ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

友愛を捨てて、日本に返れ40

2010-01-30 08:40:37 | 時事
 この連載は20回くらいのつもりで始めたが、70回くらいになる見通しである。

●大国による力の支配を防ぐべし

 鳩山氏は「地域的統合を阻害している諸問題」を二国間で話し合っても逆効果だと言いながら、「地域的統合を阻害している問題は、じつは地域的統合の度合いを進めるなかでしか解決しない」と言う。二国間で話し合っても逆効果になる問題が、多国間で話し合えば解決に向かうと、どうして言えるのか。それと同時に、地域統合を阻害する問題が存在する中で、どうやって地域統合を進め得るのか。「友愛!」と言えば、国々の間の対立要因が太陽の光を浴びた霜のように消え失せるとでも、鳩山氏は思っているのだろうか。国際政治の舞台は、子供向けの演劇の舞台ではない。
 鳩山氏が、地域的統合を進めれば軍事力増強問題・領土問題が解決すると言うのは、詭弁である。現在、東アジアでは、中国が21年間、軍事費を二桁以上、増加し、猛烈な軍拡を行なっている。その中国との間で、わが国や台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ブルネイ等が領土・領海問題に直面している。中でも台湾は、もともと中国の歴史的な領土ではないのに、独立すれば武力侵攻すると脅されている。
 この状態で、東アジアの地域統合を進めるとなれば、わが国をはじめとする中国周辺の国々が、中国政府の意思に従い、中国共産党による支配体制に参入することでしかないだろう。中国が東アジアで勢力圏を拡大すれば、その地域では軍事力増強や領土問題は収まる。弱小国は、抵抗することができなくなるからだ。チベットや内モンゴル、新疆ウイグルは、共産中国によって統合された。それは、力による支配が拡大したのであって、EUのような国家連合による統合とは、全く異なる。鳩山氏の唱える「友愛」ではなく、力による併合である。こうした大国による力の支配を防ぐ道こそ、東アジアにおける地域集団安全保障や地域統合の目的でなくてはならないと私は考える。

●東アジアの領土・領海問題は甘くない

 鳩山氏は、EUの経験により、地域統合が領土問題を「風化させる」ともいうが、東アジアの領土問題は、ヨーロッパとは程度が異なる。わが国は、第2次大戦の末期、日ソ中立条約を一方的に破棄したソ連の侵攻を受け、北方領土を不法占拠され、今日に至っている。そのため、日本はロシアと平和条約の締結を行なっていない。
 鳩山氏の所説によれば、北方領土の返還は、「二国間で交渉しても解決不能」であり、「地域的統合の度合いを進めるなかでしか解決しない」。だから、北方領土問題を解決したければ、ロシアと地域統合を進めるしかないという論理となる。しかし、北方領土問題が未解決で、平和条約を締結できてもいないロシアとどうやって地域統合をするのか。経済交流を深めることと、地域統合は別の話である。
 また、第2次大戦後、新たに出現した韓国との竹島、中国との尖閣諸島、東シナ海・南シナ海の大陸棚等の領土・領海問題は、新興国のナショナリズムと資源の問題が関係している。韓国はわが国の領土である竹島を実効支配している。中国は日中両国が共同開発で合意している東シナ海のガス田に関し、日本が出資予定の「白樺」で一方的に掘削施設を完成させた。これらは、戦後のヨーロッパにおける領土問題とは、全く異なる性質の問題である。独仏は、石炭・鉄鋼の共同管理をした。いわば「友愛」によって戦略資源を共同管理したわけだ。であれば、日中の間では、東シナ海の海底油田・天然ガス田を共同管理するという方向か。しかし、中国はわが国との合意を無視して、資源の開発と略取を進めている。
 鳩山氏は「東アジアを『友愛の海』にしたい」と胡錦濤主席に言ったが、「友愛」という魔法の呪文を唱えれば、現実が一変するのではない。あっという間に変わるのは、鳩山氏の所論だけである。

 次回に続く。