ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

内閣不信任決議案、本日採決

2011-06-02 10:15:23 | 時事
 自民党・公明党・たちあがれ日本が、内閣不信任決議案を衆院に提出した。本日午後、採決される。社民党・共産党が棄権を表明したので、出席議員の過半数ををもって可決されるには、民主党から79名以上賛成者が出る必要がある。小沢氏・鳩山氏が賛成を公言したことにより、僅差で可決される可能性が高まっている。可決された場合、菅首相は内閣総辞職か解散総選挙かを選択する。
 私は内閣不信任案の可決に期待する。私は、内閣総辞職、時限的な大連立、その後、解散総選挙が望ましいと考えるが、菅首相は不信任決議案が可決されれば、解散総選挙と周囲に漏らしているらしい。もし即、解散総選挙なら、国民ははっきり、菅政権・民主党政治にNOを突きつけるべきである。
 否決の場合を含め、私が現時点で考えるシナリオは、次のようなものである。

否決された場合
①菅内閣は継続。小沢氏・鳩山氏らの民主党造反派は軽度の処分。なお民主党の枠組みを維持。日本の危機はいやましに強まる。
②菅内閣は継続。造反派は離党・新党結成。民主党は縮小し、政権基盤は弱体化。法案は通らず、混迷深まる。やがて解散総選挙。

可決・内閣総辞職の場合
③民主党から新たな首相が出て、造反派をつなぎとめ、現在の政権の枠組みを維持する。現状より小沢氏・鳩山氏に寄った政治に変化。
④造反派は離党・新党結成し、民主党は縮小。民主党は自民党を含む大連立を行う。首相は他党からの可能性もあり。一定期間後、解散総選挙。

可決・解散総選挙の場合
⑤民主党造反派は離党。選挙は自民党が大勝。民主党惨敗、小沢派も敗退。政界再編へ。自民党中心の連立政権が誕生。ただし、大震災後の被災地の状況、「一票の格差」に起因する選挙区割りの違憲状態により、選挙の正当性が問われる可能性あり。

 今朝の全国紙の社説を見ると、産経は、不信任案可決なら解散総選挙で国民に信を問え、と主張。読売は、可決なら総辞職しての大連立に期待、総選挙には反対。毎日は、不信任決議案提出に大義は見えないとして、不信任案に消極的反対。朝日は、不信任案の提出は無責任このうえないと積極的反対。うち読売と産経の社説を掲載する。

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●読売新聞 平成23年6月2日

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110601-OYT1T01123.htm
菅内閣不信任案 救国連立模索なら理解できる(6月2日付・読売社説)

 菅首相の度重なる震災対応の不手際を踏まえれば、十分理解できる行動と言えよう。
 自民、公明両党などが菅内閣不信任決議案を衆院に提出した。きょう採決される見通しだ。
 今回の不信任案では、与党・民主党内で、執行部と対立する小沢一郎・元代表の支持グループなどから相当数の造反が確実視されている。極めて異例の事態だ。
 国家の危機に際して、政治は本来、与野党の垣根を越えて、時の首相の下に結束し、その対応に協力するのが望ましい。
 しかし、菅内閣の震災対応にはあまりに問題が多く、そうした空気にほど遠い。
 菅内閣は、誤った「政治主導」で官僚を使いこなせず、被災者支援が後手に回った。特別立法の作業も遅れている。原発事故の対応でも、誤った情報が何度も発表されたり、閣内の意見が対立したりするなど、迷走が続く。
 党首討論では、自民党の谷垣総裁が「国民の信頼を失った菅首相の下で、復興はできない」として首相退陣を求めた。公明党の山口代表も「政府の対応は遅すぎる」と足並みをそろえた。
 菅首相は、退陣を拒否したうえ、通常国会の大幅な会期延長と第2次補正予算案の早期編成を表明した。これは場当たり的すぎる。
 首相は当初、政権の不安定化を避ける思惑から、会期延長せず、第2次補正予算編成を夏に先送りする方針だった。だが、不信任案への民主党の同調者を減らそうと突然、方針転換したものだ。
 必要な政策の遂行よりも、政権の延命を優先するような姿勢では国民の信頼は得られない。
 今、最も重要なのは、震災復興などの課題に迅速かつ果敢に取り組める政治体制を作ることだ。
 谷垣総裁は党首討論で、「菅首相が辞めれば、新しい体制を作れる」と述べ、首相退陣が与野党協調や「救国連立」政権作りを可能にすると指摘した。より具体的な道筋を示してもらいたい。
 不信任案の可決には、民主党から80人前後の賛成が必要で、ハードルは高いが、仮に可決されれば、菅内閣は総辞職すべきだ。その結果、与野党が連携できれば、より早く復興が軌道に乗るだろう。
 統一地方選を先送りし、一刻も早い復興を望む被災地の現状を考えれば、首相が衆院解散・総選挙を選択することは許されない。
(2011年6月2日01時16分 読売新聞)

●産経新聞 平成23年6月2日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110602/plc11060203070005-n1.htm
【主張】
菅内閣不信任案 首相の「人災」に今決別を 総選挙で国民の判断仰ごう
2011.6.2 03:06

 きわめて無責任な菅直人首相の対応が「人災」を拡大している。これ以上の失政は食い止めなければならない。自民、公明両党などが提出した菅内閣不信任決議案の意味合いである。
 2日の衆院本会議の採決では、議員一人一人が、不信任案の帰趨(きすう)により国家の命運が決しかねない重大局面であることを熟慮し、判断してもらいたい。
 東日本大震災から立ち上がろうという大切な時期に政争はおかしいという見方もあるが、首相の不手際に伴う政治空白の方がより問題である。

≪遅れる震災への対応≫
 一連の政治の機能不全は、民主党の主導する政権が抱える多くの問題が表面化したのが主な要因だ。さらなる政権のたらい回しは許されない。
 不信任案が可決された場合は時期の問題はあるが、解散・総選挙により国民の信を問うことを最優先すべきだ。
 菅首相による人災は、最高指導者としての資質の問題に加え、「政治主導」をはき違えているために官僚組織との意思疎通が図れず、政府の総力を活用できないことが大きい。
 本格的な復興に必要な復興基本法は成立せず、その他の必要な立法作業も遅れている。
 平成23年度第2次補正予算も先送りしようとしていた。不信任案提出の動きにあわてたように、党首討論で谷垣禎一自民党総裁に協議を呼びかけ、通常国会の会期の大幅延長を言い出すなど、場当たり的な対応が止まらない。
 震災から80日もたつのに、学校の体育館などで不便な生活を余儀なくされている避難者は10万人以上に及ぶ。避難所を何カ所も転々とした人も少なくない。
 5月末までに3万戸の仮設住宅を建設するとした公約も果たされていない。「これでも先進国か」と疑う対応の鈍さだ。
 政治主導のご都合主義も露呈した。原子力災害現地対策本部長を務める池田元久経済産業副大臣が入院し、10日余り不在となっていながら公表していなかったことなど枚挙にいとまがない。
 実務をよく知る官僚が意見具申しようと思っても、首相に怒鳴られるのでやめてしまう。これでは官僚機構は機能しない。
 地球温暖化問題で、「2020年までに温室効果ガスの25%削減を行う」と鳩山由紀夫前政権が世界に公約した目標について、菅首相は大震災で痛手を受けても取り下げないと言い切った。
 原発が停止した分を火力発電で補わざるを得ない現状を考えると、実現は難しい。太陽光発電など自然エネルギーの急増は望めないのに、どうやって排出量の大幅削減をはかるつもりなのか。きわめて無責任な発言だ。

≪混迷脱する枠組みを≫
 不信任案提出を問題視する意見があるが、どうだろうか。
 菅内閣が国民の信を失っていることは、昨年の参院選や今春の統一地方選の民主党大敗を見ても明らかだ。
 政権の継続の是非について、衆院解散・総選挙で決着をつけるべき状況は変わっていない。
 「一票の格差」をめぐり最高裁が「違憲状態」判決を出したことで、首相の解散権が制約されるとの判断はとるべきでない。
 政府は「衆院解散の決定が否定されるものではない」との答弁書を決定している。新たな区割りなどが決まる前でも、首相が国民の信を問うのは問題ないはずだ。
 一方で、民主党内には小沢一郎元代表のグループなどが不信任案に同調する動きがある。
 主要な政策で意見が大きく異なり、政権党の中に別の党があるような構造で、これまでもマニフェスト(政権公約)修正など重要な意思決定を妨げてきた。菅内閣が機能不全に陥る大きな要因だ。
 小沢氏らは野党の不信任案に同調した後の行動予定を公言していない。不信任案に賛成したうえで与党にとどまるというなら、わかりにくい政治行動だ。
 谷垣氏は首相に対し「あなたが辞めれば与野党を超えて新しい体制をつくる工夫はいくらでもできる」と述べた。その具体的な展望を示してもらいたい。
 国民はこれ以上の人災も国政の混迷も望んでいない。真の復旧・復興を実現し、日本を危機から救うことができる政治の枠組みの構築が求められている。
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■追記

 不信任決議案は反対多数で否決された。私の考えたシナリオでは、①の変形という結果である。小沢氏・鳩山氏らの動きに対し、菅首相が自発的な辞任を表明。鳩山氏はこれを支持。小沢氏も受け入れ、自派の議員に不信任案に賛成しないよう呼びかけ、自身は本会議を欠席。小沢氏・鳩山氏は当然、処分対象とならず、一部不信任案に賛成票を投じた議員のみの問題となった。菅氏といい、小沢氏・鳩山氏といい、政治家というものは、自身の身を守り、権力を維持するためには、老獪に立ち回るものだ。「なお民主党の枠組みを維持」することとなり、「日本の危機はいやましに強まる」ことが予想される。また、現状より小沢氏・鳩山氏に寄った政治に変化するだろう。
 下記は結果を報道する記事。

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●産経新聞 平成23年6月2日

【内閣不信任案】
不信任案は反対多数で否決 菅首相の退陣表明受け造反少なく
2011.6.2 15:26

 菅内閣に対する不信任決議案は2日午後、衆院本会議で採決され、賛成152、反対293(投票総数445、過半数223)で否決された。菅直人首相が民主党代議士会で自発的な退陣を表明したことを受けて、小沢一郎元代表が「首相から今までなかった発言を引き出したのだから自主的判断でいい」と支持派議員に不信任案に賛成しないよう呼びかけたため、民主党内からの大量造反はなかった。ただ松木謙公元農水政務官が賛成票を投じ、小沢氏は本会議を欠席した。
 不信任案は自民、公明、たちあがれ日本の野党3党が共同提出した。菅首相の政権運営や党運営に批判的な小沢氏支持議員らが、野党に同調して賛成する動きをみせた。5月31日夜に会談した鳩山由紀夫前首相が首相に退陣を要求。小沢氏は1日夜、記者団に「国民が支持してくれた民主党に戻さなくてはいけない」と不信任案に賛成する意向を表明するなど造反の動きが広がり、不信任案可決の公算が大きくなっていた。
 首相や岡田克也幹事長らは当初、不信任案可決なら衆院の解散総選挙を断行するとして、造反組を牽制(けんせい)したが、造反の動きが予想以上に広がったため、党分裂の危機を回避しようと、首相の自発的辞任の表明に踏み切った。
 首相は2日昼、党代議士会で「東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に責任を果たさせてもらいたい。一定のめどがついた段階で若い世代の皆さんに責任の引き継ぎを果たす」と述べて自発的辞任を表明した。具体的な辞任の時期は明言しなかったが、鳩山氏は代議士会に先立つ首相との会談で、平成23年度第2次補正予算案にめどがついた段階で辞任することで合意したと明かした。政府の復興構想会議が復興計画を示す6月末以降の可能性が高い。
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