ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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安重根は犯罪者であり、「英雄」ではない9

2013-12-27 10:47:39 | 歴史
 最終回。

●真犯人は別にいる(続き)

 伊藤博文暗殺事件は、日露戦争終結の約4年後に起こった。わが国は、大国ロシアに勝利したものの、東アジアにおけるロシアの勢力を一掃しえたわけではなかった。大敗したロシアは依然として満州北部で権益を握っていた。事件が発生したハルピンは、ロシアの租借地であり、そこに伊藤は外交のために出かけて行ったのである。
 伊藤を迎えたハルピン駅のホームには、ロシアの儀仗兵が並んでいた。事件後、安重根を現行犯逮捕し、共犯の容疑者8人を拘束したのはロシア官憲だった。ロシア官憲は、うち5人は無関係として放免し、安とともに朝鮮人3名のみが拘留された。その取り調べを担当した検察官もロシア人だった。ロシア側が事件に関与したり、事件を利用したりすることは、容易な環境だった。
 安重根の背後に、ロシアが浮かび上がってくる。安が抗日活動を行っていたウラジオストクは、ロシアが1860年に清から獲得した沿海州の要所である。ロシア海軍の軍港となったこの街は満州人のほか、出稼ぎの朝鮮人が殺到していた。安はこの街の朝鮮人町で暮らしていた。朝鮮人は外国で必ず徒党を組む。彼らはここでも「韓民会」という組織を作り、安も加入していた。「韓民会」は、ロシア特務機関の強い影響下にあった。
 大野氏は、ミハイロフというロシア人に注目する。ミハイロフは自称・退役軍人で、現地で新聞を発行していた。ミハイロフは「韓民会」と密接な関係にあり、武器の横流しを行なっていた。安ら逮捕された朝鮮人は、シリアルアンバーの近いベルギー製のブローニング拳銃を持っていた。大野氏は、ミハイロフが暗殺計画をセットした人物と見る。さらに事件後に謀殺された楊成春という朝鮮人を、駅舎の2階から伊藤を狙撃し、致命傷を与えた真犯人として推理している。
伊藤暗殺事件の直後、韓国統監・曾禰荒助は、桂太郎首相への電文で、安重根ら25人の韓国人の名を伝えたが、彼らは、ロシア特務機関の影響下にある「韓民会」の連中だった。
 ロシア特務機関がなぜ伊藤を狙ったか。元九州大学大学院客員教授の若狭和朋氏は、大意次のように説いている。日露戦争の前、伊藤はロシアと協商を結ぼうとしていた。だが、その後、日英同盟が結ばれ、日露開戦が予想より早くなった。そのためロシアは敗北した。ロシア側は、伊藤が対露謀略の中心人物だと判断し、裏切り者として復讐したのだ、と。
 この説を受けて推察すると、ロシア側が伊藤を謀殺するには、ハルピンはまたとない場所だった。直接殺害すれば、日露間の大問題となるが、ロシア特務機関の下にある韓国人の組織を使えば、韓国人の犯行となる。ロシア側は、韓国人テロ集団の行動を指導または容認し、伊藤殺害の実行後は、ロシアの関与が知られないように、重要人物は逃亡させるなり、この世から消せばよい。伊藤暗殺は、韓国人による日本の韓国併合への反発という動機だけでなく、ロシアによる対日工作という背景があったと考えられるのである。
 ただし、ロシア側が伊藤暗殺を謀る動機は、裏切り者への復讐という単純なものではないだろう。政治的・戦略的な動機があるはずである。伊藤を暗殺すれば、日本の指導層で日韓併合の動きが止まるだろうとか、韓国人による伊藤の殺害で日韓に対立が生じてロシアが朝鮮半島に介入する機会が生まれるだろうとか、伊藤を除くことで韓国内の反日親露勢力を強化できるだろうとか、何かそれなりの目算に立った目的があったのではないか。
 事件当時、わが国の指導層は、伊藤暗殺へのロシアの関与をどの程度、考察し調査したのか。曾禰統監の報告を受けて「真の凶行担当者」を追及するには、ロシアに協力を求めねばならない。だが、もし安重根らの背後にロシアがおり、安らはロシアの関与のもとに伊藤を暗殺したという疑惑を追求すれば、日露関係は再び緊張を高める。わが国には、当時再度ロシアと矛を交えるだけの余力はなかった。そこで、安重根を犯人ということにし、外交的にも内政的にも幕引きを図ったのではないか。日本はここでロシアとも韓国とも武力で争うことなく、日韓の合意による韓国併合の道を進んだ。それは、韓国の指導層も民衆も望む道だった。ロシア側は、伊藤暗殺の狙いが外れたということではないか。
 伊藤博文暗殺事件の発生時 ロシア側は一部始終すべてを撮影していた。だが、フィルムは、事件の直前までしか公開されてない。フィルムはロシアにある。それが公開されれば 事件の真相を解くカギとなるだろう。
 安重根は、伊藤博文暗殺事件の実行犯の一人ではあるが、真犯人は別にいる。安が撃った弾は伊藤に当たっていない。その可能性があることを考えても、韓国政府が安重根を韓民族の英雄に祀り上げることは、思慮が浅く、また稚拙な演出によるものと言わざるを得ない。いずれ安重根という英雄像は崩落するだろう。(了)

参考資料
・名越二荒之助編著『日韓共鳴二千年史』(明成社)
・黄文雄著『韓国は日本人がつくった』(徳間書店)
・大野芳著『伊藤博文暗殺事件』(新潮社)
・若狭和朋著『続・日本人が知ってはならない歴史』(朱鳥社)
・若狭和朋著「安重根は犯人ではない」(『歴史通』2010年7月号)
・伊藤博文に関する外国人の評価をまとめているビデオ
http://www.youtube.com/watch?v=Wm6tWv8G8JQ

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