島を日本領としていたことが裏付けられ、江戸時代から広く竹島は日本領という認識が定着していたと言えるだろう。
竹島問題研究会は、全国の図書館や博物館で18世紀末から19世紀初めに作られた地図に竹島が記載されていることを確認した。それらの地図とは、寛政2(1790)年作製の「蝦夷風俗人情之沙汰付図(えぞふうぞくにんじょうのさたふず)全図」と「蝦夷草紙(えぞそうし)全図」(2点の内容は同じ)、寛政8(1796)年の「寛政亜細亜(かんせいあじあ)地図」と「日本並北方図(にほんならびほっぽうず)」(同)、文化3(1806)年の「華夷一覧図(かいいちらんず)」の5点である。
「蝦夷風俗人情之沙汰付図全図」と「蝦夷草紙全図」は北方探検家の最上徳内が作製し、現在の竹島と鬱陵島を日本領として茶色に彩色している。
「寛政亜細亜地図」と「日本並北方図」は経世家で地理学者の本多利明によるサハリンや朝鮮半島などの東アジア地図で、竹島を「松島」、鬱陵島を「竹島」と記し日本領としている。
「華夷一覧図」は蘭学者で地理学者の山村才助の手になり、アジアや欧州が描かれ、竹島を「松シマ」、鬱陵島を「竹シマ」と示し日本領として赤く彩色している。同時代の地図には珍しい「日本海」の表記もあるという。
「当時の著名な地理学者らの地図で共通して竹島を日本領としており、幕府や主要な藩、知識人に認識が広まっていたことが分かる」と研究会は述べている。今月22日に行われた「竹島の日」式典後の記念行事では、研究会が初めて一般向けに出版した「竹島問題100問100答」が紹介された。これまでの研究活動の集大成となるものという。研究会座長の下條正男拓殖大教授は、「(竹島問題を)客観的な事実に基づき理解しておかないと(日本の国民も韓国側の主張に)流されてしまう心配があった」と説明し、執筆者の一人、塚本孝東海大教授も「島根県だけでなく、全国で竹島学習が始まると期待しており、その際に参考になると思う」と期待を示したと報じられる。
問題は、こうした歴史的資料によって竹島が日本領であることが確実に裏付けられているにもかかわらず、これまで積極的に教育がされていないことである。近年ようやく教科書における竹島の記述が是正されつつあるが、本年1月28日下村博文文部科学相は、教科書作成や教員による指導の指針となる中学校と高校の学習指導要領解説書を改定し、尖閣諸島と竹島を「固有の領土」と明記したことを正式に発表した。文部科学省は同日、学習指導要領の解説書を改定したことを都道府県教育委員会や都道府県知事などに通知し、領土教育について「指導の充実」を求めた。この通知は教育委員会を通じて各学校に示され、授業を行う際の指針となるもので、中学校の社会科、高校の地理歴史と公民、中高の地理と公民の解説書について、改定後と改定前の記述を示すとともに、「明治期にわが国が国際法上正当な根拠に基づき竹島、尖閣諸島を正式に領土に編入した経緯に触れることを明記した」などと、改定のポイントを明らかにした。その上で、竹島は韓国に不法占拠され、尖閣には領土問題が存在しないとの政府見解に沿った内容を追加した。高校日本史などでも竹島と尖閣を領土に編入した経緯を取り上げることを求め、領土教育を強化するという。今春申請を受け付ける中学校教科書の検定から反映される。
先に触れた地図は、視覚的でわかりやすい。教科書にはコラム記事で、数枚の地図を載せ、竹島は江戸時代から広く日本領と認識されてきたと明記するとよいと思う。
関連掲示
・拙稿「竹島の日と日本海名称問題」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/fbc3df156b882962dbef82533a293a97
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