ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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高校で日本史必修、近現代史新設へ

2014-09-29 08:47:21 | 教育
 文部科学省は、平成28~29年度に予定される学習指導要領の全面改定にあたり、高校での日本史を必修化する方針と、8月中旬に報じられた。また、日本史と世界史を統合した科目「近現代史」を新設する検討を始めたとも報じられた。文科省は、高校日本史の必修化を秋にも中央教育審議会に諮問する方針だが、その際、近現代史の新設も議論の対象となる見通しという。
 私は、高校日本史の必修化に賛成である。また近現代史をしっかり教えることは極めて重要だと思う。わが国の歴史教育は、現在小中学校の社会科で日本史を中心に学び、高校では、世界史が必修、日本史と地理が選択科目になっている。小中学校の日本史は基礎的な知識を得るにとどまるから、日本の歴史を深く学び、自国の歩みや伝統・文化に誇りを持つことができるようにするには、高校で日本史を必修とすることが望ましい。高校の選択科目で日本史を履修していない学生は、歴史に関する常識的な知識にも欠けやすい。
 日本史の授業は古代から始まり中世・近世と進むため、近現代史は、十分時間を当てて教えられない。そのため、明治以降の日本の歩みについて、国際社会で自国の立場をきちんと主張できる人材を育てられていない。日教組による自虐史観を真に受け、歴史認識をめぐる中国・韓国の日本批判に対してポイントを得た反論ができない。もっと近現代史をしっかり学ぶようにする必要がある。
 今回、文科省が検討している日本史と世界史を統合した「近現代史」の新設は、近現代史の教育を重視するものとして注目される。日本史と世界史の近現代の部分を統合するには、世界の歴史の中の日本という座標軸が明確に打ち立てられなければならない。世界史の付け足しとして、もう一つの各国史として日本を加えるだけなら、大して教育効果は見込めないだろう。また、日本史は必修で、選択科目の一つとして世界史、地理のほかに近現代史が追加されるのであれば、近現代史を欠く日本史だけを履修する学生も出るのはよくない。どういう風に、日本史と世界史を統合した近現代史を構成するのか、またその場合、日本史・世界史の科目はそれぞれどういう風に改編するのか、日本史にも一応近現代史の部分はあり、それとは別に拡充た科目として近現代史を設けるのか等、具体的な構想を示してもらいたいところである。
 近現代史の新設がよいかどうかは、その構想によると思う。私は、現在の日本史という科目のままでも、近現代史に重点を置いた教育はできると思っている。歴史を近現代史から教えるという方法を取るのである。まず近現代史を教え、それから歴史をさかのぼって教える。私はこの方法を10数年前から支持している。
 いまの学校の授業では、原始時代から始まり、明治以降や戦後史などは3学期となってしまい、ほとんど教えられていない。しかし、なんのために歴史を学ぶのかを考えると、自分たちの時代のことを学ぶほうが大切である。近現代史から初めて、そうなってきたわけを探っていくと、ずっと歴史が面白く感じられると思う。
 教科書の内容を、現代からはじめ、平成→昭和→大正→明治→江戸等とさかのぼる構成にする方法もある。歴史を現代から古代へとさかのぼる仕方で書いた名著がある。梅干し博士と呼ばれた樋口清之氏の『逆(さかさ)日本史』である。樋口氏は、日本の歴史を、戦後から始める。そして、戦後の日本がこうなってきたわけを、明治、江戸等と、古代までさかのぼっていく。この構成が絶妙で、読み物として面白く書かれている。その時代、その時代の日本人の姿や、生活・文化、登場人物たちのエピソードなど、歴史嫌いの人でも楽しめる内容になっていると思う。山本七平氏、渡部昇一氏などが、『逆・日本史』を絶賛している。祥伝社の文庫で読める。
 『逆(さかさ)日本史』を参考例として、歴史を逆にさかのぼる教科書をつくって、日本史を必修にすれば、高校生全員が日本史と日本を中心とした近現代史を学ぶことができる。世界の歴史の中の日本ということを強調したいのであれば、平成から幕末の部分に、世界史的観点の記述を手厚く盛り込めばよいだろう。

 最大のポイントは、どの方法を取るにしても、この改革を機会に、米ソ相乗りの東京裁判の判決に盛られた歴史観、さらに、これに中韓の反日思想を加えた自虐史観を廃棄し、日本人の立場に立ち、日本人としての誇りの持てる近現代史を、青少年にしっかり教えることである。
 なかでも慰安婦問題については、積極的な対処が必要である。9月24日の日記に書いたが、高校の教科書の多くには、今も「若い女性が強制的に集められ、日本兵の性の相手を強いられた人たち」「女性のなかには、日本軍に連行され、『軍』慰安婦にされる者もいた」「朝鮮人女性などの中には従軍慰安婦になることを強要されたものもあった」等の記述がされている。「強制連行」という文言は使われていないが、「強制的」「連行」「強要」等、日本の官憲による強制連行があったかのように誤解させる文言を、放置してはいけない。こうした記述は、速やかに訂正すべきである。 
 以下は、関連する報道記事。

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●産経新聞 平成26年8月17日

http://sankei.jp.msn.com/life/news/140817/edc14081710100001-n1.htm
高校に「近現代史」新設検討 文科省、日本史必修化で
2014.8.17 10:10

 平成28、29年度にも予定される学習指導要領の全面改定にあたり、文部科学省が高校の地理歴史科で、日本史と世界史を統合した科目「近現代史」を新設する検討を始めたことが16日、関係者への取材で分かった。文科省は、高校日本史の必修化を秋にも中央教育審議会に諮問する方針だが、その際、近現代史の新設も議論の対象となる見通し。
 文科省関係者によると、近現代史の新設は、文科省が目指す高校日本史の必修化に伴う措置。単純に必修科目を増やしただけでは生徒や教員の負担が大きくなるため、必修科目の入れ替えや複数科目の統合が必要になるが、近現代史を学ぶ現行の「日本史A」と「世界史A」を統合して新科目を創設する案が浮上しているという。
 また、先の大戦をめぐり中国や韓国が日本への批判を強める中、明治以降の日本の近代化の歩みを世界史と関連づけながら深く学ばせることで、国際社会で自国の立場をきちんと主張できる日本人を育成する狙いもあるとみられる。
 高校社会科は元年の学習指導要領改定で「地理歴史」と「公民」に分割。歴史は小中学校の社会科で日本史を中心に学ぶため、高校では現在、世界史が必修、日本史と地理が選択科目になっている。
 しかし文科省では、戦後教育の中でなおざりにされてきた日本人としてのアイデンティティー育成には、高校で自国の歴史をじっくりと学ばせる必要があると判断。次の学習指導要領改定で高校日本史を必修化する方針を固めている。
 学習指導要領は小中学校が28年度、高校が29年度に改定される見通し。

◆学習指導要領
 学校で教えなければならない学習内容をまとめたもので、文部科学省が定める最低基準。約10年ごとに、文科相の諮問機関である中央教育審議会が審議した上で改定される。教科書作成などのため、改定してから3、4年を経て全面実施される。
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関連掲示
・拙稿「慰安婦問題:高校教科書の記述を訂正すべき」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/e4203f69509ed2fc61d1781b160c1d8b
・拙稿「教科書を改善し、誇りある歴史を伝えようーー戦後教科書の歴史と教科書改善運動の歩み」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion06c.htm